はじめまして。私、『森下 ゆり』M高校 に通う二年生の女の子です。 いつも電車と徒歩で学校へ来ているんだけ ど、最近自分の中であるモノが生まれたこと に気が付いたの。 …え? あるモノって何かって?……えっ とねー、「こ」から始まって「ろ」で終わる 5文字の言葉で、誰でも一度は感じたことが あるモノ。そう、私ぐらいの女の子は特にね。 え?まだわからないって?…しょうがない なぁ、じゃあ教えてあげる。答えは「恋心」 です。いったいどれだけの人が正解だったか な?…っと、そんな事はおいといて。 私は今恋をしてるの。相手は名前も知らな い人なんだけど。もちろん男の人よ。 いつも夕方になると駅で誰かを待っている ようにベンチに座ってるの。 制服からS高校の三年生みたいなんだけど、 それ以外は謎なのよね。まぁ、そういうとこ ろに興味があるんだけど。 「ゆりちゃん。おはよう。」 「あ、あっちゃん。おはよう。」 この子は私の親友で『佐藤 彩子』ちゃん。 いつもは「あっちゃん」って呼んでるの。 「ねえねえ、昨日の『クリスマスには綺麗な 君と…』ってドラマ見たぁ?もうタカくん ガンバって感じよねぇ。めぐみちゃんも素 直になったらいいのに…」 「そうよね。でも私はシゲ君派だなあ。」 「えー、そうなのぉ。でさあ、話変わるけど 例の男の子となんかあった?」 「え?そ、そんな…まだなにもないよぉ。」 もう、あっちゃんはいつもこの事を聞いて くるの。 私だって、片想いでは終わりたくないし、 あの人だって三年生だからもう卒業しちゃう。 まだ何もできないでいるけど、毎日あの人 のことをずっと見ているんだ。 そしたら、あの人のこと少しは分かるよう になるでしょう? 最近あの人のこと見ていて、ひとつ発見し たんだ。 あの人は猫が好きなの。 よく見るとかばんに子猫の写真をステッカ ーにしてはってあるの。 またその猫がすごく可愛いんだから。 私もあなたの子猫ちゃんになりたーい。な ーんちゃって。 はぁーあ、早くあの人の恋人になりたいな あ。一緒に行きたい所とかいっぱいあるし、 一緒に食事もしたい。あー。もうどうしよう。 もうあまり時間ないよね。 とか何とか言っている内にもう夕方になっ てしまった。 私はクラブ活動で、テニスをやっているか ら帰りはいつもひとりなの。あっちゃんは帰 宅部だし。ああ、あの人が側にいてくれたら 寂しくないのになあ。 と、少しガックリしながらいつもあの人が いるホームのベンチの方に行くの。 「あ、あれ?」 あの人がいない。 いつもこのベンチに座っているのに。 どうしたんだろ。 もしかして病気にでもなったのかなぁ。 あの人のことが心配でうろたえていたその とき… ドカッ! ステン 誰かにぶつかって私は転んでしまったの。 「い、痛ったーい。」 「あ、ゴメン!大丈夫かい?」 あ!!あの人だ!良かったぁ。病気じゃな かったんだぁ。 憧れのあの人がこんな近くに…こういうの を第一次接近遭遇っていうのね。 「え、いや。だ、大丈夫です。私ボーッとし てましたから。」 「あれ?君はいつも夕方に見る子だね。」 うそー!!私のこと知っていてくれていた なんて…嬉しい。 「あ、はい…あの、あなたもいつも誰かを待 っているみたいですけど、誰を待っている んですか?」 私がそう聞くとあの人はさわやかな笑顔で こう言ったの。 「君を待っていたんだよ。」
|