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熱力学


  原因は幾つか考えられる。

  まず熱源。
  人間、各種コンピュータ、その他精密機器。
  ネットワークハブの放つ熱も尋常ではない。

  そして、空気。
  エアコンの設定はともかく、席はちょうど風溜りで、
  空気は全く動く気配がない、動きやしない。

  気休め扇風機が1台割り当てられてはいるが、
  人間に風があたるようにすると書類が飛んでしまうので、
  とりあえずは、と、遠くの天井を睨んでいる。
  そしてこれもまた熱源の1つだ。

  ネクタイなんて余計なものもあるが、
  Tシャツ1枚になったところで大差あるまい。

  暑い、というより、熱い。

     ミ☆

  たまらなくなって外に出る。
  と、4月半ばの心地よい風が全身を包み込み、
  これがまた、非常ぉ〜に気持ちいい。

  で、戻ってみると蒸し風呂の一歩手前。
  湿度がそれほど高くないのがせめてもの救いだ。
  熱がサッパリ流れていない。

  席がサーバに囲まれているというのも問題である。

  サーバの冷却っつーものは、基本的に他力本願なのだ。
  単体での運用なら自前の空冷ファンだけでも足りるかもしれないが、
  10台近くのそれをまとめて設置するというなら、
  外部から何らかの形で熱を奪うのが常識ってものだ。

  関係ないが、背中から1mも離れていない場所に、
  全面パネルが外された状態のサーバが2台並んでいる。
  リセットスイッチはむき出しである。

  知らないよ〜。

     ミ★

  と、あれ? 反応が……。
  調べてみるとサーバが熱暴走。

  たこ焼きでも焼いたろか、
  ってな具合の温度 ( ちと大袈裟 )

  駄目じゃん。

     ミ☆

  というのが、4月半ばでの常駐先の状況。

  熱の問題がご近所全体の懸念として浮上してきたのは、
  あれは、そう、桜が咲きはじめた頃だから、
  この1ヶ月くらい前のことだ。

  何日か「 汗ばむほどの陽気 」という日があった。

  この熱気の原因は、
  詰まる所エアコンが本格的に稼働してない為らしい。

  そうすると、あっさりと単純に、
  外の気温と室温とに正比例の関係が現れる。

  とりあえず温度計を持ち込んでみた。
  238円也 ( 税別 ) の安物なので精度はそれほど高くはない。

  で、現時点での最高記録は、36℃。

  体温じゃねーか。

     ミ★

  出社すると、既に30℃を越えている。
  平均では32℃前後というデータもある。

  人間の発する熱も馬鹿にならない。

  打合わせ等で人口密度が低くなると、
  なんとか29℃位までは下がってくれるので、
  比較的過ごし易くはなる。

  比較的、だ。

  因みに。

  真夏日という言葉がある。
  その定義は、1日の最高気温が30℃を越えた日、である。

     ミ☆

  仕事になんかなるもんか。

  わがまま?
  我慢しろ?

  冗談じゃない。

  真夏の札幌で雪祭ができるか?
  タキシードやイブニングドレスで道路を耕せるか?
  野良猫相手にゴムひもの押売りが出来るか?

  って、変なたとえだが、とにかく、
  作業にはそれに相応しい環境というものが必要なのだ。

  脳ミソを酷使するような仕事なのに、
  何もしなくても、そこに居るだけでも辛いような状況で、
  まともに仕事なんか出来る訳がない。

     ミ★

  コンピュータのシステム。
  大きなものになると、1件のバグで百万〜千万単位の金が動く。

  最近ではすっかりお馴染みになってしまった感もあるが、
  いわずもがな、バグというものは許されるモノではない。

  確かにコンピュータのプログラムにはバグは付物であるし、
  それを0にするのは不可能と言ってもいい。

  プログラムが複雑になればなるほど、バグは増える。

  今、目の前でもウィンドウズが動いているが、
  これだけヤヤコシイことの出来るソフトなのだから、
  山ほどのバグが出るのは必然ではある。

  が、繰り返しになるが、著しく困難であるとはいえ、
  それは決して許されることではない。

     ミ☆

  企業系のシステムと言うのは、フリーソフト等、
  普段お目にかかるソフトを見慣れた人にとっては、
  拍子抜けするほどに機能が少ないモノが少なくない。
  余計なものは作らず、バグの潜む可能性を予め抑えておくのだ。

  マイクロソフトがどの程度のテストを実施しているかは知らない。

  我々は、それほど多くない機能を、何度も何度も動かして、
  残業して、徹夜して、胃に穴を開けてやっとこさリリースしている。

  納入したからと言って安心してはいられない。
  しばらくは客先からの電話に脅える日々が続くのだ。

  関係者が真に解放されるには大きな人事異動が必要である。
  その昔、こっち方面に進むきっかけになった本には、
  確かこんなことが書いてあった。

  SEやプログラマが会社を辞める時に呟く言葉。
  あとは野となれ山となれ。

     # SE: System(s) Engineer

     ミ★

  システム開発とトラブルとは友達であることが多い。

  というかその殆どは、より絆の強い親友であるか、
  もっと強烈に、赤い糸で結ばれちゃってるか、である。

  普通の人間が普通にやることやってれば、
  そうそうトラブる筈はないのだが。

  まぁ、普通じゃない人間がいて、
  やることやってないから、なのだろうけど。

  閑話休題、では、普通の人間がキチンと揃っていると仮定して。

  その普通の人間を、普通でない環境に放り込んだら、
  いつまで普通でいられるだろうか?

  逆に、普通でない人間を普通でない環境に放り込んだら、
  そいつが普通になる可能性はいかほどであろうか?

  ここで言う普通でない環境とは、そう、平均気温32℃、である。

     # ネットの世界の話じゃありません(笑)

     ミ☆

  プログラムの試験は、普通は3段階で行われる。
  呼び方は会社やプロジェクトでまちまちではあるが、
  単体テスト、結合テスト、総合テストで大体は通じるだろう。

  じわじわと完成品に近づけていき、バグを潰していく。

  ちと脇にそれるが、
  この期間中に飛んで来る仕様変更という名のミサイルこそが、
  ズバリ、システム開発がトラブる原因の最大手である。

  使い勝手を調整する、などと言うと耳あたりは良いが、
  時期と運が悪いと、それまでのテストは、
  それに対処した時点で哀れ一気にパーになってしまう。

  プログラムのソースを眺める。
  誰がどう見ても正しい文法で、仕様も完璧に満たしている。
  だから、テストをしなくても大丈夫、ちゃんと動く。

  言いたいことは判る。が、失格だ。
  正常に動作することを確認して始めてOKが出るのだ。

  急がば回れ、なのだ、……我ながら耳が痛い。

     ミ★

  各段階の試験では想定のバグ件数というものがあり、
  大雑把には、これをプログラムの品質というものを計ることも出来る。

  バグが少な過ぎて怒られるという不条理もあるが、それはそれ。

  言い方を変えると、ある割合のバグは予定のうち、ということであるが、
  それが少なければ少ないほど良いのは当たり前の話であり、
  試験期間は固定であるのが普通なので、
  バグが少なければその分テストの密度は上がり、
  それに従って品質も上がるということだ。

     # さぼらなきゃね(笑)

  さて。

  脳ミソがとろける、いや、煮えそうな状況で作ったプログラム。
  その環境がバグを減少させると考えるよーなヤツは、
  まぁ、はっきり言ってアタマがおかしい。

     ミ☆

  下っ端ゆえ、客との契約内容は判らない。
  ので、バグが出た時にどれだけの金が動くかもまた同様。

  が、この熱への対策と、
  テスト期間中のドタバタ、製品版にバグが潜む確率。

  釣り合わないと思うんだけどなぁ。

     # 本棚版補足: 5月半ばになってようやく環境が改善されました☆


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