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麦秋の風


  時間に余裕のある……というか、
  時間の調整が容易な大学生をだった頃は、
  よく自転車に乗って近所をフラフラしてました。

  乗る以外にもメンテナンスや部品交換など、
  自転車は生活の一部として完全に溶け込んでいました。

  よく言われるように、
  速くもなく遅くもなく、
  道ばたの「 なにか 」を見つけられるスピードの乗り物です。

  その気になれば歩くより遅く進むこともでき、
  また、かなりのレベルになれば、
  乗用車とケンカだって出来ちゃいます。

  ま、そりゃぁ一部の競輪選手のハナシですけど、
  法定速度で走る原付となら良い勝負ができるでしょう。

  バトルしてどーするとゆーのはトモカクとして(汗)

       ミ☆

  何年か前に社会人ってヤツになりました。

  ちょぉ〜っと大変なところで、辞めるまでの2年間、
  単純に時間だけで考えると、
  普通の新人サラリーマンの2倍近い時間を、
  会社がらみで消費してしまいました。

  毎日夜遅くに帰宅して、朝早く出社していきます。

  週休二日は、あまりにもペラペラなタテマエで、
  たとえ休みが獲れても、
  動くに動けない、動く気が起きない、
  それはそれは不毛な日々でした。

    ※ 休みは「 獲 」らねばなりません。

  そんな状況ですから、当然自転車との距離は急速に遠くなり、
  部屋の片隅で無駄に、そう、悲しいことに、
  無駄にスペースを食うだけのオブジェと化してしまいました。

  たまに乗ろうと思っても整備不良。
  まずはそこから始めねばならず、
  そして、それが何回か繰り返されました。

  2年間で50kmも走っていないでしょう。

  2時間で走れる距離です。

       ミ★

  ぷー太郎になってとりあえず数日は、
  ぼへ〜っと、非生産的な時間を送ってみました。

  で。

  さて、と。

  待たせた、な。

  てなわけで、
  愛車を一通り眺め回してから自転車屋さんへ。
  持ち込むのではなく、消耗品を買う為です。

  取り替えなくても使えそうな物も、
  心機一転てことで買い込んできました。

  インナーワイヤー、アウターケーブル、バーテープ、タイヤ、
  チューブ、リムテープ、ブレーキシュー、チェーンなどなど。

       ミ☆

  とりあえずの調整が済み、
  ムリヤリ確保した、工具が散らばったスペースをそのままに、
  洗面所へ行って指に染みた油を落とし、
  クローゼットの奥から自転車用の手袋を引っ張り出し、装着。

  道路へ出て、サドルにまたがる。

  高さの調整はまずまず。
  バーテープも問題なし。

  ふむ……。

  風に再開した、
  ある春の昼下がりでした。


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