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ラボー教授研究室(2000〜2001研究レポート書庫)

 たいへんお世話になっている”ラボー教授”からはたくさん論文を提出していただいております。ラボー教授の研究室も手狭になってきましたので2000〜2001年までに提出していただいたレポートをこちらには掲載させていただきました。過去の名作作品のレポートをお読みになりたい方はこちらへ。


評価の基準・内訳は次の通りにしていただきました。
Story(10点)−全体のストーリーがしっかりたっているか?。またその良さ、おもしろさ。エンディングのよさ。
システム(10点)−あそびやすさ。操作性、ロードの時間など。
ボリューム(10点)−遊びごたえ。買った値段に対する量感。
グラフィック(10点)−絵のきれいさ。見やすさ。動画を使っているかなど。
サウンド(10点)−BGM、効果音などのインパクト。オープニング・エンディング曲。
キャラ(10点)−登場するキャラクターの魅力度。またはメカのかっこよさ。
ぎゃる(10点)−登場人物にかわいい女の子がたくさんいるか?。
一 般(10点)−俗に言うマニア以外の人に受け入れられるか。
ラボー(20点)−ラボー教授の個人的な好み、おすすめ度。
総 合−各項目の合計。100点満点で評価する。


※掲載は提出日順とさせていただいております。


・数少なくなってきている新作DC作品で、横田守氏が手がけていることで話題となった作品です。しかしラボー教授のレポートを拝見すると少々辛口の評価のようですが…。

火焔聖母〜The Virgin on Megiddo〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
15 70

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 推理アドベンチャー 発売元 広美/スタジオライン

 『野々村病院の人々』や『慟哭そして…』などで知られるイラストレーター横田守氏が率いるスタジオラインのDC参入第一作としてこの夏話題になりましたのが、この『火焔聖母』です。従来のADVのシステムに飽き足らず様々な試みが導入されているこの作品を今回はとりあげることにいたします。それでは作品のアウトラインから始めます。西暦2013年、東北地方のとあるところに外資系企業の主導により建設された実験都市「いざなみ市」にて謎の人体発火現象が起こります。その謎の真相を突き止めるべく主人公である学生探偵「蘭堂研人」(変更可)がいざなみ市内にある「聖骸布学園高等学校」(「聖骸高校」)に転校してくるところから物語は始まります。そして主人公が人体発火現象の調査を進めるにつれて外部から隔離されたハイテク都市いざなみ市の意外な正体が明らかになっていきます…。
 システムについてふれましょう。『火焔聖母』は推理アドベンチャーと銘打たれているように、ジャンルとしてはADVに分類することができます。ゲームの基本的構成としてはマップで表示されるいざなみ市にある各場所を選択、移動するマップ移動モード、学校や施設などの建築物の館内を移動する館内移動モード、そして登場人物たちと会話したり、アイテムを使用したりして実際の操作、推理を行うアドベンチャーモードの3つのパートで構成されており、この3つのパートを繰り返すことによってゲームを進行させていくことになります。これら3つのパートの中で最もプレーヤー泣かせなのが館内移動モードでしょう。3Dマップが採用されているために場所把握が困難な上に建物がやたらと広く、館内を移動するのに非常に時間がかかります。さらに館内をあちこち回って人に会うことでフラグが立つというプロセスがゲーム進行の基本となっているため、プレーヤーにかるストレスも大きいものとなっています。RPGなどで移動プロセスに時間をかけることに慣れているユーザーでない限りはこの館内移動モードは辛いものがあるのではないでしょうか。またメインとなるアドベンチャーモードについても『サクラ大戦』を意識したタイミングアンサーシステムという制限時間内に会話中の選択肢を選ばないと選択肢が減っていくシステムや『リバイヴ』の生死イベントを連想させるタイムリミットシステムというシステムが採用されるなど、AVDに時間という概念を導入しようという工夫が見られますが、効果的に機能しているとはいい難いものがあります。アイテムの使用やロック解除のためのパスワード探しというゲーム進行に必要なプロセスが基本的に一本道でプレーヤーが頭を使う余地がほとんどないためプレーヤー自身が推理をしているという感覚が薄く、謎解きの達成感を得ることができないのです。多彩なモードやシステムを採用している本作ですが、システム全体のまとまりは散漫で、「推理アドベンチャー」としての魅力には乏しいものがあります。
 キャラクター面に移ります。『火焔聖母』は基本的には推理ADVなのですが、お約束通り恋愛要素もあります。恋愛対象となるキャラは5人で、全員が主人公の転校先の「聖骸高校」の生徒という設定です。顔ぶれを見ますと主人公と中学時代は同じ学校に通っていた湖希、いざなみ市の旧市民の実力者娘である巴、聖骸高校のシステム管理委員の真奈瀬、天文部員の京子、旧市民の生徒のリーダー格仲代の取り巻きの一人である紫乃という面々です。特徴的なのは紫乃を除く4人にはそれぞれ単独で主人公と共に行動する章が設けられていて、特定のヒロイン専用ルートというものがほとんど存在しないという点です。各ヒロインともいざなみ市が直面する諸問題に深く関わっており、ストーリーの進行上どのキャラのシナリオもある程度掘り下げないと「謎」に辿りつけないという事情もあり、このような構成になったのでしょう。またヒロイン以外にもこの作品には個性的なサブキャラクターが多数登場します。郷土資料館館長の妙見、主人公のルームメイト奈村、いざなみ市長のドラ息子の滝、旧市民の若きリーダー役の仲代など、いずれも一癖あるキャラクターが物語の進行に微妙な影響を及ぼします。それぞれの思惑や利害が交錯し、いざなみ市をめぐる一連の陰謀劇を盛り上げるのに重要な役割を果たしているといえるでしょう。ただ彼ら男性サブキャラの個性が強すぎてある意味ヒロインたちの影が薄くなっている面は否めません。ヒロインとサブキャラのバランスを考えた場合、いくら個性的であってもサブキャラが目立ちすぎるのも問題なのではないでしょうか。
 次はストーリーについてです。当初主人公に提示された捜査目的は「人体発火現象の解明」です。火気のない場所で突如人間が炎に包まれるというこの現象は怪奇現象としてよく知られていますが、『火焔聖母』ではこの現象を出発点としてスケールの大きな物語が構築されています。いざなみ市という特異な環境を舞台にオカルト、科学、宗教が混然一体となった独特の観点でストーリーが語られていくわけですが、物語の基盤となるのは重層的な対立概念の衝突という構図です。旧市民と新市民、伝統とハイテク、東洋と西洋、日本神話とキリスト教、巨大国際企業とローマカトリック教会…いざなみ市を構成するこれら複数の対立概念が衝突しながらやがては一つの地点に収束していくというプロセスは本作品の最大の見せ場といえるでしょう。そして示される驚天動地の「真相」…この「真相」は単なる事件の真実という範疇に留まらず、歴史的観点にも及ぶ壮大なものですが、誰にでも納得のいく説明とはおよそいい難いものがあります。純粋に推理ものとしてみた場合にはあまりにもアンフェアで説明不足ですし、真面目な人にとっては憤飯ものかもしれません。確かにインパクトはありますが、俗にいうとんでも本の類を笑って読めるような寛大さがないと厳しいものがあるのではないでしょうか。受手に余裕がないと楽しむことができないという面で、この作品のストーリーは極めて方向性が限定されているといわざるを得ないでしょう。
 さて、すでに何度もふれてきたようにこの作品のジャンル区分を「推理アドベンチャー」と定義するには無理があります。システム面でプレーヤーが事件の真相を自分で考え、ゲームを進行させるというプロセスが存在しないこと、そしてその事件の全容が推論に依存した仮説のレベルに留まっていることは、この作品がゲームシステムと推理の内容という二方面で「推理」ものとしての資格から外れていることを意味しています。単純に探偵が登場し、作中で謎を追求するだけでは推理ものであるとはいえないのです。プレーヤーがいかに作中の事件に関わり、自ら謎を究明する課程を表現するか…ゲームという媒体における推理もののテーマはそこに要約されるといっていいでしょう。そしてこの作品はシステム及びストーリー面において可能な限りの要素を詰め込んでいくことに執心するあまり、ゲームとして自らの属するべき場所を見失ってしまったといえるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

マリー・マドレーヌ・サヴォイア

 個人的にはこの作品で恋愛対象となる5人のヒロインたちには強い印象は受けませんでしたので、この項目ではサブキャラとはいえ作中で重要な役割を果たすシスター・マドレーヌをとりあげることにします。彼女は聖骸高校内にある教会「聖シュラウド教会」に派遣されてきた修道女です。彼女が日本、そしていざなみ市に来た目的はバチカンからある密命を受けたためですが、その内容については作品の真相とも関係するので、ここでは伏せておきます。ただ「マリー」は本作のメインヒロイン湖希と対になる存在であるとだけいっておきましょう。作中の彼女の心理、自らの立場や役割についてどう捕らえていたのかという点については多くは語られないので推測するしかありませんが、主人公にある種の好意を寄せていたのは確かなのではないでしょうか。

以上です。プレーヤーによって好みがはっきりと分かれる作品ですので、万人におすすめできる訳ではないのですが、良くも悪くも印象には残る作品なのではないでしょうか。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 12/23/01)


・たくさんレポート提出予定をいただいている中から今回は2作品を同時にいただきました。DCの隠れた名作というところでしょうか。

エンジェルプレゼント
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 71

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 この作品は以前私の研究室でとりあげました『ESPION-AGE-NTS』や『トリコロールクライシス』の開発やDC版『カナリア』の移植を手がけたヒューネックスのオリジナル作品です。非移植作品ということもあり注目度も低く、売り上げも決して芳しいものではありませんでしたが、DCオリジナルの美少女ゲームとして外すことの出来ない作品ですので今回紹介させていただくことにします。
 それでは作品の概要から始めます。物語は絵本作家の卵である主人公が創作活動に行き詰まり、自分を見つめ直すために故郷の「阿左美ノ里」という田舎町に帰省するところから始まります。自分に与えられた三週間という期間内に納得のいく作品を描きあげることができなければ絵の道を諦める決意で故郷に戻ってきた彼の前にある日突然「天使」が現れます。この奇妙な出会いをきっかけに彼は次々と不思議な出来事に遭遇していきますが、やがてそれらの出来事は彼が阿左美ノ里で知り合った女性たちと密接な関係にあることに気付きます。そしてヒロインたちとの交流を通じて彼は長らく忘れていた「大切なもの」を思い出すことになるのです。
 システム面についてふれましょう。この作品はマップ移動とイベントの発生を繰り返すことでゲームが進行していく昔ながらのADVなのですが、独創的な要素として「レイヤー世界」という概念が採用されています。『エンジェルプレゼント』ではヒロインのシナリオを進めていくうちに唐突に現実離れした異世界に場面が変わります。これが「レイヤー世界」と呼ばれるもので、ヒロインの心象風景を具現化した世界になります。その異世界には精霊という形でヒロインの分身が存在し、クエスト風にその願いを叶えていくことで物語が進行します。現実世界とレイヤー世界を行き来しながらヒロインとの絆を深めていくというのはユニークな構成ですが、オーソドックスで比較的遊びやすい現実世界のパートと異なり、レイヤー世界のパートはシステム的にやや問題があります。「お使い」によってフラグを立てる旧弊なRPGを連想させる展開、単調でテンポの悪いミニゲーム風のアクションなどレイヤー世界のパートは「ゲーム」としての完成度は高いとはいえません。作品の特色ともいえる要素にしてはレイヤー世界のパートの作りは荒く、せっかくの場所設定としての二重構造が充分に生かされていないように見受けられます。
 次はキャラクターについてです。『エンジェルプレゼント』には五人のヒロインが登場します。主人公と同じ絵本作家に師事する後輩であるえりな、主人公の初恋の女性翔子、全国的な水泳選手の沙恵香、昆虫マニアの少女由樹、そして美容師志望の少女アヤメというのがその顔ぶれです。彼女たちは自分の現状や将来について悩みを抱えており、その内面の不安を象徴した世界がレイヤー世界というわけです。そしてそのレイヤー世界に存在する精霊たちは現実世界のヒロインたちの分身であり、精霊たちの陥っている苦境はそのままヒロインたちの直面している問題を反映しています。現実世界のヒロインとレイヤー世界の精霊という「二人」はコインの裏表のような関係で、両者の性格や行動には微妙な「ブレ」があります。一人の人間を描くために「二人」の人間を用意し描き分けるというこの作品の試みは、多面的なキャラクター作りの方法として興味深いものがあります。一見違っているようで根本は共通している…この「ヒロイン」の二重性が『エンジェルプレゼント』のキャラクター面での最大の魅力といえるでしょう。またヒロイン以外の脇役も非常にクセのある個性的なキャラクターが揃っていて、阿左美ノ里という田舎町ならではの生活感や「空気」を表現するのに大きな貢献をしています。サブキャラクターのイベントだけでもかなりの数が用意されており、本編とは別にそちらを追いかけてみるのも一興でしょう。
 ストーリー面に移ります。他の項目でもふれましたが、この作品の最大の特徴は阿左美ノ里という現実世界と各ヒロインに対応した5つのレイヤー世界による二重構造にあります。二つの世界を往復し両方のシナリオを同時進行させていくことで、「一人」のヒロインの物語を見ることができるわけですが、ここでも両者の関係は密接なものとなっています。現実世界においては主人公はヒロインたちの悩みを知ることはできても、それを解決することはできません。現実世界における主人公は自らも悩みを抱えた無力な存在だからです。しかしながらレイヤー世界では彼は異世界から来た「勇者」として世界を救う能力を持っています。レイヤー世界の中でも精霊たちは現実世界のヒロインと同じく窮地に立たされていますが、ここでは主人公は彼女たちを救うことができます。そしてレイヤー世界の精霊を助けた結果が反映されることで、現実世界のヒロインの問題も解決されることになります。そしてその「冒険」を題材にすることで主人公は絵本を完成することができるのです。そういう意味ではレイヤー世界はヒロインたちの内面の象徴であると同時に主人公の成長のための舞台ということができるでしょう。舞台設定、そしてヒロイン造形における二重構造の他にストーリー面でもヒロインたちの成長と主人公の成長という二つの成長物語という二重構造が用意されており、場所、キャラクター、物語という三つの二重構造が交差することで『エンジェルプレゼント』の作品世界は形成されているといえます。
 さて、この作品の最大の特徴であるレイヤー世界、そしてそれに関連した「夢」について最後にふれることにします。作品解釈という面から見れば、すでに述べてきましたようにレイヤー世界はヒロインたちの内的世界であるということができます。そこは彼女たちの置かれた状況、直面している課題を暗喩した様々なイメージで構成されたいわば「夢」の世界です。その世界になぜ主人公が入りこみ、精霊を助け出すことができたのか、それは彼が「失っていたもの」を取り戻した結果なのではないでしょうか。幼い頃彼はシーラカンスが空を飛ぶという奇妙なヴィジョンを見ていましたが、成長するにつれヴィジョンを見ることができなくなってしまいました。その能力の喪失が絵本作家としての創作活動の行き詰まり、創造力の枯渇に繋がったのでしょう。しかし都会の圧迫感から解放され、阿左美ノ里という場所の持つ不思議な力にふれていくにつれて彼は長い間忘れていたその能力を取り戻していきます。そして再び空飛ぶシーラカンスのヴィジョンを見た彼はそれが自分の内面を象徴した光景であることに気付きます。つまり彼のヴィジョンはレイヤー世界と同じく「夢」を具現化したものだといえます。そして彼の能力は文字通り「夢を見ること」だったのです。「夢を見ること」を思い出した彼はレイヤー世界に入り、そこに捕らわれていた精霊を助けることができました。その結果が現実世界においてヒロインの悩みを解消し、絵本を完成させるという形に反映されたのです。夢を見続けることが停滞している現実を変えていく力になる…少々気恥ずかしいメッセージではありますが、『エンジェルプレゼント』は主人公と同じく夢を見ることを忘れてしまった私たちにとっても「大切なもの」を思い出すきっかけとなる作品なのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

朝霧アヤメ(夢の精霊)

 今回紹介させていただくのはヘアデザイナーという「夢」と進学という現実との間で揺れ動いているアヤメです。内気で引っ込み思案なアヤメは自分の才能を過小評価していて、幼少からの夢を捨て大学進学というより実際的な進路を目指そうとしています。しかしながら主人公との出会いを通じて彼女はもう一度自分の夢について考え直すようになります。夢を持ちながらも一度も挑戦することなく断念してしまう…彼女のような境遇の人は多いのではないでしょうか。アヤメのレイヤー世界はシベリア鉄道、主人公の母校、南極観測基地など様々なシチュエーションが用意されています。彼女が夢の精霊として登場するこの「悪夢世界」こそレイヤー世界の中でも最も直接的に「夢」という性質を反映した世界だといえるでしょう。余談ですが、彼女のフルネームが『まぼろし月夜』のヒロインと一緒なのはどういうことなのでしょう?(あちらは名前がひらがなという違いはありますが…。)

 以上です。一般的な知名度は低い作品ですが、イベントやCGの数はかなり多めで、やりごたえのある作品なのではないでしょうか。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 12/03/01)


・研究の幅が広いラボー教授より、アクションRPGの研究レポートいただきました。総合点数も高くDCの名作のようですね。

Napple Tale〜Arsia in Daydream〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
17 76

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アクションRPG 発売元 セガ

 この作品は昨年セガから発売されたDCオリジナルのアクションRPGです。菅野よう子氏がBGMを作曲、そして坂本真綾さんが主演で主題歌を担当というアニメファンにはたまらないスタッフ構成がセールスポイントだったのですが、一般へのアピールが弱かったのかセールス的にはさほど振るいませんでした。しかしながらこのまま埋もれさせておくにはあまりにも惜しい作品ですので、今回研究課題として紹介させていただきます。
 それでは早速ゲームのアウトラインから始めます。ある夏至祭の夜、ごく普通の少女ポーチは新米の「たまガイド」ストレイナップによってナップルワールドという奇妙な世界に連れてこられます。ナップルワールドとは現実の世界(リアルワールド)で死んでしまった人間が死者が最終的にたどり着くべき世界である「深き夢の世界」(ディープドリーム)へ行く前に一時的に滞在する奇妙な中間世界のことで、たまガイドは死者の魂をナップルワールドに導き世話をする一種の死神のような存在です。ところがポーチは現実世界で死んだわけではなく、SN(ストレイナップの略称)のミスでナップルワールドに紛れ込んでしまったのです。ポーチが現実世界に戻るには彼女の中に宿っていた6つの「ペタル」という妖精を見つけ出さなければなりません。リアルワールドに戻るためナップルワールドに散らばったペタルを探すポーチの冒険が始まります。
 システムについてふれましょう。ナップルワールドというこの作品の舞台はナップルタウンという町パートと春夏秋冬の季節マップというアクションパートで構成されています。ナップルタウンで住人たちと会話することでクエストが提示され、そのクエストを季節マップで行うことでその成果がナップルタウンに反映されシナリオが進行するというのが基本的なサイクルとなります。ナップルタウンと季節マップは町とステージというゲームシステム的な相互関係の他に夢と現実にも似た物語的な意味での二重構造も持っているのですが、それについては後でふれることとします。勿論アクションRPGというだけあってゲーム進行のメインとなるのはやはり季節マップという要素です。季節マップはクォータービューの3Dマップをジャンプと攻撃という2つのボタンを駆使して進むという本格的なアクションゲーム風の構成になっています。ですがライフ制で穴に落ちてもミスにならず体力が減るだけなど難易度は抑えられており、アクションゲームが苦手なプレーヤーにも安心です。また各マップのラストにはボス戦がありますが、直前にセーブポイントがあり、仮に負けても攻略のヒントが表示されるのでそれほど苦戦させられることはないでしょう。さて、『ナップルテール』のシステムを語る上で欠かせないのが「パフェット」という存在です。パフェットとはナップルワールドの住人たちの役に立つ生物?で、マップで入手したアイテムを分解、合成して作ります。パフェットにはアクションパフェットと家具パフェットの二種があり、アクションパフェットは体力回復や攻撃、ジャンプ台などの能力を持つマップ攻略の助けとなるパフェットです。家具パフェットはナップルタウンの住人のリクエストに応じて作る文字通り家具の役目を果たすパフェットです。これらパフェットは全部で70種以上も存在し、それをコンプリートするのもゲームの大きな楽しみの一つなのではないでしょうか。
 キャラクターに移ります。ナップルワールドは「夢と目覚めの中間世界」というだけあって時間と場所、人と物が混ざり合った奇妙な世界です。そのためそこの住人も非常に個性的です。カエルと車が一体化したナップルタウンの市長フロッカーなどはその最たる例でしょう。彼らの言動は滑稽で笑いを誘うものですが、そのディフォルメされたキャラクター造形は風刺精神に裏打ちされた、いわば人間性の戯画化という意味合いの強いものではないでしょうか。この作品がナップルタウンと季節マップという二つのパートで構成されていることはすでに述べましたが、ナップルワールドの住人はそのどちらのパートにも同時に存在しています。しかし彼らはナップルタウンと季節マップではその性格が著しく違います。これはナップルタウンと季節マップが表裏一体の関係にあり、両者は離れていながらも連動していることを反映したものです。そして両方のパートに同時存在するキャラクターたちはそれぞれのキャラの持つ極端な特性を代弁した、いわば人格の断片といえるのではないでしょうか。極度に誇張されてはいますが、ナップルワールドの住人たちの造形は巧みに計算されており、作品の持つ意味をより重層的なものにしています。なお主人公のポーチについては後のお気に入りキャラの項目で語ることにします。
 次はストーリーについてです。失われたペタルを取り戻すため、主人公ポーチは季節マップを探索するわけですが、この季節マップの冒険にはポーチ自身の目的の他にナップルタウンの季節を取り戻すという目的もあります。ポーチが辿り着いた際、ナップルタウンは時間感覚が失われている奇妙な事態にありました。ナップルタウンの季節や時間を構成する要素が季節マップに紛れ込んでしまったため、ナップルタウンから四季が消えてしまったのです。四季が失われたことで様々な弊害が町に生じ、ポーチはそのトラブルの解決を住人たちから依頼されるのですが、その対処策として各季節マップにいる「パメラの親玉」(モンスターのボス)を倒すことの他に同じく各季節マップにいるナップルタウンの住人たちの「季節バージョン」という分身に会わなければなりません。キャラクターの項目でふれたように、ナップルワールドの住人は二つの場所に同時に存在しているわけですが、「季節」が失われている状態では両者の関連性は弱まっており、対照的な両者の間には接点が失われています。そしてポーチがナップルタウンと季節マップを往復しどちらの世界の「キャラクター」にも接することで離れていた分身同士の関係が緊密になり、両方の世界の連動性が回復されることになります。分断されていた「キャラクター」間の関連性を取り戻すことで「季節」が復活するというこの作品のクエストの構図は観念的で難解なものですが、これは分裂された人格の統合というプロセスを物語化したものだといえるでしょう。そして「夢」による影響が色濃く反映されたナップルワールドという世界はそのプロセスに最適な舞台なのでしょう。
 最後になりますが、『ナップルテール』の物語を語る上で重要なキーワードである「夢」という要素についてもう少し書かせていただきます。ナップルワールドが生と死、夢と目覚めの中間に位置する世界であることはすでにふれましたが、作中語られるナップルワールドの起源を伝える伝承によるとナップルワールドは女神イリュシアの見る夢から生じたとされています。この伝承はナップルワールドという混沌としたなんでもありの世界の本質をよく表現していますが、物語を終えた後に改めて見直してみると単なるエピソードに留まらず、作品全体の基幹となっていることがわかります。女神の見る夢が世界を構築する…この創世神話こそ『ナップルテール』の主題そのものといっていいでしょう。そしてその神話は作品の枠組みを越えて、ゲームという世界はそれぞれのプレーヤーが紡ぐ夢によって構築されている世界であるということをも意味しているのかもしれません。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

ポーチ・アリシア

 ここでは本文中のキャラクターの項目ではふれることができませんでした主人公ポーチについてとり上げることにしましょう。楽天的で感情をストレートに表すポーチはRPGの「勇者像」とはかなり異なります。ナップルワールドの救世主にも関わらず、本人にその自覚はあまりないようで、この「ハプニング」を結構楽しんでもいるようです。どこにでもいる普通の女の子という彼女から受ける印象は、作品の主題から導き出されたキャラクター造形の結果なのでしょう。またポーチのコスチュームは「花」をイメージしたものですが、この「花」というイメージも作品中で重要な役割を果たしています。このように巧みな計算の上に成立しているヒロインなのですが、小難しいことは抜きにしてもSNとの凸凹コンビによる冒険は素直に楽しむことができるのではないでしょうか。

 以上です。ラブリーポップな外見、マニア層を狙ったスタッフ、観念的な物語とかなり取っ付きにくい作品かもしれませんが、機会があれば是非プレイしていただきたい作品です。それでは長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 12/03/01)


・ラボー教授お得意のキッド作品より、今回は「てんたま」のレポートいただきました。メモリーズオフなど他作品との対比が興味深いです。

てんたま−1st Sunny Side−
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
15 72

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 キッド

キッドオリジナルのノベル型恋愛アドベンチャーとしては『メモリーズオフ』から数えて4作目にあたる『てんたま』ですが、今回ドリームキャストにDC用としては第6作目の恋愛アドベンチャーとして移植されました。今回紹介させていただくのはこのDC版『てんたま』です。それでは作品の概要から始めましょう。この作品はゲーム本編が開始される前にプロローグがあり、まずそこで主人公椎名の高校1年時のエピソードが語られます。その内容については詳しくふれることはできませんが、彼はそこである「別れ」を経験することになります。そして一年後、未だにその後遺症から抜け出せない椎名の元に天使見習いの花梨が現れます。花梨は天使界の卒業試験の課題として「一人の人間を幸せにすること」を課せられていて、その対象者として選ばれたのが椎名だというのです。突然の天使の来訪に当惑する椎名でしたが、やがて花梨に心を開き一緒に「幸せ探し」をすることになります。そしてその結末は…それはプレーヤーに委ねられることになります。
 システム面についてふれましょう。キッド作品のシステムはテキストノベルADVとしてはすでに完成されている感がありますので、このDC版『てんたま』では特に大きな改良はなされていません。相変わらずの使い勝手の良さで、プレイ環境としては申し分ないのですが、ただ今回は恒例のアペンドシナリオのダウンロードが隠し要素ということでシナリオの一般公募は行われませんでした。同時期に『メモリーズオフ2nd』のアペンドシナリオが一般募集されていたという事情もあるのでしょうが、折角の機能を生かすタイミングが失われてしまったことは残念でなりません。一応この作品にも「うらたま」というおまけシナリオがあるのですが、やはりユーザーによる投稿作品がプレイできなかったことへの不満は残ります。システム面に関連したこの作品の特色としては登場人物の視点の変更が頻繁に行われることがあげられます。作中の視点が主人公の椎名に限定されず、さまざまなキャラクターの視点に変わりながら物語が進行し、また主人公以外のキャラの視点時にも選択肢が登場するなど、従来の恋愛ADVとは一風変わった作りになっています。物語を主人公以外の視点から眺めることで、他のキャラクター、特にヒロインたちの心情描写をより細やかなものにしようという意図が感じられますが、この試みが成功しているといえるかどうかは微妙なところです。多視点という方法は小説においては一般的ですが、主人公とプレーヤーとの関係がより密接であるゲームという媒体においては珍しい手法といえます。特に恋愛ゲームの場合、主人公との「同化」を求めるプレーヤーも多く、視点の変更は感情移入の妨げになると受け取られても仕方のない面があります。ノベル形式ADVがより小説的な手法、方向性に傾いていくことは、果たしてユーザーの求めるものなのか…疑問が残るところではあります。 次はキャラクターについてです。例によってこの作品には主人公にとっての過去の象徴、別離すべき存在であるキャラクターが登場します。プロローグでは主にその少女、双葉と主人公との関係が描かれますが、他の作品とは異なり彼女のエンディングはありません。この扱いは作品の主旨を反映したものといえますが、それについては花梨というメインヒロインの役割と併せてストーリーの項目でふれることにします。『てんたま』の登場人物の核としてあげることができるのが、主人公椎名と千夏、貴史という男二人、女一人という幼ななじみ三人組とそれぞれを担当する見習い天使である花梨、奈菜、葵の三人組、計六名の関係です。自分の担当を幸せにしたいという天使側と微妙なすれ違いを続ける主人公たち、そのもどかしい葛藤が作品の大きなウェイトを占めています。もちろん主人公の「幸せ」の対象として、女子高のラクロス部員である初音と真央、主人公の後輩の理香子、貴史の兄に想いを寄せていた結花という四人のヒロインたちが登場しているのですが、前述の六人の関係の前にはやや影が薄くなっています。「お約束」も含めてそれぞれのヒロインたちは基本的なツボを考慮して配置されてはいますが、作品の構造を考えると立場的にはどうしても弱いものにならざるを得ないのでしょう。また恋愛ゲームとして見た場合、この作品に登場する女性キャラの内、クリア対象となるキャラの割合が少ないことは大きな特徴だといえます。主人公が知り合うことのできる女性の五割程度としかエンディングを迎えられないというのは、恋愛ゲームとしてはかなり少ない割合なのではないでしょうか。
 さて、ストーリーとそれに関連するメインヒロインの役割についてふれることにしましょう。キッドの作品群では一貫して「過去との決別と再出発」というテーマが扱われているのですが、この『てんたま』も例外ではありません。長いプロローグにて語られる「別れ」の傷を癒しつつ、過去を断ち切って現在の「幸せ」を手に入れる…『てんたま』の構図は初代『メモリーズオフ』にもっとも近いものといえるでしょう。もちろん、この作品の構図と『メモリーズオフ』の構図には相違があります。『てんたま』における「別離」は『メモリーズオフ』を含めたどの作品よりも徹底されたものになっています。『てんたま』では「別離」の対象である双葉のエンディングが用意されておらず、主人公の過去との決別はなかば強制的なものであるといえるでしょう。主人公の性格的な要因もあるのですが、主人公の周囲のキャラクター、千夏と貴史という幼ななじみはもちろん、何よりも主人公を「幸せ」にするという目的を持っている花梨が「過去」に捕らわれることを許さないのです。主人公の目を現在に向けさせるという意味では花梨の役割は『メモリーズオフ』の唯笑と重なる部分があります。しかし唯笑が智也と「過去」を共有していて、容易には越えられない「一線」に縛られていたのに対し、花梨は椎名との間には共有されている「過去」はありません。そのため花梨の「過去」を見る目は客観的でシビアなものがあります。「幸せ」は「過去」に捕らわれ続けることとは違う…このある意味突き放したような花梨の姿勢は、『メモリーズオフ』を含めた他の作品群には見られません。また他の作品では「別離」をテーマとしながらも「過去」を選択するというエンディングが用意されていました。作品の主題を徹底するという意味においてはこの処置は生ぬるいものですが、ユーザーの中にはそれでもあえて「過去」を選択することを望むプレーヤーもいます。そういったプレーヤーへの「救済処置」を奪う立場にいるのが花梨です。断ち切られるべき「過去」の象徴から「過去」との決別の推進役へ…このメインヒロインの役割の逆転が『てんたま』のストーリーにおける大きな特徴であることは間違いありません。
 最後にこの作品における天使という存在について考えてみたいと思います。『てんたま』において花梨たち天使見習いは「一人の人間を幸せにすること」という使命を与えられています。これは裏返せば天使見習いが派遣される人間は「幸せ」ではないということを意味しています。主人公たち三人はその微妙な関係ゆえ、それぞれの抱えている問題を解決してやりたいと思いながらも、それを実現できないでいます。自分たちの現状が望ましいものではないことを自覚しつつも現状からの変化を恐れている…椎名たち三人の停滞した状況は「幸せ」とはほど遠いものです。そんな自分からは新しい一歩を踏み出すことのできない人間を後押しし、現実に再び目を向けさせることが『てんたま』での天使の役割だといえるのではないでしょうか。「幸せ」は過去にはない…このシビアな現実指向のメッセージをファンタジー的存在である天使が伝えるというところにあるいは大きな意味があるのかもしれません。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

渡瀬 双葉

 今回はあえてこの作品の主旨に反して、双葉をとりあげることにいたします。本文中でふれた通り双葉にはエンディングが用意されていません。彼女との「別れ」はそれだけ決定的なものだといえますが、個人的にはクリア可能なヒロインの中に彼女を越える魅力を持ったキャラクターを見つけることはできませんでした。キャラクター分類上での「属性」も大きな要因ではありますが、何より自らの幸福よりも主人公の幸せを願う彼女の健気な姿勢に心を動かされました。自分という「過去」に縛られることなく主人公には新たな幸せを見つけて欲しい…もしかするとそんな双葉の願いが具現化した存在が花梨という天使だったのかもしれません。

 以上です。他の作品と同じ主題を扱っているにも関わらず、本編中の雰囲気はスラップスティック調で、シリアス一辺倒という展開ではありません。そういう面では一般にも受け入れられやすい作品なのではないでしょうか。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 11/12/01 一部訂正 04/28/02)


・話題作だけあってレポートもちょっとてこずられたようです。ネタばれなしでよくここまでレポートまとめられたものです。まだの方も安心してお読みください。作品の雰囲気が良くわかりますよ。

AIR(DC版)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 75

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 昨年PC界を賑わせた『AIR』ですが、この秋ほぼ一年遅れで家庭用版として再登場することになりました。今回取り上げさせていただくのは、この移植版であるDC版『AIR』です。なおオリジナルのPC版はすでにまいや所長のPC研究室で紹介済みですので、作品の基本的設定等は割愛させていただきます。
 それではDC版の特色から始めます。今回の移植に際しての大きな変更点はキャラクターのフルボイス化と全年齢への対応の二点です。『Kanon』でさんざん議論の対象になったキャラクターの音声追加ですが、今回もフルボイス化という選択がとられました。前回の反省からかキャスティング、演技指導を含めた録音体制が全面的に見直されたDC版『AIR』ですが、その効果は…前回よりは批判的な意見は減ったようではあります。結局のところユーザー全員が納得するキャスティングというものはないでしょうし、Key作品のファンは特にこの問題に神経質なので、フルボイス化に関する問題には究極的な解決はないのでしょう。そして今回の音声追加で特筆すべきポイントとしてあげることができるのは主人公の名前を変更すると強制的に音声なしのモードにされてしまうということです。音声付きの作品における主人公の名前に関してはこれまで様々な試みがなされてきました。主人公の名前変更が可能な作品の場合多いのが「あなた」などの代名詞に呼称を統一するケースと主人公の名前の部分だけ音声がつかないというケースです。しかしながら両者共に不自然さは否めず、最近では名前が変更できない作品も増えてきています。「国崎往人」という名前がどれほどファンに浸透、定着しているのかは解りませんが、実質的に名前変更は不可という今回の仕様はやはりファンへの配慮の一環であることは確かでしょう。あと音声面でふれるべき点は脇役のキャスティングの豪華さでしょう。グラフィックもないようなキャラクターの声を有名声優が担当しており、ある意味メインキャラよりも力が入っているのかもしれません。もう一方の変更点である全年齢化の方ですが、前回のDC版『Kanon』よりは変更の度合いが緩やかなものになっています。当然グラフィックや場面自体のテキストは削除されているのですが、シナリオの流れからは行為自体が削除されておらず、一般的なPCからの移植作品に近い構成になっています。この作品における「場面」自体の重要性は高くないと思われますが、削除の対象にならなかったことを見ると制作サイドの見解は違っているのかもしれません。DC版のシステム面ですが、基本的にインターチャネルスタンダードといえるもので、大きな不満もない代わりに使いやすいということもないという無難なものになっています。今回ユニークなのは方向ボタンの上でゲーム中の文章を戻すことができるということです。選択肢を間違えても文章を戻して選び直すことが出来、ついうっかりといった「事故」の確率は減ったのではないでしょうか。ちなみにこの機能はDC版『Kanon』ではありませんでした。(DC版『Canvas』から登場。)
 さて、一通りDC版の特徴についてふれましたので、ここからは作品そのものの内容面に移ります。まずはキャラクターについてです。この作品に登場するヒロインは一応三人ということになります。キャラクター造形としては独特のエキセントリックさにさらに磨きがかかり、表面的にはより浮世離れした雰囲気を漂わせています。特に幼児性やコミュニケーション不全という側面が誇張されており、年齢の割には人格が成熟していないという印象を受けます。この極端なキャラ造形は家族問題と孤立という「DREAM」編の主題を強調するためのものであると思われます。健全な内面的成長を阻害された家庭環境…普段の振る舞いが奇異な分、抱える問題の深刻さが浮かび上がってきます。またこの作品の特徴として各ヒロインに対応したサブキャラクターがそれぞれ一人づつ登場することがあげられます。それぞれ各ヒロインの「母親」ないし「妹」という役割を背負っているのですが、どのキャラも本来の意味での母親や妹ではありません。本来の母親や妹がその役目を果たすことができない状況にあり、その代わりの役目をそれぞれのキャラクターが務めているという構図になっています。一見うまくいっているかのような各ヒロインとの関係ですが、「作られた」関係であることの弊害も大きく、各キャラクターの内面的葛藤も大きなものとなっています。障害を克服し本物でない家族を本物にする…それぞれ置かれた立場は微妙に違えど各サブキャラクターの目的は共通しているといえます。そしてどのケースにも当てはまることですが、父親の不在という要因が家庭問題を深刻なものにしています。その父親不在の隙間を埋める役目を担うのが主人公だといえるのかもしれません。主人公、ヒロイン、サブキャラクターという三人一組の「家族」における主人公のポジションを考えると、主人公はヒロインの恋人という立場の他に「父親」という役割も兼ねているように見受けられます。主人公はヒロインにとって恋人であると同時に父親でもあることが求められるこの作品の構図は受け入れ難い面もありますが、ある意味での男性像の理想ではあるのでしょう。
 続いてストーリー面についてふれておきましょう。この作品の構成は独特の三部構成となっています。それぞれ視点、時間の異なる三つのパートを組み合わせることで一つの物語を形成しているわけですが、大別しますと「DREAM」と「SUMMER」以降という風に分類されるかと思われます。三人のヒロインによる独立した物語である「DREAM」と「一人」のヒロインの物語に焦点を絞った「SUMMER」以降という区分になりますが、当然のことながら「SUMMER」以後の展開が重要視されており、「DREAM」、特に観鈴以外の物語はあくまでサイドストーリーに留まっている印象を受けます。「SUMMER」及び「AIR」で提示される物語はスケールも大きく、歴史や「種」という概念へのアプローチを含んでおり、制作者の主観が色濃く反映されています。「SUMMER」以降の壮大かつ複雑な物語構造は、近年のトレンドにそった神話的な色彩が強く、この作品が熱狂的支持を受けていることの一因となっていると思われます。確かに巨大な枠組みの中に作品世界を統合しようとするこの試みは、作品の構成にスケール感や神話的価値観を求める最近の風潮に適合しており、一般的ユーザーには違和感なく受け入れられるものなのかもしれません。しかしながらその価値観は壮大である反面、あまりにも方向性が限定されており、窮屈で息苦しい印象を受けるものであることも事実です。「AIR」で明確になる人間の及ばない場所にある基準、論理の元に人間の歴史、営みを組み込もうという意図はそれまで作品内で追求してきた「家族の再生」という主題とはいまひとつ噛み合っていないように思えます。巨視的な摂理の中に「家族」という概念を当てはめようとしていることは理解できるのですが、人の営みというものはそのような枠組みの範囲にきれいに収まるものではないのではないでしょうか。個々に独立したエピソードとしては「家族」を描いた三つの物語は輝きを放っていますが、人の届かない場所にある「理」を基準とした作品全体の構図に取り込まれた瞬間、急速にその存在意義が弱まってしまうように見えてなりません。 小さな視点と大きな視点を融合させ、壮大な世界観を描き出すことは、物語をつくる者にとっては非常に魅力的な対象なのでしょう。しかしながら大きな視点を描く場合、どうしても個々の小さな視点、立場への配慮がおろそかになりがちです。大きな視点からの大義や論理によって個々の人間の立場を規定し意味付けようとしたとき、そこにはどうしようもない閉塞感が生まれます。それを宿業とか理とかいう言葉で片付けてしまうのは簡単ですし、もしかするとそれが一般的な受け手の求めるものなのかもしれません。ですがそれは多様な価値観や自由意志による選択が価値を持たない状況、言い替えれば個人の尊厳がないがしろにされた状況であることは決して忘れてはならないのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

遠野 美凪

 ここで誰を取り上げようか…観鈴にしようかとも思いましたが、やはりメインヒロイン以外からということで今回は美凪です。彼女は深刻な家庭問題のために「演技」することを強いられていて、その重圧から彼女は「夢」を見ることを選びます。その「夢」は結局は現実逃避なのでしょうが、奇妙なことに美凪は自分が夢を見ていることを自覚しています。自分の現状を把握していながらそこから目覚ようとはしない…主人公のいうようにそれは美凪の弱さなのでしょう。しかしながらそれを非難する資格は主人公にはないのではないでしょうか。彼女の「居場所」についてトゥルーエンドで示される回答にはいささか納得し難いものがあります。うがった見方をすれば美凪はこの作品の「大義」による犠牲者なのかもしれません。ちなみにDC版の声は柚木涼香さんが担当されています。

 以上です。非常に抽象的なレポートとなってしまいましたが、できる限り作品の内容についての具体的な記述を避けた結果とご了承ください。それでは長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 10/27/01)


・AIRのレポート提出にあわせて、以前掲載させていただいておりましたKanon(DC版)レポート改訂版いただきました。よって前回分につきましては削除させていただいております。さらに詳しくお書きになられているこちらをどうぞ。

Kanon(DC版)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 74

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 一昨年のPCゲームシーンの話題の中心だった感のある『Kanon』、その家庭用機種への移植第一弾が今回紹介しますDC版になります。PC版は所長の研究課題として紹介済みということで、例によって基本的な設定面については省かせていただきます。まずはPC版からの変更点ですが、全年齢対象になったこととキャラクターに音声がついたことの二点です。全年齢化ということで当然そちらの場面が削除されているのですが、その削除の度合いが徹底されており、シナリオの中にはその痕跡がほとんど残っていません。「少女の夢」という作品の基幹ともいえる要素の持つイメージ、性質を考えると、今回の徹底した全年齢化は必然的な決定だったといえるのではないでしょうか。さて、もう一方の変更点であるフルボイス化なのですが、熱狂的なPC版ユーザーからの否定的意見も数多く、この移植版へのユーザーの不満の大部分がここに集中していると思われます。PC版のキャラクターのイメージからキャスティング、演技共にかけ離れているというのが今回のフルボイス化への否定的意見の主な理由のようです。今回の配役を見ますと、最近人気のある売れっ子声優を多く揃えたキャスティングとなっています。話題作には人気声優を、というのが制作者の意図だったのでしょう。しかしその意図はオリジナル版を支持するユーザー層の欲求するものとは食い違っていたようです。PC版に魅せられた人々にとっては声優の知名度とか人気とかいう要素は何のアピールにもならないようです。例え無名であったとしてもキャラクターを「喰わない」声優を起用してほしいというのが彼らの本音なのではないでしょうか。もちろんこの作品に出演している声優の力量が不足しているとはいえません。しかしながらキャラクターの前に声優ありきという制作姿勢が感じられなくもなく、熱狂的ユーザーはそれに敏感に反応したのでしょう。この作品でのキャスティングをめぐる議論は少々行き過ぎの感もありますが、これまで見過ごされてきたキャラクターと声優の関係のあり方という問題を考え直させる契機にはなったといえるでしょう。 
 オーソドックスなテキストノベル形式のADVということもあり、システム面については今回特筆すべきポイントがありませんので、次はキャラクターについてふれることとします。この作品のキャラ造形はKey作品独特の他では見られないものですが、ファンからは圧倒的な支持を集めています。奇妙な口癖、微妙に噛み合っていない会話、奇行ともいえる行動の数々など物語前半部分の日常的なパートでの姿はかなりエキセントリックでつかみどころのないように映ります。しかしながら終盤になって物語が動き始めると、一転して悲劇性と健気さが強調されプレーヤーの同情を誘います。表面的な奇異さと内面に隠された健気さの強烈なコントラスト、その絶妙な匙加減がキャラクターの魅力を高めているのでしょう。そして奇異さと健気さという対照的な要素に共通するキーワードとしてあげることができるのが良くも悪くも「幼さ」であるといえるのではないでしょうか。外面と内面を統合したキャラクターの全体像から漂う「幼さ」、それがユーザーの心理をくすぐるのでしょう。守ってあげたい、保護してあげたい少女…「幼さ」を強調した『Kanon』におけるヒロイン像こそ現在の多くのユーザーの求めるヒロイン像なのかもしれません。ヒロイン造形の他ではサブキャラクターの配置の巧みさが目を引きます。母親、姉、親友…各ヒロインにとっての「かけがえのない人」との関係が作品の重要な要素であり、物語の大きな見せ場であることは間違いありません。この「かけがえのない人」との繋がり、言い替えれば「家族」のあり方というテーマを膨らませることによって生まれたのがこの作品の次回作『AIR』だったのではないでしょうか。
 続いてストーリー面に移ります。『Kanon』の物語としての特徴を要約しますと、プレーヤーの同情を引き出すキャラクターとツボを押さえた演出に裏打ちされた動的で落差の大きいストーリーということになるかと思いますが、その効果を最大限に高めるために「月宮あゆ」という絶対的ヒロインを設定し、彼女の物語による作品世界の統合を図っています。あゆは主人公にとって特別な絆を持った、他のキャラクターとは区別されたポジションにいるキャラクターですが、彼女の存在なしでは作品そのものが成立しえないというほど、その役割は絶対的なものです。主人公とあゆ、そして夢と現実という二つの視点が複雑に混ざり合った『Kanon』の物語世界は非常に効果的で強固な作品構造ではありますが、その限定された方向性がある種の息苦しさを生み出していることも否定できません。複数のヒロインによる各エピソードがあゆの物語によって統合されてしまうと急速に色褪せてしまう…『AIR』のケースとも重なりますが、統合された作品世界に固執しすぎの感がなきにしもありません。それはそれで「ノベル」の持つ性質ではあるのでしょうが…。 最後になりますが、この作品の鍵である「奇跡」についてふれておきましょう。各シナリオ共通して物語は終盤急速に悲劇的色彩を強めていきますが、「奇跡」が生じることによってその絶望的状況が打破され、「ハッピーエンド」を迎えることになります。この「奇跡」が現実に起こったことなのか、あるいは閉じられた世界の中で生じた幻に過ぎないのか、それはプレーヤーによって解釈が分かれるところではありますが、いささか強引な「反則」に近い解決策であることには変わりありません。しかしながらその「奇跡」によるハッピーエンドは多くのユーザーに支持されました。なぜ「奇跡」が支持されたのか…それにはどうもゲームという媒体特有のユーザー心理が働いた結果であるように思われます。受け手であるプレーヤー自身が直接的に参加しないことには物語が成立しないのがゲームという媒体の特徴です。受け手自身が物語を動かすゲームの場合、小説や映画といった受け手が常に受け身の状態にある他の媒体よりもはるかに作品への感情移入の度合いが強まります。そして作品世界に没入すればするほど自らの望む結末を物語に要求するようになります。他の媒体では客観的に対処できた悲劇的結末もゲームという媒体の中で自身が物語に参加し、苦労して辿りついた結末であるならばそれは受け入れ難いものになるのでしょう。「お話の中でくらい、ハッピーエンドが見たいじゃないですか」この作品中での栞の台詞が恐らく多くのゲーマーの偽らざる心境を代弁していると思われます。そしてそれは同時にこの「おとぎ話」の中で「奇跡」が存在することを許される理由でもあるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

美坂 栞

 一般的な人気においては恐らく下位に位置しているであろうと思われる栞ですが、今回はあえて彼女をとり上げさせていただきます。栞は典型的な病弱キャラで、彼女のシナリオの設定や展開はいわゆる病弱キャラの「お約束」で固められています。いささか典型的すぎるきらいはあるのですが、「私はそういうお約束は嫌いではないです」ということで(笑)。あと栞の他のキャラクターにない魅力としては、そのポジションの異色性があげられると思います。彼女は他のヒロインたちとは違い、過去に主人公との接点を持っていません。そのため主人公がヒロインとの過去の絆を思い出すことで物語が進行する他のシナリオと異なり、栞のシナリオは出会いから新たな関係を築いていくという展開になっています。また制作者の意図を代弁しているかのような台詞が多いことも単なる物語中のキャラクターという存在を逸脱しているかのようであり、彼女のポジションの特異さを際だたせています。

 以上です。DC版に続き、PS2にも移植されることが決定しており、オリジナル版の登場から時間は経てどその人気は衰えを知らぬようです。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 10/27/01 一部訂正 04/28/02)


・作品発売から速攻研究、レポート提出いただきました。日本一速い、詳しいレポートとなっているのではないでしょうか。ラボー教授の研究姿勢にはいつもながら感銘いたします。まいやも見習わなければ…。

メモリーズオフ2nd
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 75

対応機種 ドリームキャスト プレイステーション
発売元 キッド ジャンル 恋愛アドベンチャー

 前作『メモリーズオフ』は、キッドにとって従来の移植専門メーカーというイメージを一変させたターニングポイントともいうべき作品で、恐らくキッドのオリジナル作品群の中でも最も人気のある作品だと思われます。人気作ということで長らく続編が望まれていましたが、この秋初代PS版から2年を経てようやく続編が登場することになりました。そのファン待望の続編『メモリーズオフ2nd』を今回は紹介させていただきます。
 それでは作品の設定からです。『2nd』は前作の1年後、前作の舞台からもほど近い海辺の町「桜峰」と「浜咲」を主な舞台としています。主人公の「伊波健」は桜峰にある古アパート「朝凪荘」で一人暮らししている高校3年生です。彼はふとしたきっかけから同級生の「白河ほたる」から告白され、交際していますが、ピアノの全国大会を目指して特訓しているほたるとは違い、クラブからも引退し、かといって受験勉強にも身が入らない健はその関係に漠然とした違和感を感じています。そんな夏のある日、主人公の隣の部屋に謎の女性「南つばめ」が引っ越してきます。健の高校の夏期講習の臨時講師だという彼女の登場はほたると健の関係に微妙なすれ違いを生み出します。一度生じたほころびは容易には修復できず、二人の関係は大きな転換期を迎えることになります。揺れ動くほたると健の関係、そして新たなる出会いと恋…前作よりもシリアスな恋愛物語が『2nd』では展開されることになります。
 システム面についてですが、『2nd』はこれまでの作品群で進化、改良を続けてきたキッド流のノベル形式システムの集大成になっており、快適なプレイが楽しめます。『夢のつばさ』(DC版)からの追加点としてはイベントシーンの表題が表示されることとイベントシーンのチェックリストが追加されたことがあげられます。いずれもゲーム進行に役立つ追加点で、プレーヤーにかかる負担がさらに軽減されています。またDC版に限定されますが、今回もアペンドシナリオのダウンロードが健在です。『Never7』と『夢のつばさ』で採用されたこのシステムは、ユーザーが書いたアナザーストーリーがゲームとして配信されるという画期的な企画で、それまでの追加シナリオの概念を打ち破るシステムとして高く評価できます。
 さて、この作品は「続編」ということもあり、前作『メモリーズオフ』との関連も多く見られます。前作の主人公智也の親友の稲穂信がメインキャラとして登場していたり、信の飼っている犬の名前が「トモヤ」だったりする点はよく知られていますが、その他のヒロインたちも思わぬ形で再登場しており、そのイベントを探すのも一興でしょう。(ほんの端役に過ぎませんが。)BGMでも前作のアレンジ曲が数曲用いられており、作品の舞台が共有されていることを感じさせられます。細かいところでは作中で使用されている携帯の着メロも前作のBGMがさりげなく流用されており、シリーズのファンには嬉しいポイントでしょう。また『メモリーズオフ』以外のキッド作品からも様々なネタが採り入れられており、この作品がこれまでのオリジナル作品群の集大成的性質を帯びていることをうかがわせます。
 次はキャラクターについてです。この作品の大きな特徴としてあげられるのは男性キャラが二人登場するという点です。一人はおなじみ稲穂信、もう一人は主人公のクラブのキャプテンだった中森翔太です。二人のうち一般的な男性キャラの役割を与えられているのは翔太の方で、あるヒロインとの三角関係におけるライバルという設定になっています。もう一方の信の役割は特殊で、主人公健の相談役的な立場を与えられています。今回彼はどのヒロインにも恋愛感情を持っておらず、物語への関わり方はあくまで第三者的なものに留まっています。これは信が『メモリーズオフ』というシリーズの連続性を確保しプレーヤーにそれを印象づけるための狂言回し的なポジションにあることを意味していると思われます。一歩引いた場所から物語を見届ける「メモオフ世界の生き証人」…シリーズものならではのユニークな役割です。ヒロインに目を向けますと、やはり白河ほたるというキャラの特殊性が目に付きます。彼女は彩花や遊那といった「キッドメインヒロイン」の系譜に連なるキャラで、例によって「別離」というキーワードと密接な関係にあるキャラクターです。しかしながら他のケースと異なるのは彼女と主人公との関係は幼少のころから培われてきたものではなく、1年未満という短期間の絆でしかないという点です。そのため他のメインヒロインよりも主人公との結び付きは希薄です。新たな出会い一つで揺らいでしまう関係…冷静に見れば二人の関係はその程度のものでしかありません。しかしこの関係が特殊なのはほたるの健に対する思い入れが尋常ではないというところにあります。健との関係にどうしてそこまで入れ込めるのか、それは彼女の無垢さ、あるいは人生経験の不足からくるものでしょうが、プレーヤーにはそれがあたかも不滅の絆であったかのように錯覚させる説得力を持っています。そしてこの錯覚こそが『2nd』における別離の効果を最大限に引き出す武器になっているといえるでしょう。ほたる以外の顔ぶれを見ますと主人公の臨時講師のつばめ、ほたるの親友の巴、主人公のクラスメイトの水泳部員鷹乃、ほたるの姉の静流、そして主人公のバイト仲間の希という面々です。ほたると親しい間柄にある者と遠い間柄にある者という「別離」の物語の相手役としてのバリエーションに配慮された設定で、作品の主題に適したバランスのとれた人選だといえるでしょう。
 ストーリーに移ります。この作品の主題は従来と同じく別離と再出発ということになりますが、設定面で様々な工夫がこらされていた他の作品とは異なり、直接的で裏表のない物語の状況設定になっています。超日常的なシチュエーションもなければ重大な伏線もない「ありふれた」状況における恋愛…『2nd』はある意味での現実路線を追求した作品だといえます。作中において前作で用いられていた「帰国子女」とか「薄幸の下級生」という設定を現実離れしたものとして揶揄する場面があるように、『2nd』には続編でありながらも前作を客観的に評価し、その「恋愛AVDらしさ」から脱皮しようとする姿勢が見受けられます。そしてその結果が内省的で優柔不断な主人公と無垢で一途なヒロインとの間の「なんとなく結ばれた不確かな絆」を出発点とした不快感と痛みを伴う別離の物語という形に結実したのでしょう。誰かを選ぶということは誰かを傷つけることであり、全員が幸福になる恋愛はない…作中でいうところの「予定調和のないラブストーリー」とは恐らくそういうことなのでしょう。シナリオの構成面の特色としては今回も複数ライターによる分業制が採用されている点があげられます。つばめ編や希編に代表されるように今回はそれぞれのライターの個性を重視したシナリオ作りがなされており、各エピソードの独自性が際だっています。やや作品全体の整合性や統一感が損なわれている感があることは否定できませんが、それを補うだけの幅と多様性が作品に与えられており、総合的に判断して今回の分業制は成功しているといえるのではないでしょうか。
 最後に続編としての『2nd』の位置付けについて書きたいと思います。人気作品の続編を作る場合問題となるのは「前作との共通点をどのように持たせるか」という点になります。キャラクターを再登場させたり、舞台を共通化させたり、システムを流用したりとその方法は様々ですが、一般的な続編において共通している課題は「前作のプレイ時の感覚を再現すること」だといえます。そのゲームでしか味わうことのできない感覚を再体験したい…続編を購入するユーザーの大多数の動機はそこにあると思われます。今回の『2nd』の場合、外面的にはシステムと舞台を前作と共通させるという選択がなされており、主題面でも同一のモチーフが追求されています。しかしながら『2nd』のプレイ感覚は前作とは大きく異なります。この作品には前作の甘酸っぱく切ない優等生恋愛ADV的なムードは感じられません。『2nd』のプレイ感覚はあくまで苦く痛々しい喪失感に満ちたものです。「続編」というには両者の作風はあまりに異なっており、前作の面影を追い求めるプレーヤーは当惑するしかありません。それではなぜこれほどの作風の変化が生じたのでしょう?前作『メモリーズオフ』はキッドとしては初の本格的ノベル形式恋愛ADVでした。そのため冒険を避けた手堅い制作姿勢が貫かれています。定型を崩さずその上で独自の味付けを施す…その「無難さ」がある意味心地よさとなってユーザーの支持を集めたのでしょう。しかしながらオリジナル作品を次々と発表し、経験と実績をある程度積んだ現在、その制作姿勢がより冒険的で独自性を追求する方向に推移するのはある意味当然といえます。その制作姿勢の違いが同一のテーマを追求しながらも、作風が大きく異なるという結果を生んだのでしょう。この作品の「心地よさ」とはほど遠い「苦々しさ」が一般に支持されるかどうかは疑問が残りますが、あえてこれほどの冒険を看板タイトルの続編で行ったところに制作サイドのただならぬ意欲は感じることができます。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

南 つばめ

 今回取り上げさせていただくのは健の隣人かつ臨時講師という微妙なポジションにいるつばめです。恐らく大半のプレーヤーが物語の冒頭から結末に至るまで彼女の言動に当惑させられたのではないかと思います。含みの多い暗喩を散りばめた物言い、常識を越えた突飛な行動は先生という設定のイメージからはかけ離れており、得体の知れない独特のムードを醸し出しています。しかしながら彼女の言動は過去の境遇、体験から導き出される必然的なもので、物語と密接に結び付いています。物語終盤における彼女の行動は許すことのできないものかもしれません。しかし彼女にはそうすることしかできなかったのも事実であり、そういう負の側面もつばめの魅力といえるのも事実ではないでしょうか。

 以上です。前作とのギャップに戸惑うことも多く、必ずしもユーザーの期待通りの作品とはいえないかもしれませんが、意欲的な力作であることは確かです。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 10/11/01)


・まいやの研究室(PC)の方でも高評価をつけている作品です。今回のラボー教授はDC版の研究レポートとしていただきました。人気作だけあってラボー教授の評価もおおむね良いようです。PC版とは一部変更されているところもあるようですね。

こみっくパーティー
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 74

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル アドベンチャー 発売元 アクアプラス

 発売が発表されてから一向に情報がなく、一時は「出るのか?」とまでいわれたDC版『こみパ』。情報が公開されるようになってからも発売日が何度も延期され、ユーザーをやきもきさせていましたが、先日ようやく発売になりました。今回はこの夏いろいろな意味で話題になりましたDC版『こみっくパーティー』を紹介しましょう。原作であるPC版は大ヒットし、アニメ化もされるなど非常にメジャーな作品ですし、研究課題としてすでに所長も取り上げておられるので、舞台設定やゲームの概要、キャラクターについての基本的な紹介は今回は省略させていただきます。
 それでは早速システム面から始めたいと思います。ジャンル区分ではアドベンチャーと表記されていますが、『こみっくパーティー』はSLG色の強い作品です。日々のスケジュール管理とパラメーターのアップがゲーム進行に与える影響が大きく、場所移動とイベント発生、選択肢のチョイスというADV的要素よりもそちらに多くの時間を取られることになります。そのSLG要素を構成するのが同人誌作成という作業なのですが、今回のDC版の大きな変更点として、原稿の作成がコマンド入力方式になったことがあげられます。これは原稿は方向キー、表紙はABXYボタンを用いて指定されたコマンドを入力していくというものです。コマンド入力に成功すると作品のクオリティが上がり、失敗すると下がります。また主人公のパラメーターが上がるにつれてコマンドが簡単になり、より多くの原稿作成が可能になります。単調になりがちな原稿作成をゲーム感覚で楽しめるようにしようとする試みなのでしょうが、これには賛否両論あります。格闘ゲームのようなコマンド入力は慣れていないと大変ですし、苦手な人にとってはかえって重荷に感じられるのではないでしょうか。逆に得意な人にとってはプレーヤーの力次第でより多くの原稿を完成させられるこの方式は歓迎すべきものなのでしょう。ところで今回システム面でもっともプレーヤーを悩ませているのが「フリーズ問題」でしょう。ゲーム中に突然フリーズし電源を落とすしかないという状況が頻発するという報告は数多く、私も何度か経験しています。さらにVMにセーブされたデータ(他のゲームのデータを含む)が破損するという報告もあります。DCにおいて発売された作品でこれほど不具合が頻発した例は他になく、この作品への批判の大部分がこの問題に集中しています。ソフトの発売を何度も延期しながらこのような大きな不具合を解消できなかったことは非常に残念でなりません。
 次にキャラクターについて少々。人気作品だけあってヒロインたちの造形はツボを押さえています。年齢、タイプの揃え方、メリハリのきいた描写など有名ブランドならではの手慣れた作りで、ユーザーへのアピール度は充分です。そして今回のDC版で追加された新キャラとして「御影すばる」がいますが、合気道の使い手で漫画家志望という一風変わったキャラです。「ぱぎゅー」という独特の悲鳴?や「ですの」という語尾などとにかく台詞に特徴があり、従来にないタイプのキャラを作ろうという意欲が見られます。またヒロイン以外のキャラクターも個性的で、独特の存在感があります。特に大志のインパクトは強烈で主人公の友人キャラのイメージを完全に変えてしまったといっていいでしょう。この作品ではヒロイン、脇役が一体となって同人誌即売会という特殊な世界が生き生きと描かれています。
 ストーリーに移ります。当初主人公は九品仏大志に強制され、右も左もわからない状態で同人の世界に入っていくわけですが、次第にそれまで発散できなかった情熱を漫画制作に注いでいくことになります。そして同人活動を通じてそれぞれのヒロインと出会っていきますが、彼の同人活動、そして漫画そのものへの関わり方は各ヒロインによって微妙に変化していきます。しかしながらほとんどのケースで共通するのは主人公にとって同人界という場所は通過点に過ぎず、やがては離れていく場所であるという点です。漫画作りにこれからも関わっていくにせよ、その道を捨てるにせよ、「こみっくパーティー」という場所に留まるという選択はなされないのです。目的地としてではなく、あくまで成長のための環境として同人界が位置付けられていることは、制作者の同人界に対する認識を反映しているようでもあり、なかなか興味深いものがあります。
 同人誌即売会という『こみっくパーティー』で描かれている世界は確かに特殊な世界です。しかしながらそこはもはや以前ほど特殊な世界ではなくなってきているのではないでしょうか。近年の同人誌即売会の隆盛は目を見張るものがあり、ゲームやアニメ、漫画の制作者にとっても無視できない世界になっています。そして同人界が大きくなるにつれ原作者と同人作家、一次創作と二次創作の関係は密接になり、両者の境界もあいまいになっています。『こみっくパーティー』はそんな時勢をストレートに反映した作品です。同人誌即売会を舞台とした作品が一般に受け入れられる時勢…もしかすると大志のいう「おたく文化」は想像以上の速度で広範囲に浸透しているのかもしれません。 

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

ファンの女の子(○○さん)

 この作品のヒロインたちはキャラ造形も多彩でそれぞれ人気もありますが、ひねくれた私は主要キャラにはもう一つ惹かれませんでした。そこで取り上げたのが「ファンの女の子」というわけです。ファンの女の子という呼称は紛らわしいので補足しますと、ここで取り上げているのは「モモ」ちゃんではなく、○○さんの方です。まぁ過去の私のレポートを読んでくださった方にはもうおわかりでしょうが、またもや例のタイプです(笑)。恐らく彼女は瑞希や大志のような身近な人間よりも早く主人公の才能に気づいていたのでしょう。どんな状況であっても主人公を温かく見守り続けた彼女こそ、主人公の最大の理解者といえるのではないでしょうか。

 以上です。同人誌作成という行程に費やされる時間のためにプレイ時間はかなり長めになりますが、イベント部分とのバランスがよく、繰り返しプレイに耐えられる仕上がりになっているのは流石だといえます。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 09/27/01)


・ラボー教授よりレポート提出していただきました。もう毎回安定した読みやすいレポートいただいて感謝です。

カナリア〜この想いを歌に乗せて〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 71

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 昨年PC版が発売された『カナリア』ですが、今回DC版としてリニューアルされ再登場することになりました。今回はこのDC版『カナリア』を取り上げさせていただきます。まずは作品のアウトラインから入りましょう。物語は主人公が親の都合で東京から香川県の琴平(となっているが地理的な矛盾あり)に引っ越してきたところから始まります。元来ギターを演奏していた彼は転校先の軽音部に入部し、部員たちと共に学園祭のライブを目標に活動することになります。そしてその過程で出会う女性たちとの交流を深め恋愛を成就させることが作品の目的になります。
 システム面についてふれましょう。この作品は基本的には近年流行のノベルタイプのADVに属します。一日に一回(日、月を除く)任意の場所に移動することができるという昔ながらの場所移動の要素も含まれていますが、誰がいつどこにいるかは決まっており、選択肢による分岐と大きな違いはありません。その他特徴としては会話場面の選択肢で『サクラ大戦』のような時間制が採用されていることがあげられますが、時間オーバーしてもあまり意味はなく、本家に比べて完成度が劣っているといわざるを得ません。あと誤字(誤変換)が多いこととセーブメニューを呼び出す際にフリーズすることがあるのもいただけません。ボタン配置も決して使い勝手がよいとはいえず、システム自体がオーソドックスな割には遊びにくいという印象を受けます。
 次はキャラクターについてです。DC版に登場するヒロインは合計7人になっています。軽音部の部員である綾菜と美香、主人公の「妹」の絵里、軽音部のOGで従姉妹の千秋、流しのギタリスト?のめぐみ、そして担任の娘せなという従来の面々に加え新キャラとして演劇部員の下級生である麻衣が登場します。キャラクター造形自体は年齢、主人公との間柄といった設定面でのバラエティと性格面でのバラエティを考慮し、幅広いユーザーの好みに対応しようという、いわば王道志向なのですが、台詞回しや掛け合いのセンスが独特で、くせのある絵柄と共に一般的な作品とは異質な印象を受けます。特に男性キャラである純と良太を加えた軽音部員間のコミュニケーションは部外者にはついていけない感が無きにしもあらずです。その独特のテンポについていけるかどうかで、この作品への感情移入の度合いが決まってくるでしょう。
 ストーリー面に移ります。この作品の基幹となっているのは何といっても主人公と綾菜、美香、そして純と良太という5人で構成された軽音部内の物語です。彼らのすれ違いや葛藤、そして和解という一連のプロセスが『カナリア』のメインストーリーなのでしょう。しかしそれだけではキャラクターやシチュエーションが限定されてしまいます。そこで部の外側の物語も用意しなければならないわけですが、これは容易ではなかったようです。軽音部内の物語と比べると外側の物語のボリュームと密度はやはりどうしても見劣りしてしまいます。また部の中の物語においても綾菜と美香のシナリオのバランスがとれているとはいいがたいものがあります。綾菜がいわゆる「絶対的ヒロイン」かどうかは意見が分かれるでしょうが、彼女のシナリオの密度は他のキャラとは明らかに違います。綾菜とその他という構図が成立しているといってもいいでしょう。やはりしっかりした作品の軸と各シナリオ間のバランスというノベル形式につきまとう課題はなかなかクリアできるものではないのでしょう。
 さて、この『カナリア』を語るときBGMはどうしても外せない項目ですので、通常は省略する音楽面についてふれることにしましょう。『カナリア』のBGMの特徴として楽器の音色を生かした選曲がされていることがあげられます。この種のゲームとしては珍しくヒロイン固有のBGMが状況に応じて2種類用意されているのですが、メインに使われる曲はギターなど弦楽器を主体とした軽快さとリズム感を重視した曲づくりがされているのに対して、クライマックスシーンなど感情の高まる場面で用いられる曲はピアノを主体としたしっとりとした曲調になっています。楽器固有の質感を重視することで場面と一体化したメリハリのある音楽的演出が実現されているといえるでしょう。またBGMと並んでボーカル曲も忘れることができません。ヒロインごとに別個の曲が用意されており、歌詞、演出共にそれぞれのヒロインのラストシーンと見事にシンクロしたエンディングテーマとなっています。ただそれぞれの声優が歌っているわけではないので、声優ファンにとっては残念なポイントであるかも知れません。
 最後になりますが、「カナリア」というこの作品のタイトルについて考えてみましょう。作品の冒頭部分で主人公とある少女との会話があります。「カナリア」という鳥について交わされるこの会話は、黒一色の背景と字幕、そして音声だけで表現されており、当初プレーヤーには意味がつかめませんが、実は作中のとある場面からの引用です。成人した主人公が軽音部の活動を振り返り、その回想の締めくくりとして用いるのがこのカナリアについてのエピソードなのです。このエピソードによるとカナリアという鳥は自分の脳を1年ごとに作り替えるそうです。そうしないとカナリアは新しい歌を覚えられないというのです。脳を作り替えることで古い歌の記憶は失われます。そうやって過去を捨てることでしか生きることができない鳥、それがカナリアという鳥だそうです。この作品のヒロインたちは皆過去を断ち切ることで前進していきます。過去の記憶や環境という呪縛から抜け出すことで新しい自分へと「成長」していくその姿は脳を作り替える鳥、カナリアの姿とオーバーラップして見えます。過去を捨てていくことでしか現在に対応できないというその「成長」はハッピーエンドへのプロセスとしては苦すぎるものなのかも知れません。しかしながら結局のところ人間は過去を忘れていくことで「今」を生きているのではないでしょうか。例えかけがえのない記憶であっても時間と共に風化していきます。そしてそれが「今」を生きることの代償なのでしょう。「カナリア」という鳥は作中のヒロインたちの象徴であると同時に「今」を生きていくしかないという人間の普遍的な姿の象徴でもあるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

星野 麻衣

 本文中でもふれましたが、この作品において最も力を注いで描かれているヒロインは綾菜でしょう。重く悲しい過去と辛い未来を背負いながらも懸命に生きていく彼女の姿には心奪われるものがあります。しかしながら綾菜はあまりにも作中で優遇されている感がありますので、ここではあえて新キャラの麻衣を取り上げさせていただきます。彼女は典型的なドジな後輩です。やる気が常に空回りし、あちらこちらで失敗ばかりしています。極端なアガリ症にも関わらず演劇を続けるそのひたむきな姿にはついつい応援したくなってしまいます。新キャラであるせいなのかどうかは解りませんが麻衣のシナリオには他のヒロインのシナリオほど痛みの要素が感じられません。さっぱりしすぎて物足りないといわれればそれまでですが、その「健全さ」がある意味非常に新鮮でした。 

 以上です。独特のセンスが作品全体に満ちていて、プレーヤーを置いていってしまう部分もあるのですが、何かしら印象に残る部分はある作品だと思います。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 09/16/01)


・なんと今回はラボー教授より2つ同時にレポートいただきました。すごい研究スピードですね。すごいです。

 1つ目は「Piaキャロ2.5」。2はまいやも研究しているので興味深く読ませていただきました。この作品は2の単なるリメイク版だろうと思っておったのですが、違ったんですね。3人のキャラが増えていたのは知っていたのですけど、2の続きだったとは知りませんでした。

Piaキャロットへようこそ!!2.5
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
15 70

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛シミュレーション 発売元 NECインターチャネル

 この作品は以前PCとサターンで発売された人気ソフト『Piaキャロットへようこそ!!2』とGBで発売された『Piaキャロットへようこそ!!2.2』の二つの作品をカップリングしたものです。ただそれぞれの作品にはデータの引き継ぎなどの関連性はなく、あくまで別個の作品が二つ合わさった構成になっています。『2』についてはまいや所長のレポートで取り上げられていますので作品の舞台やガイドラインは省略させていただくとして、『2.2』の設定について少しふれましょう。『2.2』は『2』の続編にあたるのですが、『2』で誰ともハッピーエンドを迎えられなかったということを前提に作品がつくられています。高校最後の冬休みを迎え、卒業後の進路に迷った主人公がその答を探すためにPiaキャロット中杉通り店に再び戻ってくるというのが『2.2』の導入部にあたります。そこでかつての同僚達や「三人娘」と再会し、夏には達成できなかった彼女たちとの恋愛を成就させるのが目的となります。
 システム面についてふれましょう。このシリーズの基本的システムは一貫しています。アルバイトや午前中の行動によってパラメーターを上げ、特定の職種や移動場所を選択することによってお目当てのヒロインとの親密度を高めていくというものです。パラメーターがゲームの進行上重要なポイントになっており、ADVというよりはシミュレーション的色彩の濃い作品になっています。またイベント発生の日付や条件も細かく定められていて、しっかりとしたスケジュール管理が必要になります。『2.2』では職種に関する変更点があり、「仕込み」がなくなって「調理」と共通化されたことと「倉庫整理」が自分から選択できるようになったことの二点が『2』と異なります。ゲーム期間が短縮化されたこともあり、『2.2』のパラメーター上昇率はかなりのものになっています。
 次はキャラクターについてです。『2』のキャラクターについてはサターン版からの変更点はありませんので、『2.2』の登場キャラについてふれましょう。『2.2』の登場キャラはキャロットの関係者に限られていて、美樹子と春恵は残念ながら出てきません。また『2』では隠し的存在だった留美も登場しません。さらに登場するキャラクターの中でも美奈、葵、潤は恋愛対象に選べず、対象となるのはあずさ、涼子、つかさ、早苗と三人娘の合計七人で、『2』と比べるとボリューム面で物足りなさは感じられます。また『2.2』では従来のメンバーよりも三人娘をメインに据えていると思われます。三人娘というのはサターン版『2』の追加キャラだったともみとその友人として登場したユキ、紀子の三人のことで、前作で脇役だったユキと紀子もヒロインに昇格?しています。彼女たちは冬休みの間キャロットのマスコットガールをすることになっていて、彼女たちの面倒を見ることを任された主人公が色々な騒動に巻き込まれていくというのが『2.2』の基本的展開になっていて、存在感では前作のメインキャラたちを圧倒しています。背伸びしたがるともみ、素直になれないユキ、天然系でつかみどころのない紀子と性格は三者三様ですが、中学生という年齢を反映したキャラ造形で、前作のヒロインたちとはまた違った魅力?があります。
 さて、『2.2』のストーリーですが、冒頭でふれました通り、『2.2』は『2』で誰ともハッピーエンド」を迎えられなかったことが前提に作られています。そのため主人公は他のキャラクターとすでに面識があることになっていて、かなり打ち解けた状態でゲームが始まります。中でもあずさは主人公に好意的なので、『2』の印象とはかなり異なります。(所々に前作の面影は残っていますが。)また『2』のメインキャラのシナリオはサイドストーリー的な色合いが濃く、あくまで前作の補足という位置付けになっています。キャラクターの項目でふれたように、やはり『2.2』の主役は三人娘であって、彼女たちの友情関係やキャロットでの体験による成長が『2.2』のストーリーの基幹といえるのではないでしょうか。追加キャラのためのもう一つの可能性、『2』では起こりえなかった「if」の物語…それが『2.2』の位置付けだと思われます。
 最後になりますが、『2.5』というこの企画についての評価に移ります。すでに書きましたように『2.5』は二つの移植作品のカップリングソフトです。サターン版をベースにした『2』とGB版の移植である『2.2』…一見お得な組み合わせのようですが、問題点も多く見受けられます。DC版『2』は確かにグラフィックやサウンドのクオリティはサターン版を上回っているのですが、CGやシナリオが追加された訳でもなく、全年齢化による表現のトーンダウンが目立ちます。リニューアルに際して作品を見直すこともなく、サターン版並のボリュームを維持できなかったことは残念でなりません。一方『2.5』は携帯ゲーム機版がベースだけあって『2』と比べて極端にボリュームが不足しています。DC版は容量的にも余裕があるのですから追加要素があってもいいのではないでしょうか。また作品の前提自体が特殊な?もののため『2』との整合性に難があるようにも感じられます。また二作品のカップリングにおいてもセーブデータを共有しないなど、まとまりを欠いている印象を受けます。カップリングソフトは近ごろ増えていますが、単に昔の作品をそのまま移植し、組み合わせただけというものには満足できません。新しく出すからには名作といえどもリニューアルとボリュームアップが必要なのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

篠原 美樹子

 さて、本来ならこの項目では三人娘の一人を紹介するのが筋なのでしょうが、あえて美樹子を取り上げることにします。彼女はキャロットの関係者ではありません。そのためでしょうかCGの枚数が最も少ないなど、その扱いは良いとはいえません。ではなぜ美樹子なのか?それは彼女がプロの漫画家を目指していて、創作活動に関する悩み、課題を抱えている点に共感したからです。(またもや芸術家好みが発動したともいえますが…。)ともかくキャロットのメンバーにはない魅力が「ミキ」にはあると思います。
 

以上です。やや急造じみたカップリングで問題点も少なくないのですが、『3』をプレイする前に前作を再体験してみるのもいいかも知れません。長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 08/23/01)


・もう1つの作品はキッドのオリジナル「夢のつばさ」をいただきました。研究所予定作品にずっと前から入ったまんまになってしまっている作品です。DC版も発売されたようですね。成瀬ちさとさんの淡い絵が特徴的な作品です。

夢のつばさ〜Fate of Heart〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 72

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 キッド

 『メモリーズオフ』、『インフィニティ』に続くキッドのプレイステーションオリジナル作品第三弾として発売された『夢のつばさ』ですが、先日前二作に続いてDCへ移植されました。今回はその移植版『夢のつばさ』を紹介させていただきます。それでは例によって作品のアウトラインから始めます。この作品の主人公「深山直人」は幼いころパイロットだった父親がフライトの際に行方不明になるという出来事を体験します。当初は飛行機や空に対して憎しみを抱いていた彼ですが、成長するにつれて父親と同じ道を進みたいと思うようになり、高校2年の夏、URL(ウルトラライトプレーン=簡易型の軽飛行機)の操縦資格を取得することを決意します。そんな直人の前に突然不思議な少女が現れます。しずくと名乗るその少女はどうしたわけか一人暮らしをしている直人の家に泊まり込んでしまいます。この謎の多い奇妙な言動の目立つ少女の出現は直人の日常を波乱の多いものへと変えていき、やがて彼の運命を変化させていくことになります。
 システムに移ります。『夢のつばさ』は他のオリジナル作品と同じくテキストノベル形式を採用しています。新作が出るごとに細部が改良され、プレイ環境の快適さは数あるノベル形式の作品の中でもトップクラスでしょう。控えめなセーブデータ容量とセーブ箇所の多さ、ゲームを途中の地点からスタートできるショートカット機能、選択肢の地点で自動的にセーブし、そこからロードできるクイックロードなど繰り返しプレイを念頭に置いた作りで、非常に好感が持てます。またDC版は『Never7』に続いてアペンドシナリオのダウンロードシステムを登載しています。追加シナリオは『春雨曜日』や『サクラ大戦3』など他社の作品でも採用されているシステムですが、他社の場合有料のケースが多く、シナリオ自体も制作サイドが用意したものです。一方『Never7』やこの作品ではシナリオは全て無料で、その大半がユーザーからの一般公募作品です。一般公募作品はメーカー側にない柔軟な発想と大胆な展開で、非常に新鮮に感じられます。ゲームという形で「私だけのアペンドストーリー」を一般ユーザーに発信できる機会を設けるというキッドの姿勢は他社には見られないユーザーサービスとして評価できるのではないでしょうか。また今回の目玉ともいえる要素として過去のDC作品のダウンロードデータの登載があります。全ての隠し要素を出現させるキーファイル、全39本にも及ぶ『Never7』の追加シナリオ…これらは全てDCでネット接続しないとDLできませんでしたが、今回通信環境が整っていないユーザーでも楽しむことができるようになりました。さらに初回版には9月発売の『メモリーズオフ2nd』のプロモーションディスクも同梱されるなどおまけ要素はたっぷりです。(商売上手という声もありますが…。)
 次はキャラクターについてです。『夢のつばさ』のヒロインは全部で4人とノベルタイプのアドベンチャーとしても少ない部類になります。作品の核となる不思議少女しずく、主人公の幼なじみでいとこの勇希、主人公の親友の妹である桜花、主人公が通うULPクラブのそばの喫茶店の従業員の志菜乃、というのがその顔ぶれです。キャラクターのタイプも天然系、快活な幼なじみ、思い込みが激しい「妹」タイプ、無口で辛い過去を背負った年上の女性と設定、年齢共にバランスがとれてます。ただ各ヒロインの人間関係やシナリオでの絡みなどが弱く、同じくヒロイン4人の『Close-to』ほど物語とキャラクターの関連性は練りこまれていないように思われます。あとキャラクターで特筆すべきポイントとしてはキャラの名前に旧日本海軍の軍用機の名前が用いられていることでしょう。これは作品自体が飛行機や空と密接な関係を持っていることやヒロインの一人、桜花が旧海軍マニアという設定であることによるものと思われます。キャラの名前に何らかの関連性を持たせることは『エヴァ』など近年の作品で多く見られる傾向ではないでしょうか。
 ストーリーについてふれましょう。『夢のつばさ』はしずくという一人のヒロインを中心に構成された物語です。彼女はある「使命」のために直人の前に現れます。その「使命」は直人の過去、そして夢と密接に関係していて、その「使命」の間で揺れ動く直人としずくの関係が作品の骨格になっています。ただその「使命」を遂行しようとするしずくの行動基準や論理はいささか理解しにくく、矛盾をはらんでいるようにも思われます。またしずくというキャラクターが何者なのかという点も説明不足で、「絶対的ヒロイン」にしてはその設定が完成されていないように見えます。(ここら辺は追加シナリオを書くなり想像するなりしてプレーヤーが補完しなければならない部分かも知れません。)またキャラクターの項目とも関連しますが、しずく以外のヒロイン、特に桜花と志菜乃はメインストーリーとの関わりが弱く、登場ヒロインと作品構成との関連に希薄さが感じられます。各ヒロインのシナリオ自体はメリハリがあり、独立した物語としての完成度が高いだけに作品全体としての構成面の弱さは残念に思われます。
 さて最後にキッドの他のオリジナル作品群と『夢のつばさ』との比較に移ります。『Close-to』のレポートで書きましたが、キッド作品のキーワードとして過去との決別があげられます。この作品の場合も父親の遭難という「過去」との決着をつけることが主人公の目的になっています。しかし「恋愛」が過去を象徴していた他の作品とはやや異なる設定です。確かにしずくというメインヒロインは主人公の「過去」と関係があるのですが、しずく=過去という構図ではありません。これは他の主人公と違ってこの作品の深山直人は奥手で恋愛経験に乏しいことによるものでしょう。作品が開始される以前に恋愛関係が形成されていた他の作品と異なり、作品開始後に初めて恋愛関係がつくられるのがこの作品です。そしてこのことが他の作品にある「苦さ」を感じさせない独特の淡い雰囲気を絵柄や音楽と共にこの作品に感じさせる要因になっているといえるのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

深山 勇希

 今回取り上げるのは主人公直人のいとこかつ幼なじみである勇希です。幼なじみには家庭的でおとなしいタイプと活発でボーイッシュなタイプの二通りあると思います。勇希はショートカットで口も悪く手も早く、一見オーソドックスなボーイッシュタイプですが、一人暮らしの主人公の食事や掃除の面倒をみてくれるなど家庭的タイプの特徴も兼ね備えています。ボーイッシュで家庭的という相反する要素を兼ね備えているあたりが人気の秘密なのでしょう。彼女としずくとの関係は微妙なものですが、エンディングをみる限り彼女も直人と同じくしずくにとって特別な人間だったのでしょう。
 

以上です。作品自体の雰囲気が独特で必ずしも一般受けするとはいえないのかも知れませんが、他にはない「空気」を感じさせる作品だと思います。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 08/23/01)


・ラボー教授より今回はまいやの知らない作品のレポートいただきました。ラボー教授の研究守備範囲は広いですねえ。いつもながらに感心します。かなり歯ごたえのあるゲームの様子。でもラボー教授の教授点が18点ですので、良作なのでしょう、レポートも読み応え十分です。

ESPION-AGE-NTS
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
18 72

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル シミュレーション 発売元 NECホームエレクトロニクス

 ドリームキャスト発売直後の時期に積極的に作品をリリースしていたメーカーの一つにNECホームエレクトロニクスがあります。その作品はいずれも個性的かつ野心的で一般ユーザーのニーズとはかなりかけ離れていましたが、現在に至ってもマニア層からは高い評価を受けています。そんなNECの作品群の中から今回は『エスピオネージェンツ』を紹介させていただきます。
 巨大化したいくつかの大企業が世界の政治経済を牛耳るようになった21世紀、それら企業の非合法活動を請け負う産業スパイ組織が急増します。そのような組織の中でも「Blitzstrahl」(ブリッツシュトラール)は、有能かつ特殊な技能を持つスペシャリスト集団「ESPION-AGE-NTS」(エスピオネージェンツ)を擁し、業界トップの地位にあります。そのブリッツシュトラールを率いるのは「ボス」と呼ばれる謎の人物…そう、プレーヤーは「ボス」となって「エスピオネージェンツ」を指揮し任務を成功に導くことが本作品の目的なのです。
 システム面についてふれましょう。この作品は分類上ではシミュレーションゲームになります。一般にシミュレーションといえばプレーヤーがターン終了するまでゲームが進行しないターン制SLGが連想されますが、この作品では近年少なくなったリアルタイム制が採用されています。リアルタイムSLGの特徴は敵/味方という風にフェイズが区別されておらず、基本的にゲームが「止まらない」ので、流れの中でタイミング良く指示を出していかなければならないことがあげられます。そのためターン制にはない臨場感が得られる反面、煩雑な操作を要求され、プレーヤーにかかる負担も大きいものになっています。この作品の場合、プレーヤーは研究所や美術館などの施設に進入したエージェント4人に対し個別に指示を与え任務を成功させなければなりません。4分割された画面上でそれぞれのエージエントの現在の状況を確認しつつ、局面に応じて的確な判断を下さなければならないのです。3Dならではの広く複雑な建物の構造を把握することと先読みしつつ効率よく4人同時に操作することという二つの能力がプレーヤーに要求され、リアルタイム制としてもかなり歯応えのある出来ばえです。それぞれのミッションで参加させられるエージェント数は最大4人ですが、プレーヤーはその人選も行わねばなりません。各エージェントの能力や特性を考慮しエージェントを選出するのですが、誰を選ぶかによって難易度は大きく異なります。効率よく攻略することを優先するか好みのキャラクターを選ぶか…その辺りもこのゲームの面白い部分でしょう。詰め将棋的な最短攻略を目指すもよし、遊びに走ったプレイをするもよし…確かに敷居は高いのですが、プレーヤーの個性がストレートにプレイに反映されるというシミュレーションゲーム特有の魅力は存分に発揮されているのではないでしょうか。
 キャラクターに移ります。この作品には7人+αのエージェントが登場します。レギュラーメンバーの7人を紹介しますと、天才ハッカー少年のアークエンジェル、軽業師の鈴華、ローラーブレード移動を得意といるルーリア、爆発物解体の専門家ウラジミール、ヒプノティストのクレオパトラ、元合衆国陸軍情報部の工作員サンダース、薬物スペシャリストのファルーという面々です。それぞれのエージェントには得意分野と苦手分野があり、特殊分野の専門家集団という設定通りの能力設定になっています。能力パラメーターは各ミッションクリア時に入るポイントで任意に強化できますが、基本的なキャラ特性はそれ程変わらないので、それぞれのキャラクターの役割分担を考えた上での人選が必要になってきます。特化したキャラクターによる分業と協力という要素がゲームを攻略するためのポイントといえるでしょう。
 次にストーリーについてです。この作品はシミュレーションですので当然のことながらADVやRPGのような文章量はなく、読み応えのある物語性を備えているとはいえません。ゲームの進行はキャラクター間の会話に委ねられていて、プレーヤーはその限られた情報から全体の物語をイメージしなければならないのです。もっとも作品のストーリーが全くないというわけではありません。一見バラバラに見える各ミッションや依頼主にはそれぞれ密接な関係があり、近未来におけるパワーゲームの構図が重層的に表現されていますし、終盤の2つのミッションでは文字通り人類の未来を賭けた任務が待っています。依頼主の欲求を満たすだけの非合法組織から自らの意志で「未来」を取り戻す救世主への転身…幾分RPGじみた、ある意味王道的なストーリーではあります。ただ終盤の展開は大風呂敷を広げすぎの感がしないでもありません。それは恐らくシミュレーションゲームの持つストーリー面でのハンデを意識した結果によるものでしょう。非合法組織を主人公?としながらも結局は成長物語を描かざるを得ない…限られた枠組みの中でストーリー性を得ようとすることの限界なのかも知れません。
 最後になりますが、シミュレーションゲームというジャンルの特色、そして魅力について書きたいと思います。シミュレーションゲームの特徴はプレーヤーがキャラクターを操作できないことにあります。プレーヤーに出来るのは、どう行動させるのかという指示を与えるだけで、後の展開はそのキャラクター(ユニット)の性能に委ねられます。これだけですとRPGとそれほど違いはないのですが、RPGとSLGとの大きな違いはプレーヤーの位置付けにあります。RPGの場合、プレーヤーの立場はキャラクターたちと同レベルにあり、いかに自分自身をキャラクターに重ね合わせられるか、という感情移入が作品世界に入り込めるかどうかのポイントになります。プレーヤー=キャラクター、これがRPGにおける両者の関係でしょう。一方SLGではプレーヤーとキャラクターの立場は平等ではありません。プレーヤーは全てのキャラクターへの絶対的な権力を持っており、彼らは「駒」でしかないのです。ある種の絶対者、それがシミュレーションにおけるプレーヤーの位置付けといえます。「現場」レベルでのゲームへの参加が求められるRPGと「支配者」レベルでの参加が求められるSLG…両者の相違はプレーヤーと作品世界との距離の差なのかも知れません。そしてこの作品で「ボス」となり、モニター上の頭の回らないAIによって行動するキャラクターに一喜一憂する自分を見るとき、言い換えればモニター外の「ボス」というキャラクターに同化している自分を発見したとき…それこそがSLGにしか表現し得ない「場所」を体感できた瞬間なのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

セーラ“ロケット”ルーリア

 さて今回はエージェントの中でも一番「らしくない」ルーリアを取り上げることにしましょう。彼女はローラーブレードによる高速移動以外にとりたたて長所がありません。戦闘能力は皆無、スキルも少ないなどはっきりいって初心者向けのキャラではありません。しかしながらその移動速度さえ生かせればミッション攻略に大きな力を発揮してくれることでしょう。元事務員ながらもデスクワークに嫌気がさして現場仕事に転身したというユニークな経歴の持ち主ですが、危険に飛び込む無鉄砲さは組織一という爆弾娘でもあります。使えば味のあるキャラクターですので、ぜひこの「弾丸娘」の真価を発揮させてやってください。

以上です。確かにとっつきにくく、慣れるまで時間がかかる作品ではありますが、何度もプレイできる中毒性のある作品だと思います。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 07/26/01)


・しばらく開店休業状態の研究所でしたが、ラボー教授はしっかり研究をしておられたようです。ホントにごくろうさまです。
 こちらの作品はもともとPC18禁で、惜しまれつつなくなってしまった「カクテル・ソフト」の作品です。研究所の研究対象予定作品にも入っていますけど、さてまいやはどちらをやりましょうかねえ。

Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 72

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛シュミレーション 発売元 NECインターチャネル

 昨年PCで発売されたばかりの『Canvas』ですが、早くも今年4月にドリームキャストに移植されました。今回は新キャラを登場させ、家庭用にアレンジされたこの移植版『Canvas』を紹介させていただきます。物語は撫子学園という私立高校に絵画の特待生として在籍している主人公がコンクールの成績不振を理由に特待生資格を剥奪されようとしているという状況から始まります。学園側の要求は次回のコンクールで入選すれば資格を剥奪しないというものでしたが、自分の絵が学園の売名行為に利用され、絵を描くこと自体に熱意を失っている主人公はそのコンクールに関心が持てません。そんな主人公がヒロインたちとの出会いと交流を通じて再び絵を描くことの意義を見いだしていく、というのがこの作品のアウトラインになります。
 システム面ですが、この作品はオーソドックスなノベル形式を採用しており、とりたてて特筆するべき点はありません。選択肢を選ぶことによってキャラクターのいる場所に移動し、好感度を上げていくというごくありふれた構成になっています。ただあるキャラクターは他のキャラクターのシナリオをクリアしないと登場しないので注意が必要です。その他にも特定のキャラをクリアしないと入れないシナリオもあります。
 次にキャラクターについてふれましょう。この作品のヒロインたちは極めてオーソドックスな造形になっています。天然系の幼ななじみ、幼いころ憧れていたお姉さん、素直になれない義理の妹、陰のある先輩、運動に打ち込む頑張り屋の少女、主人公を目標としてきたクラブの後輩…設定的にもキャラクター的にも目新しさはありません。しゃべり方に特徴があるとか奇妙な趣味があるとかいったこともなく、インパクトという点では欠けているかも知れません。キャラクターにオリジナリティやアクの強さを求めるプレーヤーには少々物足りないでしょうが、オーソドックスな分安定感があり、違和感なく接することが出来るのではないでしょうか。
 さて、DCへの移植による変更点ですが、全年齢化への対応と新キャラの追加という2点があげられます。PC作品を全年齢化する場合、真っ先に問題になるのはそちらの場面をどう処理するかということになります。シナリオに大幅に手を加えて場面がカットされても違和感がないようにするか、その場面だけばっさりと切り捨ててしまうか…多いのは後者であると思われ、この作品でもそちらの手段が選択されています。元のシナリオに手を加えるのは困難なことですし、それによって作品自体の魅力が失われる恐れもあります。そのリスクを避けるために後者の方法がよく採用されるのでしょう。しかしながらその方法では不自然さは解消出来ません。この作品の場合でもシナリオによっては「行為」自体が大きな意味を占めるものもあり、無造作に削除してしまったことでシナリオの趣旨を損なっている面があることは否定できません。移植に際してはグラフィックや直接的な描写だけではなく、文章表現を磨くことでその問題をカバーすることも必要なのではないでしょうか。もう一方の新キャラ、彩については満足できるものではないかと思います。シナリオ自体もDC版のために書きおろされたもので違和感もありませんし、作品全体とのバランスも取れています。CGの枚数も他のキャラよりも多く、DC版の真のヒロインといってもいいのではないでしょうか。(彩については後で詳しくふれます。)
 ストーリー面に移ります。冒頭でふれた通りこの作品では各シナリオ共通して、絵を描くことに情熱を無くした主人公がヒロインたちとの交流によって再び絵を描き始めるという過程が描かれています。その動機は過去に交わした約束だったり、「呪い」を解くことだったり、コンテストという場における勝負だったりするわけですが、いずれの場合においても主人公は当初絵を描くことに乗り気ではありません。しかしながらヒロインたちのひたむきな姿や悩みを解消できない状況を目の当たりにして彼は再び筆をとる決意をします。絵を描くことで彼女たちの力になれるのではないか、絵を描くことで証明できることがあるのではないか、そんな思いが主人公を動かしたのでしょう。周囲の欲求や思惑から解放され、本当に自分が描きたいものを描くこと…それはいつしか彼が忘れてしまっていた絵を描くことの楽しさに他なりません。絵に対する情熱を取り戻すこと、それは同時に彼自身の主体性を回復することでもあります。主体性を失い受動的になっていた主人公が「自分」を取り戻すこと…この作品は大切なものを失ってしまった主人公のための癒しの物語だといえるでしょう。
 さて、この作品をプレイしている間私が絶えず感じていたのは「懐かしさ」ともいうべき感覚でした。それは恐らくこのゲームのキャラクターやストーリーが現在のトレンドとは異なった方向を指しているということに起因するのでしょう。個性的でインパクトのあるキャラ作りと動的で起伏に富んだ物語作り…これが昨今のノベル形式のADVの流行といえます。しかしこの作品ではいくぶん類型的でどこにでもいるようなキャラクター像と日常的で意外性のないおとなしめのストーリーという流行とはかなり異なった要素が採用されています。それをオリジナリティの欠如、あるいは時代への逆行と否定的に捉えることも可能でしょう。この作品のテイストは確かにひと昔前の恋愛ADVと通ずるものがあるからです。しかしながらそのテイストこそ現在のADVでは失われてしまった魅力といえなくはないでしょうか?流行を形成していく過程で切り捨てられたもの…『Canvas』は主人公だけでなくプレーヤーにとっても「失ってしまった大切なもの」を思い出させる作品なのではないかと思います。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

美咲 彩

 本文中でふれました通り、今回紹介させていただくのは新キャラの彩です。彼女は主人公の所属している美術部の後輩で幼少のころから主人公を目標にしてきました。そのため主人公が絵に対する情熱を失ってしまったことに人一倍過敏な反応をします。何とか主人公を絵の世界に引き戻そうとする彼女の姿にはいじらしさと同時に執念を感じてしまいます。彼女が重要なのはやはり絵という主人公との接点を持っていてある意味主人公の鏡像的な役割を帯びているからでしょう。そういう意味でもDC版の「真のヒロイン」なのではないでしょうか。私としては容姿や設定に惹かれたのはもちろんですが(ツインテールで画家)、彼女の性格がかなり自分と重なっていてとても他人とは思えない部分に親近感を覚えました。

 以上です。やはりPC版からの移植ということもあって色々と問題点はありますが、新キャラ彩の追加という要素はその質、量ともに評価できると思います。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 07/06/01)


・ずっと以前にレポートお預かりしておりながら、転載するのが遅れてしまって申し訳ありませんでした。以後このようなことがないようにしたいと思います。
 今回もかなりの高得点がついている作品ですね。ここ最近キッドの作品は良作が多いようで、巷でも高評価のようです。ごとP氏の淡い原画が魅力的な作品ですね。

Close to〜祈りの丘〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 75

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 キッド

 近年積極的に家庭用機種オリジナルの作品を発売しているキッドですが、ドリームキャスト初出の恋愛アドベンチャーとしてはこの『Close to〜祈りの丘〜』が第一作にあたります。今回はオーソドックスなノベル式アドベンチャーをベースにルームパートシステムという新要素を取り入れたこの作品を紹介したいと思います。プロローグにて主人公、穂村元樹は「恋人」の遊那とのデート中に交通事故に遭い、幽体離脱をしてしまいます。幽体となった元樹の姿は親しい知人には見えず、さらに遊那は事故のショックで元樹に関する記憶を失っています。元樹の肉体は病院で危篤状態にあり、彼に残された時間は長くはありません。そんな中元樹は何とか自分の肉体に戻り、遊那の記憶をとり戻そうと試行錯誤するのですが…というのが作品の概要です。
 まずはシステム面についてふれましょう。この作品の基本となるのは『メモリーズオフ』以降確立されたノベル形式です。メッセージスキップの使いやすさやセーブ箇所の多さなどプレーヤーの立場を考えたシステム作りが継承されていて非常に快適です。(選択肢のヒントが出ないのは完全新作ならではのことなのでしょう。)そして今回、作品の特徴としてルームパートシステムというものが採用されています。幽体となった主人公が遊那に自分の存在に気づいてもらおうと彼女の部屋で二人の思い出の品を探したり、念動力で物を動かしたりするのがこのルームパートなのですが、これが予想以上に作品にマッチしています。もちろん主人公と遊那の絆を取り戻すことがルームパートの主目的なのですが、遊那の日常を観察するというゲームの進行と関係ない部分が面白い。人形で越後屋ごっこを始めたり、テレビを見て踊り出したり、シュールな漫画を書き始めたり…と見ていて飽きません。遊那の行動を見る以外にも部屋を物色?するのが楽しく、ついついコンプリートしたくなります。主人公が幽体であるというユニークな設定を存分に活用したシステムだといえるのではないでしょうか。
 次は珍しくグラフィック面についてです。冒頭でふれた通り、この作品はドリームキャストが初出なのですが、そのためグラフィック面が従来のキッド作品よりも充実しています。過去DCで発売された『メモリーズオフ コンプリート』と『Never7』という二つの作品では移植時にイベントCGは強化されたのですが、通常の立ち絵にはそれほど大きな変更はなく、DCの性能を考えるとやや不満が残りました。しかし今回はDCオリジナル作品ということでイベントCGだけでなく立ち絵の出来にも注意が払われています。ごとP氏の絵の魅力はその独特の色使いだと思いますが、自らCGの彩色を監修されているだけあって、原画の色合いや雰囲気がよく再現されています。キャラデザイナーの作家性がどれほど再現されているかという点は美少女ゲームでは大切な要素ですので、DCオリジナル作品としてグラフィック面の充実に力を入れたことは評価できると思います。(VGA出力でも見られますし。)
 キャラクターについてふれましょう。この作品に登場するヒロインは4人とかなり少ない部類に入ります。主人公の幼なじみ兼恋人の遊那、遊那の親友兼主人公の友人にあたる翔子、幽体となった主人公を見ることができる小雪、同じく主人公を見ることができる小学生の麻衣、というのが4人の顔ぶれです。キャラクターの造形としては、翔子がボーイッシュな外見とナイーヴな内面を併せ持つ親友タイプ、小雪が特別な存在であるが故に周囲の人間から孤立したダウナー系、麻衣が子供扱いされるのを嫌がるおませな年下タイプ、と遊那以外の3人はオーソドックスなものになっています。遊那は幼なじみに分類はされると思いますが、その造形はかなり個性的です。といえば家庭的なタイプや活発な友人タイプが多いのですが、自分の持ち物にいちいち名前をつけたり(カメラが田中くんで観葉植物が谷村さんだったりします。)、気分がいいと猫、不機嫌だと犬のまねをしたり、怪しげな漫画やポエムを書くことが趣味だったりとなかなかユニークです。ただあまりにも一般的なキャラクター像からは浮いているので、その造形が受け入れられない向きもいることでしょう。またヒロイン間の人間関係ですが、人数が少ないだけあって非常に密接なものになっています。物語の構成面からもよく考えられており、設定的にも説得力があります。
 ストーリー面に移ります。この作品の設定面での最大の特徴は、何といっても主人公が幽体という状態にあるという点です。事故というアクシデントは遊那から主人公元樹の記憶を奪い、一部の人間以外との接触を不可能にしてしまいました。その絶望的な状態で主人公は何を拠り所とするのか…それがこの作品の主題だといえるでしょう。ヒロインの一人、麻衣がこういいます「誰でもいいから……『生き返って欲しい』と、強く想ってくれる人がそばにいれば……その人の愛は、神の定めた運命さえも変えることができるの」と。当初主人公は遊那の記憶を戻すことで自らの肉体に戻ろうとします。「強く想ってくれる人」、事故以前ならばそれは「恋人」の遊那のことを指すのでしょう。ところが遊那の記憶は容易に戻らず、他のヒロインたちとの出会いの中で絶対的だったはずの遊那の立場は不確かなものになっていきます。いわゆる「絶対的ヒロイン」に見える遊那ですが、物語が進行するにつれて、その立場の弱さが目立つようになります。果たして遊那の「想い」は他のヒロインを上回っているといえるのか…それは各プレーヤーの解釈次第ですが、どちらにせよ遊那の立場が一般的な本命ヒロインほど強固なものではないことは確かです。しかしながら遊那に特別に与えられた役割は何もないというわけではないようです。遊那以外のヒロインのシナリオにおいて主人公は遊那との関係を断ち切ることによって新しい拠り所を見出していきますが、そのプロセスでは遊那は主人公が決別すべき「過去」を象徴しています。「過去」との決別というと『メモリーズオフ』が思い浮かびますが、どうも遊那は彩花と同じ役割を担っているのではないかと思われます。キッドの作品では「別離」というキーワードが一貫して追求されていますが、この作品におけるその扱いは『メモリーズオフ』に近いものがあります。そういう意味ではこの作品は『メモリーズオフ2』の原型といえるのかも知れません。
 一貫して同じモチーフを追い続けること、それはオリジナル作品を発表するようになって日の浅いキッドにとって自らのアイデンティティを確立していくために必要なことなのでしょう。ですがその選択された「別離」というモチーフはしばしば悲劇的な結末を生み出し、その是非をめぐって議論が起こります。その悲劇的結末を恋愛ゲームの「お約束」への意欲的な挑戦と肯定的に受け取るか、恋愛ゲームの「夢」を無惨に破壊する行為と拒絶するか…それはプレーヤーが恋愛ゲームに何を求めるかによって変わってきますが、メーカーとしての特色を積極的に打ち出そうとするその姿勢は評価できるのではないでしょうか。今後の作品においてもその一途な姿勢を貫いてもらいたいものです。

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ラボー教授のお気に入りキャラ

咲坂 麻衣

 今回はやはりこの作品の真のヒロインである麻衣を取り上げさせていただきます。一見生意気な小学生ですが、実は彼女と主人公との絆は非常に深いものがあります。麻衣がなぜ小学生でなければならないのか、そこには重い意味が込められています。彼女の正体については伏せますが、彼女の存在なしにはこの作品は成立しません。彼女のエンディングには賛否両論あるでしょうが、エンディング後にもう一度オープニングを見直してもらえれば、麻衣が真のヒロインであることに納得していただけるのではないでしょうか。

 以上です。さすがに主人公が幽体という設定だけあって他の作品よりも笑いの要素が少なく、全体的にシリアスな構成です。「祈りの丘」というサブタイトル通りの厳粛な作風をじっくり味わっていただきたいものです。長文どうも失礼しました。 

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 05/18/01)


Prismaticallization

リメイク版をいただきましたので、削除いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 04/27/01)


・ラボー教授の新レポートとして「春雨曜日」を提出していただきました。このところぎゃるゲーより少し離れられていて、お忙しいと伺っておりましたが、今回のこのレポートもたいへんわかりやすく、読み応えのあるレポート書いていらっしゃいます。以前提出いただいている「まぼろし月夜」と雰囲気が似てるとのこと。ファンの方には待望の作品だったのでは?。

春雨曜日
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
15 70

対応機種:ドリームキャスト 
ジャンル:恋愛ノベルアドベンチャー 発売元:NECインターチャネル

 1999年に発売され、現在でも高い評価を受けている『まぼろし月夜』。独特ののほほんとした雰囲気と日常感が印象的な作品でしたが、今回2年ぶりに『まぼろし月夜』に続くシムス制作の恋愛ノベルアドベンチャーが発売されました。それがこの『春雨曜日』です。物語は高校受験の失敗と失恋という二重の不幸に見回れた主人公「中垣祐」(変更不可)が叔母の誘いで田舎の温泉旅館「春雨」でアルバイトをするために温泉街の駅に降り立つところから始まります。そして「春雨」での生活、人々との出会いを通じて主人公が癒されていくというのがこの作品の概要になります。
 システム面は基本的には『まぼろし月夜』のものを踏襲しています。一日一回の場所移動と選択肢で特定のキャラクターの好感度を上げていくという方式のノベルタイプのアドベンチャーゲームです。『まぼろし月夜』は各キャラの分岐がわかりにくく、難易度の高い印象が残りましたが、今回は既読の好感度の上がる選択肢が見分けられるようになったこともあり、かなり難易度は下がりました。普通にプレイしている限りバッドエンドにはまずならないでしょう。メッセージスキップもRトリガーでオン/オフできるようになり、繰り返しプレイも快適になりました。とはいえセーブ箇所の少なさやシステムデータの読み込みをいちいち行わないといけないことなど不満点も残ります。また明らかに『まぼろし月夜』から退化した部分として説明書があげられます。『まぼろし月夜』の31頁からたったの4頁に内容が削減されています。(しかも裏表紙まで活用するという節約ぶり)これには開いた口が塞がりません。説明書というものは最低限の操作方法だけ書けばよいというものではないのでは…。毎回思うのですがインターチャネルの説明書は何とかならないのでしょうか?ユーザー全部が雑誌やネットで情報を集められるわけではないのですから。
 さて、今回の大きな特徴であるシナリオダウンロードシステムについてです。DC作品としては『Never7』に続く試みなのですが、その方向性は大きく異なります。この作品のシナリオダウンロードには二つの特徴があります。一つは有料であることです。シナリオ一本のダウンロードにつき300ドリム(300円)を支払わなくてはなりません。もう一つはシナリオが一般応募ではないということです。シナリオはあくまで制作者が用意したサイドストーリーなのです。この二つの特徴を総合するとこの作品におけるシナリオダウンロードは商品の延長として考えられているということになります。一方『Never7』はダウンロード無料でシナリオは大半が一般応募作品です。このことは『Never7』におけるシナリオダウンロードはユーザーに表現の場を与える公認の同人活動的意味合いを持っているということを意味します。評価を下すのは時期尚早かも知れませんが、どちらがユーザーに支持されるかは明白なように思われます。どちらが本当の意味でのファンサービスなのか、制作側は考えてみる必用があるのではないでしょうか。
 次にキャラクターについてふれましょう。この作品に登場するヒロインは7人います。主人公の従姉妹で「春雨」の一人娘であるひより、主人公の幼なじみの小鈴、「春雨」の従業員?の綺羅、「春雨」の宿泊客である百合子、蛍、ライラ、それに謎の老婆御玉という顔ぶれです。『まぼろし月夜』ではあやめという作品の核になるヒロインが存在し、あやめを軸に物語が展開されていましたが、今回はそのような「絶対的ヒロイン」は登場しません。ノベル形式の作品では珍しい傾向といえますが、このことは後述するストーリー面の希薄さの一因になっていると思われます。キャラクター自体の造形は相変わらず魅力的です。何気ない台詞やエピソードが印象的で喜怒哀楽といった表情がしっかりと描かれています。またライバル旅館の御曹司や街の駐在さん、「牛乳娘」などの脇役もいい味を出しています。
 さて、ストーリー面についてなのですが、主人公の成長物語という視点でこの作品を見た場合、かなり物足りない印象が残ります。主人公が受けた受験の失敗と失恋という傷を「春雨」での生活を通して癒していくというのが作品の骨格にあたるはずなのですが、その基本的構図が不明瞭に感じられます。というのも本編中では過去の恋愛や受験についてほとんど語られることがなく、主人公が経験しているはずの「過去」というものが感じられないからです。そのため「春雨」での出来事を通じてどのように主人公が変わったのかということがプレーヤーに伝わらないのです。ノベル形式の作品の場合、ゲーム開始以前の「過去」の設定を重視するケースが一般的です。読み物としての起承転結を考えた場合、その方が効果的だからなのですが、この作品ではそのセオリーが無視されています。「春雨」でのエピソードを強調するためなのでしょうが、その弊害も大きかったような気がします。また「絶対的ヒロイン」を設定しなかったことで、作品の全体像や各シナリオの関連性があいまいになっています。作品の軸となるキャラクターがいないため『春雨曜日』という作品全体を一つの物語として捉えることは不可能になっています。さらに個々のシナリオも容易に先の展開が読めてしまうため、物語としての意外性、インパクトの弱さは否めません。
 しかしこれらはあくまで一般的なノベル形式の作品の基準にすぎません。『春雨曜日』をプレイしていて私はある違和感を覚えました。それは主人公の扱い方が一般のノベル形式の作品とは明らかに違っているという印象によるものです。ノベル形式の場合、主人公の性格づけや内面描写に力を注ぐ傾向が強く、主人公にも他のキャラクターに負けないくらいの存在感があります。ところがこの作品の「中垣祐」にはそれほど強い個性が感じられません。「過去」も含めて彼の内面についての文章量が他の作品と比較して圧倒的に少なく、キャラクターとしての描かれ方がぞんざいだからです。それでは主人公の存在感を希薄にすることの意図はどこにあるのでしょう?普通はプレーヤーの感情移入を助けるためでしょう。しかしこの作品の場合はそれだけではない気がします。制作者は「中垣祐」を没個性的にすることによってヒロインたちのキャラクター性を際だたせようとしたのではないでしょうか。もしかしたら「中垣祐」の物語を描くことなど初めから考えていなかったのかも知れません。そうすると『春雨曜日』で描きたかったものは何でしょう?ここで注目したいのはヒロインたちの作品中での「変化」です。この作品のヒロインたちはそれぞれに問題を抱えています。大まかに分類すれば春山温泉に関わる人々の開発事業という時代の趨勢の中での葛藤、「春雨」に宿泊する人々の「逃げてきた」世界と過去へのしがらみという二つに分けられますが、どちらの場合も彼女たちは現実に流され、希望を失いかけています。しかし彼女たちは主人公との出会いを通じて徐々に現実に直面しようという決意を持つようになり、主体性を取り戻します。このプロセスは主人公の場合はおざなりにされていた「癒し」と成長の過程に他なりません。この作品で描きたかったのはあくまでヒロインたちのシナリオであって主人公は彼女たちの変化の触媒にすぎないのではないでしょうか。プレーヤーが作品世界を覗く「窓」、それが「中垣祐」に与えられた役割なのではないかと思います。限りなく三人称に近い一人称、これこそが『春雨曜日』という「ノベル」を語る視点なのでしょう。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

織部 蛍

 今回紹介させていただくのは「春雨」の宿泊客の一人である蛍です。内気なヒロインは色々いるとは思いますが、彼女ほど内気なキャラは少ないのでは?とにかく人見知りが激しくて、最初のころは会話することもできず、「文通」によって意志疎通をはからないとなりません。やがて多少はうちとけるようになって、彼女の「正体」が発覚します。まぁバレバレな気はしますが、「お約束」ということでよしとしましょう。由緒ある旅館といえばこれしかないでしょう、はい。演じるは川澄綾子さんです。

 以上です。いろいろと厳しいことも書きましたが、全体を通して見れば不思議と悪い印象は残りません。作品の持つ「味」によるものなのでしょうね。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 提出受 04/06/01)


・こちらの作品については以前すでにレポートをいただいておりましたが、今回リメイク版の提出をしていただきました。以前のものよりも量・質ともにパワーアップ!。読み応え十分で、改めて参考になります。

REVIVE...〜蘇生〜
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
17 77

対応機種:ドリームキャスト
ジャンル:トラップアドベンチャー 発売元:データイースト

 サターンで発売され好評を博した『慟哭そして…』に続くデータイーストのトラップアドベンチャー第二弾にあたるのがこの作品です。物語は主人公の元へ母親を亡くし身寄りのなくなった遠縁の少女、希春がやって来るというプロローグから始まります。それから11年、主人公と希春は兄妹のような生活を送っていましたが、ある夏の日一通の手紙が希春の元に届けられます。手紙は海洋開発推進興業なる研究施設からのものでした。そこには死んだはずの希春の母親がまだ生きていると記されており、手紙を見た希春は一人で研究所へ行ってしまいます。手紙の内容に不審を抱いた主人公は希春の親友の菜緒と二人、希春を探すために研究所へと潜入します。そして待ちうける幾多の危険を回避し、希春を無事連れ帰ることがゲームの目的となります。
 システムについてふれましょう。トラップアドベンチャーの二作目ということで、基本的なゲームのシステムは『慟哭そして…』と共通しています。外界から隔絶された建物の中を移動しつつ、人物との会話を重ねることで物語を進行させていくというオーソドックスなシステムをベースにトラップの解除という要素が加えられたゲームがトラップアドベンチャーなのですが、このトラップの解除という要素がゲームの難易度を大幅に上げています。アイテムを建物内で調達して決められた場面で使用することが基本となりますが、それだけなら試行錯誤を繰り返すことでクリアーできます。難しいのは謎解きの部分でしょう。知識と推理力が要求されるので、闇雲にプレイしているだけではクリアできません。理科や数学、音楽などの知識と直感がないと苦しいのではないでしょうか。またトラップの多くは「生死イベント」と関係しています。生死イベントとは主人公やヒロインたちが命の危険にさらされるイベントでトラップを解除できるかできないかがキャラクターの生死を分けます。トラップの解除だけでも難しいのですが、この作品では新たに時間制限という要素が追加されています。一定の時間(ゲーム内の時間ではなく、現実の時間)内にトラップを解除しなければならないのです。『慟哭そして…』のときはじっくりと考えることができたのですが、今回は時間的な余裕もありません。時間制限が導入されたことで難易度はさらに上がりましたが、アドベンチャーゲームらしからぬ緊張感を味わうことができるようになりました。「前作」では希薄だったトラップ自体の必然性やリアリティの面でも大幅に向上しており、トラップアドベンチャーというジャンル自体の進化がうかがえます。
 キャラクターについてですが、この作品に登場するヒロインは7人います。主人公の「妹」希春、希春の親友の菜緒、菜緒を慕う後輩の由月、研究所の職員の美澄、研究員の玲子、無口な謎の少女千尋、そして隠しキャラ的なあおいという顔ぶれですが、『慟哭そして…』よりもキャラクターの設定が「狙った」ものになっています。どこかで見たような設定とキャスティングで、意図的なものが感じられます。人物設定としてはかなり類型的ですが、人物描写は「前作」よりもしっかりとしており、キャラクター自体の厚みは増しているといえるでしょう。サブキャラクターたちは「前作」ほどのインパクトには欠けますが、内面の苦悩という部分の描写に力が入れられていて、「前作」の犯人たちよりも人間味あふれる存在になっています。(一名を除く。)各キャラクターの関係もゲームが進行するにつれて明らかになっていきますが、根幹となる人間関係がしっかりとしているため、物語のテーマがより鮮明に感じられます。
 ストーリー面に移ります。ゲームの性格上、一度プレイしただけでは物語全体の構造が解りにくいのですが、複数のヒロインのストーリーを追っていくうちに次第に作品の全体像が見えてきます。この作品のテーマは「死と再生」ということになると思いますが、このテーマ自体は『慟哭そして…』と同じものです。またある男性の一人の女性への「愛情」が事件を引き起こしていくという構図も共通しています。しかしながらその描き方は異なったものになっています。前作の「犯人」にとっては犠牲者は誰でもよく主人公たちが事件に巻き込まれたのは偶然に過ぎません。また犯人は自分の目的に凝り固まっていて、犯行を後悔することもなく改心することもありません。一方この作品の当事者にとって必要なのは特定人物の「生命」であって、事件そのものが必然的なものになっています。彼には道義的苦悩があり、説得してその計画を破棄させることができます。無差別に他人の命を奪う男による猟奇殺人と特定の個人を「殺す」ことに苦悩する男の計画…事件の当事者の設定とその動機が二つの作品の方向性を決定したといってよいでしょう。「前作」はホラー指向、この作品はSF指向という方向性を持っているといえますが、両者の比較に関しては『慟哭そして…』のレポートを見ていただくとして、次にこの作品のストーリー面での問題点についてふれたいと思います。この作品における当事者については上に書いた通りなのですが、実際のところ彼は犯行には及んでいません。それではなぜヒロインたちが生死イベントに直面するのか、そのパターンは二つに分かれます。一つは突発的アクシデントによるもので研究所という施設の持つ危険性によるものです。もう一方はとある人物による気まぐれな殺意によるものです。ここで問題になるのは後者の方です。彼は事件の根幹とは関係なくストーリーにおいても重要な役割を担っていません。それではなぜ彼のようなキャラクターが設定されたのでしょうか。それは制作者にとって「悪人」の存在が必要だったからではないかと思います。生死イベントを全てアクシデントにしてしまうと確かに緊張感、恐怖感はかなり希薄になります。そのため殺意のある人物を施設内に存在させることで、その緊張感、恐怖感を少しでも表現しようとしたのでしょう。しかしながら物語の重要な役割を担わない人物にその役目はつとまらなかったようで、「前作」の狂気に満ちた犯人による恐怖感は再現できていません。残念ながら「彼」の存在はこの作品全体のバランスを損なってしまっているといわざるを得ないでしょう。
 この作品はキャラクター造形の深みや設定の合理性、ストーリーの整合性を追求することで「前作」よりも物語としての進化を果たしています。しかし一方で連続殺人というこのジャンル特有の足枷に縛られ、消化不良を起こしている面があることも確かです。物語としての完成度とトラップアドベンチャーというジャンルの特徴をどう融合させるかという課題が今後に残されたといえそうです。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

水谷 菜緒

 今回取りあげるのは、作品中において希春に次いで重要な役割を担っていると思われる菜緒です。外見的にはさっぱりとしたスポーツ少女なのですが、家庭内の問題のために内面には深い悩みを抱えています。彼女にとっては「実験」が成功した方がよかったのかも知れません。しかしながら、それには大きな道義的問題が付きまといます。父親か親友かという二者択一を迫られた彼女の葛藤が非常に印象的でした。演じるのは飯塚雅弓さんです。 

 以上です。現状ではトラップアドベンチャーの第三弾が発売されることはなさそうです。『慟哭2』も予定されていただけに残念でなりません。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 再提出受 03/18/01)


・こちらの作品については以前すでにレポートをいただいておりましたが、今回リメイク版の提出をしていただきました。以前のものよりも量・質ともにパワーアップ!。読み応え十分で、改めて参考になります。

センチメンタルグラフティ2
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
11 55

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル 恋愛アドベンチャー 発売元 NECインターチャネル

 発売前に異常なまでの盛り上がりを見せ、発売後はその独特のゲームシステムが賛否両論を呼んだ『センチメンタルグラフティ』。その人気にあやかって発売された続編がこの作品です。しかしながらその評判は芳しいものではありませんでした。今回はその理由を考えてみたいと思います。
 まずは作品の設定面からです。ご存じの通りこの作品と前作はヒロインのみ共通で主人公は別人という設定になっています。前作の主人公を事故死させることで、いったん築かれた恋愛関係をリセットしてしまおうとするこの試みは多くのプレーヤーの怒りを買いました。制作サイドとしてはすでに人気の確立されたキャラクターを再登場させることが続編の成功条件だと考えたのでしょうが、これは安易すぎる発想だといわざるを得ません。前作のキャラクターを再登場させることで様々な無理が生じてきます。その無理を強引に解決しようとしたのが主人公の変更だったのでしょう。しかしながら主人公は交換できてもプレーヤーは交換できません。プレーヤーにとって前作の主人公の死はハッピーエンドを迎えた前作のプレイ結果を否定されたのと同じことです。このことがどれほどプレーヤーの作品への感情移入を減退させるか想像することは出来なかったのでしょうか。また、無個性だった前作の主人公とは異なり、『2』の主人公は「写真を撮ること」に異常なまでの執着を持っています。良い写真を撮るためなら人に迷惑をかけても構わないという彼の振る舞いは正直理解に苦しみます。これほど自己中心的な主人公に設定されるとプレーヤーとしては戸惑うばかりで作品への感情移入ができなくなります。作品世界にスムースに入ってもらうためにもプレーヤーが共感できるような主人公を登場させることが恋愛ゲームの最低限の条件なのではないでしょうか。
 システム面についてふれましょう。前作は12の都道府県を旅行しながら手紙の主を探すという他に例を見ない独特のシステムでした。そのため批判的な意見も少なからずありました。その反省?からか今回のシステムはかなり古典的なものとなっています。マップ移動とイベントの発生を繰り返すことでゲームを進行させるというこのシステムは恋愛ゲームでは古くから用いられてきました。しかしながら昨今はよりストーリー性を重視するという傾向が強くなったためノベル形式のゲームが主流となっています。その時代の流れにあえて逆らったのがこの作品なのですが、残念ながら失敗に終わったといえるでしょう。イベントの発生する場所に赤、オレンジ、黄色、緑の三角形が表示されるのですが、赤とオレンジは必須のイベントで見逃すとゲームが進められなくなります。しかしながらそれぞれの三角形が何を意味しているのかということが説明書には書かれていないのです。またヒロインたちは3人一組になっていて同時に進行させなければ話が進まないようになっていることも説明されていません。具体的なゲームの進め方も説明せずにプレーヤーに勝手にやってくれという態度はいかがなものでしょうか。ただでさえ難易度の高い煩わしいシステムなのに余計にプレーヤーに負担を掛ける結果になっています。攻略本を買えということでしょうが、あまりに無責任すぎる気がします。またゲームの日数とイベント数のバランスも気になる部分です。日数の割にイベント数が少なく、何も起きない日が多すぎます。中だるみしてしまうこともありますが、システムによるシナリオ面でのハンデ以上に一層それぞれのシナリオが薄くなってしまっています。マップ移動とイベントの積み重ねというシステムは時代遅れであることは確かですが、きちんと使えばまだまだ効果は期待できます。あえて時代に逆らったシステムを採用したのならそれなりにシステムの完成度を高めなければ意味がないのではないでしょうか。
 次はシナリオ面についてです。一般的な作品ではヒロインと主人公の関係が複数用意されています。異なるシチュエーションのシナリオを用意することで作品全体の幅が増しますし、プレーヤーそれぞれの好みに対応できるというメリットがあるためです。しかしながら近年は妹だけ、ママだけなどという風にヒロインと主人公の関係を統一する作品が増えてきました。その傾向を作り出したのが前作『センチメンタルグラフティ』だったのではないでしょうか。特定の本命的ヒロインを設定せず、各ヒロインの境遇を共通させ個性の部分を描き分けるというこの方式はヒロイン平等主義とも呼ばれ、当時はかなりインパクトがありました。そして前作が大きな反響を集めたことから、それに追随する作品が増えたのでしょう。しかしながらこの方式には大きな問題があります。ヒロインの境遇を共通させてしまったことでバラエティに富んだシナリオを作ることが難しくなってしまうのです。そのために同じような展開、同じようなプロセスを経て同じような結末に至るシナリオばかりになりがちなのです。前作ではこの問題が消化しきれていなかったのですが、その教訓は生かされなかったようで、この作品においてもその欠点は継承されています。心に傷を負ったヒロインに主人公がしつこくモデルになってくれるように言い寄り、度重なる拒絶にも負けずに最後はモデルになってもらい過去の恋人の後釜に座るという基本的な図式が見事なまでに徹底されているのです。同じようなシナリオを繰り返しプレイさせられるだけでも辛いのですが、共感できない主人公による気の滅入るような展開が1ダースも用意されたのではたまったものではありません。この展開やシチュエーションが大好きだというプレーヤー以外には苦痛でしかありません。
 最後になりますが、この作品の失敗の最大の原因はキャラクター偏重の姿勢にあると思います。前作にもいえることなのですが、作品が発売される前から雑誌などのメディアでキャラクターを大々的に取り上げることで前人気を得ていくというプロモーション活動に頼りすぎなのではないのでしょうか。そしてこの作品はそのようにして人気が出たキャラクターを再登場させるために無理やり作った作品になってしまっているように思えます。キャラクターがあってゲームがあるのではありません。ゲームがあってキャラクターがあるのです。キャラクターの魅力というものはゲーム本編の中でこそ発揮されるべきものなのではないでしょうか。 

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

杉原 真奈美

 この作品のシナリオは気が滅入るものばかりですが、真奈美のシナリオが最も苦痛を感じるものでした。彼女は前作の主人公の死が受け入れられず、彼が生きているという妄想を抱いています。彼女に接近するために『2』の主人公は手紙を出しますが、それを真奈美は「彼」からの手紙だと受け取ってしまうのです。彼女との文通の中で主人公は「彼」のふりをしますが、その場面はプレイしている私でさえ罪悪感を覚えるものでした。結果的に真奈美は「彼」の死を事実として受け止めますが、果たしてそれでよかったのでしょうか…。

 以上です。この作品はパッケージに表記されていませんが、VGA出力に対応していますので、モニターに接続できる環境の方はお試しを。(残念ながら『サードウィンドウ』は対応していません。)長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”教授 再提出受 03/18/01)


・ラボー教授の変化球的作品ということで楽しみにしていたのですが、今回はRPGで攻められたようです。そのRPGの中でもあまり一般には知られていない(?)作品のようで、まいやも初めてお聞きしました。レポートを拝見するとかなり変わった内容の作品のようです。今回も相変わらす濃い内容のレポートをいただきました。

トリコロールクライシス
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 71

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル ロープレ 発売元  ビクター

 「じつはこの三人娘大変なことになってるんです!」、「試験に落ちると世界は救えない」等々とインパクトのあるコピーで雑誌の裏表紙を飾った作品です。実際にはオーソドックスな作品なのですが、一見「ぎゃるゲー」のような雰囲気と、どのようなゲームか判断しかねる広告で売り上げの方はもう一つだったようです…。今回はこの作品の作品の実像に迫りたいと思います。
 人間が生命の頂点に立っていない世界…それがこの作品の世界です。そこには「イブリース」という人間の天敵ともいうべき魔物がはびこっています。そのイブリースから人々を守る魔法使いは「塔の主」と呼ばれ人々の尊敬と憧れを集めています。そして新たに東方に建てられた三つの塔の主を決めるために選抜試験が行われることになりました。エナ村という農村の少女ジャニスが塔の主になるという志を抱いて王都ファイアンに上京してくるところから物語は始まります。同じく塔の主を目指すラナン、アメネアとの出会い、ユノやスタム、ジンといったライバルたちの登場を経て本格的に塔の主を決定する試験が始まります。
 システム面についてですが、この作品で特徴的なのはプレーヤーが操作できるキャラクターが三人いるということです。ジャニスの他にラナンとアメネアも操作することができるのですが、これは試験が三人を一チームとして各チームごとに競わせるという様式で行われるためです。上京してきたジャニスのパートナーがラナンとアメネアというわけです。しかしながらこの三人でパーティを組むわけではありません。あくまで単独行動が基本で三人の「自宅」で操作するキャラクターを選択し、他の二人にさせる行動を指示するという形になります。ですから一人のキャラクターで始めから終わりまでやり通しても、交代交代で進めても構わないわけです。ここら辺が「マルチヒロインシステム」と呼ばれるゆえんでしょう。さて、この作品では貨幣という概念がありません。ではどうやってアイテムを購入するのかといえば、「メア」という物質を用います。メアとはこの世界の魔法の源となる物質でイブリースを倒すと入手できます。入手したメアを「晶化」させたものが「晶化メア」でこれが貨幣とMPの役割を兼ねます。貨幣とMPを共通させるとはかなりシンプルなシステムですが、魔法のこの世界に占める役割を考えれば納得できます。メアと並んで重要な要素が「御使い」です。御使いとは魔法使いが制御できるように調整されたイブリースで戦闘時に操作キャラクターを支援する役割を果たします。この御使いは様々な形態をとることができ、魔法系や遠隔射撃系、直接攻撃系などプレーヤーの好むタイプに育てられます。なお、御使いのレベルは戦闘では上がりません。晶化メアを加工した「色メア」を与えることによって能力が上昇する仕組みになっています。色メアは7色あり、それぞれの色が攻撃力や素早さなどのパラメーターに対応しています。それらを与えることによって好きなパラメーターを伸ばすことができるわけです。色メアのもう一つの役割はアイテムの合成に使われることです。入手したアイテムと色メアを組合わせることによって様々なアイテムや特殊効果を持つ「装核」を作ることができます。装核というのは御使いが装備できるアイテムのことで御使いに特殊なスキルを追加する効果があります。このアイテムや装核の合成を研究することがこの作品の面白い部分なのではないでしょうか。なんとなく『マリーのアトリエ』みたいですが、色々な組み合わせを試してみるのは楽しいものです。(オールドゲーマーには『ソーサリアン』みたいといった方が分かりやすいのかも?)ゲームの進行および戦闘については特筆すべき点はありません。難易度も低く、30時間程度でクリアーできるでしょう。ただ、御使いや装核の強化に手間をかけたわりにはあまり戦闘の結果に影響が反映されないので残念といえば残念ですが。(敵が弱すぎる。) 次にキャラクターについてです。先ほど述べたとおりプレイヤーが操作できるキャラクターは三人です。ジャニスは間接攻撃主体で素早さ重視、ラナンは直接攻撃でパワー重視、アメネアは魔法主体と能力面ではっきりと区別されていますが、キャラクターの性格もジャニスは明るくリーダーシップを取れるタイプ、ラナンは男勝りで人付き合いが下手、アメネアは内向的なお嬢様というようにかなりはっきりと描き分けられています。ただ本編中はそれほどキャラクターの差が感じられないのが残念です。(ここら辺が文章に頼れないRPGの難しいところなのでしょうね。)ジャニスたちのライバルとしてユノ、スタム、ジンの三人とそれぞれのチームが登場しますが、彼らの実力は様々です。結果的にはライバルチームは全て試験を辞退することになり、ライバルというには物足りないかも。試験の監督をするのが「六柱」と呼ばれる王都最強の魔法使いたちなのですが、課題にそれぞれ特徴があり性格の違いが出ています。六柱は必ずしも一枚岩ではなく、思惑の違いがやがて国家の危機を招くことになります。その他に登場するキヤラクターもバラエティーに富んだ面々で物語に彩りを添えています。
 ストーリー面についてふれましょう。物語の序盤は塔の主選抜の試験がメインとなっていて緊張感はあまりありませんが、中盤以降は王国でのクーデターやイブリースの本格的攻勢などが起こり、かなりハードな展開です。裏切りや戦死など登場人物との悲しい別れの場面も数多く用意されています。また、人類と対立する存在であるイブリース側の立場もクローズアップされ、人類とイブリースの二種族の生存競争という重いテーマが取り扱われています。共存できない種族同士の避けられない争い、さらには人間同士の権力争い…相次ぐ闘いに勝利しても心が晴れることはありません。最終的には王国と人類を救いめでたく塔の主になることができるのですが、支払った代償を考えると後味の悪さが残ります。
 この作品は一見すると非常に古典的なRPGに感じられます。システム的にはエンカウント制の戦闘やダンジョン?の探索、クエストの達成といった昔ながらのRPGの伝統がしっかりと受け継がれていて、その手堅くも保守的な構成に懐かしささえ感じてしまいます。また基本となるストーリーも英雄を夢見る少女たちが経験を積んで師を越え、世界を救うと同時に夢を実現させるという極めてオーソドックスな成長物語です。しかしながらクリアー後に受ける印象は「懐かしさ」とは異なるものです。それは昔のRPGにおいて約束ごとだった勧善懲悪、プレーヤー側の絶対的な正義というものがこの作品では否定されているからでしょう。それぞれの立場にそれぞれの正義があり、生きていくためには相入れない立場の「敵」を倒していかなければならない…非情ではありますが、これが自然の摂理なのでしょう。この作品のヒロインたちは塔の主になるという夢を実現する過程で英雄、正義という幻想の苦さを経験していきますが、それはまたRPGの伝統的な勇者像を破壊するという過程でもあるのです。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

アメネア・グランデル

 三人の中で一番性格的に塔の主に向かないのがアメネアでしょう。六柱の長ホゥクの孫にあたり、血統としては申し分なく、魔法の素質も抜群なのですが、積極性、主体性に欠け覇気のない印象を人に与えます。これは彼女の両親がイブリースとの闘いで戦死したことが大きく影響しています。彼女の一族にとってイブリースと戦うことは義務なのですが、命を落とすことも珍しくありません。しかしながら幾多の試練を経て最終的にはその義務を自分の意志で受け入れます。一見受動的な姿勢ですが、義務の重さを考えると誰にでも出来る決断ではありません。本編を通じて精神的に最も成長したのが彼女なのかも知れません。
 

 以上です。見た目に反してシリアスな作品ですが、難易度は高くなく気軽にプレイできる作品ではないかと思います。長文どうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 03/04/01)


・さすがにラボー教授の本命作品ということで、得点、本文とも評価の高い内容になっています。ノエルシリーズの3作目ということですけど、この3作目は変わった内容のようですね。難易度も少々高めということで、プレーヤーを選ぶとのこと。しかし、それだけ遊び応えのある作品ということですよね。ちょっと興味深く思ったのは最後に書いていらっしゃる内容。「現実世界とゲーム世界との距離」というのはおもしろいお考えだと思いました。

NOeL3(ノエル3)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
10 18 79

対応機種 サターン プレイステーション
ジャンル ハッキングアドベンチャー 発売元  パイオニアLDC

 パイオニアLDCの人気シリーズの三作目なのですが、他の作品とは著しく異なった印象を受ける作品です。物語は第一作の続編というべき設定で、由香、代歩、恵壬の三人が再登場し、主人公も同一人物です。クリスマスも近づいた24日、主人公の元に由香からクリスマスパーティーの招待状が届きます。日時は24日午後1時から6時、場所はアクアタワー24F江珂高校3−B教室。主人公がそのメールを再生していると突然画面が切り替わり、由香からの緊急着信が。パーティーというには異様に緊張した様子で、彼女はアクアタワーのハッキングとクラスメイトの救出を依頼してきます。回線はそこで切られてしまい、主人公は指示に従ってハッキング作業に入ります。そこで得られた情報を総合すると、どうやらアクアタワーはテロリストに占拠され、3−Bの生徒は人質にとられてしまったらしいことが判明します。アクアタワーと外部との接点は主人公のみ。テロリストと公安のにらみ合いの間隙をついて主人公は生徒全員を救出できるのか?というのがゲームの概要になります。
 システム面についてですが、このゲームには時間制限が設けられています。ゲームスタート時は24日の午前0時ですが、24日の午後10時10分までに救出を終えなければなりません。もしも救出できなかったら…最悪の場合、3−Bの生徒全員がテロリストの爆弾によって爆死という悲惨な結末が待ちうけています。最悪の事態を回避し、生徒全員を救出するためにはどうすればよいのか、次にゲーム上でプレーヤーが行うべきことについてふれたいと思います。当初プレーヤーが自発的に行えるのはハッキングと遠隔操作型のカメラの操作だけです。ハッキングとは文字通りのハッキング行為で、タワーや学校、生徒の自宅などの端末に進入してデータを盗み出す行為です。入手できるのはメールなどのテキストデータ、写真などの画像データ、成績表や身体測定の記録などの個人データ、生徒の作ったホームページデータなどです。個人の、それも女子高生のプライバシーを侵害するのはどうかとも思いますが、人命救助のための情報収集だと考えましょう。(人質救出よりこっちの方に夢中になったりして。)遠隔操縦型のカメラ、通称「思い出君」は江珂高校の任意の場所を指定するとその場所を撮影してくれます。「思い出君」の操作は人質の確認には不可欠な行為なのですが、バッテリーの容量が限られているため無駄な探索は控えなければなりません。ハッキングと「思い出君」の操作によって情報は収集できますが、それだけでは事件の解決にはつながりません。そう、情報を活用し誰がどこに捕らわれているのかを特定しなければならないのです。ここで登場するのが岡野由香というわけです。彼女はテロリストの隙を見ては主人公にコンタクトをとってきます。主人公からはタワー内部への通信は出来ないので彼女がタワーと外部との唯一の接点になります。彼女との会話では集めた情報の整理、人質の照合が出来ます。なにしろ主人公は由香たち三人しか知らないわけで、3−Bの生徒の確認作業を一人でこなすには無理があります。ですから3−Bに所属している由香に協力してもらうことが必要になるわけです。彼女からは有力なヒントがもらえますが、やはり最終的にはプレーヤーの推理にかかってきます。プレーヤーが考えることによって断片的な情報が一つになるというアドベンチャーゲームならではの醍醐味が思う存分味わえます。生徒の確認が終わったら今度は生徒を脱出させなければなりません。この脱出パートではプレーヤーは各フロアの警報装置とシャッターの操作が出来ます。この二つを活用してテロリストを誘導し、代歩、ティナ、由香の三人に指示を出して、各フロアの生徒を脱出させます。もちろんテロリストに発見されれば救出は失敗です。全員めでたく助けられればベストエンディングが待っていますが、そこまでの道は険しいものです。恐らく何度もプレイしないと無理でしょう。高い難易度に挫折するかやりごたえを感じるかはプレーヤーの性格次第です。プレーヤーが難易度をどう受け止めるのかによってこの作品に対する評価が決まってくるのではないでしょうか。
 次にキャラクターについてふれたいと思います。この作品の特筆すべき点としては何といっても3−Bの生徒全員の設定を作ってしまったということがあげられます。36人の女子高生のキャラデザをするだけでも大変なのですが、一人一人の趣味、交友関係、所属クラブ、成績から身長体重、スリーサイズにいたるまで、こと細かな設定がなされているのには脱帽です。実際に主人公が知り合えるのは五人だけなのですが、ハッキングによって集めた情報からそれぞれの生徒の人物像を想像するのも一興でしょう。(メインキャラよりもお気に入りのキャラがいたりして…。)さて、実際に知り合えるキャラクターなのですが、第一作で登場した、岡野由香、清水代歩、佐野倉恵壬の三人の他に今回新たに和倉古都海と西村知奈の二人が加わりました。関西出身で天然系の古都海(ことみ)とクォーターの帰国子女の知奈(ティナ)という対照的な新キャラです。当初は由香としかコンタクトがとれませんが、ゲームを進行させるにつれ、他の四人とも会話できるようになります。この作品の会話は独特のもので、音声による台詞のみでメッセージが表示されません。また相手の話題についてどう反応するかは会話ボールという変わった選択肢によって行わなければなりません。そのため主人公が何といったのかは各自の想像に委ねられます。より主人公を無個性にして感情移入をはかろうという試みなのでしょうが、拒否反応もあるかもしれません。キャラクターの造形についてですが、ある意味非常に二面的です。テロリストによる学校占拠という非常事態に、メインキャラクターは冷静でマイペースな対応をします。無謀な行為もありますが、恐怖心というものは感じられません。これはちょっと現実離れしているように思われます。高校生でなくても恐怖で何もできないというのが普通なのではないでしょうか。一方メールや写真からうかがえる彼女たちの日常生活からは自然な女子高生らしさが感じられます。非常事態と日常生活、主人公のいる場所といない場所、実際のゲーム世界と設定上の世界、超人的神経と女子高生らしさ…何とも興味深い二重構造です。
 最後に作品全体を通じての感想に移りたいと思います。この作品が他の作品と決定的に異なるのは、ゲーム本編中においては主人公はヒロインたちに直接会うことが出来ないという点です。彼女たちとの会話はヴィジュアルフォンという画像付の通信を通じてなされます。またタワージャックからの人質の解放という一見勇ましいゲームの目的ですが、主人公がその現場で活躍することはありません。生徒たちが実際の危険にさらされている一方、主人公に直接的な危険はありません。そう、主人公=プレーヤーにとって全てはモニターの中の出来事でしかないのです。この作品においてプレーヤーは画面の向こう側の出来事、モニターの中のヒロインたちとは間接的にしか関わることはできません。このどうしようもない距離、これこそがゲーム世界と現実世界との関係ではないでしょうか。近いようで遠い世界、それがゲームという二次元の世界なのでしょう。その決して触れることのできない世界、そこに感情移入することでプレーヤーはゲームに参加できるのです。ヴァーチャルリアリティ指向がもてはやされる昨今、忘れられがちなプレーヤーとゲーム世界の本来の関係というものをこの作品は示しているように思われるのです。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

佐野倉 恵壬

 さすがにメインキャラ以外から選ぶのはどうかと思いますので、恵壬を選ばさせていただきました。本文でも書きましたが、この作品のキャラクターは非常に二面的です。その中でも最も二面的なのが彼女ではないでしょうか。外見的には大和撫子、普段は恥ずかしがり屋で人見知りが激しいのですが、実は以外と頑固で負けん気が強い性格です。また陸上競技の記録保持者でもあり抜群の運動神経を持っています。本編では彼女の隠れた一面の方がクローズアップされています。テロリストに縛られている状態から自力でロープを引きちぎって脱出したり、主人公の制止も聞かず単独行動したりと非常にアクティヴです。中でもテロリストを中段蹴りで倒すシーンは決まってました。由香と違って状況判断ができないのでしょうが、それはそれで魅力なのでは…。演じるは岩男潤子さんです。 

 以上です。一般的にはちょっととっつきにくい作品なのかも知れませんが、やればやるほど味のある作品だと思います。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 02/19/01)


・ラボー教授より「旅立ちの詩」のレポートを提出していただきました。今回もかなりの高得点をつけられているようです。といってもラボー教授は”彩りすと”さんのようですが…。まいやはときメモラー自称しておきながらこの作品やってないんですよねぇ。ザ・ベスト版も発売されていますし、やらないといけないなあ。

ときめきメモリアル ドラマシリーズvol.3 旅立ちの詩
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 73

対応機種:サターン プレイステーション
発売元:コナミ ジャンル:アドベンチャー

 家庭用機種における美少女ゲームの草分けである『ときメモ』、その外伝ともいえるドラマシリーズの三作目にあたり、また長期にわたった第一期シリーズの最後を飾るのがこの作品です。主人公は前二作とは違って無為に高校生活を過ごしてきた、全体的にパラメーターを上げそこねたような男なのですが、身の程知らずにもきらめき高校のアイドル、藤崎詩織に告白したいと願っています。高校生活も残りわずかとなった2月、主人公と詩織は卒業文集の編集委員に選ばれます。文集のテーマは「自分が一番輝いたとき」、今まで何もしてこなかった主人公は「輝いたとき」を見つけるため、そして詩織に告白するために残りの学生生活を2月28日に行われるマラソン大会に賭ける決心をするというのが作品の導入部です。システムはドラマシリーズの前二作と共通していて、ミニゲームをこなしてパラメーターを上げつつ、ヒロインとの親密度を高めていくというものですが、前二作と異なるのはヒロインが二人いるという点です。『虹色の青春』には秋穂みのり、『彩のラブソング』には美咲鈴音というサブヒロインが登場しましたが、基本的にストーリーは一本道で、あくまでも脇役にすぎませんでした。今回は詩織の他に館林さんがもう一人のヒロインとして登場します。『旅立ちの詩』というタイトルなのに館林さんがヒロイン格なのは少々変な気もしますが、シリーズ最終作ということで良しとしましょう。エンディングのボーカル曲もちゃんと二人分用意されています。シリーズ最終作にふさわしく登場人物も多く、第一期シリーズに登場したキャラクターが総出演しています。サブストーリーがあるのは清川さん、美樹原さん、鏡さん、優美、みのりの5人ですが、他のキャラクターの出番もしっかりあります。また他のドラマシリーズのクリアデータがあれば、それぞれ『虹色の卒業式』、『彩の卒業式』という後日談を見ることができます。さて、ドラマシリーズといえばミニゲームですが、この作品のミニゲームは量、質ともにドラマシリーズ最高なのではないでしょうか。日課となっているマラソンゲームをはじめ各サブストーリーごとにミニゲームが用意されています。簡単な操作ながら適度な難易度でミニゲームとしての完成度は高いと思います。またおなじみのサッカーゲームやギターゲームもプレイすることができます。(あまり本編とは関係ないですが。)あとミニゲームではありませんが重要な日課として文集の校正作業があります。これが結構難しく何度もチェックしないと全部の間違いが見つけられません。やりごたえがありますが、ミニゲームと違って最初の一回きりしか楽しめないのが難点です。
 次にストーリーについてですが、ドラマシリーズの他の二作品とは少し方向性が違うように感じられます。前二作では三角関係のもつれや友人との対立、クラブ内での孤立など痛々しい場面が多いのですが、これは主人公が一芸に秀でていて、強い個性を持っていることによるものではないかと思われます。主人公にはっきりとした個性を与え、周囲の人間との葛藤を描くことで本編に不足していたストーリー性を得ようとしたのがドラマシリーズの前二作だといえるでしょう。一方この作品には前二作のようなハードなドラマはありません。あまり個性的でない主人公が意中のヒロインに告白するためひたすらマラソンに打ち込む、それがこの作品のストーリーです。そこには主人公とヒロインの二人だけしかいません。周りの人間との衝突といった要素は見事なまでに省略されています。一見するとこの作品のドラマ性は前二作から退化しているように思えます。確かにストーリー性は弱くなったかもしれません。しかしながらドラマ性は弱まっていないと私は思います。本編がなぜあれだけの支持を集めたのか、それはニュートラルな主人公にプレーヤーが素直に感情移入することができ、お気に入りのヒロインとの恋愛を成就させることに夢中になれたからではないでしょうか。プレーヤーが求めていたのは波乱万丈のストーリーでも葛藤に満ちた人間模様でもなく主人公とヒロインの二人だけの世界、時間というものだったのではないでしょうか。そう、この作品で表現されているのは懐かしい『ときメモ』の世界なのです。本編とは異なる方向を目指して始められたドラマシリーズですが、最後にたどり着いたのは本編と同じ方向性、シンプルでストレートな恋愛の姿でした。それこそが『ときメモ』本来のドラマ性であり、第一期シリーズを「卒業」するにあたって再現したかったことなのではないかと私は思います。 

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

片桐 彩子

 本来ならこの作品のヒロインである藤崎さんか館林さんを取り上げないといけないのでしょうが、第一期シリーズを通してのお気に入りということで片桐さんです。(一応この作品にも登場するし。)片桐さんについてはもはや説明は不要でしょう。生まれながらのアーティスト、根っからの自由人である彼女ですが、『彩のラブソング』で株を下げた感があります。まあ自由闊達に生きるということは周りの人間の誤解を招く部分がありますし、言いたいことを言うと傷つく人も出てきますが、本人に悪気はないと思いますので大目に見てやることも必要ではないかと…。才能も自信もない私にとっては彼女のような生き方は羨ましい限りです。

 以上です。PS版は廉価版もあり容易に手に入りますが、サターン版は菓子折りみたいな巨大なパッケージの特別版しか発売されませんでしたので、相当入手が困難だと思います。そのことがこの作品をマイナーなものにしているのかもしれません。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 01/24/01)


Never7〜the end of infinity〜

リメイク版をいただきましたので、削除いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 01/01/01)


・今回はかなり”辛口”なラボーさんのレポートです。期待度が高いとその分評価も厳しいものになりがちですよね。それにしてもインターチャネルの作品はどれも期待度に対しての、発売後の評価があまり芳しくないような…。ラボーさんが書いていらっしゃるように、話題には事欠かない作品ばかりなんですけどねえ…。それでもなお人気が衰えないのはなぜ?。

ブラックマトリクス
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
13 63
ブラックマトリクス アドヴァンスト
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
12 62

対応機種 サターン
ジャンル シュミレーションロープレ
発売元 NECインターチャネル

対応機種 ドリームキャスト
ジャンル シュミレーションロープレ
発売元 NECインターチャネル

 サターン版は予約限定生産として発売され、当初隠しキャラとされていた「ゼロ」の存在が明らかになったとたんに中古価格が高騰し、一時一万円台で売られるなどいろいろと物議をかもしたソフトとして有名です。
 ゲームとしては一般的なRPG風シュミレーションなのですが、善悪が逆転した世界観と主人公が仕えていた「ご主人様」との恋愛要素があることがセールスポイントになっていると思われます。善悪が逆転した世界観というのは要するに悪魔が神に勝利した世界ということで、愛や自由、正義、平等といった概念が「大罪」とされ、嫉妬、強欲、暴食、欲情などが「美徳」とされています。この世界は二つの種族で構成されていて、ご主人様が属する黒い羽を持った支配階級と主人公が属する白い羽を持った奴隷階級に分かれています。記憶をなくした主人公はご主人様に助けられ、ご主人様の家で暮らしていましたが、主人公への「愛」を口にしてしまったご主人様は異端審問官によって連れ去られてしまいます。ご主人様を探して町へ出た主人公は「大罪」を犯した人々を仲間にしつつ世界を支配する「教皇」の元へと引き寄せられていくというのがこの作品のアウトラインです。
 システム面についてですが、基本的に戦闘を行うシュミレーションパートをイベントによるシナリオパートでつなぐという構成になっています。シュミレーションパート自体はキャラクターを移動させコマンドで指示を出して戦闘するオーソドックスなものですが、このゲーム独自の概念として「魔法のバイオリズム時計」というものが採用されています。これは一回の行動を一単位として24単位で一周する時計を設定し、時計の針の位置によって魔法の威力が変化するというものです。時計の種類は複数あって、魔法を使うことでその魔法に対応した属性の時計に変化させることができます。このシステムは魔法の効果を高める(減らす)ためにプレーヤーが行動数を調整しながらゲームを進めることが求められ、制作者はゲームの戦略性を高めることを意図したのでしょうが、サターン版では属性が五つもあり、必要以上に複雑で面倒なものになっています(DC版では三つ)。難易度はノーマルでやっている限りはそれほど高くはありません。ただ後半の面で登場する「鎧召還魔法」が強すぎて(一発でHPがなくなる)、やられては復活、やられては復活とかなり大味な展開を強いられるのは問題です。また遠距離攻撃の射程が長く、直接攻撃に対して一方的に有利になっているのもゲームバランス面でマイナス要素といえます。シュミレーションパート全体にいえることですが、有効な攻略法が限定されていて、プレーヤーそれぞれが独自の攻略法を編み出していくことができるというシュミレーション本来の自由度の高さが不足しているように思えます。
 次に珍しくサウンドとグラフィックについて書きたいと思います。音楽や絵柄というのはプレーヤーの主観や好みによって評価が変わりますからいつもは詳しくふれてきませんでしたが、この作品の音楽は私の許容範囲を越えていますし、動画を含めたグラフィック面はDC版では大きく変更されていますので今回はあえてふれたいと思います。音楽は全体的にラップ調で、落ち着かない曲調です。曲単体で聞くとそれほど悪くはないのですが、このゲームのBGMとして用いることには疑問を感じます。曲が合っている合っていない以前になぜこれらの曲が採用されているのか判断に苦しみます。センスの相違といってしまえばそれまででしょうが、曲とゲーム本体が一体となっているというのがゲームミュージックの基本ではないでしょうか。グラフィック面ですが、絵柄がサターン版では原画に近かったのですが、DC版ではアニメ調のものに変更されています。個人的には残念な変更点ですが、それは些細な問題です。問題なのはDC版では動画が多用されていることです。最近のゲームの傾向ですし、それが一つの演出手段であることは確かですが、それを移植の際のセールスポイントにすることには納得できません。本編との違和感がつきまといますし、動画を多用するとどうしてもゲームのテンポが悪くなりがちです。安易に動画に頼るよりも先にすることがあるのではないかと思わざるを得ません。
 シナリオについても不満が残ります。善悪が逆転した世界というのは非常に面白そうな設定ですが、このゲームはその設定を生かしきれていないように思われます。強欲や暴食が美徳で愛や平等が罪悪だといわれても、なぜそうなのかという説明がほとんどなされていないため、単に善人が悪人に虐げられているというどこにでもある構図にしか見えません。ですから主人公たちの闘いも悪徳による反逆ではなく正義による行動だというふうにしか受け取ることができないのです。このゲームが描いている世界、物語は結局のところありふれたものでしかありません。ありふれた世界や物語自体は別に悪いとはいえません。しかしこのゲームのように奇をてらった設定を売りものにした場合、ありふれた世界や物語はプレーヤーに失望しかもたらしません。折角ユニークな設定を用意しても設定に見合った内容を描くことができなかったら何の意味もありません。
 単純にありふれたRPG風シュミレーションとしてこの作品を評価すれば、それほど悪い出来ではないのでしょう。しかしながら販売方法や奇抜な設定、「ゼロ」に代表されるセンセーショナルな話題づくりによって平凡なものを平凡でないように見せようとする姿勢が私のこの作品に対する評価を厳しいものにさせています。作品の外見だけ取り繕って内容で勝負しようとしない姿勢をいい加減改めてもらいたいものです。

−おすすめキャラ−

ラボー教授のお気に入りご主人様

クレージュ

 一応この作品には恋愛要素が採り入れられていますが、『ラングリッサー』シリーズなどと比較してかなり物足りないといわざるを得ません。プレーヤーはゲームの開始時に好きなご主人様を選択するだけで後は何の選択もできず、そのままゲームを進行させるしかありません。またご主人様が登場するのは冒頭とラスト近くだけで、恋愛対象として見るにはキャラクターの存在感や個性が描ききれていないのです。ご主人様の中で恐らく最も人気があるのは「ゼロ」でしょうが、私にはそちらの方の趣味はありません。ゼロ以外のご主人様は五人登場しますが、そのうちプラハ、ミジェット、プリカは特定のファン層を狙ったキャラクターで、オーソドックスなご主人様はヒロインタイプのドミナとボーイッシュなクレージュの二人に絞られます。ゼロ以外ではこの二人が人気を二分すると思われますが、今回はクレージュを取り上げることにします。クレージュはショートカットで一人称はボクという典型的なボーイッシュタイプのキャラクターです。いつもはあまりこのタイプは取り上げないのですが、他のご主人様の設定があまりにも偏っているのと何といってもキャスティングで選びました。声を担当されているのは『卒業』でおなじみの嶋方淳子さんですが、他の有名声優にはない独特の味のある演技が印象に残りました。

 以上です。全体的に厳しいレポートとなりましたが、一般的な評価はもう少し上だと思います。ただ欠点を上回るような魅力が不足しているため、教授点によるフォローができませんでした。それではどうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 11/23/00)


・ラボー教授から次のレポートをいただきました。今回はサターンの名作「慟哭そして...」の研究レポートです。ちょっと古い作品ですが、サターンではかなりの高評価を受けていた作品です。まいやもその当時友人から貸してもらってプレイしましたけど、エンディングには至りきれませんでした。推理とか謎解きとか苦手なんですよね…、まいやは頭固いですから…(ToT)。18推の作品ということで、横田守さんの絵がHっぽくって良いんですよねぇ。でも、ラボー教授が書いていらっしゃる通り、猟奇的なホラーな要素があって、少々ヘビーな印象だったように覚えています。ラボー教授の点数も高得点でおもしろいことには間違いない作品ですが、サターン作品はちょっと手に入りにくくなりつつあると思いますので、こちらのレポート読まれて興味お持ちになった方は、頑張って探さないといけませんね!。

『慟哭そして...』
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
16 71

対応機種:サターン
ジャンル:トラップアドベンチャー 発売元:データイースト

 以前にレポートを書かせていただいた『REVIVE...〜蘇生〜』の前身にあたる作品で、トラップアドベンチャーと銘打たれたジャンルの第一作にあたる作品です。物語は通学帰りの主人公と幼なじみの梨代が乗っていたバスが突然事故を起こし、気を失った主人公が見知らぬ廃屋で目覚めるところから始まります。主人公をはじめ廃屋に迷い込んだ人々は外界から閉ざされ、監禁状態に陥ります。そして近辺で行方不明になった郵便局員が死体で発見され、事態は思いもよらぬ方向に・・・という導入部の後、本格的にゲームがスタートします。閉ざされた廃屋に潜む殺人者の手からヒロインたちを救出しつつ脱出を目指すというゲームの目的は『REVIVE...』と変わりません。システム面もマップ移動とキャラクターとの会話、アイテムの入手と使用、トラップの解除とキャラクターの救出によって構成されており、大きな違いはありません。違いとしてはキャラクターの生死イベントがリアルタイム計測ではなく、フラグによって決定されることがあげられますが、『REVIVE...』よりも緊張感が不足していることは否めません。またこのゲームの特徴として18歳以上推奨になっていることがあげられますが、これは無理やり対応させたという感じで不自然な印象を受けます。まあ営業的にも18推にしなければならなかったのでしょうが、パソコンからの移植ならともかく、家庭用オリジナルの作品なのですから、もう少し自然なやり方があったのではないかと思います。難易度は一部の謎解きを除いて『REVIVE...』よりも低いと思われますが、それでもノーヒントで攻略するのは大変なのではないでしょうか。かつては攻略本も出ていたのですが、現在では入手困難です。まあ絶対解けないというほどではないので、頑張ればなんとかなるとは思いますが。
 次にキャラクターについてですが、このゲームには七人の女性キャラと三人の男性キャラが登場します。女性キャラは主人公の幼ななじみ梨代、別の学校に通っている千砂といつみ、留学生ノーマとメイドの子鈴、主人公の学校の教師の真理絵、そして謎の少女という顔ぶれです。年齢の幅やキャラクターのタイプなどのバランスがよく、狙いすぎの感がある『REVIVE...』のキャラクター設定より自然な印象を受けます。男性陣も寡黙な大学生桂、妙におどおどした田辺、いやらしい老人神田川とアクの強い、不審な面々が揃っていて、キャラクター設定の巧みさや配置の効果という面では『REVIVE...』を上回っています。(あぶない人ばかりで、人間的には共感できません。またキャラクターとしての造形も一面的で『REVIVE...』より薄いものとなっていることは否めませんが。)
 ストーリー面についてですが、これは評価が難しいところです。『REVIVE...』のレポートでもふれましたが、ストーリー全体の構造が見えにくく説明不足の感があり、いくつかの真相についてはプレーヤー自身が断片的な情報を元に推測するしかありません。また舞台となる洋館自体の構造やトラップも不自然でいかにも意図的に用意された世界という印象を受けます。そのため物語としてのリアリティや必然性の面での弱さは隠せません。そして作品の主題も「死と再生」という『REVIVE...』と共通するものを扱っているのですが、それに関わる人間の葛藤や道義的問題が描ききれていないため、一連の事件が犯人の独善的行為としか感じられず、事件そのものも単なる猟奇殺人のレベルに留まっており、『REVIVE..』のような主題の重さやメッセージ性が不足しています。ゲームのシナリオの価値をシリアスで深みのある物語が描かれているかどうかという点に置いた場合、この作品は多くの問題点を抱えていると言わざるを得ません。しかしながら物語を純粋にホラーとして見た場合、上記のような「欠点」は些細な問題でしかありません。わざとらしさや作り物臭さという要素は効果的な演出手段ですし、説明不足や問題提起の弱さはかえって作品の雰囲気を高めます。この作品のその場その場の緊張感や先が見えないという不透明感、タイミングのよい衝撃という特徴は良質のホラーには欠かせません。プレーヤーが何にシナリオの価値を置くか、それによって大きくストーリーの評価が分かれるのではないでしょうか。
 最後に『REVIVE...』との比較のまとめに移りたいと思います。二つの作品は多くの物を共有していますが、作品自体の方向性は決定的に異なります。『REVIVE...』では主人公が目的を持って自発的に研究所に乗り込み、ヒロインを救出する過程で事件の背景が明らかになっていきます。またヒロインの生死イベントは計画的犯行の結果というよりもアクシデントというべきもので、一人を除いて事件の当事者が「生命」を奪う必要のある人間はいません。そして主人公が事件の当事者と対面し良心に訴えることで計画を捨てさせることができ、悲劇的結末を回避することができます。また舞台設定や事件の全容について整合性や必然性を重視し、できるだけ説明をすることに力を入れています。作品における主題の位置も明確で扱い方もシリアスです。一方この作品では主人公は偶発的に廃屋に紛れ込み、本人の意志とは関係なく事件に巻き込まれていきます。ヒロインの生死イベントは犯人の計画的な行動によるもので、連続殺人という要素は作品にとって不可欠になっています。そして犯人の意志は固く、その凶行を止めさせることはできず、後味の悪い結末を迎えます。また舞台設定は効果的であることにのみ注意されていて、事件の全容は最小限の説明しかなされていません。作品における主題の位置もはっきりせず、深く描かれてはいません。『REVIVE...』が合理性とテーマ性を重視したSF的性格を持ち、主人公が自発的行動で希望を開いていく作品であるのに対して、この作品はあいまいさとムードを重視したホラー的性格を持ち、受動的立場から抜け出せない主人公が苦い結末へと流されていく作品だといえるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

華苗

 ここで彼女を取り上げるべきかどうか迷いました。というのも説明書のキャラ紹介では意図的にふせられていて、名前を出すことさえネタバレと解釈されかねないからです。しかしながら発売されてから時間が経っていますし、紹介するくらいなら問題ないだろうと思い、あえて選ばさせていただきました。その存在が隠されていることからも想像できるように、彼女は事件の真相と深く結びついています。キャラクターとしては「薄幸の少女」という言葉がぴったりです。本人には何の責任もないのにその存在自体が悲劇をもたらさずにはいられない、そんな少女です。ちなみに声は氷上恭子さんです。それにしても作品に登場する彼女は一体何者だったのでしょうか?各プレーヤーがそれぞれ推測するしかないようです・・・

以上です。『REVIVE...』のレポートの補足も兼ねましたので、思いのほか長文になってしまいました。本文ではきついことをずいぶん書きましたが、ゲームとしての面白さは一級品です。それではどうも失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 11/23/00)


・こちらの研究室のメイン研究員ラボー教授より、今回は「北へ。」のレポートをいただきました。このところはレポートの題材選定にまで気を使っていただいているようで、ホントに感謝です。
 本文中にもご指摘されていますが、この作品はDCで始めてのぎゃるゲーとなっています。まいやのうろ覚えではこの作品には、あのサクラ対戦シリーズなどでおなじみの「広井王子」さんが制作に携わられていたのではないかと思います。確かそのあたりでも話題になったのではないでしょうか?。まいやの印象としては、その当時としてはキャラデザインが淡い感じの絵で、ものめずらしかったような気がします(ここ最近では淡い色調の絵が多くなりましたが)。
 ということで、まいやの研究室では未研究の作品ですので、じっくり読ませていただきました。

『北へ。White Illumination』(DC)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
15 69

対応機種:ドリームキャスト
ジャンル:トラベルコミュニケーション 発売元:ハドソン

 ドリームキャスト初の美少女ゲームとして話題になった作品で、いろいろな意味でインパクトのあるゲームです。ゲームの構成は、東京在住の主人公が夏休みを利用して北海道の親戚の家に滞在し、各地を観光する過程でヒロインたちと出会う夏編と冬休みに再び北海道を訪れてヒロインと再会する冬編の二部構成になっていて、大晦日に行われる「イルミネーションカウントダウン」というイベントで意中のヒロインと新年を迎えることが目標になります。システム的には移動と選択肢によって分岐するというオーソドックスな形をとっていますが、このゲーム独自の要素としてC.B.S.(コミュニケーション・ブレイク・システム)というものが採用されています。これは会話中にXボタンを押すことで会話を中断し、相手の台詞に対する反応を選択することで会話を発展させたり、話題を変えたりできるというものです。従来のゲームは相手キャラクターがしゃべり終わってから選択肢が表示されるという方式でしたが、この作品では相手の会話の流れを見て、タイミングよく反応することが求められます。自分で会話に入るタイミングをつくることができるという点でより現実の会話に近い感覚を味わえますが、集中して台詞を聞かなければならず、タイミングを間違うとはじめからもう一度同じ台詞を聞かされることになり、従来のゲームに慣れたプレーヤーにはかえってわずらわしく感じられることもあるのではないでしょうか。またミニゲームが多いことも特徴ですが、あまり必然性が感じられず、完成度ももう一つでむしろない方がよかったと思います。あとセーブ箇所の少なさやグラフィックの閲覧モードのないこと、無意味なデモなどシステム面の欠点はけっこう目につきます。サウンド面では何といっても主題歌が強烈で、一回聞いたら頭から離れないと思います。名曲かどうかはさておき、インパクトではゲーム主題歌の中で最強ではないでしょうか。
 次にキャラクターですが、この作品には八人のヒロインが登場します。主人公の従姉妹の琴梨、琴梨の従姉妹のめぐみ、琴梨の親友の鮎、ガラス工房で働くターニャ、自衛官の由子、研修医の薫、ラーメン屋の娘の葉野香、ゲームデザイナー志望の梢という面々ですが、初めから主人公と面識があるのは琴梨一人で、他のキャラクターとは旅先で出会わなければなりません。キャラクターによっては出会いのきっかけがわかりにくく、また出会うだけではそれぞれのシナリオには入れませんので、難易度は高めです。ストーリー面ですが、ノベル形式に慣れたプレーヤーには物足りなく感じられるのではないかと思います。基本的に会話中心でテキスト量もそれほど多くなく、キャラクターの内面や情景の描写に力を入れているノベル形式のゲームと比較して物語性が淡泊であることは否めません。それなりに見せ場はあるのですが、「お話」としては決してよくできているとはいえません。
 しかしながら、制作者は始めからよくできた「お話」を作ることには関心がなかったのではないか?私にはそう感じられます。この作品の特徴として会話に力が入れられていることがあげられますが、台詞の大部分は日常的でプライベートな話題と行く先々の場所についての解説に費やされています。この二つはそれぞれ性格は違いますが、どちらも作品とその舞台の実体感を高めることを目的としているといえます。普段現実の生活で交わされる会話というものは物語の台詞と違ってドラマチックでもなければ格好よくもありません。この作品の日常的で何気ないやりとりはそのことを意識し現実の会話に近い感覚を表現しようとした結果によるものといえるでしょう。また、これでもかというくらい詰め込まれた北海道の名所、商店は実在するという大きな特徴があります。ゲームの中で名所をめぐり、名物を食べ、その場所の解説を聞くことはどんな観光ガイドや旅行番組よりもはるかに強くプレーヤーに北海道という場所の実体感を意識させてくれます。(ガラス細工の工程や搾乳の方法、自衛隊基地の事情について教えてくれるゲームが他にあるでしょうか?)この作品は物語性を捨てる代わりに「会話」というものを見直すことで作品世界の日常性と実体感を高めようとする試みだったのではないかと私は思います。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

ターニャ・リピンスキー

 さて、ここで取り上げるのはやはりターニャということになります。キャラクターとしての特徴は生まれつき体が弱いこと、そして外国人であることがあげられます。『Kanon』のレポートでも書きましたが、私は病弱なキャラクターに魅力を感じます。はかなげで悲壮感を漂わせながらも内面的な強さを失わない、そんな姿に惹かれるからだと思います。また病弱なキャラクターは周囲の人間から孤立しがちで孤独感を漂わせていますが、異邦人であることはその孤独感をよりいっそう強めます。ターニャの淡々とした客観的な口調には異邦人であることの孤独とその悲しみが感じられます。ちなみに声は坂本真綾さんが担当されています。

 以上です。余談になりますが、通常イルミネーションカウントダウンは「ハッピーニューイヤー!」というかけ声で新年を迎えますが、本体の時計が2000年になっていると「ハッピーニューセンチュリー!」に台詞が変わります。去年購入したきり今年に入ってからプレイしていないという方は一度試してみてください。長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 11/02/00)


・もうこちらの研究室ではおなじみの”ラボー”教授より、今回は「まぼろし月夜」のレポートいただきました。まいやの研究室でもDC版が発売されたときより、研究課題予定として入っている作品ですが、未だにお目にかかってない作品となっていました。今回の”ラボー”教授のレポートを拝見して、やはり評判どおりの大変おもしろそうな研究課題のようです。ぜひとも近いうちに研究に取り掛かりたいものです…(でも、こちらにレポートいただいたものはみんなおもしろそうなんですよねぇ…、久遠、まぼろし、ライブレード…、どうしよう…、お金が…、時間が…、うぐぅ〜…)

まぼろし月夜(DC)
Story システム ボリューム グラフィック サウンド キャラ ギャル 一 般 ラボー 総 合
17 74

対応機種;ドリームキャスト
ジャンル:恋愛ノベルアドベンチャー 発売元:シムス

  この作品はDCで発売され、後にPSに移植されたノベル形式のアドベンチャーゲームです。物語は月夜野町というベッドタウンに住む主人公の前に関東大震災で亡くなった少女あやめの幽霊が現れるところから始まります。あやめは自分が幽霊であるという自覚がなく、また生前恋仲であった主人公の曾祖父と主人公を混同していて、誤解を解くことのできない主人公はあやめと同居することになってしまいます。自分の命日までしか存在できないあやめ、そして主人公を取り巻く人々との二ヶ月間の生活を通じて物語は進行していきます。システム的には選択肢で分岐するオーソドックスなノベル式アドベンチャーですが、一日一回任意の場所に移動でき、特定のキャラクターと会って好感度を上げることができるようになっています。シナリオは基本的に二人のキャラクターを一組としていますが、どちらのシナリオに分岐するかの判定基準として選択肢の他に好感度という要素が加えられていて、攻略本が発売されていないこともあり、難易度は高めに感じられます。
 次にキャラクターですが、メインとなるのはあやめで他のキャラクターのシナリオでも重要な役割を果たしています。あやめ以外ではあやめの親族である南、主人公の幼ななじみ理央、主人公の同級生の坂上姉妹(双子)、バイト先の店長早苗と姪のあさみ、国際的ミュージカルスターのクリス、そして隠れキャラという多彩な面々が登場します。特筆すべきはその幅広い年齢設定で上は22歳、下はなんと10歳!です。(さすがにエンディングは数年後ということになってます。)シナリオの傾向としては序盤から中盤にかけては和やかな雰囲気で、幽霊との同居生活という奇妙な日常が時にはコミカルに、時にはのほほんと描かれています。終盤ではそれが一変し、互いの感情が激しくぶつかりあうかなりハードな内容です。物語の構成としては展開にメリハリがついているといえるのでしょうが、終盤の主人公の言動は大人げなく、ストーリーを無理にこじらせているように私には感じられました。確かに盛り上がりますが、主人公に対するもどかしさというか違和感のようなものは残ります。まあ、そのまま波風も立たずに終わられても、それはそれで問題なのでしょうが・・・個人的には序盤から中盤にかけての雰囲気が気に入っていだけに心残りではあります。
 次に作品全体を通じての感想に移りたいと思いますが、この作品の最大の特徴は何といってもあやめというキャラクターの設定のユニークさではないかと思います。あやめは絶対的なヒロイン、つまり作品全体の構成と切っても切れない、他のキャラクターとは差別化された存在です。あやめに限らず絶対的なヒロインはシナリオを重視したノベル形式のゲームでは多くみられますが、どうしても他のキャラクターを食ってしまうというか、他のキャラクターと結ばれることが後ろめたくなりがちです。しかしながらこの作品ではそういった後味の悪さが感じられません。それはあやめが幽霊で、しかも主人公ではなく曾祖父に恋愛感情を持っているからだと思われます。最終的にあやめは曾祖父はは曾祖父、主人公は主人公であって、別の人間であるということに気づきます。ですから主人公の恋愛の対象が自分(あやめ)ではなかったとしても、そのことを冷静に受けとめることができるわけです。(逆にあやめを対象とする場合は曾祖父に「勝つ」ことが求められます。) 
 基本的に絶対的ヒロインというものはゲーム以前の「過去」すなわちプレーヤーがどうすることもできない段階において主人公と密接な絆を作りあげています。ストーリーを重視した場合、どうしてもしっかりとした設定が必要ですし、絶対的ヒロインが効果的な設定であることは確かでしょう。しかしながらプレーヤーの立場からすると自分に責任がない過去に縛られ、そこからのがれられないという状況は愉快なものではありません。しっかりしたゲームの背景とプレイ後の後味を両立させることは難しい問題ですが、この作品はそれをヒロインの設定を工夫することで解決しているといえるのではないでしょうか。

−おすすめ女の子−

ラボー教授のお気に入りキャラ

朝霧 あやめ

 あやめは色々な意味でユニークなヒロインですが、ゲームにおける役割のユニークさについては本文で書きましたので、ここではキャラクターとしてのユニークさについてふれたいと思います。彼女は大正時代の人ですので、そのふるまいや価値観はとても古風です。現代人の「洋装」を手足が見えていてはしたないと感じたり、主人公の帰宅を玄関で「おかえりなさいませ」と出迎えたりするさまは、封建的なしつけを受けて育った女性ならではのものでしょう。(実際名家のお嬢様ですが。)しかしながらただ古風なだけではなく、許嫁がいるにも関わらず曾祖父と恋仲になるあたり、当時としてはかなりのモダンガールだといえるのではないでしょうか。奥ゆかしさと積極性を合わせ持つヒロイン、それがあやめだといえるでしょう。エンディングは二種類ありますが、非常に対照的な内容です。一方はしっとりとした、もう一方はドタバタ調の結末なのですが、プレーヤーの好みの分かれるところだと思います。ちなみに声は堀江由衣さんです。

 以上です。このレポートはDC版を元にしています。後発のPS版は色々と追加要素があり、必ずしも本文と一致しないかも知れませんので、その辺はご了承ください。どうも長文失礼しました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 10/13/00)


Kanon(DC版)

リメイク版をいただきましたので、削除いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 09/28/00)


REVIVE...〜蘇生〜

リメイク版をいただきましたので、削除いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 09/14/00)


センチメンタルグラフティ2

リメイク版をいただきましたので、削除いたしました。

(著 客員教授”ラボー・カラベキアン”さん 提出受 08/29/00)


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