最終更新日:平成15年1月14日


2章 人生論


前書き
 本論述は私個人の見解である。こんな考えもあるのか位に読んでいただければと思います。また,本件についての著作権は放棄するものではありません。


 ・「美しい」ということ
 ・「夢をもつ」ということ」
 ・「今を生きる」ことの意味



 初めに
 人間は進化の過程で自己の足跡を次の世代に残すことを通じて,文化・文明を形成してきた。その中で,現実にアクセスできる物理空間よりも遥かに広大な精神世界を作り上げてきました。他の動物とは遥かに次元の異なるものです。それが,宗教であり,思想です。学問としては,宗教学,哲学,芸術などです。さらに時代が進んで,科学的アプローチをするようになって,倫理学,数学,物理学,化学,生物学,工学,医学,心理学,論理学などに分化し専門化してきました。さらに現代では専門的に分化しています。そして,一般人にとっての素朴な思想として,人生論があると考えられます。この原始的な表現形式に神話や民話があります。人々は神話や民話を通じて,子供たちに守るべき道を教えてきたのです。だから,いわばこれらは民族の心,先人が子孫に残した遺訓なのです。そして,現在もさまざまな人の足跡として多くの人に生き方を垂れるのです。ここでは,われわれが生きる上での力となるであろう事柄を,主に,教育という視点に立って取り上げて見たいと思います。
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・「美しい」ということ

 君たちは「美しい」という言葉から何を頭に浮かべますか。
バラの花を見て「美しい」と感ずる。これも「美しい」です。が、この美しさの命は「短い」。それよりずっと長い花が朽ち落ちた世界が待っていることをやがて知るであろう。私たちは,花をつけたバラを摘んで花瓶に飾ることはしても,花の無いバラを飾ることは余り無いように思われます。バラの一年を考えるとき,さらに,花のついたバラの期間は短さだけが感じられはしまいか。この世に存在するどんな「美しさ」も、形の美しさを求める限り,この「美しさ」の持つ「はかなさ」を感じないわけには行くまい。
 ここに,インドの「国民の母」とまで言われた「マザーテレサ」の話をしましょう。彼女は決してインド人ではありません。イギリス修道会に身を投じた方です。その後インドに渡り,恵まれない人々のために,その生涯をささげた方だが,やがて彼女の生き方を慕う者は3000人にも及んでいます。現在もその活動は続いています。私は,これも「美しい」と考えます。して,この美しさは,人々の心に刻まれ感動を与え,それに続く輪となって受け継がれてゆく。どうでしょうか,先の「美しさ」に比べ,この美しさは永遠にも似たものを感じませんか。
 ひるがえって,諸君の日常生活を見てみることにしましょう。
 鏡を見ては,あれこれと,耳に,爪にと忙しい人もいるかも知れません。中には,頭髪の手入れに余念が無い。などと,該当しませんか。これらは上で言えば,表面上の「美しさ」を求める行為に他なりませんね。人に不快感を与えない程度の身だしなみはエチケットでしょうが。いずれ終わりが来る,追いつこうとしても追いつけない,追いかければ追いかけるほど遠のく「美しさ」を追い求めているように思われてしょうがありません。
 逃げることの無い永遠に続く,「美しさ」はどこにあるのでしょう。私は,「心の中に」こそ宿すことができると考えます。人に対する「やさしさ」「いたわりの心」などなどとして。これらは具体的な行為を通して少しずつ心の中で成長するものでしょう。最初からの偉人などはいません。一つ一つの行為を通じて人格が形成され,それとともに「人柄」が形成され自然と品格が備わるのでしょう。
 皆さんは,これをどう考えますか。やがて大人へと成長し,妻と,母と呼ばれるとき。あなたを見上げる人々から「どのように見える人」になりたいですか。教養の無い人は悲しい,自分の立場すら分からないままに一生を終える。私が,諸君に期待したいことは教養を身にまとい,思慮分別のある,心のやさしい人となることです。
 冬休みは,復習とともに人生を考えるひと時も持ってもらえれば,より充実した生活になるものと思われます。新年は,少し成長した諸君と会えることを楽しみにしています。(H14.12.16起稿 合同HRで)
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・「夢を持つ」ということ
 15.2.13 堀江 学 氏の講演から
 急きょ決まった講演であったが,氏の30歳まで生きた人生の証を聞く機会を得ることができたことは,生徒たちにとって得るところが多かったのではなかろうかと感じた次第である。ここに,その要点を記し,後輩の参考としたい。(編者)
 テーマは「夢」ということで話された。現在の児童生徒の「夢」を持っている割合は,氏の話によると,小学4年の頃までで100%,中学生で10%,高校生で3%という。現在の大成の生徒は何%であろうか,挙手によると30%位だったと(ひいきな数と思えたが)。氏においては「夢」を育ててくれた方は,祖父だったという話だった。始め幼稚園の頃は,プロ野球の選手を目指せと。次に小学校に行き少し太ったら,当時北海道出身の横綱「北の湖」関が活躍していた時代であったせいか,横綱を目指せと仰せになったと。小学4年生になって,スケートを始めたとか。小6でスケートでオリンピックを目指せと。当時活躍していた,黒岩明や橋本聖子のようにと。
 「夢」があれば,辛くとも,苦しくとも再び立ち上がれると。「夢」は絶対に諦めないこと。「才能がない」と,言って,諦めるなと。才能がある人が「夢」を実現するのではないと。心強い言葉である。「夢」を諦めず,「夢」をもち自分を信じて挑戦し,一歩一歩努力する者が「夢」を実現するのだと。氏は自分の体験を交えて,力説していた。まったく同感である。
 彼は自分を振り返って次のように言う。室蘭で生まれたが,室蘭は「スケート」は盛んではなかった。環境が問題なのではないと。「夢」を持ち続け,何度失敗しても,努力し決して諦めないことだと。
 中学二年の頃成績はさほどではなかった。スケートの順位は300番台だったと。中学三年のとき100番位だったと。このときの監督が良かった。おまえは「バネ」がある。大器晩成だ。と,励ましてくれたのが,スケート界に足を大きく踏み込む動機を与えたようだ。スケート界の登竜門「帯広白樺学園」に行かせてくれと,父に頼んだ。父は,「スポーツ」では飯は食えない。止めとけと言われた。母に頼む。「金が無いから私立には行かせられない」と,断られた。祖父に相談した,「どうしたら言いい」と。爺は言った,「二人の反対で諦めるくらいなら,止めとけ」と。で,再び父にお願いした。父は条件を出したと。全国で16番以内になったら行かせてやるよと。ここで,具体的な目標を持ったわけだ。2:14:88のタイムで果たせるかな約束の16位を掴んだ。17位との差は2/100秒だった。帯広白樺学園進学を勝ち取った瞬間である。
 学園のスケート部の監督が良かった。最初に言った監督の言葉が決まっていた。「君たちの夢と目標は何だ。自分の出したいタイムを紙に書いて,ベッドの上に貼れ」と。夢とか目標と言われて,すぐ応えられる人は少ないのではないか。
 「具体的な個人の目標」を中学では43.6秒だったから。目標を40.0秒に設定した。これは一年で達成した。この具体的個人目標を決め公言することは,本人の能力を引き出す効果があると。なるほどと思った。進学者なら具体的数値目標を宣言することに相当する。例えば全国模試でSS60.0を全教科取るなどとね。全体の目標は「アベック全国優勝」だった。
 夢・目標が定まれば,次に目指す目標が自然と決まる。小さな一つひとつの目標を達成して,この積み重ねで大きな目標を達成できると。千里の道も一歩からである。氏の好きな言葉だそうだ。現在の立場から目標を直接見ると途方も無くなかなか第一歩が踏み出せない。が,夢から見ると行動が起こせるとは氏の言葉だ。この第一歩を踏み出すのは,実は大変勇気のいることだ。
 人はどうすると,自信を作れるか。それは,氏の経験からは,「小さな成功の積み重ね」からだ。「小さな目標を掲げること」これが大切と。して,この目標を達成する。小さな目標なら比較的容易に達成できる。
 スタートラインに立つとき,どんな優秀な選手も「恐怖と不安にかられる」。これに勝つには,「俺は勝つ。俺は勝つ」と,何べんも自分に言い聞かせるのだと。要するに,自己暗示にかけるのだ。勇気の出る言葉を自分にかける。これが自分に力を与えるのだと。なるほどと思う。人は常に孤独との戦いなのだと。
 学校では,「小さい成功」を積み重ね自信をつけることだ。 集団では,共通の目標をもち,成功という体験を共有することが,大切だ。ここから団結や一体感が生まれる。
 目標があると,達成できる。方法から考える。この目標は,書く。声に出して言う。イメージトレーニングをする。良い状況を想像する。悪いことは想像しやすいが,いいことは中々想像しにくい。そこで,技術がいる。自分の視野から見える形でイメージトレーニングする。イメージトレーニングで経験したことは実際の経験と同じ効果がある。ここで言う達成感を実感することは,自分のやる気を起こさせる魔法であると。
 始めは,上手な人の真似をする。次に,自分のアイデアや工夫を加える。これができるようになったときが,伸びる芽が出るときだ。
 自分にとっての最大のライバルは自分であると。怠けさせようとする悪い自分ないしは弱い自分と,困難に耐えて頑張ろうとする良い自分の二人が一人の自分の中にある。常に,この二人の葛藤のさなかにあると。いかに自分に勝つかが,自分の限りなく続くテーマということだ。
 氏の話は示唆に富んでいたと思う。学業を進める諸君にも実に参考になる示唆に富んでいる。ここから何かを感じたら幸いである。
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・「今を生きる」という意味


 これは年度始めに話した内容の要約である。人は日々を振り返ることによって成長するものであるが,常に心がけたいことです。


15.4.10
・ 健康上の理由から保健室利用が特定の生徒に偏っていたことが目に付きました。もう一度日常生活を振り返ってみて,健康管理に気をつけて欲しいと感じました。特に,十分な睡眠,栄養に配慮し偏食をしないこと。また,菓子などの間食は控えめにする。食事の前に手を洗う。帰宅したらうがいをする。その他必要な健康管理に気をつけることが大切です。
・ 学年末の成績不振者,時数不足者などがおりました。学習への取り組みが不十分だったということでしょうか。良く反省し,今年に生かしてください。家庭学習の習慣はできていますか。修学の目的は,教養ある社会人となるためのものです。今の機会を有効に活用し,悔いの無い高校生活にして下さい。


生活について
・ 中堅学年としての自覚をもって,ルールを守り規律ある生活をしてください。
注意 他のクラスには入らない。部の勧誘は部紹介の後,認められている方法ですることなどは,特に,後輩への配慮として留意してください。。
・ 予習・復習の習慣化を図る。
 継続は力なりです。毎日の積み重ねが極めて大切です。
 まずは教科書の完全理解に努めましょう。次に,数学で言えば,練習問題や章末問題を解いて理解を深めましょう。更に,問題集の問題にまで手を伸ばそう。参考書を使って更なるスキルアップを図りましょう。知識を学ぶことに喜びを感じたら,学習は苦痛ではなくなります。
・ 自己理解は済んでいるでしょうか。自分の進路について考え,研究し,情報を収集し,具体的な進路目標をいくつかリストアップしましょう。情報誌,インターネット探検,各種説明会の活用,キャンパス見学や体験学習に積極的に参加しましょう。目標を具体的に持つことこそが,学習への動機です。見学会に参加する際は休日を選び,担任へ届を出しましょう。
・ スキルアップを図ろう。
 現在,世の中は厳しい不景気にさらされています。急に改善する見込みは殆どありません。その中で,自分の未来を開くのは何でしょうか。人員削減で利益を出し生き残りを図っている企業が殆どです。このような環境で「選ばれる人材は何か」を考えてみましょう。役に立つ,いくつもの能力がある人ほど選ばれるのは間違いないでしょう。資格,人物,学力を含めての総合能力が問われます。あなたが経営者ならどんな人物を求めますか。これを考えれば,どんな人間が求められるか分かることでしょう。君たちが考えることは,このことを考慮に入れて自分の「付加価値を高める」ことだと思います。頑張りましょう。後悔しないで済むように。
・ 毎日の生活から人物は作られる。
 人物の能力や人格は毎日をどう過ごすかによって,善きにつけ,悪しきにつけ少しずつ形成されるものです。だらしない生活を続けていれば,だらしない生活をしても何とも思わない性格が出来上がります。人に親切にしていれば,穏やかな性格が形成される。また,服装や身だしなみをきちんとしていれば,清楚なすがすがしい人物像が形成されると言った具合です。
人間は変わった生活をすれば,始めは良心が痛んだり,不安になったり,これでいいのかなと疑問に思ったりします。が,このときに考えて行動しないと,後は何の疑問も感じなくなるようになっているのです。神経回路が,これでOKと受け入れてしまうのです。
例えて言えば,異臭のする部屋に入った当初は,これを認識できますが,そのまましばらくいると,何も異常を感じなくなることで分かるでしょう。ですから,常に客観的に,「どうかな」という意識をもって生活する必要があるのです。
皆さんが,周りから見て,感じのいい素晴らしい女性として成長するように絶えず磨きをかける努力をして欲しいと願っています。それこそが,幸せへの階段を一歩一歩確実に上がることだと考えるからです。皆さんはどう考えますか。心の豊かな人間になってください。
・ 読書をしよう
図書館は文化の泉とも言います。有用な書物が沢山あるからです。人間が経験できることは限られています。人の経験したことや学んだ成果を書物から学ぶということは,短時間に多くの擬似経験をすることになります。読むことによって理解を共有できるのです。但し,自分の肉とし,力とするためには,読んだだけでは不十分の場合があります。自分も「これはいい」と,感ずることのできる事柄は積極的に実践しましょう。実は,この実戦を通して本物となるのです。これをしなければ,単なる知識として,知識の一片として片隅に追いやられることになります。
 皆さんは,若さにあふれています。たとえ失敗してもやり直しが効く年齢です。恐れず果敢に挑戦する「チャレンジ精神」が極めて大切です。札幌農学校にアメリカから明治の初期に赴任したクラーク博士の言葉を,私は小学六年の国語の教科書で学びました。「少年よ,大志を抱け」という言葉です。私は今でも大切に思っています。
 人は,言葉により生き,言葉によって死ぬ。それゆえ,聖書では「言葉は神である」とも言っております。言葉を自由に操れることができることこそ,君たちの未来の可能性を無限に開くものと考えます。この一年を充実した一年としましょう。


メモ




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