最終更新日:平成15年5月28日

前書き
 ここに敢えてこの情報を載せる理由を記しておくことにする。
 今回のSARS禍でも分かるように,無防備な状態で知らない内に細菌兵器を使用されたら多数の死者が出るばかりではない。人の移動が頻繁に行われている経済活動がグローバル化された今日では,国内に限らず世界がパニックに陥って行くであろうことは容易に予想されよう。このような兵器を使用した戦争やテロは無いことが良いに決まっているが,この兵器が存在するということは使われる可能性もまた有ると言う前提に立たねば,使用された場合の被害を最小限に止めることはできまい。勿論,使われないような環境を世界の指導者が作ってゆくことは最も大切だが,最悪の場合も考えて,使用された場合の対処法は研究しておくに越したことは無い。杞憂に終わればそれは幸いということであろう。まずは危機の実態を国民全員が共有しすばやく対処することで被害を最小限に止めることができるだろうという視点からの提示である。
 SARSの場合はコロナウイルスが原因のようだが,死亡率は16%(但し,年齢により死亡率は異なり65歳以上では50%以上)と世界保健機構の発表である。生物兵器でなくとも怖いことには変わりが無い。とにかく我々の目には見えないから日ごろから衛生に気をつけた生活をしていることも大切と考えられよう。
 @よく手を洗う。A帰ったらうがいをする。Bできるだけ人ごみを避ける。C殺菌作用のあるカテキンを多く含む緑茶を頻繁に飲む。D必要に応じてマスクをできるように常に携帯ないし常備しておく。E携帯用「殺菌おしぼり」F防災放送が受信できる常時緊急情報受信装置としての「超小型携帯ラジオまたは携帯電話(緊急情報メールサービス受信機能を加える。確実に情報が伝達されるのでラジオよりこちらが便利か。但し,広報メールは緊急性のあるものに絞る必要あり。緊急度は1〜10段階レベルまで規定しておき,個人の契約により例えば,有料では7以上のみ利用などができるようにする。10は生命維持絶対条件とし無料などとする。この場合,これに経費は税金による補助が適当。要するにこれは国民の安全維持コストということである。)」などが一般庶民が日常できる対策と思われる。但し,今回の東北での地震の際,通信が制限される事態が発生した。緊急時に必要な連絡が直ちに取れないのでは意味が無い。通信網のインフラ整備がまだまだ必要と言うことか。


生物兵器

表1旧ソ連軍の生物兵器研究開発
    生物テロについて(江畑謙氏資料より)

 1992年に米国に亡命したソ連軍生物兵器計画bQ、カナチャン・アリベコフ
(ケン・アリベック)の米議会における証言。彼の指揮下に40箇所、3万2000人の研究者。ソ連邦全体では、1980年代後半から90年代前半で6万人。

◎ソ連は1972年の生物兵器禁止条約(BWC)調印後も研究開発を継続 
◎1970年代後半からbioregulatorの開発に着手(病理学的に透明)
    免疫システムや神経システムを攻撃:生体機能を破壊
◎1979年4月2日のスヴェルドロフスク・コンパウンド19生物
     兵器工場における炭疽菌放出事故  
◎1985年に米国のSDI計画に対抗して5カ年計画に着手
     SS-18 ICBMの弾頭に装備(弾頭1発に子弾150発を内臓)
     航空機搭載爆弾(子弾100発を内臓):巡航ミサイルにも搭載
◎遺伝子工学の進歩で天然痘ウイルスに他の遺伝子を組み込む技術を開発
     エボラ出血熱やマールブルグ・ウイルスの遺伝子を利用
     1996〜97年ごろに技術開発を完了したと推測
◎アフガニスタンに軍事侵攻したときに生物兵器を使用:馬の鼻疽病


表2生物兵器になりうる毒素、細菌、ウイルス

   ボツリヌス毒素
   ブドウ球菌エンテロトキシンB
   エルシニアペスト
   炭疽菌
   野兎病菌
   Q熱病原体(リケッチア)
   ベネズエラウマ脳炎ウイルス
   Puccinia graminis(穀類の黒さび病菌)
   Pyicularia oryzae(イネのいもち病菌)


表3リスクグループV、Wの伝染病菌

 A.細菌、リケッチア

 マルタ熱菌(波状熱の原因菌)
 斑点熱リケッチア(ロッキー山紅斑熱の原因)

 B.ウイルス

 リフト渓谷熱ウイルス
 マールブルグウイルス
 アフリカブタコレラウイルス

 C.菌類 

 ヒストプラズマ症菌
 コクシジオイデス症菌


表4リスクグループUの病原体

 A.細菌

 コレラ菌(Vibrio cholerae)
 チフス菌(Salmonella typhi)
 赤痢菌(Shigella dysenteriae)
 レジオネラ菌(Legionella pneumophila)(在郷軍人病の原因菌)

 B.ウイルス

 東部ウマ脳炎ウイルス
 西部ウマ脳炎ウイルス
 デング熱ウイルス
 A型肝炎ウイルス



表5規定外の病原体
 A.家畜(鶏類も含む)に対する病原菌

 マイコプラズマ(Mycoplasma mycoides)
   牛肺疫菌様微生物(PPLO)ともいう)
   リケッチアの一種(Cowdria ruminantium)(心糸状虫)
 口蹄疫ウイルス
   トリパノソーマ(Tryanosoma vivax)

 B.植物病虫害菌

 黒穂菌(Ustilago maydis)(トウモロコシおばけ病菌)
   エルウィニア属(Eruinia stewartii)
 スチュワートのトウモロコシしおれ病菌
   (Phytophthora infestans)(ジャガイモの胴枯れ病菌)
   南部インゲンモザイクウイルス



表6生物戦の為に製造または研究された微生物

 

病 原 体

病 名

無治療時死亡率

ウイルス

 クラミジア

 オウム病

10〜100

 黄熱ウイルス

 黄熱

30〜50

 デング熱ウイルス

 デング熱

0〜1

 チクングンヤウイルス

 チクングンヤ(熱病)

0〜1

 マヤロウイルス

 マヤロ

 ロス河ウイルス

 ロス河

ベネズエラウマ脳炎ウイルス

ベネズエラウマ脳炎

0〜2

 東部ウマ脳炎ウイルス

 東部ウマ脳炎

50

 西部ウマ脳炎ウイルス

 西部ウマ脳炎

0〜3

 森林ダニ脳炎ウイルス

 森林ダニ脳炎

 キャサヌル森林病ウイルス

 キャサヌル森林病

 リフト渓谷熱ウイルス

 リフト渓谷熱

0〜1

 リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス

 リンパ球性脈絡髄膜炎

5〜15

 フニンウイルス

 アルゼンチン出血熱

 ハンタアンウイルス

 韓国型出血熱

1〜50

 ラッサ熱ウイルス

 ラッサ熱脳炎

 シンドビスウイルス

 シンドビス

35

 マールブルグウイルス

 マールブルグ熱

65〜80

 エボラウイルス

 エボラ出血熱

 痘瘡ウイルス

 天然痘

10〜30

細菌

 コレラ菌

 コレラ

10〜80

 チフス菌

 チフス

4〜20

 赤痢菌

 赤痢

2〜20

 野兎病菌

 野兎病

0〜60

 ブルセラ属の細菌

 ブルセラ症

2〜5

 破傷風菌

 破傷風

90〜100

 ウェルシュ菌

 ガス壊疽

10〜40

 パスツレラ菌

 ペスト(黒死病)

 炭疽菌

 炭疽(脾脱疽)

1〜4

 鼻疽菌

 馬鼻疽

90〜100

リケッチア

 発疹チフスリケッチア

 発疹チフス

10〜40

 ツツガムシ病リケッチア

 ツツガムシ病

 Q熱リケッチア

 Q熱

1〜4

 斑点熱リケッチア

 ロッキー山紅斑熱

10〜30

カビ

 Puccinia graminis

 穀類の黒さび病

3〜90

 Pyricularia oryzae

 イネのいもち病

50〜90

1980年以降のものを主体にした



表7生物戦のために製造または研究された天然毒

毒   素

LD50(ng/kg) ※1

起 源(作用)

 ボツリヌス毒素A型 ※2(腸詰中毒を起こす毒素)

0.6、1.1

 細菌(神経毒)

 ブドウ球菌エンテロトキシン

 細菌(下痢毒)

 サキシトキシン(貝類の毒)

200

 貝類(神経毒)

 コブラトキシン

 コブラの毒液

 クロトキシン(南米ガラガラヘビの毒)

 南米ガラガラヘビ(神経毒)

 ミオトキシン

 ヘビ(筋肉毒)

 ガージオトキシン

 ヘビ(心臓毒)

 ブンガロトキシン

 アマガサヘビ(神経毒)

 マキガイコノトキシン

 イモガイ(神経毒)

 サソリ毒

20,000

 サソリ(神経毒)

 リシン(ヒマ(トウゴマ)の種子の毒)

100

 植物細菌

 破傷風トキシン

2.5以下

 (神経毒)

 トリコセシンマイコトキシン

1〜15,000,000

 カビ

 パリトキシン

 サンゴ

 クモ毒素

 クモ

 アリ毒素

 アリ

※1 体重1kg当たりの値
※2 A〜Gまで8種ある



表8米国が想定する生物兵器に関わる病原微生物

病原微生物
(生物剤)

人から人
への感染

呼気中に感染可能な病原微生物数

潜伏期

致 死 率

 炭疽菌

なし

8,000〜50,000個の芽胞

1〜7日

 90〜100%

 天然痘ウイルス

高率

10〜100個のウイルス

7〜17日

 中等度〜高率

 ペスト菌

高率

100〜500個の菌

1〜6日

 12〜24時間以内に治療しないと高率

 ボツリヌス菌

なし

0.001μg/kg

1〜5日

 呼吸管理が出来ないと高率。
 抗血清の早期投与および呼吸
 管理可能なら5%以下

 コレラ菌

低率

10〜500個の菌

4時間〜5日
(通常2〜3日)

 輸液治療後は低率

 出血熱ウイルス
 (エボラ出血熱)

中等度〜
   高率

1〜10個のウイルス

7〜14日

 スーダン株中等度ザイール株高率




表9不審な郵便物に対する対応の仕方

不審な郵便物など(粉末入り、過剰なテープの封印、切手超過ほか)


公衆衛生局・ファミリードクター・病院および警察への連絡

@鼻粘膜細胞学的検査(炭疽菌)
A免疫学的血液検査      

州検査施設および軍施設・米連邦捜査局

@細菌学的検査・検鏡
A病理組織学的検査・培養
B遺伝子学的検査(PCR−DNA法)

CDC(米国疾病管理予防センター)

細菌学的検査・遺伝子学的検査・培養による最終確定診断