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引越 前編


  話は、去年の11月中頃まで遡る。

  その当時の住まいは神奈川県海老名市某所。
  仕事場は横浜某所、
  ドアトゥードアで1時間弱。

  そこで進行形だった仕事は11月末に終了予定で、
  必然的に、上から「 次 」の話が飛んでくる。

  内容は「 ふーん 」ってな具合であるが、
  問題は場所であった。

  今度は、板橋……って、あの板橋?

  海老名から板橋までは、
  その時の単純計算でも2時間以上、
  後日、実際に行ってみたら2時間半ほどかかった。

  片道で、だ。

  普通ならば まず首を縦に振りはしない。

  しかし、今後のことを考えるならば、
  もう少し都心に近い所へ移っておくのが良かろう。

  ……などとホザク上司の陰謀にあえて乗り、
  その上で、水面下で引っ越し費用のカケヒキを開始。

  もっとも、
  ケチな儲けは後から痛いツケとなって戻ってくることが多いので、
  荷物を動かす費用は会社持ち、
  細かい所は追い追い相談しようとゆー無難な所で仕事に戻る。

     ミ☆

  作業が一段落。
  明後日の方角を睨みつつ候補地の選定に入る。

  当初、あちらが提案してきたのは、三田。
  東京タワーの近くと言えば手っ取り早い。

  交通の便が非常によろしいが、会社にも非常に近く、
  油断していると仮眠施設兼臨時作業場兼雀荘になりかねない。

  付近には芝公園とゆーものがあり、芝とゆー地名もあるので、
  こりゃぁ司馬猫ならぬ芝猫だなぁなどと密かに呟く。

     # 芝の増上寺が有名

  で、いちおー会社懇意の不動産屋で情報を集めるが、
  最低レベルでも、とてもじゃないがやっていられない。

  木造築15年和室6畳駅から徒歩15分が9万ってのは、
  ね、ちょいと勘弁して欲しい。

  即却下。

  因みに、この間にも往復5時間以上をかけて板橋へ通っているので、
  日を追うごとに疲労はたまり、要望は切実なものとなってきている。

  しかしながら、
  モノがモノなので焦って変な物件を掴んでは元も子もない。
  三田の、桁の1つ多い物件を眺めながら持久戦を決意する。

     ミ★

  特に「 住みたい 」街があるとゆー訳でもないので、
  思いつくままに条件を設定して、とにかく情報収集。

  アパート情報誌を数冊買い込み、
  目を肥やすことを目的として、
  間取りが載っている物件を中心に目を通す。

  その他にも、
  引越しの際のノウハウなどがまとめられていて勉強になる。

  脳ミソに知識を叩き込んだら、数日放置。
  慌てることはない。

  折角なのでインターネットも使う。
  住宅情報誌のサイトから情報を集めてみるが、
  たいして役にはたたない。

  間取りが分からないものが多すぎる。
  間取りが分かるものは、重すぎる。

  2週間ほど検討したところで年末年始。
  休みを利用して、幾つかの候補地を巡る。

  場所は、埼玉県和光市に決めた。

  荒川を渡ればすぐに東京なのだが、
  どーゆーわけか相場ガツンと下がるのが面白い。

     # 「 だ埼玉 」ってことか?(死語)

  結局、検討に1ヶ月ほど費やしたことになる。

つづく     


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