suzuka
 
サイレンススズカ




16戦9勝 

宝塚記念(GT)、毎日王冠、金鯱賞、中山記念(GU)、小倉大賞典(GV)



第118回天皇賞(秋) これ以降、彼は二度とターフに戻ることはない。


前半に温存した脚力を後半に繰り出す。これは競走馬にとって、常識的、あるいは理想的な戦いのスタイルといえるが、ゲートが開いた途端、いきなり、スロットルを全開にしてしまうサイレンススズカには無縁の話だった。「駆け引き」だの「ペース配分」だのの言葉を否定するように、逃げて、逃げて、逃げまくる。大逃げというスタイルの完成に、肉体面の完成が加わった5歳時、彼はこうして無敵の連勝街道をひた走り続けたのである。
 人は速さに憧れる。ただひたすら、持てるスピードを前面に押し出して戦う、すなわち、人間がサラブレッドに抱く憧れを凝縮したようなサイレンススズカのレースは、常識的ではないにしろ、競走馬としての新しい理想形を示したものだった。
 また、人々が描く理想のイメージを壊すことなく、サイレンススズカも連勝記録を伸ばし続ける。平地の中距離重賞としては、考えられないような大差をつけて逃げ切った金鯱賞、ステイゴールド、エアグルーヴの追撃をしのぎきり、初めてGIのタイトルを手にした宝塚記念、そして、エルコンドルパサー、グラスワンダーをまったく寄せつけなかった毎日王冠……。いつまでも、どこまでも、その進撃は続いていくように思えた。
 しかし、常にも増して軽快な大逃げをうってさしかかった秋の天皇賞の第4コーナーで、サイレンススズカの物語は突然の終幕を迎えてしまう。助かる見込みのないほどの、重度の骨折というアクシデント。天から強制的な終止符を打たれて、希代の快速馬は美しくもはかない生涯を終えたのだった。



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