「S君、これなに? ワープロ?」
「ううん、MSXっていうパソコンだよ。これはMSX2っていうんだ」
S君の家に遊びに来た私は驚きを隠せないでいた。
ゲーム機が家にないということより、生まれて初めて見る「パソコン」という存在に私は釘付けになった。
当時パソコンといえば、NECのPC−9800シリーズが日本のシェアを独り占めにしていたと言っても過言ではないだろう。
幼い私にでも「NECの98」という言葉は耳に馴染んでいたし、何より高価だったので、その存在感は絶大なるものがあった。
そんな「パソコン」が目の前にある。この頃からパソコンの存在に少し興味のあった私は目を輝かせていた。しかし、少々の疑問があった。
目の前にあるのはパソコンらしいのだが、PC−98ではなく、MSX。
何だそりゃ!? 聞いたことも無いぞ、と。
S君の話によると、これはお兄さんが親に頼んで買ってもらったモノで価格は10万を切るとのこと(確か、7万以下だった。それでも高価だが)。
当時の98の価格に比べるとおもちゃのようなモノだったので、私は勝手に「たいしたことないや」と見下してしまった。これが大きな誤算だったことは数年後に思い知らされることになる。
そして、その日はそのままMSXでゲームをして遊びました。
MSXはファミコンと同じ8ビットマシンでゲームの供給方法もカートリッジによるものがほとんど(MSX2ではカートリッジとカセットテープが使える。FDDの増設も可能だが、S君家には無かった)だったので、ファミコンと同じ感覚で遊べた。この時私の中で「MSXはゲームの出来るパソコン」という位置付けが出来た。
そして月日は流れる……
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