知床 → 知床 2日目
■ 7月11日 (土)
雨音で目が覚める。
随分と強くなってきた。
雨ざらしにせざるを得ない自転車のことが気になる。
昨日は半日雨の中であったし、いや、というより、
北海道上陸後に走ったドライな路面は、
多く見積もっても3割程と思われる。
油もほとんど流れてしまっているだろうから、
一度キチッと整備してやらにゃぁ……。
しかし、雨。
ミ☆
やみそうにないので、惰眠を貪ることにする。
ザックから文庫本を引っ張り出す。
薄暗いテントの中で活字を追いかけ、疲れたら目を閉じる。
これが陽当たりの良い縁側やミカン付きの炬燵なら極楽極楽なのだが、
今にも茸でも生えてきそうな湿度と陰気さが揃ったテントの中である。
どよよよよ〜ん、てなもんだ。
テントはツーリング向け ( と書いてあった ) の1人用で、
ちょうど畳1枚程の床面積、高さは120cmくらい。
1人用としては比較的広めだが、
長時間じっとしているような空間ではない。
昼過ぎになってよーやく小降りになったので、
靴下の上にビニール袋を履き、その上に靴を履いて外に出る。
30mくらい先の水場を眺めると、
昨日のチャリダー3人+αが屯している。
とりあえず挨拶だけで通り過ぎる。
群れるのは嫌い。
ミ★
山を降りる……ってほどの高さではないか。
公衆電話を探し、
1週間ホッタラカシだった留守番電話をチェック。
数件の無言電話。
が、物音や微かな呟きで見当がつく。実家からだ。
電話をしてみると案の定であったが、
たいした用事ではなかったらしい。
いま知床にいるから、で、電話を切る。
腕時計の表示を見ると土曜だったので、ふと思いついて、
つい数ヶ月前まで一緒に仕事をしていたヤツの携帯を鳴らしてみる。
と、夕方から出社して翌日の夜までプログラムの試験とのこと。
私が辞めたぶん彼の負担が増えているので、
お土産のリクエストを受け付け、
いま知床にいるから、で、電話を切る。
相変わらず寒いので、コンビニでウィスキーを仕入れる。
ついでにテレホンカードを、生まれて初めて買った。
ミ☆
温泉の様子を見に行く。
のんびり歩いて5分てところである。
アバウトな造りはさすがに無料温泉。
湯船はそれほど広くはないが、みな雨で暇なのだろう、
入る気が失せるほどの人口密度。
夜中にでも入ろうか。
ミ★
キャンプ場に戻ると、相変わらず水場で屯している人影が3つ。
あまり避けてばかりいるのも詰まらないので、雑談に加わる。
お約束の無難な質問。どこから来たの?
海老名だと答ると、皆、案外近所であることが判明。
ローカルなネタで盛り上がる。
ところで、夏の北海道には日本全国のライダーやチャリダーが集まると
言われるが、必ずしも各都道府県で均等に分布しているわけではない。
多いのはやはり東京とその周辺、そして大阪周辺のようだ。
もちろん単純に人口の問題があるが、
もう一つ忘れてはならない要素がある。
フェリーである。
自転車は輪行というワザがあるが、
バイク ( オートバイ ) は基本的にフェリーとなる。
それと、時間はあるけど金が無い、
という場合にもこちらが利用されやすい。
自然、フェリーターミナルに近い都市の連中が多くなる。
そーゆーことらしい。
# キチンとしたデータがあるわけじゃないけど
ミ☆
水場屯組A氏は、恐るべきことに16歳の高校生。
休学して自転車で日本一周中だそうだ。
その行動力は評価に値するが、
発想はイマイチだね、というのは酷だろうか?
同じくB氏は、いかにも友達の少なそうなタイプで、
同時に、友達にはしたくないタイプでもあった。
C氏は、関西弁を操る謎の埼玉人で、
礼文島で再会するのはこの半月後のことである。
で、B氏の情報によると、
昨夜、キャンプ場のすぐ近くで熊が来たとのことで、
50m程先に足跡クッキリ、だそうだ。
面倒なので見には行かなかった。
テントに戻って寝る。
虚ろな一日であった。
つづく