<BACK> <HOME>

好き嫌い


  好きな人間もいれば嫌いな人間もいる。

  なぜ嫌いかは、置く。

  その時点で嫌いだったし、
  今でも嫌いなのには変わりはない。

  嫌いなヤツを避けるのは自然な感情だろう。
  敢えて、とも思うのだが、難しい。
  結果、かかわり合いは最小限に留まっている。

  勘の良い人間なら気付くかもしれないが、
  彼がそうなのかは、分からない。
  知っててすっとぼけているのかも知れない。

  先日、彼と顔を合わせねばならない必要があった。
  正直なところ、しばらく悩んだ。

  が、それを大きく上まわる理由があったので、
  古い手帳を引っ張り出し、連絡をとった。

  当日、テーブルを囲んでからしばらくして。

  人が人として生きていくために大切なこと、
  しかしこの平和ボケの世で失われつつあること。
  そして、口に出すと、
  煙たがられるか嘲笑を浴びることの多いこと。

  彼は、ごくごく自然にそれを口に出した。
  私も自然に頷いた。
  感情を被せて反発するほどマヌケでもない。

  座は数瞬白けたようだが、
  私は彼に敬意を抱いた。

  嫌いなのには変わりはないが。


<BACK> <HOME>