2006年は、マスコミが、学校給食費の未払い問題を取り上げた年であった。文部科学省の調査によると、2005年度だけで給食費の未払い額は22億3千万円であった(未払いの児童・生徒数は98,993人で全体の約1%)。都道府県別では、北海道の未払い総額は約2億7千6百万円、未納額全体の12%を占める。全国ワースト1である。
2003年夏、岩手県のある町(ブランド牛で有名なところ)の学校給食センターの所長と栄養士から聞き取り調査を行った。給食費の未払い問題が本題ではなかったが、自然にその話になった。
彼女(女性の所長だった)はこう言った。「給食費の滞納がありましてねえ。」責任をすごく感じている様子である。その数を聞いたところ、子どもは二名だが、兄弟なので一家庭が滞納しているという。担任も校長もそして所長である彼女も、家まで足を運び給食費を払うように説得しているが、なかなか払ってもらえないそうだ。
一方、道北のとある市は対照的だった。同じく2003年夏、学校給食に関して教育長に直接話を聞く機会があった。その時、「いやあ、給食費を払わない保護者が増えてましてねえ」とまるで他人事。おまけに「生活保護世帯に、そこから給食費をよこせとは言えませんからねえ。ははは」と平然と言ってのけた。
市町村合併によって、この問題が浮き彫りになったケースもある。2006年3月、名寄市と風連町が合併した。2007年度から学校給食センターを統合する計画で本格的協議を進めている。運営委員会の協議過程で、給食費の未収金が大きな課題になっている。風連地区はゼロに対して名寄地区では2005年度だけで120万円、累積未収金は約400万円となっている(『名寄新聞』2006年7月6日付)。
「道教委は過去、給食費滞納について統計をとっていなかった。学校安全健康課はワースト1位という結果について、『有効な対策をとっている自治体の例を紹介するなど、道教委としても対応が必要』としている。」(『読売新聞』2006年11月27日付)
マスコミの論調は、パチンコや酒に出費しても給食費を払いたくない親をモラルの問題として批判する傾向にある。私は、払えるのに払わない親を擁護する気はないし、払えないから払わない親には別の対策が講じられなければと思う。
気になるのは、給食費の未払い額がふくらむまで放置していた地方自治体の姿勢である。学校給食を管理運営し、提供する責任の重さをトップ(教育長、校長、センター長など)はどこまで自覚しているのだろうか。彼らがこれまでの対応の甘さを反省し、今後の認識を大いに改める必要がある。「お役所仕事」とはもう呼ばせない、仕事のしかたが求められる。
(2007年1月25日記)
学校給食費の未払い問題