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ラボー教授研究室(2002/1〜6月研究レポート書庫)

 たいへんお世話になっている”ラボー教授”からはたくさん論文を提出していただいております。ラボー教授の研究室も手狭になってきましたので2002/1〜6月までに提出していただいたレポートをこちらには掲載させていただきました。過去の名作作品のレポートをお読みになりたい方はこちらへ。


評価の基準・内訳は次の通りにしていただきました。
Story(10点)−全体のストーリーがしっかりたっているか?。またその良さ、おもしろさ。エンディングのよさ。
システム(10点)−あそびやすさ。操作性、ロードの時間など。
ボリューム(10点)−遊びごたえ。買った値段に対する量感。
グラフィック(10点)−絵のきれいさ。見やすさ。動画を使っているかなど。
サウンド(10点)−BGM、効果音などのインパクト。オープニング・エンディング曲。
キャラ(10点)−登場するキャラクターの魅力度。またはメカのかっこよさ。
ぎゃる(10点)−登場人物にかわいい女の子がたくさんいるか?。
一 般(10点)−俗に言うマニア以外の人に受け入れられるか。
ラボー(20点)−ラボー教授の個人的な好み、おすすめ度。
総 合−各項目の合計。100点満点で評価する。


※掲載は提出日順とさせていただいております。


・村上水軍氏の淡いかわいいキャラクターが魅力の作品ですよね。プリンセスソフトオリジナルソフト第一弾ということで注目の作品でもありますよね。

夏色の砂時計
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
15 69

対応機種 プレイステーション2
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 ゼロシステム/プリンセスソフト

 これまでPCからの移植作品をコンシューマー向けに数多く発売してきたプリンセスソフトが、この春ブランド発足一周年記念タイトルとして、そして初のオリジナル作品としてリリースした作品がこの『夏色の砂時計』という作品です。キャラクターデザインや主題歌に有名どころを起用し、発売前から話題を集めていたこのプリンセスソフトの処女作について今回は検証していくことにいたします。それでは作品の概要から。平凡な高校生「牧村耕太郎」が夏休み直前のとある日、彼の片思いの相手であり学園のマドンナでもある美少女「芹沢香穂」に告白しようと決意するところから物語は始まります。その学校の帰り道、耕太郎は黒づくめの怪しい人物と衝突し、得体の知れない粉を全身に浴びてしまいます。翌朝目覚めた彼はどういう訳か9月1日に時間移動しており、自分と香穂が付き合い始めていたこと、そして香穂が8月31日に不慮の事故で命を落としたことを知らされます。やがて再び時間移動し、香穂と知り合う前に戻った耕太郎はその悲劇を回避すべく行動を開始します。果たして「未来」は変えられるのか…それが作品の目的となります。
 システム面についてふれましょう。『夏色の砂時計』は選択肢による分岐とマルチエンディングを有するごくオーソドックスなノベル型ADVですが、時間移動を扱っているため極めて変則的な日程となっています。ゲーム開始時点から8月31日というタイムリミットまでの夏休みがゲーム期間となりますが、その日程は連続する日もあれば、過去に戻ったり未来に行ったりもするという法則性のないもので、その構成はパズルのようにトリッキーです。この特異なスケジュールは作品の最大の特徴であり、この作品の性質をも決定する要素なのですが、その効果のほどについての評価は後のストーリーの項目に譲ります。コンフィグ及び操作系統に目を転じますと、セーブ時のシーンタイトルが表示されるようになり、メッセージの既読スキップがボタンロック式になるなど、これまでの移植作品よりはかなり改善されていますが、コンフィグ設定がシステムデータに反映されず、新規にゲームを開始した場合には強制的にデフォルトに戻されることや、シーンが変わるとメッセージ履歴がリセットされるためバックログがあまり意味を成していないこと、オートモードの速度変更ができずいらいらするような低速に固定されていることなど、細かい部分の詰めが甘く「ノベルADVにおける家庭用最高水準」にはまだまだ及ばないようです。
 次にキャラクターについてです。『夏色の砂時計』に登場する恋愛対象キャラは5人と、ノベル式ADVとしてはごく標準的な人数となっています。主人公の片思いの相手であり作品のメインヒロインでもある香穂を筆頭に、幼ななじみのあい、後輩の真魚、理科教師の朋美、タイムパトロール隊員のリージェンと、その役割構成も至極オーソドックスなものです。造形面でも学園のマドンナや幼ななじみ、ダウナー系後輩などといった設定上の役割から連想されるキャラクター像から外れることはなく、また無理やり個性づけようともされていないので、ややインパクトには欠けるものの安定した造形となっています。各ヒロインと主人公との関係を見てみますと、メインヒロインである香穂のケースに顕著に表れているように閉塞した家庭環境や対人関係からの解放、そして不慮の事故からの救出という二重の意味での「救い」がキーワードとなっており、自分ひとりの力では問題を解決しきれない、主人公への依存度が極めて高いヒロイン像が追求されているようです。キャラクター面での問題点としては、作品構成の性質上香穂というメインヒロインの立場が強固すぎるため、他のヒロインの扱いが消化不良気味の感があることがあげられます。主人公の盲目的な片思いから始まる一連の香穂とのエピソードがゲーム中の必須課程とされており、彼女の事故を回避することが主人公に課せられた最優先事項とされているため、他ヒロインの立場は極めて弱いものになっています。特に朋美やリージェンといった作品の基幹に深く関わっているはずのキャラクターの扱いがあっさりし過ぎていることで、結果的に作品世界の全体像が中途半端なものに留まってしまっていることには少々物足りなさを覚えます。
 ストーリーに移ります。『夏色の砂時計』という作品の最も顕著な特徴が時間移動という要素です。作中では「デイドロップ」と呼ばれるこの現象は、主人公が「黒づくめの怪しい人物」と衝突し、怪しい粉末を体に浴びたことで発現するようになったもので、夏休みの期間中、法則性もなしに過去と未来に飛ばされるという独特のタイムスリップです。時間移動という要素は恋愛ADVにおいては比較的よく使われるもので、当研究室で過去に扱った『Prismaticallization』や『Never7』といった作品においても用いられていたテーマです。ただ『夏色の砂時計』における時間移動は、それらの作品のような観念的、思弁的なテーマ性の強いものではなく、あくまでストーリー、作品構成に変化を与えるための副次的な要素に過ぎず、作品の根幹には置かれていません。結末を先に見せておいて、それを回避させるというオーソドックスなタイムスリップものの基礎を踏まえつつ、そのプロセスをぶつ切りにしてさらに複雑にかき混ぜるという本作品の手法は、タイムパラドックスという要素が考慮されておらず、理由づけや論理性に欠けるなどSFとしての基準を満たしていないため、作品の主題というよりは演出上の技法、あるいは舞台装置として採用されたものと捉えるべきでしょう。ストーリー面における「デイドロップ」の効果のほどとしては、結果と原因の関係を逆転させ、さらにスケジュールを複雑にしたことでシナリオが先の読みにくい緊張感あるものとなっていることは評価できますが、トリッキーな構成を採用したことで、ヒロインの心情の変化や恋愛の過程が不明確になり、その結果主人公とヒロインとの間の温度差が激しいものとなってしまっていることは否めません。主人公は時間移動を繰り返していますが、その記憶は連続しており、本質的には一本道の「歴史」を経験しています。一方ヒロインたちは時間移動していないため主人公とは異なる「歴史」を経験しており、主人公とは時間感覚や記憶、体験を共有していません。物語に変化を与えるために導入された「デイドロップ」によって、恋愛という営みで拠りどころとされる「絆」、いい換えればふたりの間に共有されている体験や記憶という要因が希薄になり、結果として本来作品のメインであるはずの恋愛プロセスがあやふやなものになってしまっていることは少なからず残念なところです。
 この『夏色の砂時計』という作品は、冒頭でもふれたようにプリンセスソフトにとってのオリジナル作品第一作にあたります。実績のないブランドの処女作をユーザーにアピールするという課題に対して、この作品は時間移動という一見奇抜な設定を採用し、キャラクターデザインや主題歌など目につきやすい部分に知名度のあるスタッフを起用するなど、作品の表面的な部分の印象を強め、話題性を確保することで対処しています。そして作品の内容においては過度な自己主張や冒険を避け、当たり障りのない無難な路線を追求することで、幅広い客層に対応しようとしています。「まずは外面から」というこの作品の姿勢は、確かに理にかなったものではありますが、内容面での自己主張が抑えられているために、ブランドならではの個性はまだ充分に確立されていない印象を受けます。次回作以降いかにブランド独自のカラーを追求していくのか…今後プリンセスソフトが家庭用オリジナル作品の優良ブランドとして認知されるためには、この『夏色の砂時計』では控えられていた「内容面での冒険」が必要とされるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

家政婦さん

 とうとうやってしまいました…過去にも何度か恋愛対象ヒロイン以外から選ぶというケースはありましたが、ここまでの端役はさすがにありませんでした。しかしながら今回主要キャラには今ひとつ惹かれるものがありませんでしたので、苦肉の策としてこの「家政婦さん」を採り上げることといたします。彼女はメインヒロインである芹沢香穂の実家に雇われた使用人…まぁ平たくいえばメイドです。娘を溺愛するあまり外界、特に異性との接触を許さない芹沢画伯(香穂の父親)とそれに反発する香穂との間に常に立たされる彼女の職務はなかなか気苦労が絶えないもののようです。雇い主である芹沢画伯の命令に従いながらも、陰では香穂の希望をこっそり手助けする…使用人であることへの葛藤に対する彼女なりの回答に共感を覚えました。それにしてもこんな若くて容姿端麗なメイドを雇っているとは…芹沢画伯、実に羨ましいご身分ですなぁ。

 以上です。少々厳しいことも書きましたが、これもコンシューマーオリジナル作品を作ろうとしているメーカーへの期待の裏返しというものです。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 06/18/02)


・このところ高得点、良作が多かったラボー教授のレポートでしたが、今回は久しぶりに少々辛口の採点となっているようです。パソコンでヒットした作品すべてが良作とはいえないということでしょうか?。

二重影
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
14 65

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 オークス/プリンセスソフト

 この作品は一昨年PC版が発売され、好評を博しました『二重影』の移植作にあたり、DC版とPS版(『SHADOW AND SHADOW』)という二つの仕様にて同時リリースされています。なおDC版とPS版には両機種間の規制の相違による内容の差異があるようですが、ここではDC版『二重影』に限定して話を進めさせていただきますことをまずご了承願います。それではまずは作品の概要から。時は寛永17年、呪いによって二つの影と人格を持つようになった剣士「二つ影双厳」が用心棒として淡炎島という孤島に招かれるところから物語は始まります。そこでは全ての子供が双子として生まれるという奇妙な伝承があり、自らの呪いを説く鍵を求めた双厳は依頼の実態に疑問を抱きつつも、島の実像に迫っていきます。やがて全ては島で行われている「儀式」に収束すると睨んだ彼はその謎を解くことに力を注ぐようになりますが、その結果予想だにしなかった規模の闘いに巻き込まれることとなります。果たして彼は自身と島にかけられた「呪い」を解くことができるのか…それが作品の焦点となります。
 システムについてふれましょう。『二重影』という作品のシステム面での最大の特色は移動の繰り返しによるフラグ立てにあります。これは淡炎島の各所を特定の順序によって移動し、人物と会っていくことでゲームが進行するという、かなり旧態然としたシステムでプレーヤーの労力はいかに正しいチャートを作れるかという点に集約されます。移動要素を重視することで島を探索するというプロセスを表現したいという意図があったのでしょうが、作業性が強く煩雑なだけで、島と呪いの謎を解くという推理プロセスの表現には全く寄与しておらず、その導入には大きな疑問が残ります。また剣劇ものであることから戦闘要素もあるのですが、一定時間内に正しい選択肢を選ぶことで戦闘に勝利できるという無意味なもので、こちらもまた効果的とはおよそいい難いものがあります。あと作品の「売り」となっているものにPIS(フリーズ・インストラクション・システム)なる要素があるのですが、これは本文中で使用されている固有名詞や難しい語句を補足する、単なる注釈に過ぎません。しかも対象となる単語が少なく、その内容も本編とはさほど関連しない知識をひけらかしているだけといった感が強いため、それを「売り」とするには少々苦しいものがあります。システム全体を総轄しますと、「物語」を読ませたいのか、それとも「謎」を解かせたいのかという根本的姿勢があいまいなことに起因するゲームデザイン面でちぐはぐさとバックログ機能の使いにくさやキャラの立ち絵の表示の遅さといった細部の詰めの甘さが目立つ、非常にフラストレーションの溜まる仕様であると結論せざるを得ません。
 続いてキャラクターについて。『二重影』は時代劇かつ剣劇であるという体裁をとっていますが、同時に美少女ゲームというカテゴリーにも属しているため、多くの女性キャラクターが登場します。また島の儀式の根幹となる双子の姉妹であるイルとスイ、島を代々治める阿波路家の現当主で双厳の依頼主でもある志乃、双厳の動向を常に監視する謎の少女、舞など単なる脇役以上の役割を持つ、物語の核心部分に深く関係する女性キャラクターが多いことが特徴となっています。恋愛対象となるのは三人で、流れの用心棒である楓玲、柳生の隠密の命、そして阿波路家に使え島を守護する桔梗とそれぞれ異なる陣営に属する面々で構成されています。恋愛対象ヒロインとサブキャラクター双方を含めた女性キャラ全体の造形面での特徴としましては、服装や口調、行動パターンなど表層部分の造形が非常に作為的で、時代劇の登場人物としてのリアリティよりも美少女ゲームの登場人物としての定型を再現することに重きが置かれています。内面的にはそれぞれの置かれた境遇や使命、因習といった「枷」に殉じるか、それともそこから脱出するかという二者択一に対する葛藤が各キャラクターの造形の基幹となっており、両義性を持った「呪い」という作品の主題を強調するという点でそれなりに効果を発揮しています。男性キャラに目を転じますと、双厳の宿敵である無影と柳生一門の棟梁、十兵衛の存在感が抜きんでています。剣劇でありながらも女性キャラの比重が大きいという作品構成への反動から生じるものでしょうが、彼らの剣客としての生き方、闘いに身を置く者ならではの死生観は印象的で、キャラクターとしての魅力という面でも女性キャラ陣以上のものがあります。
 ストーリーに移ります。『二重影』は選択肢による分岐と複数の恋愛対象ヒロインを持つADVではありますが、そのストーリーは基本的に一本道で、展開の幅はほとんどありません。一応各ヒロインごとに個別シナリオとエンディングはあるのですが、作品の大半が共用ルートとなっているだけでなく、個別シナリオとエンディング自体が使い回しの目立つ、キャラの違いがほとんど反映されない内容であるためマルチシナリオ、マルチエンディングとはおよそいい難いものがあり、場所移動中心のゲームシステムと共に旧弊な感があることは否めません。ストーリー展開の特色としては島の儀式の実態が判明するにつれて、主人公双厳の目的が、当初の自らにかけられた呪いからの解放という個人レベルの目的から「世界」の命運を賭けた闘いという人間レベルを越えた目的へとシフトしていくことがあげられます。この目的の変容によって作品の性質が剣客を扱った一般的な時代劇からRPG的な方向性と価値観に基づいた英雄譚へと変化させられています。また作中の文体や登場人物の台詞も統一感を欠いた特定の時代や国籍を意識させないもので、時代劇を語るための文章、台詞としてはおよそ不適切なものです。『二重影』の物語のとそれを表現する文体の性質は、この作品が本質的には正当派時代劇ではなく、和風の味付けをされた異世界ファンタジーという、昨今のRPGの氾濫によってすっかり定着した物語様式に基づいて形成されたものであることを示しているといえます。
 さて、『二重影』という作品全体に一貫して見受けられるのが両義性という要素です。主人公の受けた呪いに始まり、淡炎島という物語の舞台の特質、そして物語終盤での対立構造に至るまで、作品に登場する要素は全て二つの側面を持っており、タイトルが示す通り両義性の対立と相克が作品の主題となっています。そして作品内容そのものに限定すれば、膨大な知識と情報量を総動員してその主題の表現にあたっただけのことはあって、両義性という要素はそれなりの形で消化され物語のインパクトを強めています。しかしながら一歩引いた地点から作品を見た場合、両義性という性質はコントロールされておらず、むしろ作品の方向性は混乱しているように映ります。時代劇としての外観を持ちながらも実態は異世界ファンタジーであるという外見と内容の不一致、血生臭い闘いを扱いながらも美少女ゲームであろうとする焦点の定まらないスタンス、謎解きをメインに据えながらもプレーヤーをそのプロセスに参加させないという一貫性のないゲームデザインなど、細部に執心するあまり作品の全体像に対する配慮が疎かになったことで生まれた意図せぬ両義性が、結果として作品に対する印象をどちらつかずのものにしています。ゲームとしてどのような方向性を目指すのか…煮えきらない姿勢がもたらした両義性という「二重影」こそ作品そのものにかけられた最大の「呪い」であるのかも知れません。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

桔梗

 個人的に作品に登場する全てのキャラクターの中で最も印象に残ったのは柳生十兵衛なのですが、ここで男性キャラを採り上げても仕方ありませんので、今回は三人の恋愛対象ヒロインの中から桔梗をピックアップすることとします。桔梗は阿波路家に仕え、イルとスイを守護する立場にある女戦士です。当初は島と儀式の謎に迫ろうとする双厳に対して敵意を抱いていましたが、双厳と接するにつれて次第にその頑なな態度を和らげていきます。自らの立場と島の因習に疑問を感じつつもそれに殉じようとする姿勢…不器用で融通のきかない彼女の生き方には賛否があるでしょうが、他の二人のヒロインよりはキャラクター造形に無理がなく、作品に適合している点を評価して選んでみました。

 以上です。どうしても作品に対する違和感が抜けず、主観的で厳しい内容になってしまいました。一般受けという面ではこの作品の方向性も理解できなくもありませんので、その辺は割り引いて読んでいただければ幸いです。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 06/05/02)


・今回はメガCDの作品というとっても懐かしい作品のレポートを2作品いただきました。実はまいやもメガCD持ってましたが、当時まいやはまだぎゃるゲーマーとして目覚めていませんでしたので、この「ゆみみみっくす」という作品はやっておりません。当時としては画期的な作品だったようですね。

ゆみみみっくす
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
17 71

対応機種 MEGA-CD
ジャンル アドベンチャー 発売元 ゲームアーツ

 1990年代の初頭、メガCDというハードを名実共に牽引していたメーカーがゲームアーツでした。CDならではの膨大なデータを誇るSLG『天下布武』、後に次世代機にも移植された人気RPGシリーズ『ルナ』二部作、そして当時としては画期的なフルポリゴンシューティングゲーム『シルフィード』など当時のゲームアーツ作品はCD-ROMという大容量メディアの特性を生かした力作揃いですが、今回こちらで紹介させていただく『ゆみみみっくす』もそんな一連のゲームアーツ作品に劣らないインパクトを持った作品です。「少女漫画家」竹本泉氏が原作、設定、脚本、絵コンテ、レイアウトを全て手がけたという今では考えられない制作体制、全編フルアニメーション&フルボイスという革新的な仕様、そしてゲーム性をほとんど切り捨てた作品構成というようにその内容は正に前衛的で、この作品が専門誌『BEEP!メガドライブ』の読者レースにて初登場1位を獲得したという事実からも当時のユーザーの衝撃がいかに大きなものであったかということが推測できます。なお『ゆみみみっくす』は後にFM-TOWNSとサターンに移植されていますが、このレポート並びに評価はあくまでオリジナルのメガCD版を対象としたものであることを初めにご了承ください。
 それでは具体的なゲームの仕様及びシステム関連から見ていきましょう。『ゆみみみっくす』は選択肢によって分岐するマルチエンディングタイプのADVです。プレーヤーは主人公である弓美に成り代わってゲーム中における行動を決定することで作品を進行させていきます。ゲーム途中でのセーブは可能ですが、いわゆるスキップ機能が整備されていないため、新たにゲームを開始した場合は最初から作品を鑑賞させられることになります。また『ゆみみみっくす』はフルアニメーション&フルボイスという仕様ですが、これは文字通りのフルアニメーション及びフルボイスを意味しています。アニメーションは全編フルサイズで、読み込み時と選択肢表示時を除いてノンストップで展開され、そのボリュームはプレイ時間にして約90分、総動画数約7000枚、総カット数は約800にも及びます。そして本編中の台詞は全て音声化されており、字幕として画面上に台詞が表示されることは一切ありません。このように徹底されたフルアニメーション&フルボイス化のため、システム上はオーソドックスなAVDと大差ないにも関わらず、『ゆみみみっくす』のプレイ感覚は一般的なADVとは大きく異なります。作品をプレイしているというよりは鑑賞しているという色合いが濃いため、この作品は純粋なゲームというよりはプレーヤーが作品に介入できるアニメーション、あるいはコミックであると捉えたほうが適切でしょう。
 続いてストーリーについて。『ゆみみみっくす』はプレーヤーが作品に介入できる余地の少ない、非常に鑑賞要素の強い作品ですが、その視点は一般的なアニメ作品のような多視点ではなく常に主人公である弓美の視点に固定されています。制定上はプレーヤーは弓美とは別個の存在とされていますが、プレーヤーは一貫して弓美の経験や記憶に縛られることになります。これは『ゆみみみっくす』という物語が弓美個人の「謎」を解明することを主目的としていることによるものでしょう。平凡な女子高生だった弓美がある日を境にして次々と遭遇する奇妙な事件の原因を調べていくというのが作品のアウトラインですが、その真相は弓美本人と密接に関わっているため、視点を無闇に変更しては物語の興味をそぐことになりかねません。そのためプレーヤーには弓美が知っている以上の情報が与えられないようになっているわけです。視点と情報量を制限することで受け手を物語に引き込むというADVでは広く用いられいる手法を採り入れることで、希薄になりがちな「ゲームらしさ」を醸し出そうという意図があるのかもしれません。ストーリーの特徴としてはラブコメ少女漫画的な作風とレトロSF風の味付けとのバランスが絶妙で、さすがに竹本氏が長年温めてきたというアイデアを自ら脚本化しただけのことはあります。また作品全体の構成や整合性にもかなり注意が払われており、近年の破天荒な作風とは大きく異なります。作風については人それぞれの好みがあるでしょうから、一概に善し悪しは決められませんが、『ゆみみみっくす』はまだ竹本氏が「少女漫画家」でいられた時代の魅力が十二分に発揮された作品であることに異論をはさむ余地はないでしょう。
 キャラクターについてふれましょう。『ゆみみみっくす』に登場する主要キャラクターは五人と必要最小限な人数ですが、その構成は典型的な竹本作品のパターンを踏襲しています。主人公弓美と相手役の真一というどちらも優柔不断でおとなしいカップルを親友の桜子とトラブルメーカーの部長という自己主張の激しい二人が引きずり回すという男女二人づつの基本メンバーに作品の真相に関わる謎の下級生えりが絡んでくるという構図には無駄がなく安定感があります。主人公の性格をおとなしめにすることで心理描写を増やし、話の展開は我の強い脇キャラが受け持つというところに氏特有の「少女漫画らしさ」が表れています。また弓美たちの前にひっきりなしに現れる怪生物の数々もこの作品の魅力のひとつです。どこかで見たようなキャラクターから意味不明な物体に至るまで、その奇想天外なセンスは氏の独壇場といっていいでしょう。弓美が直面する脈絡のなさと心地よさが奇妙に同居した非日常的状況を演出する上で「彼ら」の果たしている役割は大きなものがあります。
 90年代初頭という時代は、ゲームソフト媒体がカートリッジROMからCD-ROMへと移行し始めた時期でした。CD-ROMドライブがゲーム機に採用されることでゲームの大容量化が一気に進んだわけですが、当時はそのあり余る容量をどう活用するかという問題についてメーカーがまだ試行錯誤を続けていた時期でもありました。そしてその大容量の使い道として演出の強化という方向性が注目されるにつれて、デモムービーの長時間、高品質化や動画の取り込みといった映像面の演出と台詞の音声化やCD-DAによる歌や音楽の再生といった聴覚面の演出に多くの容量が消費されるようになりました。演出の強化というゲームの本体とは関連しない外見、もしくは装飾という側面にウェイトを置くという姿勢はそのまま現在にも継承されていますが、それはすでにその時代においてゲーム性というゲームの本質部分を追求することが行き詰まっていたことを意味しているのでしょう。そしてゲームというメディアの意味合いが遊ぶものから鑑賞するものへと変容し始めたこの時代を最も極端な形で反映した作品、それがこの『ゆみみみっくす』だったのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

吉沢 弓美

 キャラクターの項目の補足という意味も込めまして、今回ここでは主人公の弓美をとり上げることとします。弓美はやや内向的で不器用という典型的な竹本ヒロインです。「顔もスタイルも成績も十人並みで凡庸」とは本人の評価ですが、そんな「普通の女子高生」がある日を境に普通でなくなるというのがフィクションの世界のお約束というもの。ある出来事をきっかけに弓美にも「特技」が備わりますが、その能力も弓美の優柔不断な性格を何ら変えることは出来ず、「ヒロイン」としてはいま一つ格好がつきません。超日常的な状況に直面しながら「変身」しきれない…どこまでいっても凡庸であることこそ弓美の最大の魅力なのかもしれません。演じるは平松晶子さん。やはり竹本ヒロインの声はこの方が一番しっくりきます。

 以上です。今となってはこれほど作家性の強いゲームは出ることはないでしょう。この作品の後にも竹本氏関連のゲームはいろいろとリリースされましたが、やはり元祖であるこの作品が最高峰なのではないでしょうか。それでは長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 05/28/02)


夢見館の物語
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
17 70

対応機種 MEGA-CD
ジャンル アドベンチャー 発売元 セガ

 家庭用ゲーム機にCD-ROMドライブが導入されるようになってから顕著になり始めたの傾向のひとつとして、映像としてのインパクトがゲームに求められるようになったことがあげられます。今までにない大容量を扱えるようになったことで、それまで以上に外見を重視した作品作りがなされるようになり、動画の取り込みやデモムービーの採用、イベントCGの増加といった試みが積極的になされるようになったわけですが、次世代の映像表現の手段として3D表現が本格的に導入され始めたのもこの時期です。そしてこれまでにない臨場感やリアリティをプレーヤーにもたらすことができる3D表現が、アクションやシューティングといったゲーム性の強い分野だけでなく、効果的な演出手段としてADVという元々鑑賞要素の強いジャンルにも採り入れらるようになったのはある意味必然的なことといえるでしょう。もちろんそうした本格的な3DタイプのADVが一般に定着し出したのは90年代の中頃、32ビット機の時代に入ってからのことですが、その一世代前、メガCDにおいてその原型ともいえる作品が登場しています。それが今回紹介いたします『夢見館の物語』という作品です。
 では作品の概要とシステム周辺から始めます。とある森の奥深く、一本の大きな楡の木の周りには不思議な花畑がありました。四年に一度、どこからともなく蝶の群れが現れ花畑の上を飛び交う満月の夜になると、そこには一夜限り存在するという洋館が姿を見せるという言い伝えがありました。そしてある満月の夜、伝承通り姿を現した洋館に紛れ込んだ一人の少女を探して、その兄(すなわち主人公)が館に足を踏み入れるところからゲームはスタートします。ゲーム本体の仕様を説明しますと、『夢見館の物語』はプレーヤーの姿が表示されない完全3DタイプのADVで、プレーヤーは洋館内を移動しつつフラグを立てることで妹の救出と館からの脱出を目指します。ゲーム途中のセーブはいつでも可能ですが、プレーヤーが致命的な行動をとるか物語の佳境部分で必要以上にもたつくと即ゲームオーバーとなってしまいます。またゲームを進行させる上で重要なこの作品特有の操作として任意の場所をズームアップし調べるという動作があります。アイテムの入手及び使用や館の住人との会話、ヒントの発見など、ゲームを進行させるために必要な動作の大半がこのズームアップという操作に含まれており、プレーヤーが行うことの出来る行動は非常にシンプルで限定されています。ただ残念なことにゲーム進行のためのフラグや謎解きが理不尽で必然性に欠けるため、コマンド総当りに近いプレイスタイルを取らざるを得ず、プレイ感覚が非常に作業要素の濃いものとなってしまっています。作品がリリースされた時期からすれば仕方ないことなのでしょうが、推理力よりも根気が要求される旧弊なADVの特色が忠実に採り入れられていることには当惑させられます。
 キャラクターについてふれましょう。『夢見館の物語』に登場する人物を区分すれば、狩人、館の住人たち、そして主人公兄妹という三つのグループに分類することができます。まず館の構成要員である住人たちと狩人について説明しますと、館の住人はギャンブラー、少女、ピアニスト、芸術家、コレクターの5人で、彼らは皆青い羽をした蝶として登場します。彼らは様々な理由から現実生活に絶望し、人間の姿を捨てて蝶の姿になることを選択したいわば世捨て人ともいうべき存在で、現実逃避の場所として館に住まうことを選択した人々です。そして館の主として希望者に蝶の姿と安住の場所を提供するのが、狩人と呼ばれる存在です。狩人は主人公兄妹以外では唯一蝶の姿をしておらず、一般の館の住人とは明らかに区別された存在ですが、その正体や目的については謎が多く、作品をクリアしてもその実像は明確にはなりません。次に主人公兄妹ですが、元来彼らは招かざる客で、館に入り込んでしまったのは単なる事故に過ぎません。ところが狩人は強引にも妹を蝶にしようとします。なぜ狩人がそこまで執着するのか、その理由は明らかではありませんが、蝶になるかならないか、館に住むか住まないかという兄妹と狩人との対立関係が作品の登場人物関係の核であるといえます。キャラクター面を総轄しますと、この作品の三つのグループによる人物相関図、兄妹と狩人という館の内と外をめぐる対立関係を館の住人たちという個性的な第三者が取り巻くという構図には無駄がなく、物語の魅力が効果的に引き出されているといえます。
 続いてストーリーについて。『夢見館の物語』という作品の特徴的なところは、物語の舞台が洋館という閉鎖された空間に限定されていることです。閉鎖された空間を作品の舞台に設定するという手法はADVにおいてはよく見られます。外界の流儀の通用しない、日常から隔離された空間からの脱出の過程を描くというのが、この種の設定の作品の定石で、当然ながら『夢見館の物語』もこのパターンを踏襲しています。この種の作品が成功するかどうかを握る鍵として、作品の舞台である閉鎖空間をいかに印象的に構築できるかという点があげられますが、この作品の舞台である館の造形は巧妙で、異質な空間としての存在感には強烈なものがあります。住人が蝶となる幻想的な設定の魅力はもちろんですが、現実世界との断絶という点でこの作品の館の造形は抜きん出ています。館とは世捨て人のための現実逃避の場所であるということは先ほどふれましたが、館の住人になるには「人間」の姿を捨てなければなりません。人間であることがもたらす苦痛や煩わしさから完全に解放されるためには人間であることをやめなければならないのです。そして人間であることをやめた住人たちに用意された生活…そこには時間の流れも外界もありません。あるのは「その人」にとっての固着された時間と内面だけ…それはもはや「生」とさえ呼べない状態なのかもしれません。この作品における脱出劇は単なる非日常から日常への復帰という意味だけではなく、「永遠」から現実へ、いい替えれば人間でないものから人間への回帰をも意味しています。そしてそのプロセスの当事者として人間であることの負の側面を未だ知らない、幼い兄妹という無垢な存在を配置することで、ストーリーに成長物語としての奥行きがもたらされているといえるでしょう。
 完全3Dによる閉鎖空間からの脱出を主題としたADVはホラー指向というユーザーの傾向と結び付いて、現在ではすっかりおなじみのものとなりました。ハードが高性能化するにつれ、演出表現は恐怖感の追求という方向性にますます傾倒するようになり、エンタテイメントとしての完成度は飛躍的に向上しました。そういった現在の作品の水準からすれば、『夢見館の物語』の映像表現は地味で拙いものに映るのは仕方のないことかもしれません。しかしながら当時リアルタイムでこの作品をプレイした者にとっては、その荒く色数の乏しい映像は次世代機では表現不可能な異空間として記憶に焼き付いています。それはあたかも本編の設定と同じく、魔法によって時間の止まった空間のようです。そして作品の舞台となるあの館と同じように『夢見館の物語』という作品はメガCDというハードが生み出した一夜の夢だったのかもしれません。

−おすすめキャラ−

ラボー教授のお気に入りキャラ

ピアニスト

 今回のお気に入りの選定には頭を悩ませました。作品に登場する女性キャラの人数が四人とただでさえ少ないのに、館の住人は蝶の姿をしていると視覚的にも特殊なので、誰を選んだものか苦心しました。さんざん迷った末、今回は館の住人の中からピアニストを紹介させていただくこととします。彼女の経歴についてはあまり多くは解りません。作中提示される彼女の過去は演奏旅行で方々をまわっていたらしいこと、そして「何か」から逃れるために館にやって来たらしいことくらいのものです。しかしながら彼女が他の館の住人と一線を画しているのは、館にやって来たことを深く後悔しているという点です。その姿勢は他の住人が自分の現状について居直って蝶の姿でいることを受け入れているのとはあまりにも対象的です。もしかすると事情も解らず館に迷い込んだ主人公が現実、そして人間でいることの大切さを認識し始めたのは、彼女の悔恨の声を耳にした影響なのかもしれません。

 以上です。3DタイプのADVの先駆的作品ということもあり、システム面が整備されていないきらいはありますが、巧妙な舞台と登場人物の設定と印象的なストーリーは現在の基準から見ても充分魅力的なものです。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 05/28/02)


・プリンセスソフトなどこのところ新規参入メーカーが多いこの業界ですけど、それでもこのキッドはやはり目を離せないメーカーですよね。ラボー教授の評価もかなり高いですね。

My Merry May
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
16 74

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 キッド

 純粋な意味でのキッドオリジナルのADVとしては『メモリーズオフ2nd』以来の久々の新作である『マイ・メリー・メイ』。DC限定の新作ADVとしては『Close to』に続く2作目にあたり、キッドが発売したDC作品としてはちょうど10作目になります。物語はのどかな全寮制の高校に通う主人公恭介の元に「レプリス」の起動セットが送られてくるところから始まります。レプリスとはナノテクを駆使して作られた最新の人型人工生命体で、退屈な日常に食傷し「何かいいこと」を求めていた恭介の元に海外で研究者として活動している兄から送られてきたものでした。興味を持った恭介は早速、身長、スタイル、ルックス、性格など自分好みの設定を入力し、「理想の女の子」を創造しようとしますが、装置の起動中にバグが生じ、生まれてきたのは泣き虫でおっちょこちょいなまるで幼児のような女の子でした。理想とのあまりの落差に当惑する恭介でしたが、「レゥ」と名付けたこのレプリスに振り回されつつも「保護者」として面倒を見ていくことを決意します。そしてこのハプニングに満ちたレゥと恭介の共同生活は一体どうなってしまうのか…それはプレイしてのお楽しみということになります。 
 システム面について見てみましょう。『マイ・メリー・メイ』は選択肢によってストーリーが分岐する極めてオーソドックスなノベルタイプのADVです。この種の作品はキッドの十八番とするところで、もはやゲームシステムは完成の域に到達しており、家庭用機種用作品としては他のメーカーの追随を許さないクオリティであるといっても過言ではないでしょう。余分な操作を必要としないメッセージ送り、過去ログ閲覧時の音声再生、クイックセーブ&ショートカットによる繰り返しプレイの容易さ、各種リストによるプレイ状況のチェック、メッセージスキップ時のキャラ表示の簡略化によるスピードアップなど、過剰なまでにユーザーライクな機能が満載で、一貫してノベルADVを作り続けてきたメーカーならではの完成度を見せています。またゲーム本体以外にも恒例のアペンドシナリオ機能と各種データファイルが収録されており、「おまけ」のボリュームも申し分ありません。
 続いてキャラクターについて。『マイ・メリー・メイ』に登場する恋愛対象ヒロインは5人+αとノベルタイプADVとしては標準的な人数となっています。表層的な設定も人工生命体や幼なじみ、親友の彼女、包容力のあるお姉さん、年下のダウナー少女などごく一般的なもので、外見的なインパクトはさほどありません。しかしながらそのキャラクター造形は一般的な美少女ゲームとは少々異なっています。一見オーソドックスな設定のヒロインを登場させているにも関わらず、この種のジャンル特有のお約束や記号に満ちたいわゆる属性重視のキャラ造形はこの作品には見られません。ヒロインの人格形成や行動基準における一貫した理由づけや内面描写を重視したテキスト構成など『マイ・メリー・メイ』のヒロイン造形は美少女ゲームというよりは一般小説に近く、あくまで等身大のヒロインを描くことを目指したものといえます。奇妙な口癖やあやしげな趣味などといった表面上の個性づけに頼らない、緻密に計算された心理描写に基づいたキャラクター作り…もちろん適度に誇張されてはいますが、この作品のキャラ造形は「リアル」指向が強いものであることに変わりはなく、一般的な美少女ゲームユーザーにとっては違和感や物足りなさを覚えるものかも知れません。一方サブキャラクターに目を転じますと、やはり何といっても主人公の兄である恭平の存在感が抜きんでています。この種のジャンルの作品において主人公の肉親、それも男性が重要な役割を果たすというケースは珍しいのですが、この作品における恭平の役割は実に多彩で単なるサブキャラクター以上の重要性があります。ある時は父親の代わり、ある時は冷徹な研究者、ある時はよき人生の相談相手、そしてある時は恋敵…状況によって複数の顔を見せる恭平は従来の男性キャラ像を越えたものとして特筆するに値します。その言動の真意や素性の秘密など、とかく謎の多いキャラクターですが、ある意味この作品で最も印象的な人物だといえるのではないでしょうか。
 ストーリーに移ります。『マイ・メリー・メイ』のストーリーには二つの顔があります。一つはレプリスという近未来のテクノロジーを軸としたSF物語としての顔、そしてもう一つは主人公恭介が一連の騒動を通じて「人間」として成長していく過程を描いた成長物語としての顔です。前者はちょっと変わったシチュエーションの物語を得意とするキッドならではのもので、外見的にもユーザーの興味をひくものです。人工生命体を扱った物語はテーマ性がストレートに反映されやすく、また作品背景に対するプレイヤーの想像を膨らませるもので、かつ「萌える」設定でもあると非常に魅力的な条件が揃っており、実際ここに期待していたユーザーも多かったのではないでしょうか。ところが実際にユーザーに示された作品を見てみますと、人工生命についての掘り下げは物足りず、また数多くの謎が提示されるだけで作品背景の全容はオールクリアしても明らかにならず、肝心の「レプリス」は手の掛かる子供のようで恋愛対象としては辛いものがある、というようにそのシチュエーションから予想されるユーザーの期待からはことごとく外れており、人工生命体をメインに据えたSF物語としては消化不良な内容であるといっていいでしょう。しかしながらこの「SF物語としての顔」は『マイ・メリー・メイ』という作品においてはさほど重要ではありません。作品のウェイトはもう一方の「成長物語としての顔」という面に置かれており、一見メインであるかのように映る「SF物語としての顔」はその引き立て役に過ぎません。青臭い少年が一連のハプニングや恋愛を通じて他者への共感や自分の行動に対する責任感、理想と現実との折り合いの付け方を学ぶことで「大人」へと変わっていく過程こそこの作品のストーリーの核であり、作品のメインテーマでもあります。丁寧な人物描写や日常感あふれる語り口によって構築された成長物語は非常に印象的で、SF物語としての物足りなさを補って余りあるものです。SF物語と成長物語という二つの性質の扱い方に不満を感じられる向きも少なくはないでしょうが、表面上は魅力的な設定を採用しながら、あえて少年の成長物語という普遍的でありながらも美少女ゲームという媒体においてはそれほど好まれない題材を優先させた姿勢からは制作者(ライター)の気概が感じられます。
 さて、最後になりますが、この作品におけるレプリスという存在の意義について考えてみましょう。先ほどふれたようにSF物語の構成要素としてのレプリス像には物足りなさが残ります。その開発の背景や社会における役割、主人公一家との関係など多くの点が不明確で、レプリスのいる未来像というものがいまひとつ伝わってきません。プレーヤーに想像する余地を与えたといえば聞こえがいいですが、結局のところ説明不足であることに変わりはなく、全体的に消化不良の感があることは否めません。しかしながら美少女ゲームという枠組みに当てはめた場合、その意味するところは極めて明瞭になります。起動時の操作に見られるように本来レプリスとはユーザーの好み、願望によって形作られる存在です。ユーザーに逆らうことなく心地よくその欲求を満たす「女性」…都合よく美化され「理想」から決して逸脱することのないレプリスは正に一般的な美少女ゲームに登場する属性で固められたキャラクター像の象徴に他なりません。ユーザーの願望に忠実な理想的美少女…それはもはや「人間」ではない何者かなのでしょう。そしてこの作品はレプリスという「人間」とは区別された存在として「それ」を扱うことによって一般的な作品では忘れられがちなその異質さ、不自然さを強調しているといえます。もちろんプレーヤーの理想、願望の反映としての美少女像をレプリスという形で否定的に扱ったこの作品の姿勢には嫌悪感を覚えるユーザーも多いことでしょうし、『マイ・メリー・メイ』のスタンスはあくまでひとつの方向性であるに過ぎません。ですがそれは美少女ゲームにおける「人間」像をプレーヤーに考えさせる契機となる意欲的な試みであることは確かだといえるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

レゥ

 キッド作品のメインヒロインは一癖あるキャラクター揃いですが、今回のレゥも例外ではありません。レプリスという人間ではない存在でありながらもバグのせいでレプリスとしては欠陥品である、人間ともレプリスともつかない存在が「彼女」です。マスターの意のままにならない幼児のようなレゥ、その姿は本文中でふれた「理想の美少女像」の対極を意味するものでしょう。そしてそんなレゥを「人間」として受け入れるのか、それとも不完全な「レプリス」として否定しあくまで「理想」の方を追求するのか…この作品には両方の結末が用意されています。そしてどちらの結末がより「幸福」なのか、それは各プレーヤーの価値観の問題なのでしょう。

 以上です。色々な意味で一筋縄ではいかない作品ですので、幅広い層に受け入れられるかどうか疑問が残りますが、やればやるほど味のある作品だと思います。それでは長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 05/09/02)


・研究所の重要な研究資料にもなっている「電撃G’sマガジン」の大人気企画シスタープリンセスのゲームですよね。まいやも早く研究せねばと思いながら後回しになってしまっています…。

Sister Princess PREMIUM EEDITION
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
15 71

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 メディアワークス

 『電撃G'sマガジン』の看板企画としてもはや説明不要の感のある『シスプリ』ですが、PS版の発売から約一年の期間を経てこの春DC版として再登場することとなりました。この『プレミアムエディション』には原点である『シスター・プリンセス』の他に昨冬発売されたばかりの『シスター・プリンセス〜ピュア・ストーリーズ〜』がカップリングされており、作品構成は同じくスタックが開発を手がけた『Piaキャロットへようこそ!!2.5』と類似しています。それぞれの作品概要を見ますと、『シスター・プリンセス』ではプレーヤーは12人の中からマイシスターをひとり選び、バレンタインデーからホワイトデーまでの一ヶ月間を通じて特定の妹(マイシスターでなくてもよい)と親密になり、最終的に一緒に暮らすことが目標となります。一方『ピュア・ストーリーズ』は「バレンタイン・ストーリー」と「クリスマス・ストーリー」という二つのモードで構成されています。「バレンタイン・ストーリー」は『シスター・プリンセス』でのプロセスを妹と共に回想するモードで、実質的には妹の視点で過去のイベントを追体験するモードであるといって差し支えないでしょう。また「クリスマス・ストーリー」は本編のアフターストーリーにあたり、妹たちとクリスマスパーティーを過ごすというひとつのイベントに限定されたエピソードで内容としては非常に短いものになっています。なお『シスター・プリンセス』と『ピュア・ストーリーズ』はタイトル画面を共用していますが、それぞれ独立してプレイできますので、単一の作品としての色合いは薄くなっています。
 それではシステム面を見ていくことにしましょう。『ピュア・ストーリーズ』に関しましては本編の付録という性質が強く、先ほどの概要紹介の他に新たに付け加えるべき点もありませんので、ここでは『シスター・プリンセス』に限って話を進めていくことにいたします。周知のようにこの作品には12人の妹が登場するわけですが、作品の大きな特徴として全ての妹が別々の家庭に引き取られており、誰ひとりとして主人公とは同居していないということがあげられます。大勢の妹に囲まれた賑やかな日常を楽しむというアニメ版とは異なり、ゲーム版では特定の妹に対象を絞ったコミュニケーションに重点が置かれていて、より明確にプレーヤーをただひとりの「マイシスター」に没入させることが意図された作品構成となっています。具体的なゲームの進行プロセスを見ますと、平日は任意の妹との登下校と一回のマップ移動、夜のメールチェックという四つの要素、休日は二回のマップ移動と夜のメールチェックという三つの要素で一日が構成されており、ゲームの進行状況に応じて宿泊やデートといった作品進行上において鍵となるイベントが発生します。そして最終的には特定の妹との同居という結末が用意されていますが、エンディングには二通りあり、「妹」が主人公とは血の繋がっていない義理の妹だったということが発覚する「非血縁エンディング」と実の兄妹だったことになる「血縁エンディング」に分岐することになります。このエンディングの分岐はゲーム中の選択肢によって増減する血縁度というパラメータによって決定され、プレーヤーの意志によって妹との関係が変化するという他に類を見ないシステムといえます。一見強引極まりないシステムではありますが、「妹」という属性のあいまいさと微妙なニーズに対応するための苦肉の策ということなのでしょう。操作系統およびコンフィグ面に関してはオーソドックスなものですので特筆すべきことはありませんが、二つの作品のセーブデータが共有されておらずセーブ容量を大量に消費しなければならないという点は『Piaキャロットへようこそ!!2.5』から改良されておらず、カップリングソフトとしての作品構成には相変わらず課題が残されています。
 続いてキャラターについて。『シスター・プリンセス』という企画がこれほどの人気を博した最大の要因はやはりその巧妙なキャラクター造形にあるといえるでしょう。「妹」という美少女ゲーム特有の属性に着目し、その特性を徹底的に突き詰めた姿勢には感服させられます。12人という多人数の単一属性キャラを用意するにあたり、性格や外見を描き分けることで幅広いユーザーのニーズに応える一方、根本的なキャラクターの性質は全員共通させることで「妹」という属性の持つ魅力が巧みに引き出されています。作品の最初から最後まで兄(プレーヤー)に対して盲目的ともいえる従順さで接し、身も心も捧げきっている「妹」…それぞのキャラによって表面上の差異はあれど『シスター・プリンセス』において描かれている「妹」像というものは実質ひとつしかないとっていいでしょう。その人物造形は「人間」としてはおよそあり得ない極めて偏ったものですが、「妹」という属性に対してユーザーが持つ願望や欲求を最大限に満たすものです。ゲームキャラクターとしての「妹」像を把握し描ききっているという点においてはやはりこの作品は卓越しているといえます。
 ストーリー面に移ります。何といっても『シスター・プリンセス』はキャラ最優先の作品ですので、そのストーリー性は非常に希薄です。個々のイベントの間に関連性はほとんどなく、全編妹との交流場面といういわば断片の羅列であるといっても過言ではありません。もちろんキャラクターによって多少の差異はありますが、作品展開はほぼ共通しているため複数のキャラクターのシナリオを追う楽しみはさほどありません。また各キャラの年齢や別居に至った契機、現在の家族構成などといった基本的設定が全くといっていいほど無視されており、作中の選択肢によって主人公と妹との間柄が決まるという前代未聞のシステムをとっているため、その作品世界は書き割りのようにあいまいで、物語としての説得力がほとんどありません。ユーザーの欲求を満たすための強引な設定を成り立たせるためとはいえ、ここまでストーリー性を意図的に放棄した作品は近年では珍しいといえます。シナリオは強力なキャラクターを引き立たせる背景でしかないという創作姿勢には完全には同意しかねますが、この作品においてはそれが最良の選択だったのでしょう。
 さて、「妹」という空想美少女世界特有の属性の集大成ともいうべき『シスター・プリンセス』ですが、その「妹」像についてもう少しつけ加えさせていただくことにしましょう。かつては「妹」という属性には恋愛対象としての意味合いが強かったものです。主人公とは血が繋がっていないにも関わらず、妹のように接してくる年下の少女…それが義理の妹であるか、あるいは妹のように振る舞う下級生であるかという設定上の違いはありますが、過去の作品群ではその「妹」との関係は必ずしも肯定的には扱われていませんでした。「幼なじみ」などのケースと同様に主人公と「妹」との兄妹関係は恋愛の足枷となる克服されなければならない間柄であり、「妹」、「兄妹」からの卒業こそがハッピーエンドだったわけです。それが近年になって「妹」という属性からは普通の意味での恋愛対象としての意味合いが薄れてきました。かつてはクリアしなければならない課題、通過点として扱われてきた兄妹関係が次第に永続させることが望ましい理想的シチュエーションとして肯定的に捉えられ始めたのです。そしてそれは従来のような恋人関係へと変化するまでの仮の関係という扱いに飽き足らず、いつまでも「妹」と兄妹関係を続けていたいというユーザーの欲求が高まってきたことによるものでしょう。恋人へと変化することを望まれない「妹」…美少女ゲームにおける兄妹関係観の変容が生み出したこの新しい妹像が単なる流行以上のものなのかどうかはまだ判断できませんが、ゲーム世界というユーザーの願望が直接的に反映される世界特有の「ファンタジー」であることは疑いようがありません。そしてその幻想が「永遠」であることが約束されている世界として『シスター・プリンセス』という作品はまさしく「夢のゲーム」なのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りマイシスター

鈴凛

 雑誌などを見る限り、どうも人気という点において鈴凛は振るわないようです。ぽっちゃりした外見、ちゃっかりした性格、おまけにメカマニア…確かに一般受けしないのも何となく解るような気がします。ですが私は「女の子らしさ」が強調された他の多くの妹たちよりも鈴凛の方に親しみを覚えました。鈴凛といえば「アニキ」に対して「資金援助」と称しておこづかいをせびりに来る姿が真っ先に思い起こされますが、この厚かましさこそ他の妹には欠けている資質であると同時に鈴凛の魅力だといえるではないでしょうか。他の多くの妹の場合、兄に対して何か自分の欲求をストレートに伝えることはあまりなくいつも兄に対して尽くすことの方が優先されています。そういった「献身的な妹」との兄妹関係も魅力的(理想的)ではあるのでしょうが、いい意味でお互い利用できるところは利用する、欲しいものは欲しいと気兼ねなくいえる兄妹関係の方がより健全なのではないでしょうか。普段が現金なだけにラスト直前での健気さがより一層引き立つというものです。それにしてもあの「水着姿」は何とかならなかったのでしょうか…。確かに彼女らしいといえばらしいのですけど…。

 以上です。色々と書きましたが、企画ものとしてのインパクト、存在感は群を抜いているということは疑いようがありません。あとはそれぞれが強引極まる設定と展開さえ素直に受け入れられるかどうか…。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 04/28/02)


・まいや、みずいろ(PC)のレポートに引き続いてラボー教授のDC版レポートいただきました。おおむねまいやの感想と同じようで安心いたしました。PC版とDC版の違いが良くわかります。

みずいろ
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
15 73

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 このDC版『みずいろ』は、近年人気急上昇中のソフトハウス、ねこねこソフトの作品としては家庭用初登場作品となります。オリジナルであるPC版については既に所長が詳細なレポートを書かれていますので、作品の基本設定やアウトラインについてはそちらをご覧ください。ここでは主にDC版の特色について書かせていただくこととします。
 今回のDC版の最大のポイントは2本の新シナリオの追加でしょう。従来の5本のシナリオに加え、新キャラクターの冬佳シナリオとオリジナルとは別個の新しい日和シナリオが追加されています。家庭用に移植されるにあたって新キャラや新シナリオが追加されることはよくありますが、この作品のように一本一本のシナリオにボリュームがある作品に従来のシナリオと遜色ないボリュームのシナリオが追加されることは珍しいのではないでしょうか。全年齢化にあたっての作品の見直しが不十分な作品が多い中、作品全体のバランスまで考慮して追加、変更がなされている今回のケースは評価できます。一方おまけの方は残念ながらパワーダウンしているようです。DC版のおまけは探偵片瀬健三郎が2本と後日談ともいうべき「みずいろ」というエピソードの合計3本のショートシナリオだけで、そちらの方のアフターストーリーは当然ながらありません。あとキャストがPC版とは名前が異なっていますが、これは全年齢化にあたって「声が同じ別人を起用した」とのことです。ここら辺はいわゆる「大人の事情」ということなのでしょう(笑)。システム面ではインターチャネル作品の中では異色ともいえる操作設定で、今回の移植に携わったヒューネックスの特色が出ていますが、メッセージ送りの際にオート、全文スキップ、既読スキップという三つのモードの切り替えがスムースに行えるように工夫されており、やや扱いづらい感のあった『エンジェルプレゼント』や『カナリア』の頃よりは格段に洗練されたシステムとなっています。
 キャラクターについて見ていきましょう。『みずいろ』のキャラクター造形の特色としてあげられるのは何といっても属性という要素を重要視していることでしょう。属性と一口にいっても色々ありますが、この作品の場合はそれぞれのヒロインに義理の妹や幼なじみ、ケンカ友達、気になる先輩、後輩などといったヒロインと主人公との間柄の設定としての属性と健気で家庭的、ドジでぽんこつ、喧嘩早いけど不器用、内向的で天然系、恥ずかしがり屋でいじらしいなどといった性格面での属性という二つの方向の異なる属性が与えられています。性質の異なる属性を複合させることでキャラクターとしてのインパクトを強化する…新たな属性を開拓すべく奇をてらったキャラクターづくりを目指す作品が多い中、あえて使い古された感のあるオーソドックスな属性を重ね合わせた『みずいろ』のキャラクターづくりはかえって新鮮に映ります。
 ストーリーに移ります。『みずいろ』のシナリオ構成で目を引くのは、やはり徹底的な共用ルートの短縮化というポイントです。各ヒロインの専用ルートへの分岐が「過去パート」というプロローグ部分で行われ、ゲーム本編は完全に各キャラ別個の展開になるというこの作品の構成はノベル形式のADVとしては珍しいものです。作品全体の基幹となるべきメインプロットを用意せず、等価値(異論はあるでしょうが)のシナリオを並列させるという『みずいろ』の作品構成は、物語性よりもキャラクターを重んずる姿勢から生じたものでしょう。属性で固めたヒロインをいかに見せるか、いい換えればプレーヤーをいかに萌えさせるかという観点から作られたストーリー…それが『みずいろ』のストーリーだといえます。ストーリー面の概観はこれくらいにして、次にDC版の追加シナリオについて少しふれておきましょう。前述したようにDC版の新シナリオは2本あり、新ヒロインが登場するシナリオと既存のヒロインの別設定シナリオという性格の異なるシナリオの組み合わせとなっています。それぞれのシナリオを見ていきますと、新ヒロイン冬佳のシナリオは、理論家で人との関わり合いに対して冷めた態度を取る女性、冬佳が主人公の家庭教師を務めるというストーリーで、冬佳と主人公の双方が相手に影響し合うことで成長するという展開を見せます。しかしながらいい加減な性格の主人公とストイックな冬佳ではいかんせんカップルとしては無理があります。冬佳に感化され勉強に身を入れる主人公の姿には違和感がありますし、冬佳がなぜ主人公に惹かれるのか、また過去の体験をどう克服していくのかといったヒロイン側の恋愛のプロセスが不明瞭なので、シナリオとしての完成度は従来のシナリオよりも見劣りしてしまいます。冬佳編の問題は石川冬佳という『みずいろ』という作品のカラーから外れた設定のヒロインを登場させたことに尽きるのではないでしょうか。一方の新日和シナリオは日和が家族との引っ越しを拒否し、主人公や雪希と同居しているというとんでもない設定で、ある意味『みずいろ』という作品の集大成ともいえるシナリオとなっています。詳しいことは後の項目に譲りますが、強引な設定を巧みに処理しつつも作品のテーマをきっちり再現してみせているという完成度の高いシナリオで、日和というキャラクターの魅力が存分に引き出されています。非日常的傾向が強く作品の中では異質だった旧シナリオとは違い、新シナリオはヒロインとの日常を描くことに終始するという他のシナリオの姿勢を踏襲していますので、従来のシナリオと並べても違和感がありません。新シナリオについてまとめますと、新シナリオによって新たなヒロインを『みずいろ』という作品世界に追加しようとする試みは成功したとはいい難いのですが、新シナリオによって従来のヒロインの魅力を強化しようという意図は達成されており、移植にあたっての追加要素としては充分評価できるといっていいでしょう。
 最後になりますが、この作品のキャッチフレーズである「普通」ということについて考えてみましょう。『みずいろ』という作品世界を構成しているのは「お約束」ともいえる設定の数々です。学園生活という舞台設定、「妹」や幼なじみ、先輩や後輩に囲まれた主人公の境遇、オーソドックスな属性で固めたヒロイン造形、先が容易に読めるシナリオ展開…『みずいろ』に見られるこれらの要素は美少女ゲームの設定としては典型的でもはや使い古された設定だといっても過言ではないでしょう。しかしながら近年美少女ゲームが乱造されるに従い、これらの古典的なお約束は敬遠されるようになりました。いかに奇抜な設定を考案し他の作品との差別化を図るか…最近の美少女ゲームはどのように昔ながらのお約束から脱却するかという回答を終始模索しているように見受けられます。そういった傾向が従来の作品とは一線を画する良作を生み出す原動力となったことも確かですが、昔ながらの美少女ゲームに愛着を持つプレーヤーにとって素直に楽しむことのできない作品が増えた要因であることも否定できません。そしてそのような「普通でない」作品がトレンドとなりつつある現状に飽き足らないユーザーの求めるもの…昔ながらのお約束の復活というニーズに応えて登場したのがこの『みずいろ』という作品なのではないでしょうか。『みずいろ』で追求されている「普通であること」とは古典的美少女ゲームならではのお約束で形作られた作品世界を忠実に再現することに他なりません。そしてその保守的な作風が熱狂的な歓迎をもって迎えられたということは、年々多様化する美少女ゲームにおいて影が薄くなりつつあった「普通であること」という様式を懐かしむユーザーの欲求がいかに切実なものであったかということを示しているのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

早坂 日和

 この作品のメインヒロインは誰か…作品構成を見ますとやはり日和ということになるのでしょうが、パッケージイラストなど目立つところでは雪希が大きく扱われており、メーカーとしては雪希を前面に出していきたいのでしょう。確かに雪希は人気がありますし、所長もおすすめに挙げておられますが、天の邪鬼な私がそれに追随するわけはありません。というわけで今回は不遇のメインヒロイン、日和にスポットライトを当てることにいたしましょう。PCオリジナルルートの日和については今更ふれる必要はありませんので、ここではDCルートに登場する新バージョンの日和について紹介していくこととします。雪希に押されっぱなしだった状況を打開すべく新バージョンの日和は旧バージョンよりも数段パワーアップしています。「ポンコツ幼ななじみ」という従来の性質はそのままに、家事全般をこなす家庭的「妹」という顔、主人公と同居し絶えずべったりくっついているという「新婚さん」の顔という二つの性質が追加されており、「幼ななじみ」、「妹」、「新婚さん」という三つの属性を兼ね備える最強キャラとなっています。この新日和ルートでは雪希は家事のできない兄離れの進んだ妹として登場するため、従来ルートのような存在感がほとんどありません。主人公のことを「お兄ちゃん」と呼び、毎朝起こしてくれて弁当も作ってくれる新バージョンの日和との甘い同居生活が描かれた追加シナリオは自分こそが『みずいろ』のメインヒロインであるという日和のささやかな自己主張でもあるのです。

 以上です。やはりDC版の目玉は日和新バージョンにつきるでしょう。シナリオの完成度も高いものがありますし、複数の属性を兼ね備えた強力なキャラクターとなっています。もちろん旧バージョンも健在ですので、ポンコツファンにとってはこのDC版は堪えられない仕様なのではないでしょうか。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 04/13/02)


・悪の総統シミュレーションですか?。なんともすごいジャンルですね。まいやはまったくノーマークの作品でして、興味もって読ませていただきます。

ウィークネスヒーロー トラウマンDC
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
16 70

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 悪の総統シミュレーション 発売元 フォーティファイブ

 この作品は昨年PC版として発売され、一部でカルト的人気を博した『ウィークネスヒーロー トラウマン』の移植版にあたります。「悪の総統シミュレーション」なる奇妙な肩書きを与えられ、往年の特撮番組を思わせる設定と展開を見せるこの異色作を今回は紹介させていただくことにしましょう。それでは作品の基本設定から始めます。正義のヒーロー「ミラクルサイボーグ99」との決戦の末壊滅した悪の秘密結社「ブラックフェロモン」総統の遺児「四尾征志」が作品の主人公となります。彼はブラックフェロモンの残党を集めて新たに「ダークフェロモン」を結成し、父の遺志を継いで日本征服を目指すことになります。しかしながら研究中であった生物兵器「イクスィード」が彼の管理下から離れ、新たな正義のヒロイン「トラウマン」として行く手に立ちふさがることになります。トラウマンの正体が自分の通う学園の生徒であることを知った征志は、その弱点を探るべく彼女たちに接触するのですが…。
 システム面についてふれておきましょう。『トラウマン』の最大の特徴は何といっても主人公が悪の総統であるというところにあります。そして正義の味方との戦いに勝利して、日本全土を制圧するというヒーローものでは起こり得ない状況を実現させることが、この作品における目的になります。作品構成を見ますと、『トラウマン』は『サクラ大戦』のようにパターン化された一話完結型のエピソードの積み重ねから成っており、強く特撮番組の構成を意識した作りとなっています。各エピソードでプレーヤーが行うことは、学園内にいるトラウマンの少女たちと接触して、親交を深めたり、苦手なものを聞き出すという「諜報活動」、幹部を派遣し、諜報活動で聞き出したアイテムを調達させる「幹部出撃」、入手したアイテムを合成して怪人を作成する「ミックスマン作成」、幹部と怪人に指示を与えトラウマンと対決させる「バトル」、そしてトラウマンに勝利した後の「イクスィード探索」ということになりますが、その中でも重要なのが、「ミックスマン」の作成と「バトル」という要素です。『トラウマン』というタイトルの通り、正義の味方の苦手なものを利用して勝利を収めるというのが作品の主旨でもありますし、いかに苦手なものを多く揃えられるかどうかで、ゲームの難易度は大きく変わってきます。「ミックスマン」は右手(食物)頭(生物)左手(道具)という3つのアイテムを組み合わせることで作り出すことができるのですが、この組み合わせによってトラウマンの強さは極端なほど変化します。苦手なアイテムが多い場合トラウマンはガードや弱攻撃など消極的な戦い方に終始し、こちらが圧倒的優位に立てるのに対し、好きなアイテムが多い場合はほとんどダメージを与えることができないうちに、強攻撃と必殺技で瞬殺されてしまいます。バトルの勝敗は後の展開に大きく影響しますので、各トラウマンの好きなものと苦手なものはしっかりと把握しておいた方が良いでしょう。なお全キャラのエンディングを見た後に発動する「アイテムモード」ではいくら苦手なものであっても同一の組み合わせであれば二度目以降は通用しないので、どの組み合わせが使用済みなのかという点もチェックしないといけません。(特訓によってトラウマを克服したということらしいです)システム面を総轄しますと、一回のプレイに費やされる時間が短く、プレーヤーがゲーム中行えることが限定されていると同時にパターン化されているので、気軽に作品に馴染むことができる反面、どうしても単調な作業に陥りがちになることは否めません。特にこの作品は何度もクリアすることを前提として作られているため、外見的な手軽さにも関わらずプレーヤーに与える疲労感は想像以上に大きなものになっています。
 キャラクター面に移ります。往年の特撮ものを思わせる設定にも関わらず、トラウマンのメンバーは全員女性です。そして戦隊シリーズのようにメンバーが色分けされているのですが、その役割も微妙に戦隊シリーズとは違っています。地味で内向的な紀色、真面目で成績優秀な葵、脳天気で体力派のアケーナ、そして無邪気で幼さの抜けない緑と、各キャラクターの設定は色から連想される固定的イメージとは多少ずれています。またトラウマンは一人で戦うことが基本なので、団体行動が条件である戦隊シリーズよりは各キャラクターの個性がより明確に描き分けられています。日本制服を謳ってはいますが、この作品にはトラウマンたちとの恋愛要素もありますので、各ヒロインごとの個性づけと描き分けという恋愛ゲームにおける基本的事項はこの作品でも考慮されているということなのでしょう。サブキャラクターに目を転じますと、ダークフェロモンの四天王と電脳三姉妹、トラウマンを支援する謎の体育教師など役割だけ見れば特撮ものそのままの顔ぶれですが、個々の性格はよりエキセントリックで強烈なものとなっています。無類の美少年好きであるモーニング・グローリーや周囲の人間に筋肉を鍛えあげることを強要するダンディライオンに代表されるように彼らの言動は滅茶苦茶で、任務に対してどこまで真剣なのか掴みづらいものがあります。このある意味「壊れた」キャラクターたちが日本制服や正義と悪との戦いという古風でストイックな物語を演じようとすることで生まれる違和感が『トラウマン』の魅力でもあります。
 次はストーリーについて。既にふれましたように、この作品は一話完結のエピソードの集まりで構成されています。各話ともオープニング主題歌から始まり、作戦の立案、諜報活動とアイテム収集、幹部の出撃とミックスマンの作成、トラウマンとの対決、そして次回予告というように見事なまでにパターン化されており、ゲームというよりは特撮番組を見ているようです。ただ悪の秘密結社サイドの視点で描かれていることと、敵であるはずのトラウマンとの恋愛要素があることがこの作品を一般的な特撮番組とは異なるものにしています。特にトラウマンとの恋愛要素はこの作品の立場を極めてあいまいにしているといってよいでしょう。正義の味方と悪の手先とのロマンス自体はそれほど珍しいものではないのですが、この作品で問題なのは、その結末を保留したままエンディングを迎えてしまうことです。そもそも日本制服と正義のヒロインとの恋愛という相反する目的を両立させようとすること自体に無理がありますが、この作品の場合、主人公とトラウマンの戦いの決着もつかず、おまけにトラウマンに主人公の正体は知られることなく両者の恋愛関係は煮えきらないまま終わってしまいます。確かにこの展開に結末を用意することは難しいのですが、これが実際の番組ならそのような中途半端な結末はまずあり得ません。一方が組織を裏切って恋愛を成就させるなり、両者の対決によって悲劇的結末を迎えるなり、どちらかの目的の挫折という形で結末が用意されているはずです。悪の総統として日本制服を目指すという設定を前提にしつつ同時に恋愛ゲームであろうとする欲張りな姿勢を貫こうとする限り、必ずどこかで矛盾を生じすにはいられません。その矛盾を避けたことはゲームとしては賢明な判断だったのかも知れませんが、「物語」としては手放しで誉められるものではありません。
 最後になりますが、この作品と特撮番組の関係についてもう少し書かせていただくことにしましょう。『トラウマン』が往年の特撮番組を意識して作られていることは明白ですが、両者の作風は完全に重なっているというわけでもありません。そしてその違いはこれまで述べてきたような主人公の設定や正義のヒロインとの関係や登場人物の性格づけというはっきりしたポイントよりもより根源的なところから生じているようです。かつての特撮番組は暗くシリアスで必要以上に恐怖感を追求したものでした。もちろん「大人」の観点からするとその内容は荒唐無稽かつ滑稽なものなのですが、少なくとも大真面目に作られており、決して「笑い」を追求したものではありませんでした。しかしながら時代が変わるにつれ、そういう往年の特撮番組の作風を斜めに構えて受け取る風潮が出てきました。過去の作品が真面目に描いてきたものを「笑い」の対象として捕らえる姿勢…いい換えればパロディ精神によって作られた作品が出現し始めたのです。そしてこの『トラウマン』という作品もまたパロディ精神によって生み出されたものといえます。『トラウマン』には過去の番組のような恐怖感やシリアスさは決定的に欠如しています。日本征服やトラウマン打倒を目指して実行される作戦はどうしようもないくらい馬鹿馬鹿しく、「悪事」というにはあまりに人畜無害で微笑ましいものです。それはあたかも往年の特撮ドラマの本義であったはずの真面目さを徹底的にそぎ落とし、斜めから見ることでしか得られない「笑い」という要素のみを強調しているかのように映ります。本来は副産物であるはずの「笑い」を表現するためのシチュエーション…もはや現代人にとって往年の特撮のエッセンスとはそういう歪められた形でしか受け入れることができないものなのかも知れません。

−おすすめキャラ−

ラボー教授のお気に入りキャラ

マーガリット(電脳三姉妹)

 本来ならトラウマンのメンバーの中からとり上げなければいけないのでしょうが、いまひとつ惹かれるキャラがいませんので、今回はサブキャラから採用することにいたします。電脳三姉妹はブラックフェロモンに属し、普段は主人公やトラウマンが通う学園の中等部の生徒として情報収集を担当する平均IQ192の天才少女たちです。三姉妹の内訳は真面目で責任感の強い長女リリー、気まぐれで無責任な次女プリムラ、ぼーっとしていて捕らえどころのない三女マーガリットという構成です。三姉妹それぞれが個性的で存在感もありますが、今回はその中から三女のマーガリットをピックアップすることにいたしましょう。マーガリットはいわゆる「天然系」に分類されるキャラになります。いつも眠そうでぼけーっとしていますし、その言動もピントがずれていて、あまり日本征服の助けにはなっていないというのが実際のところでしょう。このように悪の組織のメンバーとしてはおよそ適していないマーガリットが違和感なく作品世界にフィットしているところにこの作品の良い意味でのいい加減さというか懐の深さが表れているのではないでしょうか。まぁそれはそれとして豆乳を飲んでいる姿が何とも可愛いです。

 以上です。プレーヤーが往年の特撮番組に愛着を持っていないと、この作品を楽しむことは難しいかも知れません。その点で一般へのお勧め度は低くなってしまうのはやむを得ないところでしょう。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 03/31/02)


・電撃G’sマガジンの企画ものですよね。シスタープリンセスの陰に隠れたようになったのは仕方なかったとして、いまいち盛り上がりに欠けた企画になってしまっていたような…。それだけシスプリの人気がすさまじいということなのかな。

Milky Season
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
16 68

対応機種 プレイステーション ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 キッド 

 この作品は『電撃G'sマガジン』の雑誌企画から派生したいわゆる「企画もの」に分類されるもので、『シスタープリンセス』や『ハッピーレッスン』などの系譜に連なるものです。オリジナル作品には定評あるキッドが雑誌企画をどう処理するかが注目されるところでしたが、果たしてその結果はどうなったのか…今回はそこに焦点を当ててみましょう。それではまずは作品の概要から。新社会人としてのスタートを切ったばかりの主人公が「早乙女女子大学」付属の小、中、高校生が利用する2つの女子寮、「つぼみ寮」と「めばえ寮」の管理人として赴任するところからこのゲームは始まります。突然の男性管理人の登場に戸惑う寮生たちでしたが、特異な環境に戸惑いつつも奮闘する管理人に対して次第に打ち解けていくようになります。そして作中では主に日々の生活におけるイベントやハプニングを通じての管理人と寮生との交流が描かれることになります。
 システム面を見てみましょう。テキスト主体の選択肢によって分岐するADVという外見から分類すると『ミルキィ・シーズン』はキッド得意のノベル型ADVということになりますが、その構成は他の作品とは大きく異なります。通常のケースでは一日という単位が基本となり、一日一日を連続して積み重ねていくことによって作品が構成されていますが、この作品では一ヶ月という単位が基本で、4月から2月までの11ヶ月(11章)がゲーム期間となります。また通常のノベルADVでは一貫したストーリーの流れを追っていくという構成をとっているのに対して、この作品ではそれぞれの月に起こるイベント間の関連性はほとんどなく、作品全体の構成としては一話完結のエピソードを集めたオムニバス形式に近いものがあります。ストーリーらしいストーリーを持たないという点で『ミルキィ・シーズン』はノベルADVとしてはかなり異色な作品であるといえるでしょう。プレイ環境としましては既におなじみのショートカットやクイックセーブ、ロード、オートあるいはスキップ時におけるメッセージの既読、未読の区別、シーンタイトルやエンディングのチェックリストなど過剰なまでにユーザーライクな機能が満載されていますので全く申し分ありません。またDC版には「おまけ」として過去作品のキーファイルやアペンドシナリオが収録されていますので、ネット接続できないユーザーには嬉しいところでしょう。
 次はキャラクターについて。『ミルキィ・シーズン』に登場する女子寮の住人はお約束通り12人という人数になっています。そしてその内訳は小学生が4人、中学生と高校生が3人づつ、ハウスメイドと看護婦という社会人が2人という構成です。「妹」や「ママ」など単一の属性で固めた他の企画ものとは異なり、この作品のヒロインたちには寮の住人であるということしか共通点がありません。そのためインパクトやアピール度では劣りますが、他の企画作品のような不自然さはかなり軽減されています。キャラクター造形としては、オーソドックスなキャラとエキセントリックなキャラとの差が激しく、ヒロイン全体の統一感がやや薄くなっています。12人ものヒロインの個性を描き分けるのは大変ですが、ゲームキャラとして無理に特徴づけようとするあまり、一部のヒロインの言動が浮いてしまっている感があります。この辺りはメインヒロインを持たない多人数ヒロイン平等型の作品の難しいところではありますが、もう少し全体のバランスを配慮しても良かったのではないでしょうか。あとヒロイン以外で特筆すべきポイントとしては主人公の造形でしょう。社会人という比較的高年齢の設定のせいか、主人公の言動には余裕や落ち着きがあり、寮生に対しても大人びた対応をします。また仕事熱心で、女子寮管理人という職業から連想される不埒な願望とも無縁です。このような成熟した主人公像は珍しいので非常に新鮮ですが、一般的な主人公像に慣れたプレーヤーにとっては感情移入しにくいかもしれません。
 ストーリーに移ります。システムの項目でふれたように、『ミルキィ・シーズン』にはストーリーらしいストーリーはありません。またキャラごとの個別ルートの割合は非常に少なく、作品のほとんどが共通ルートとなっています。もちろんキャラごとのエンディングは用意されているのですが、小学生4人は共通、他の8人の場合も2月にチョコレートをくれるだけで、特に主人公と恋愛関係になるわけではありません。主人公の設定上、どうしても保護者的立場で寮生たちを見ざるを得ないので、純粋な恋愛要素や色気ある展開には乏しいものがあります。そのため特定の寮生との恋愛関係を築いていく作品というよりは寮生全員の面倒を見ながら交流を深めていくことを目的とした作品であるといっていいでしょう。運動会やプール開き、初詣などの折々の季節行事と何気ない日常生活の中で起こるハプニングを通じて寮生たちが精神的に成長していく様子を我が子が成長するのを見守るような心境で見守っていくというのが、この作品のプレイ感覚ではないでしょうか。この「色気」のなさに欲求不満を持つか、それとも一歩引いた立場から微笑ましく見守ることができるか…いい換えればプレーヤーが女子寮管理人という立場とシチュエーションを「大人」として受け入れられるかどうかで、この作品の構成に対する評価は大きく違ってくることでしょう。
 これまで見てきましたように、『ミルキィ・シーズン』という作品はその特異な成り立ちにも関わらず、その実像は意外なほどに無難で「らしく」ありません。従来のキッド作品のような濃密なストーリー性があるわけでもなく、企画ものとしてのインパクトもいまひとつ弱く、また「色気」にも乏しい…この作品のいかにも一癖ありそうな外見に反したあまりにも「大人しい」内容に対して多くのユーザーが抱いた率直な印象は「戸惑い」だったのではないでしょうか。キッドというブランドに惹かれた人、雑誌企画のファンだった人、作品のシチュエーションに期待した人…ユーザーの購入動機は様々でしょうが、外見から連想される内容と実際の内容とのギャップ、購入前の予想との食い違いに順応できないプレーヤーにとっては、この作品は受け入れ難いものであるかもしれません。色々な意味での「らしくなさ」で形作られたこの作品世界を楽しめるかどうか…それはプレーヤーが先入観に囚われることなく作中の主人公のように余裕ある姿勢でこの作品に接することができるかどうかという点にかかってくるのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入り寮生

千浦 真林

 今回この項目で誰をとり上げるか…候補としては沙織、ちはや、真林、真白辺りが思い浮かびましたが、これまであまりとり上げてこなかったタイプのキャラということで真林に決定です。帰国子女という設定の真林は日本の習慣に疎く、食べることと昼寝が大好きというどこまでもマイペースで天然系の女の子です。この作品には真林の他にも大勢天然系のキャラが登場しますが、彼女には他のキャラにはない不思議な「華」があります。帰国子女という設定のせいか、アイドルとしてスカウトされるというイベントのせいか、それともその絶妙のぼけ加減のせいか…それは今でもよく解りませんが、真林はこの種のキャラにありがちな欝陶しさを感じさせない、独特の魅力を持ったキャラなのではないでしょうか。

 以上です。良くも悪くも「毒気」のない作品ですので、どう対応してよいのか戸惑うことでしょうが、その「毒気」のなさを楽しめる向きにはお勧めできる作品ではないかと。それではどうも長文失礼いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 03/10/02)


・まいやの研究所ではおなじみのフォグの作品ですな。しかし今回のラボー教授のレポートは少々厳しい評価となっているようです。連作ですので次回作に期待といった所でしょうか。

MISSING PARTS the TANTEI stories
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
15 69

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 FOG

 『みちのく秘湯恋物語』や『久遠の絆』、『風雨来記』など寡作ながらも個性的な作品をリリースしてきたフォグの最新作にあたるのがこの『ミッシングパーツ』です。DCのオリジナルタイトルであることと3部作計6話(予定)という連作タイトルであることが話題となったこの作品を今回は紹介させていただきます。それではまずは作品のアウトラインから。探偵に憧れる主人公「真神恭介」は「鳴海探偵事務所」に念願の就職を果たしますが、そこは所長は失踪中、所長代理は探偵稼業には全くの素人というとんでもない環境で、新入りの恭介が実質の業務を担当しなければならないという状況にありました。地味な依頼の解決に明け暮れる日々でしたが、ふとしたことから彼は「セクンドゥム」というアンティークショップの手伝いをさせられることになります。そして「セクンドゥム」からの帰り道、恭介は少女が覆面の男に襲われている現場に遭遇します。恭介の介入で男は逃亡しますが、単なる物取りと思われたその事件はやがて思いもかけない形で彼に関わってくることになります。
 システム周りについて見ていきましょう。『ミッシングパーツ』は独立した2つのシナリオから成る2話構成のADVです。一応時間的な前後関係はありますので、プレイできる順序は固定されていますが、2つのシナリオ間の関連は薄く、それぞれ独立した事件を2つ組み合わせた作品構成であるといっていいでしょう。ゲーム本体の進行手順としては、移動、話す、聞くなどといったコマンドを選択し、フラグを立てることでシナリオを進めるという、古典的なADVによく見られる方式が採用されています。選択肢によって多少の展開の違いがあったり、クリア時のランク評価が変化したりと、ある程度の自由度はありますが、基本的には用意された一本道の物語をなぞっていくだけというゲーム展開となります。そのため推理要素は希薄で、プレーヤーは自らも推理を行う主人公の分身というよりは、ゲームの流れを追いかけるだけの傍観者に近い役割だといえるでしょう。プレーヤーが事件の真相を見破っていようがいまいが、正しい選択さえしていれば自動的に事件が解決してしまうので、プレーヤーには探偵としての判断力はほとんど必要なく、プレーヤーと主人公との一体感には乏しいものがあります。このように推理ADVというよりはノベル形式ADVとしての色彩が濃い本作品ですが、コマンド選択や虫眼鏡による現場検証といった要素が煩わしく、純粋にストーリーを追いかけるにはややストレスが溜まります。結果としてこの作品は推理要素をどう作品にとり入れるかという点があいまいなため、推理ADVとしては物足りなく、ノベルADVとしては煩雑すぎるというADVとしてはどちらつかずの内容になってしまったといわざるを得ないでしょう。
 次はキャラクターについてです。連作という性質上、『ミッシングパーツ』のキャラクターは毎回継続して登場するレギューラーメンバーと各エピソードにのみ登場するゲストキャラクターの2タイプのキャラクターに分類されます。前者としては主人公の恭介の他に主な顔ぶれとして鳴海探偵事務所の所長代理の京香、セクンドゥムの店主成美、捜査課の刑事コンビである氷室と森川、成美の師匠の元骨董屋の老人久蔵とその使い走りの居候哲平などがあげられます。彼らの過去や因縁などについては第一作目ということもあり、思わせぶりな材料をちらつかせるだけで肝心の部分は謎のまま終了してしまうので、その辺は次回以降のお楽しみというところでしょうか。キャラ造形としては漫画的というか、良くも悪くも平面的なものとなっていて、テンポのよい掛け合いが楽しめる反面、シリアス味やリアリティには欠けています。ただ近年は推理漫画が流行しているという事情もありますし、造形的にはこれ位割り切った方が一般には受け入れられやすいのかもしれません。一方、後者のゲストキャラクターについては事件の依頼人兼エピソードのヒロインという役割にあたる女性キャラクターを中心にその関係者が配置されています。こちらの方も例によって「お約束」の造形なのですが、彼らの人間関係や事件の背景との関連はそれなりに考えられているので、「事件」の構成要員としての役割はクリアできているのではないでしょうか。
 ストーリーに移ります。この作品(シリーズ)が一話完結型の連作ADVであることはすでにふれましたが、この第一作に収録されているのは、有力企業グループの創始者一家にまつわる悲劇を描いた「鳴らないオルゴール」と売り出し中のアイドルユニットに関する醜聞を扱った「赤いカメオ」という2つのエピソードです。オルゴールやカメオというアンティークを各エピソードのキーアイテムとして登場させたり、それぞれのエピソード内でのヒロイン的な女性キャラを事件の中心に配置させるなど、両エピソードの外見的特徴からは相互に関連のないエピソードに共通の要素を持たせることで、シリーズを通しての統一性を確立しようという意図が見受けられます。シナリオの傾向としては、怨恨や欲望など普遍的な感情が事件の動機とされていて、トリックの奇抜さや猟奇性などといったセンセーショナルな方向に走らない、比較的地味な物語構成になっています。派手さには欠けますが、名家の内側の愛憎渦巻く人間模様や一見華やかな世界のどろどろとした内実など、ある意味非常に醜悪な人間関係のもつれを描くことに力を注いでいる点には好感が持てます。ただ人間関係や事件の背景を丁寧に扱っている反面、シナリオ展開や結末は強引で、全体としてのバランスの悪さは残ります。特に事件の解決方法や犯人の扱い方など、エピソードのラスト付近の描写は安易な感があり、物語の後味が悪くなっていることは残念です。
 これまで見てきましたように、この作品は探偵を主人公とした推理劇を題材として扱ってはいますが、プレーヤーが作品に参加しているというよりは作品を鑑賞しているという度合いが強いので、プレーヤー自らが推理し、事件を解決するという推理ADVとしては物足りなさが残ります。キャラクターの動きやカメラワークなどの演出面での工夫や、奇をてらわない事件や人間関係の設定など、作品を「物語」としていかに見せるかという方向に注意が払われている反面、システム面の煩雑さやシナリオ展開の強引さなど「物語」としての完成度を損ねる箇所もあり、全体としてはもうひとつ「物語」を作ることに徹しきれていないという印象は否めません。ゲームとしていかに「探偵物語」を表現するか…この第一作目では消化しきれていなかった課題に対して今後どのように取り組んでいくのか興味深いところです。

−おすすめキャラ−

ラボー教授のお気に入りキャラ

嘉納 潤

 『ミッシングパーツ』の登場人物にはレギュラーメンバーとゲストキャラクターの二通りあることは本文中で述べましたが、レギュラーメンバー内でヒロインの座を争う二人、京香と成美にはもう一つ惹かれるものがありませんでした。そのためこの項目では第一話「鳴らないオルゴール」のヒロインである潤をとり上げることにいたします。彼女は兄の浩司と共に訳あって有力企業グループの創始者一家である木原家で暮らしていましたが、創始者の死をきっかけに木原家内での立場がなくなっていきます。創始者亡き後の一族内での醜い争いに潤も否応なく巻き込まれ、やがて一連の惨劇が起こることになります。一話で登場する他のゲストキャラのような歪んだ内面を持った人々と比較して潤はあまりにも純真無垢なので、キャラクターとして違和感を持たれる向きもあるでしょうし、その出生の秘密や彼女に残された「遺産」の正体もいささか「お約束」が過ぎますが、「盲目の美少女」という極め付きの「お約束」の前では些細なことでしかありません。

 以上です。色々と問題点もありますが、連作ということで次回以降の改良に期待しましょう。それではどうも長文失礼いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 02/27/02)


・今回のレポートは以前に研究を終えられている作品よりお寄せいただきました。SSの作品ですのでちょっと古い作品のようですが、ラボー教授の並々ならぬ思い入れが伝わってきます。いつもにも増して気合の入ったレポートを書かれています。

AZEL−PANZER DRAGOON RPG−
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
18 75

対応機種 サターン
ジャンル RPG  発売元 セガ

 この作品はサターン初期の人気シューティングゲームである『パンツァードラグーンシリーズ』の第三作にあたり、前二作とはうって変わってRPGにジャンルが変更されています。シューティングゲームをRPG化するという試み自体が希なケースであるということもあり、この作品に対する一般的な認知度は決して高くありませんが、ある意味でRPGというジャンルの特質をこれほど体現している作品はありません。とかく異色作という扱いを受けがちな『アゼル』ですが、今回はその実像に迫ってみることにしましょう。それではまずは作品の舞台設定から始めます。本作はシリーズの年代上では『ツヴァイ』の約50年後、一作目の約30年後に位置します。「旧世紀」と呼ばれる超古代文明が衰退し、科学技術が失われた世界がこのシリーズの舞台となります。この世界では「旧世紀」に作り出された生物兵器の末裔である「攻性生物」が猛威をふるっており、人類はその影に脅えつつ暮らしています。衰退した人類の中でも旧世紀の遺跡を発掘し、そのテクノロジーを手に入れた者がいました。彼らは「シーカー」と呼ばれ攻性生物の撃退と人類の復権を目標とすることとなりましたが、「シーカー」の内部にそのテクノロジーを民衆の支配のために用いようとする一派が現れ、いわゆる「帝国」を築きます。この帝国の最盛期が『アゼル』の時代背景となります。『アゼル』の物語は帝国が管理する旧世紀の遺跡の発掘所から始まります。ある日そこで発掘された石版にはまった謎の少女「アゼル」を帝国軍の指揮官クレイメン率いる部隊が反乱を起こし、強奪するという事件が発生します。発掘所の警備を担当していた傭兵のエッジ(本作の主人公)はクレイメン部隊によって仲間を殺されたあげく、自らも遺跡の奥深くで危機に陥ってしまいます。そのエッジの命を救ったのは伝説と化していた「ドラゴン」と呼ばれる攻性生物でした。ドラゴンによって乗り手として選ばれたエッジはクレイメンを追って、やがては世界そのものの運命を変えることとなる旅へと出発することになります。
 システム面について見ていきましょう。元来シューティングである本シリーズですが、『アゼル』にはシューティング要素はなく純粋なRPGとなっています。ただ通常のRPGに見られるようなフィールド移動の要素はなく、マップ画面で移動先を選択して任意のフィールドに入るというADV的な移動方式が採用されています。このフィールドはエッジを操作して会話やアイテム入手を行う町やキャラバンという歩行移動パートとドラゴンに乗って移動する渓谷や砂漠、遺跡といった前二作を連想させる飛行移動パートに分類され、両方とも3Dマップで構成されています。作品のメインとなるのはもちろん飛行移動パートの方で、通常のRPGにおけるダンジョン探索と敵との戦闘を行うパートに相当します。ドラゴンを操っていることもあり、この飛行移動パートでは方角や高度、速度などが表示され、従来のRPGにはない移動感覚が味わえます。『アゼル』における戦闘はエンカウント制で、飛行移動パートでランダムに発生しますが、この戦闘はシューティングゲームを意識した独特のシステムとなっています。戦闘の特徴としてはターン制ではなく、ゲージが一定量溜まることで行動できるリアルタイム制を採用していることと、敵との位置関係を有利に持っていく位置取りという要素があることがあげられます。敵の攻撃を回避したり、弱点を攻撃したりというシューティングゲームにおける動作を再現したのがこの位置取りですが、位置取りをしている間はゲージが溜まらず、また場所によっては位置変更が制限されるなどRPGとしてのバランスにも配慮されています。攻撃方法としてはドラゴンが発射するレーザー、エッジが発射する銃、「魔法」に相当する「バーサーク」、そしてアイテム使用の4種類があります。敵には光学耐性を持つものや物理耐性を持つものもおり、弱点への攻撃と共に効果的な攻撃手段を選ばなくてはなりません。試行錯誤を繰り返しながらそれぞれの敵への対処法を作り上げていくというシューティングゲームさながらの攻略プロセスが本作品の戦闘シーンでは巧みに表現されています。ただ残念なことにバーサークの威力が強すぎるため、これに頼ってしまうとゲーム自体が非常に単調に陥りがちです。誰でもストレスなくクリアできるようにとの配慮の結果でしょうが、ゲームバランスを考えるなら各自がバーサークの使用を控えるほうがいいでしょう。また『アゼル』では前作さながらにドラゴンが進化します。ドラゴンのレベルアップともいうべき現象がこの「モデルチェンジ」ですが、本作ではさらにプレーヤーがドラゴンのタイプを任意に選択できる「タイプセレクト」という要素が加味されています。大まかに分類すると攻撃力に優れた攻撃型、防御力とHPに長けた防御型、素早さを重視した機動型、そしてバーサーク能力が強力な心技型の4種になります。このタイプセレクトによりプレーヤーの好みに合ったドラゴンがカスタマイズでき、一見ゲームの自由度も上がっているように映りますが、前述の通りバーサークが強力なため、心技型が持つアドバンテージがかなり大きくなってしまっています。明らかに有利不利が生じているため、必ずしも成功とはいい難いタイプセレクトですが、ドラゴンの外見が各タイプで変化するため、視覚面での楽しみはあります。システム面を総括しますと、一部バランスの悪い点もありますが、難易度、プレイ時間共に控えめで、ある程度の腕前が要求された前二作とは異なり、誰にでもクリアでき、かつオリジナルのシューティングの雰囲気も味わえるというユーザーライクな出来ばえとなっているといえます。
 続いてキャラクター面に移りましょう。冒頭でもふれましたが、この作品における主要勢力としては帝国という存在を筆頭としてシーカー、そしてクレイメン部隊という三勢力があげられます。これらの勢力はテクノロジーや攻性生物に代表される旧世紀の遺物にどう接するか、人類の復興をどう捉えるかという点での見解の相違から対立関係にあり、それぞれの立場に属する人間、その主義主張の隔たりと確執が『アゼル』の人間模様の見所になっています。当初は単なる復讐が目的だったエッジが各陣営の人々と接するうちに到達する立場…それがどの勢力の理念であるかは伏せますが、恐らくエッジの結論は多くのプレーヤーにとって納得のいくものではないでしょうか。もちろんこの作品の人間模様の見所は各勢力の対立だけではありません。遺跡で「発掘」された少女アゼルとエッジとの関係も本作の重要な柱となっています。アゼルとは何者なのか…その正体は作品世界の真相と密接に結び付いており、アゼルというヒロインが作品構成上で果たしている役割は非常に大きなものがあります。また歩行移動パートに登場する住人の多くが名前を持ち、それぞれのサイドストーリーを持っていることも『アゼル』のキャラクター面での特徴の一つです。単なる町人Aではなく、個性を持った存在として住人を扱おうとするこの試みは不十分な面もありますが、作品世界の造形の奥行きを増すのに大きな貢献をしているといえるでしょう。
 ストーリーと世界観に移ります。キャラクターについての項目とも重複しますが、『アゼル』のストーリーは主人公エッジが旅を通じて世界の真相に近づき、最終的には世界を変革させるというオーソドックスなRPGの筋書と、アゼルという謎の少女とエッジとの波乱に満ちた「ロマンス」という二つの軸によって構成されています。世界の変革という大きな視点と主人公とヒロインとのロマンスという小さな視点を組み合わせるという図式はRPGにおいてはそれほど珍しいものではないのかも知れません。しかしながらこの作品においてはその図式が説得力を持ったものとしてプレーヤーに提示されています。この説得力は『アゼル』がファンタジー色の薄い、SF的な観点から構成された作品であることに起因しています。旧世紀という作品背景に始まり、環境、文化、生態系などといった世界観の構築が綿密に系統立てられているため、作品中で起こるあらゆる出来事を明確に理由付けることができるのです。一般の作品でいうところのモンスターである攻性生物を例にとってみても、その起源やなぜ人間を襲うのか、その分布や外見的特徴、純血種と変異種との違いなど、あらゆる点においてその理由が考慮されているため、いわゆる「モンスター」とは存在感が違います。攻性生物に限らずゲーム中に登場する全ての要素が論理的に形作られているため、オーソドックスな設定とストーリーを採用しているにも関わらず、他の作品にはない必然性とリアリティが『アゼル』の作品世界の中では確立されています。作品世界の構成要素に無頓着なゲームが多い中、『アゼル』の厳密な作風は異質なものでありますが、一般的なRPGとは一線を画した個性的な試みとして強く印象に残るものです。
 さて、これまで『アゼル』の外見的な特色についてふれてきたわけですが、最後にこの作品を語る場合どうしても避けては通れない「永遠の客人」というキーワードについて付け加えさせていただきます。この作品の冒頭部分のムービーではエッジを含めた作品世界の登場人物の台詞は奇妙な言葉で話されており、当初プレーヤーは意味を掴むことができませんが、エッジがドラゴンと行動と共にするゲーム本編中では登場人物間の会話は日本語で行われます。そしてドラゴンと別れたエピローグ部分では再び彼らの言語は理解不能なものに戻ってしまいます。これらの現象が何を意味しているのか…それはこのゲームの開始時に主人公の名前はエッジと固定されているにも関わらず、それとは別個にプレーヤーの名前を登録させられることと関連があります。エッジという人物はプレーヤーとは別個に存在しており、プレーヤーはゲーム期間中エッジの視点を通じてゲーム世界に接している第三者に過ぎない…作中で何度か用いられる「永遠の客人」という言葉が何を指しているのかは明白です。ゲームの内側の世界と外側の世界は決して重なることはなく、プレーヤーはどこまでいっても第三者に過ぎないという冷徹な現実を作品世界の住人に指摘されるという経験は決して愉快なものではありませんが、『アゼル』がゲームとプレーヤーとの関係について改めて考えさせられる契機となる作品であることは疑いようがありません。

−おすすめキャラ−

ラボー教授のお気に入りキャラ

アゼル

 本文中ではアゼルについて詳しくふれられませんでしたので、この項目にて補足させていただきます。旧世紀の遺跡から発掘されたという時点でアゼルが一般的な「人間」とは異なっていることは明らかですが、作品序盤ではその異質さがさらに強調されています。人間的な感情の欠落やクレイメンへの異常なまでの盲信、そして主人公エッジへの敵意…事実作中ではアゼルとエッジは幾度も敵として相対することになります。そういった確執を経て二人の間には信頼関係が生まれ、アゼルも「人間らしさ」を見せるようになります。全てが終わった後、エピローグで彼女が見せる表情…それは作品世界そのものに対する重責から解放されたアゼルが本当の意味で人間になったことを示しているのでしょう。

 以上です。その成り立ちだけではなく内容においても一般的なRPGとは異質な部分の見受けられる作品ですが、作品自体のコンセプトが強固なため、プレイ後の印象は強いものがあります。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 02/20/02)


プリンセスクラウン
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ぎゃる 一 般 ラボー 総 合
17 75

対応機種 サターン
ジャンル アクションロープレ 発売元 アトラス

 現在では一部のジャンルを除いてすっかり3Dゲームが定着してしまい、もはや2Dのみで成り立っている作品を探すほうが困難な状況になってしまいました。サターンやプレイステーションなどが登場した90年代半ばからその傾向は徐々に強まったといえますが、当時は2Dオンリーの作品にも力作が見られました。今回紹介します『プリンセスクラウン』もその一本です。それでは作品の概要から入りましょう。この作品の舞台となるのは「ヴァレンディア王国」という中世を思わせる世界です。そこでは地底に封じられた魔王を解放しようと目論むデーモンたちとそれを阻止しようとする人間たちの間で永きにわたる抗争が繰り広げられてきました。25年前の闘いでは数多くの魔族が王国に進入しましたが、時の女王エルファーランの手によって王国は守られました。やがて月日は経ち、エルファーランは世を去り、その末娘グラドリエルが王位を継承する日がやってきました。戴冠式の後、母親のような勇猛な女王に自分もなりたいと願うグラドリエルはこっそり城を抜け出し武者修行の旅に出ます。しかしながらその旅は新たなる魔族との闘いの始まりでもあったのです…。
 システム面に移ります。『プリンセスクラウン』のマップはフィールド、ダンジョン、町などあらゆる場所が横スクロールの2D視点によって構成されています。移動時の分岐点を選択する際に全体マップが表示されますが、それ以外の移動は全てこの2D視点によって行われます。ゲームの基本的進行としては町での情報収集によって提示されるクエストをフィールド及びダンジョンにて解決することで新たな移動先が現れるという極めてオーソドックスなフラグ形式が採用されています。ただこの作品の特殊なところはプレーヤーが操作できるキャラクターが一人ではないという点です。当初はメインヒロインであるグラドリエルしか選択できませんが、作品の進行状況に応じて3人のキャラクターが選択できるようになり、プレーヤーは能力の異なるこれら4人のキャラクターを操作しつつ作品を進行させていくことになります。さて、この作品のシステム面での最大の特徴といえる要素が独特の戦闘パートです。パッケージ上でのジャンル区分が「アクションロープレ」と定義されているように、『プリンセスクラウン』における戦闘シーンは一見アクションゲームのように映ります。ジャンプやガード、ダッシュ、しゃがみ攻撃など、『プリンセスクラウン』の戦闘時に要求される操作は、あたかもこの作品が格闘ゲームであるかのような錯覚を与えます。しかしながらその印象はあくまで錯覚に過ぎません。『プリンセスクラウン』における「アクション」は一般的な「アクション」とは似て否なるものです。この作品の戦闘を特徴づける要素、それは「パワーゲージ」にあります。プレーヤーが戦闘中様々な行動をとるごとにこのパワーゲージが消費され、ゲージがなくなると再びゲージが回復するまで一切の操作ができなくなります。一般的なアクションゲームでも動作後の硬直時間というものは確かに存在します。ですがこの作品ほど極端な硬直を強いられることはまずないといっていいでしょう。ではなぜこの作品の「硬直」がそれほど極端なのか…それはこの作品がRPGであるからに他なりません。通常のRPGではプレーヤー、CPU共に行動できる回数は制限されています。ターン制とリアルタイム制というタイプの違いはありますが、いずれの場合においても何がしかの行動をした後には必ず一定の時間待機しなければなりません。制限された行動回数の中でいかに有効な攻撃を行うか…RPGの戦闘シーンのポイントはそこに要約されます。そしてその戦闘プロセスをアクションゲーム風に再現したのが、『プリンセスクラウン』の戦闘モードだといえるでしょう。アクションゲームとしての評価基準からレスポンスの悪さや行動面での不自由さを指摘されることの多い本作品の戦闘ですが、攻めと受けというターン制戦闘の基本的要素を表現したRPGの戦闘のバリエーションとして見直してみれば、その仕様に納得がいくのではないでしょうか。
 キャラクターについて見ていきましょう。『プリンセスクラウン』のキャラクター面での特色はやはり操作可能なキャラが4人と複数用意されていることでしょう。王国の若き新女王グラドリエル、「魔人の息子」という烙印を押された騎士エドワード、いたずら好きでわがままな魔女プロセルピナ、そして隻眼片足の「海の義族」ポートガス…経歴も能力も様々な4人のキャラクターの個性を楽しめるのが『プリンセスクラウン』の大きな魅力といえるでしょう。エンディングを見るには全てのキャラクターでプレイする必要があるため、やりごたえがあると同時にプレーヤーに飽きさせない作りになってます。4人の運命がどこで交差するのかという人間関係面も巧みに設定されており、作品構成上でのキャラクターの役割もしっかりとしています。プレーヤーキャラ以外の登場人物についてはポイントは押さえられているもののRPGでよく見られるパターンの設定と役割のものが多いので、それほど特筆すべき点はありません。
 次はストーリーについて。『プリンセスクラウン』の物語の骨格となるのは太古の昔から延々繰り広げられてきた人間対魔族の闘いという構図です。女神と魔王、光と闇との間の闘争というのは頻繁に見かけるパターンで、それだけではそれほど印象に残るものではありません。そのありきたりの物語をどう見せるか…『プリンセスクラウン』のシナリオではそこに重点が置かれています。そしてプレーヤーキャラの複数化はその端的な例でしょう。主人公が違う4つのシナリオを用意し、それらを全てクリアした後に5つ目のシナリオが現れるというこの作品の物語構造はRPGというよりは近年のノベル形式のゲームを連想させます。プレーヤーに異なる視点を体験させることによってありきたりな作品世界やストーリーを多角的に表現しようとするこの作品の試みは成功しているかどうかは別として、とかく陳腐なものに陥りがちなRPGの物語を活性化させるための意欲的なアプローチとして評価することができるでしょう。
 格闘アクションのような戦闘モードやノベル形式ADVのようなシナリオ構成など、『プリンセスクラウン』は一般的なRPGとは異質な外見を持った作品です。しかしながらそれはあくまで表面的な印象に過ぎません。これまで述べてきましたように、この作品の本質はオーソドックスなRPGそのものとしかいいようがなく、他のジャンルを連想させる外面的な特徴はあくまで作品を印象づけるための「演出」でしかありません。大量に生産され続けているRPGというジャンルに属しながら、いかに他の作品と一線を画すか…『プリンセスクラウン』はその手がかりを「外見」に求めた作品だといえます。そして膨大なパターンと職人的なドット絵で描かれた本作品の2D世界はその外見的特徴の最たるものでしょう。そしてあえて時代に逆行してまでクオリティの高い2D表現を追求しようとした気概ある姿勢は、この作品の外面重視の方針が単なる見せかけ以上のものであることを雄弁に物語っています。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

グラドリエル・ド・ヴァレンディア

 魔女のプロセルピナという選択肢もあったのですが、今回はオーソドックスにメインヒロインであるグラドリエルをとり上げることといたしましょう。若干13歳で王国の後継者となった彼女が様々な苦難の果てに魔族との闘いを終結させるというプロセスがこの作品の物語の基幹であるわけですが、その中で注目されるのが先王エルファーランとの関係です。偉大な先王に憧れ、旅を通じてやがてはそれを乗り越えていく…グラドリエルの冒険は自分の親を追い越していくという成長の物語でもあります。この図式自体は珍しくありませんが、娘が母親を越えるというパターンはユニークで時代を感じさせます。あとポイントとしてあげられるのはその二面性でしょう。裏の人格?である「闇のグラドリエル」のインパクトは強烈なものがあります。普段があまりにも優等生的なので、その豹変ぶりがたまらないという向きも少なくないようです(笑)。

 以上です。やはりサターン史に残る名作であるだけに最近ではかなり入手難になっていますが、探し出してでもプレイするだけの価値のある作品です。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 02/20/02)


・まいやも注目している作品「21」のレポートを提出していただきました。西又葵氏が描くキャラがとってもかわいい作品です。レポートを拝見する限りその内容のほうもおおむね良のようです。

21-Two One-
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 70

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 オークス/プリンセスソフト

昨年春にPC版が発売されました『21』ですが、早くもこの冬ドリームキャストに移植されました。今回はそのDC版『21』を紹介させていただきます。では作品のアウトラインから始めましょう。この作品の主人公「霧島拓哉」は幼い頃に母親を病気で亡くした経験から、自分の力で病気で苦しんでいる人々を救おうと思い立ち、医者になりました。しかしながら彼がどんなに頑張ろうとも、この世から病気や死というものがなくなることはなく、拓哉は自らの能力に疑問を覚えるようになります。そんな中、病院内で患者が何者かに殺害されるという事件が起こります。事件の第一発見者である主人公は、旧友の刑事原崎に協力を求められ、病院内の人間関係を調べていくことになるのですが、次第に「事件」は思いもよらない形で彼と密接に関わってくることになります…。
 システムについてふれておきましょう。『21』は条件によってシナリオが分岐するADVタイプの作品です。本作品の特徴としては分岐の条件として選択肢の他に登場人物の信頼度チェックという独特の要素が加味されていることがあげられます。これはそれぞれのキャラクターに対してプレーヤー(主人公)がどう思っているかを信頼、平常、疑惑の中から任意に選択できるというシステムです。この信頼度チェックは本編中ならいつでも行うことができ、その状況状況に応じて各キャラクターに対する評価を変更することができるようになっています。プレーヤーによる容疑者の特定という推理プロセスを巧みに表現した興味深いシステムですが、プレーヤーの意志がそれほど作品の分岐、展開に反映されることはなく、やや消化不良気味の感は否めません。難易度を抑えるという意図もあるのでしょうが、真犯人の追求という「捜査」の基幹にプレーヤーが関与できる余地がほとんど残されていないことは非常に残念です。あとシステム面において信頼度チェックの他に特筆すべき点としてはフローチャートの自動生成という要素があります。これは物語の分岐を図示することで、プレーヤーがどのルートを通っているのか、プレイ中に確認できるというものです。分岐ポイントのチェックや未見ルートへの条件の推察がゲーム上で簡単に行うことができ、作品をコンプリートする上でプレーヤーにかかってくる負担はかなり軽減されています。このようにシステム面での特徴から判断しますと、この作品は難易度を抑えると同時にプレーヤーの自由度も制限する、純粋な推理ADVというよりはプレーヤーに物語を追わせることを重視したノベル的傾向の強い作品であるといえるでしょう。
 次はキャラクター面についてです。『21』に登場する女性キャラクターは8人いますが、本編中で重要な役割を果たしているのは喫茶コーナーのウエイトレス翠を除いた7人になります。彼女たちは恋愛対象になるだけではなく、事件の真相とも何らかの関わりを持っています。程度の差こそあれヒロインたちは主人公に対して秘密を持っており、その秘密が事件の全体像と結び付いているわけです。そのため全てのヒロインのシナリオを見なければ作品の全容を把握できないようになっていて、またクリアできる順番も決まっています。キャラクター造形の特色としては、各ヒロインが主人公に対してそれぞれ秘密を持っていることから、全体的に二面性が強調された造りとなっていることがあげられます。通常主人公に見せる顔と、その裏に隠された顔…事件の核心に近づくにつれて明らかになってくる二つの顔、そのギャップがこの作品のキャラクターの魅力だといえるでしょう。またこの作品の構成上の特徴として各ヒロインが二人一組、計四組のグループを形成していることも注目されます。(7人の女性キャラに香澄の兄、霞を加えた8人を見た場合)それぞれのグループについての具体的な記述は避けますが、各グループ内での対立と理解、二人のヒロイン間の葛藤が本作品の大きな見所となっているといえます。
 ストーリーに移ります。表面上では『21』は病院内で起こる連続殺人事件とその真犯人の追求というミステリの体裁をとっていますが、システム面の項目でふれましたようにゲーム自体の性格が推理要素よりもノベル性の強いものになっているということもあり、そのストーリーにおいてもミステリ性はそれほど重視されていません。この作品のシナリオにおいては事件そのものの謎を解くというミステリとしてのプロセスよりも、事件の背後にある歴史が生み出す悲劇の連鎖、人間の欲望のもたらした「呪い」という物語としての主題の方が強調されています。この「呪い」の実態については詳しくは書きませんが、とある「もの」を求める人々によって繰り返されてきた惨劇であるとだけいっておきましょう。この「もの」は実在するとは到底思えぬ、どちらかというと伝奇物語に出てきそうな代物なのですが、人間の欲望を暗喩したイメージとしてはそれなりに説得力はあります。しかしながら病院という厳格で科学的な雰囲気を持った舞台に登場させるにはかなり違和感があることも確かで、この作品にリアリティある展開を期待していたプレーヤーにとっては耐えられないものがあるのではないでしょうか。この「呪い」を受け入れられるかどうか、『21』のストーリーに対するユーザーの評価の分かれ目はそこにあるでしょう。「呪い」を容認できないユーザーにとっては、その背後にある生と死に対する人間の葛藤という構図も空しいものに映るのでしょうし、「呪い」に抵抗を感じないプレーヤーにとっては設定と主題が噛み合った印象的なストーリーに感じられることでしょう。病院という現実的な設定と「呪い」という伝奇的な設定…作品舞台と事件の真相との間のギャップが『21』という物語の特徴でもあり、同時に問題点でもあるのでしょう。なおDC版『21』には2本のおまけシナリオが入っています。こちらの方は本編では影が薄かった翠がメインだったり、女性キャラが全員ウエイトレス姿になったりと本編とはほとんど関連性のないシナリオで、爆笑必至の構成となっています。本編に違和感を持った向きもこちらは素直に楽しめるのではないでしょうか。
 さて、この作品には様々な対立構造が登場します。二人一組の登場人物関係、ヒロインたちの二面性、事件を構成する「2つのパズル」、医学と「呪い」、さらには男と女、そして生と死…。『21』の作品世界は見事なまでに二極化が徹底されています。それら相反するかに見える様々な要素が衝突し葛藤を繰り返しつつもやがては一つに重なる…『Two One』という表題の意味するものはそこにあるのでしょう。作品内においてそのプロセスが充分に表現されていたとはいい難い部分もありますが、『Two One』というこの作品のタイトルは重層的な対立概念が一つの地点に収束していくという作品世界の構図そのものを簡潔に表した表題として強く印象に残るものです。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

二見 美魚

 今回はひねらずに素直に選ぶことにします。美魚は原因不明の不治の病に犯されているという病弱キャラの王道的ヒロインです。もうお解りかと思いますが、この「病」は作品中の事件の根幹である「呪い」に起因しています。その「呪い」を医師として医学の力で解き放てるか…やや安易な感はありますが、人としての力を信じるというこの作品の方向性が端的に示されているのが彼女のシナリオです。心の奥底にどろどろとした感情を持っているヒロインが多い中、彼女はいい娘すぎてキャラクターとしてはリアリティに欠けているのかもしれません。ですがそれはそれで可愛らしいからいいでしょう(笑)。

 以上です。飛躍した設定についていけない向きも多いでしょうが、推理ものとして過度の期待をしなければ、その物語も多少は受け入れやすくなるのではないでしょうか。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 02/02/02)


・PCからの移植作も数多く手がけるキッドのDCへの移植第一弾となった作品だそうです。妖精のようなキュートなキャラ絵が特徴の作品ですよね。

プリズムハート
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 73

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル シミュレーション 発売元 キッド 

 サターンやプレイステーション市場においては数多くPCからの移植作品をリリースしているキッドですが、ドリームキャスト向けのPC移植作品としては、この『プリズムハート』が第一作目となります。物語は騎士になるという大望を抱いた主人公マイステルが「ヴィントラント王国」の王都フリーデンに上京してくるところから始まります。王都では三年に一度騎士を叙任するためのトーナメントが行われ、見事騎士となった者には封土が与えられるのです。立身出世を夢見るマイステルは多くの騎士が大会のために利用したという旅館「風車亭」を根城にトーナメントまでの一年間を過ごすことになります。そして彼は「風車亭」での生活を通して多くの女性と出会い、次第に心惹かれていくようになります。一年という期間内で恋と立身出世という二つの目標を彼は達成できるのか…それがプレーヤーに課せられた目的となります。
 それではシステム面から始めましょう。『プリズムハート』は育成とパラメータ管理が重要な意味を持つシミュレーション要素の強い作品です。基本的なゲームの流れを見ていきますと、一週間は月から金の平日と土、日という三つのパートに分割され、平日は修行、土日は修行と場所移動を任意に選択できます。そして毎月末には練習試合が催され、日々の修行の成果が確認できるようになっています。なお八月には前哨戦、十二月には本大会が開催され、そこでは結果を出さないとゲームオーバーやバッドエンドになってしまいます。また土日に行える場所移動が唯一アドベンチャー的性格を持ち、そこで意中のヒロインと会い続けることで各キャラのシナリオが進行します。試合はもちろんのこと恋愛の正否にもパラメータが大きな影響をもたらすので、計画的なスケジュール管理と育成が大切になります。シミュレーションゲームの完成度を決定するのは難易度調整とゲームバランスの練り込みですが、難易度に関してはキャラクターによって差が大きく、タイトな日程を強いられる場合とワンパターンなメニューでクリアできる場合との落差が非常に激しいものとなっています。困難なシナリオは試行錯誤が必要なのに対して容易なシナリオはあまりにもあっけなく、SLGとしてはかなり単調です。この作品のあまりにも極端な構成は、ゲーム全体としてのバランスから見れば問題なのですが、複数キャラクターをクリアすることで陥りがちな単調なパターンの反復作業への対策としては評価できるでしょう。プレイ時間も適度な長さで、恋愛シミュレーションにありがちな作業感やストレスはかなり軽減されています。さて、キッド作品といえばシステム周りの完成度には定評があるのですが、今回は移植作ということもあり、残念ながらオリジナル作品群よりは一段劣った評価を下さざるを得ません。コンフィグ面は貧弱、さらには文章のバックスクロールがなく、メッセージスキップのレスポンスも悪いなど、キッドオリジナル作品群に慣れてしまったプレーヤーにとってはかなり不満の残る仕様です。移植作品故の限界なのでしょうが、物足りなさは否定できません。もっとも初回限定版には外伝ディスク「〜剣にこめた想い〜」が同梱されるなど、そちらのほうのサービス精神は相変わらず旺盛です。
 次はキャラクター面について。『プリズムハート』には元来7人+αのヒロインが登場しますが、今回のDC版では新たに2人の新キャラが追加され、ヒロイン人数は合計9人+αとなっています。ヒロインの中では主人公とも深い因縁を持つプリンセアがメインヒロインとして扱われており、作品の軸としての役割を担っているのですが、他のキャラクターも個性では負けてはおらず、メインヒロイン一辺倒という作品構成ではありません。キャラクター造形としては、お約束に忠実な奇をてらわない造りで、悪くいえば型にはまりすぎているのですが、属性のそろえ方や各キャラクターの描き分けのポイントは押さえられており、全体として安定感のある造形となっています。システム面でふれました各ヒロインごとの構成、難易度の格差も結果としてキャラクター面でのバリエーション付けに一役借っています。もっともその格差はヒロインごとのボリュームの違いというマイナスの影響ももたらしており、手放しで肯定できるものではないのですが。
 ストーリー面に移りましょう。恋愛ADVにおける近年のトレンドである主題性を重視したノベル志向の強い物語作りという方向性とは異なり、『プリズムハート』のストーリーは古典的といえるまでに王道志向です。立身出世を夢見る主人公が田舎から上京し、そこで恋に落ち、最終的に「価値あるもの」を手に入れる…物語として見れば、この作品のストーリーは昔から何度も繰り返し使われてきた「定型」であるとしかいいようがありません。特にメインヒロインであるプリンセアのシナリオを見た場合、その展開はあまりにもお約束通りで、プレーヤーの予測から逸脱することは決してありません。シナリオによってはとんでもない展開のものもあり、全てのシナリオに当てはまるわけではないのですが、全体的な傾向としては潔いまでに「定型」を踏襲しようとする姿勢が貫かれています。この作品の無難なストーリー構成は、その奇をてらわないオーソドックスなキャラクター造形を生かすことを優先した結果によるものだといえるでしょう。
 さて、これまでこの作品がキャラクター、ストーリー両面においてお約束に即した王道志向の強い作品であることについてふれてきたわけですが、その王道志向を支える価値観について少し付け加えさせていただきます。この作品を構成している剣による立身出世というメインストーリー、そして各ヒロインたちとの恋愛物語という両方のパートの背後に一貫して流れるのは気恥ずかしいくらい大時代な「男気」…例えるなら昔懐かしいヒーローものの主人公が備えていた資質とでもいうべきものです。強さや名誉への大きな関心、不正や非道に憤る正義感、女性のためには己の身を投げ出す犠牲精神など、主人公マイステルの言動は、彼が憧れる「騎士道精神」に裏打ちされたものだといえます。彼にとっての「騎士道」の実践とは単に剣技という外面上の強さを求めるだけではなく、自らが信じるものを守りぬく内面的な強さを追求することなのでしょう。そしてそれは一種時代錯誤にも見える「男らしさ」という価値観の追求でもあります。実社会においては既に意義を失ってしまったかに見える「男らしさ」の復権…『プリズムハート』を貫く王道志向の目的はそこにあるといっていいでしょう。そしてその「男らしさ」という基準はもはや美少女ゲームという特殊な領域においてのみ有効な価値観でしかないのかもしれません。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

リーズ

 PCからの移植作品を扱う場合、この項目では新キャラをとり上げることが多いのですが、今回もその慣例にならうこととなります。赤頭巾に巨大な剣という奇妙な出で立ちのリーズは「遺跡を守護すること」を使命としています。彼女の上京とトーナメントへの参加はその使命と連動したものですが、いつしか主人公を剣の師匠と仰ぐことになります。彼女の正体とその豹変ぶりをどう受け止めるか…「おししょーさん」としての価値はそこで決まるのではないでしょうか。騎士、そして男は強くあれというこの作品の主題がリーズのシナリオにはストレートに現れているといえるでしょう。

以上です。あまりにも「お約束」通りなので人を選びますが、難解なストーリーややり切れないシナリオに食傷している向きにはお勧めできる作品ではないかと。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 01/23/02)


・ラボー教授より2002年最初のレポートいただきました。しかし久々に厳しい内容のレポートのようです。心して読むべし!。

Candy Stripe〜みならい天使〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
11 54

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 セガ

 発表直後はセガ初の本格的恋愛アドベンチャーとして注目され、その後発売直前になってPC18禁バージョンの存在が明らかになり物議を醸し出したある意味昨年秋のDC美少女ゲームシーンの台風の目というべき作品がこの『キャンディストライプ』です。今回は昨年良くも悪くも話題を提供し続けたこの問題作を紹介させていただきます。物語は医大を卒業したての主人公が叔父が院長を勤める総合病院「聖アンジェルス病院」に研修医として赴任するところから始まります。そしてそこで彼は3人の見習い看護婦と出会います。看護学校卒業を目指す3人の姿と自分の姿を重ねつつ、主人公は一人前の医師を目指していくことになります。
 それではシステム面から検証していきましょう。『キャンディストライプ』は昔ながらのマップ移動が主体のADVです。一日の中で一定の回数だけ場所移動することができ、マップ上にいるキャラクターと会うことでシナリオを進めていくことになります。マップ上にキャラクターが表示されるので一見親切設計に見えますが、実際プレイしてみるとシステム面の練り込み不足が目立ちます。基本的なレベルでは、タイトル画面からしかロードができないため、わざわざリセットしてタイトル画面に戻さなければセーブポイントに戻れないことや、メッセージのバックスクロールがないため一度文章を飛ばしてしまうと取り返しがつかないこと、さらにはボタンの役割を任意に変更できないため、文章送りと選択肢の決定が同ボタンであることによる「事故」(誤って一番上の選択肢を選んでしまう)ケースが多くなることが欠点としてあげられます。繰り返しプレイを強いられるというゲームの性質上、これら基本的レベルでの問題がプレーヤーに与えるストレスは大きいものがあります。制作サイドはいかにユーザーにとって快適なプレイ環境を提供するかという点を軽視してはならないのではないでしょうか。またマップ移動形式としての完成度もおよそ高いとはいい難いものがあります。9ヶ月というゲーム期間を6週間で表現するという前代未聞の試みによる本編の薄さ、マップ移動のできない休日パートの役割の曖昧さ、通常イベントと固有シナリオのイベントのバランスの悪さなど、全体的に調整不足でシステムとストーリーが効果的に連動していません。このようにシステム面においてはゲームとしての基本レベルでの完成度、マップ移動ADVというジャンルとしての完成度という両面で大いに不満の残る作品であるということができるでしょう。
 キャラクター面に移ります。『キャンディストライプ』に登場する恋愛対象となるヒロインは6人です。作品の「みならい天使」という副題が示すようにメインとなるのは綾乃、栄美子、潤という3人の見習い看護婦になりますが、それ以外にも看護婦の希、主人公と同じく研修医の由紀、そして入院患者の郁美という3人が恋愛対象となります。キャラクター造形的にはこの種のジャンルのセオリーに則ったパターンを揃えており、やや直接的すぎるきらいはありますがそれなりに考えられてはいます。しかしながらシステム、シナリオ両面に関連するバランスの悪さからイベント設定の煮詰めが甘く、キャラクターの魅力を十分に引き出すことができていません。単に設定面のみに留意するのではなく、その見せ方を工夫しなければ印象に残るキャラクターを作ることは難しいのではないでしょうか。またメインヒロイン以外のサブキャラクターに関しても問題があります。メインヒロイン以上に登場イベントの設定がまずく、その存在感は極めて希薄なものとなっています。サブキャラクターがストーリー面で重要な役割を果たすわけでもなく、その作品内におけるポジションは非常に不安定です。初対面時に主人公がサブキャラクターについて「この人は○○さん」などとプレーヤーに紹介するというデリカシーのかけらもない無思慮な制作姿勢にこの作品が抱えるキャラクター面の弱点が端的に示されています。
 続いてストーリーについてふれましょう。既にシステム、キャラクターの両項目でふれてきたことですが、この作品のストーリー面の問題はイベント設定の失敗というポイントに集約されます。ゲーム期間(プレイ時間)とイベント数の比率の問題、さらには通常イベントと各キャラ固有シナリオのイベントとのバランスの悪さによるシナリオの希薄さが目につきます。固有イベントで失意の底にあるはずのヒロインが、次の通常イベントでいつも通りに主人公に接してくるなど、およそ一貫性を欠いた人物描写とストーリー進行がプレーヤーの感情移入を著しく損なっています。各イベントが「点」として孤立しており、それぞれのイベントを繋ぐ「線」というものが意識されていないため、ストーリーの全体像としては極めて散漫な印象を受けます。また通常イベントを除いた各固有ストーリーにのみ焦点を絞ってもかなり物足りないといわざるを得ません。病院という特殊なシチュエーションを生かしたシナリオが少なく、医師や看護婦というキャラクター設定が十分には機能していません。病院や医療という構成要素が本来持っているシリアスなテーマ性も薄く、結果的に作品の外見と中身が一致していません。作品の舞台設定が目先のバリエーションをつける手段に留まっている限り、設定とストーリーとが噛み合うことはありません。この作品はマップ移動ADVの持つ弱点を克服できていないだけでなく、ストーリー本体にも問題を抱えているため、「物語」として見た場合厳しい評価を下さざるを得ません。
 さて、ご存じの通りこの作品はセガ初の本格的恋愛ADVにあたるわけですが、残念ながらその出来ばえは期待を大きく裏切った結果に終わりました。セガ、そしてワウに恋愛ADV作りのノウハウがないため、作品制作を外部に委託するという処置が今回とられたわけですが、その決定すらも裏目に出たようです。作品そのものの仕上がりの問題だけではなく、PC18禁バージョン『Sweet〜半熟な天使たち〜』(シルキーズ)の発表、そして発売は、多くのユーザーを失望させることになりました。『スウィート』の存在が明らかになることで、『キャンディストライプ』という企画が元々18禁バージョンの発売を前提とした外部委託の企画であることが明白になったためです。さらに当のセガやワウは『スウィート』について一言もふれることなく、『キャンディストライプ』と『スウィート』の関連性についてもなんら公式のコメントを発表していません。18禁ゲームが会社のイメージダウンになるという考えがあるのでしょうが、それならそれでこの企画自体を最初から行わなければいいだけの話です。むしろ『スウィート』の存在について黙っていることの方がイメージダウンになるのではないでしょうか。セガ、そしてワウが今後恋愛ADVをリリースしていくのかどうかは解りませんが、この作品と企画がユーザーを幻滅させたことは拭い去ることのできない事実です。セガやワウがこのジャンルに対して安易でいい加減な認識を持っている限りユーザーを納得させる作品を作ることは不可能ですし、そういった姿勢で作品を世に出すことは真剣に恋愛ADVを作っている他のメーカーに対しても失礼なことではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

大河原 由紀

 『キャンディストライプ』には18禁バージョンがあるわけですが、諸般の事情によりヒロインのうち2人がオリジナルとは異なります。折角DC版を取り上げているわけですから、今回はDC版にのみ登場するヒロインの片割れである由紀をこの項目で紹介することにします。由紀は田舎の診療所である実家の跡継ぎとなるために聖アンジェルス病院に赴任してきた研修医です。内向的で血を見るのも嫌いというおよそ医者には不向きな性格ですが、病院勤務を通じて医者としての自覚に目覚めていきます。彼女の成長する姿は同じ研修医という立場の主人公の姿とオーバーラップすることもあり、ある意味メインの3人以上にヒロインらしいヒロインといえるのではないでしようか。あまり出来ばえの芳しくない本作のシナリオの中では由紀のシナリオは他のシナリオよりも医療という問題が重要に扱われており、最も完成度が高いというのもポイントでしょう。ただハッピーエンドよりもノーマルエンドの方が考えさせられる内容だというのは少し問題ではありますが…。

 以上です。かなり厳しいことを書きましたが、発売元が恋愛ADVについてあまりにも勘違いしているのであえて辛い評価をつけさせていただきました。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 01/06/02)


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