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霧多布 → 根室


  ■ 7月7日(火) つづき

  曇天を眺めながら、道道142号を東へ。

  たまに見掛ける選挙の看板以外、特に何もない道。
  誰が見るんやろか……税金ちゃうんちゃうん?
  独り言は、あるいはアイヌの神々には届いたかも。

  陽も陰り始め、
  そろそろ寝床を探さなあかんなぁ……、おや?
  ありゃ、ま、いつの間に。

  気がつけはそこは霧の世界。

  しばらく様子を見ていると、
  霧は次第に霧雨となり、小雨へ。

  しかし、見渡すかぎりの原野、
  まっすぐに伸びるアスファルト。

     ミ☆

  気休め程度だが、
  雨を避けるられそうな木を発見。

  荷物の陰で地図を引っ張り出す。
  メータの数字と照らし合わせると、
  5km程先に根室本線の駅。

  手持ちの食料と、
  ザック奥の非常食の量を確認。
  一晩くらいならなんとかなる。

  でも、熊がいるんだよな……。

  予備燃料を舐め、再び雨の中へ。

     # ウィスキーのことさ :-b

     ミ★

  駅の名は「 初田牛 」。はったうし。

  廃車両を利用した駅舎 ( ? ) には、何も無い。
  付近には民家が点在していたが、
  売店の類いは影も形もない。

  現地の人に助けを求めるという最終手段は残されてはいるが、
  それは飽くまでも最終手段。
  それに至るまでの「 手 」は幾つか用意してある。

  風通りの良い駅の中で状況を確認。
  まだ、それなりに余裕はある。

  判断力も鈍ってはいない、
  なんて自分自身で判断できる訳ないじゃん?

  などと考えていられるので、大丈夫だろう。

  腕時計を睨みながら、
  じっと、体力か天候の回復を待つ。

     ミ☆

  意を決して雨の中へ。

  道道1127号線 ( 4桁なのさ ) から国道44号線へ。
  幸い、雨は上がりつつあるようだ。

  根室市キャンプ場までは、駅から30kmほど。
  我ながらよく走る。

  左手に風蓮湖……に霧を被せた風景を望みつつ、
  温根沼 ( おんねとー ) を渡り、根室半島へ突入。

  キャンプ場まであと少し、
  とりあえず風呂に入らにゃ風邪ひいてまう。

  交通量と路面を考慮して、歩道を疾走。
  見通しが良くて歩行者が少ないからこその選択肢。

  と、正面に人影、慌ててブレーキ。
  やはり疲れているのだろう、反応は悪くなかったが。

     ミ★

  溜め息をついていると、その人影、こっちに歩いてくる。
  見た感じ……ああ、明らかにヤンキー系。
  二十歳前後だろうか、元気な盛りか。

  やばい……な。

  寒さで顔の筋肉が強ばっていたのは幸か不幸か。
  判断を迷っていると、
  「 よ、どっから来たん? カキ食うか? 」

  へ?

     ミ☆

  聞けば地元の漁協の人なんだそーで、
  酒盛りしてるから酔ってけ……もとい、寄ってけ、と。

  奥のほうを覗き込むと、
  普通にマトモそうな人達も居たので、
  ちょっと安心して、ご厚意に甘えることに。

  カキ、ご馳走様でした :-)

  つーわけで、
  温根沼大橋近くの漁協の直営店をよろしく★
  海産物は漁協で買いましょう。

     ミ★

  勢いに任せて根室市街まで足を延ばす。
  が、途中で日没。ライトを引っ張り出す。

  とりあえず根室駅へ。
  旅行者に駅舎を開放していると聞いたのだが、
  時期が早すぎるとのこと。

  風呂を探す。滝の湯、310円。

  小雨のぱらつく中、再び駅へ。
  雨露をしのげそうな場所を探すが、要領を得ない。

  天気予報の告げる降水確率は絶望的で、
  いくらなんでも「 どこかの軒の下 」は無謀。

  2日目にして早くも旅館かと諦めかけた所へ朗報、
  駅のすぐ近くにライダーハウスがあるとのこと。

  通りすがりのおじさんに感謝。

     ミ☆

  が、看板も何も無い。
  さてはヒヤカシか?

  イヤな考えがよぎるのも、
  余裕を失っている証拠であろう。反省。

  意を決して教えられた家のチャイムを鳴らす。
  恐る恐る事情を話すと「 ああ、うちだよ 」と。

  お世話になります。

     ミ★

  説明。

  ライダーハウス、勝手に略して以後RHは、
  いや、土佐生まれのハイジャン娘ではなく(謎) 、
  簡単にいうと、安価で雑魚寝な宿。

  基本的には北海道を旅する人達を支援するという、
  半ばボランティア的な存在で、
  要は空き部屋を旅行者に提供したのが始まりと思われる。

  普通は、お世辞にも清潔とはいえない大部屋に、
  これまた寄せ集めのカーペットを敷き詰めて、
  寝具は自前、
  旅館やホテルで期待されるサービスの類いは一切ナシ。

  ただし1泊で、私の感覚では500円前後、
  街中にはキャンプ場もないし、まぁ、便利だよね、って所。

  で、たまたまそこに集まった旅行者が、
  わいのわいのと情報交換をするのが醍醐味。
  これが楽しいって人も少なくない。

  とはいえ、時代の波か。

  最近では食事がついたり設備が整ったりで、
  良く言えば個性的なRHが増え、
  小規模な旅館と化す傾向が強い。

  もちろん、まだ一部ではあるが、
  こうなると必然的に宿泊料は上昇し、
  貧乏旅行者としては、ただ苦笑するのみ。

     ミ☆

  根室駅前・能登食堂さんの経営されてるのは、
  幸いにも伝統的な ( ? ) RHで、
  20畳くらいのスペースにカーペットを敷き詰め、
  感度がイマイチのテレビが1台。

  遅い時間にも拘らず、客は1人。
  つまり、ヒトリジメ、貸し切りってやつです。

  大の字になって ぼへ〜っと天井を見つめていると、足音。
  貸し切りは10分ほどで終わってしまいました。

     ミ★

  兵庫から来たというライダーさんが2人。
  自然、酒に。

  公務員さんとのことで、
  酔っぱらって「 消費税が云々 」と議論が始まったのは、
  サスガというべきでしょうか。

  あ、私は傍観してましたが(汗)

  公務員の中にも熱い血を持った人達がいるんだな、
  と、偏見ベースの妙な納得をかみしめつつ、お開き。

  外は雨、デートは来年へ持ち越し、宿代は600円。

つづく     


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