迷い道 −中

窓から外に出てみると、そこからなだらかな斜面が森へと続いていた。
そして、向かって右の方に村らしいものが見えたので、私達はそこへ向かうことにした。

「えーい、疲れた。」
茂みをかきわけていた手を止めて、空を仰いだ。
青々とした空は、高い木々に阻まれてよく見えない。
「若い者が何を言っておる。わしはまだまだ元気じゃぞ。」
私の肩の上でのんびりと狐が言う。
「そりゃ、あんたは疲れないでしょうよ!ずっと人の肩の上に乗ってるんだから。」
私はもう何も言う気がしなくなり、がっくりと肩をおとす。
「これ、落ちるではないか。」
突如目の前の茂みがガサガサと音を立てる。
思わず手を止め、そちらを凝視する。
「なんだ騒がしいと思ったら、お二人さんこんな森の中で何やっとるんだね。」
現れたのは人の身の丈よりも大きな猫だった。
「おまえさん。ここがどこかわかるかね。」
「森の中だがね。」
「いやそうではなくてのう。これこれこうゆう訳で(中略)ここの場所というよりは座標みたいなものを思い出したいんじゃがのう。」
「や、ちょっとわかんないなあ。」
「そうか、ありがとう。これ、おまえも黙ってないで何か言ったらどうだ。」
狐に促がされてではないが、ようやく硬直から開放されて、「何で、猫が喋るのよう。」
叫びは辺りにこだました。
狐は首を傾げる。
「おぬし、わしが出てきた時にはそんなこと気にもしなかったではないか。」
「あの時は、ドアの外が崖だったことの方がショックだったのよ。」
そこへ、猫がぬうっと割って入る。
「おまえさんも喋るだろ。」
私が肯くと、「では、私が喋って何の不思議がある。」と猫は、腕を組み一人うなずく。
その顔へビッシっと指を突きつけ、「私の常識では猫喋らないの!」と、言い放つ。
「それにしたって、大きさは目に入らないのかのう。」
「何か、いった?」
いや、なんでも。と狐がくちごもる。
まさに、狐の首に手を掛けようとしたとき。もうひとつ声が加わった。
「何をしているんだ。」
声の主が大きくとぐろを巻いた、これまた大きな蛇と認識した瞬間、私は狐の首を引っつかんで逃走した。
「いやな、この人たちがね、ここがどこだか分からなくなって困っているらしいんだが。」
「うーん。ああ、それなら。」
「何か知っているのか?よかったな。お嬢ちゃん達。あれ?どこいった。」

猛スピードで進んでいく一行。
景色はまるで時さながらに駆け抜けていく。
「これ。」
まだまだ、スピードの衰える気配はない。
「これこれ。」
まだまだまだ。
「これ止まらんかい。」
どんな力を使ってか、狐に足首をつかまれひっくり返る。
「何を逃げておるのじゃ。あんな態度は失礼じゃろ。」
だって、と口ごもる。
「蛇の平気な女の子なんかいるか。」
呟いてそっぽを向く。
狐は、やれやれ仕方ないという風に首を振る。
と、首を上げ。
「どうやら着いたようじゃの。」
振りかえると木々の間から目的地がみえた。

どうやら村らしいそこは、入ってすぐにとんでもないめに遭った。
ひゅるひゅる。
どか。
村の入り口近くにある木から前置きなく人が落ちてきた。
「ちょ、ちょっと。大丈夫?」
返事があるわけない。
慌てて、付近の家から人を呼んで来る。
「やあ、これは大変だ。すぐ家まで運ぼう。」
と、怪我人を担ぐとその人は私の方に振り向く。
「そっちじゃないでしょ。」
私が指摘すると今度は、村の外のほうへ向き直る。
外は森。どう見てもそちらではない。
村人もそれが分かったらしく、「私の家はどちらでしょう。」とぽつりと尋ねる。
「へ?」
彼の家は目と鼻の先。
どうやらものを尋ねるどころではないらしい。





長い間休んでどうやら指針が決まったらしい。
いったいどうなるやらこの話。次で完結できるのか。
(私は絶対出来ないと思う。)