ショウウインドウ

ショウウインドウ



通り過ぎかけて、目に留まったそれに足が止まった。
そのまま後ろに下がりガラス越しに見えるそれを今度は凝視する。
似合いそうだな。
ショウウインドウに飾られたそれはともすれば見過ごしてしまいそうなそれは
だが彼の目を捕らえて離さなかった。

イーリスはその日外に出たが気が乗らなかったので広場には行かず、そのまま錠前亭ににもどるところであった。
そして大通り。
見知った人物を見掛けた。
その人は、ショウウインドウの前で右往左往。更にため息なんかついたり…
何をしているのか一目で分かる(笑)
後ろから声を掛けたのはイーリスなりの茶目っ気だろう。
「…驚きました。」
それはそうだろう。
「何をしてるんです?シルフィス。」
…さっき一目で分かったって…まあ、そういう事にしておこう。
イーリスはショウウインドウの中を覗く。
やっぱり分かってるんじゃないか。
「…シルフィスはあれに興味があったんですか…」
そんな素振りは見せた事がない。いや、以前興味がないと言っていなかったか?
飾ってあったのは、彼らしいと言えば言えなくもない繊細な作りのネックレスだった。
シルフィスは真っ赤になり、口ごもる。
「いえ…私ではなく、その…」
それでピンと来てしまうのは彼の分かりやすい人柄のせいか、
それとも、イーリスが年上だからであろうか。
イーリスは先月の同日のことを思い出す。
広場の隅でシルフィスと異世界の少女があっていた。
チョコを受け取ったらしい彼は少女が去った後真っ赤になっていた。
それをたまたまイーリスは見掛けのだ。
ははーん
と察しをつける。
おりしもその丁度一ヶ月後が今日にあたる。
「似合うと思いますよ。メイに(にっこり)」 …嫌な性格だな。イーリス
口をぱくぱくさせて驚くシルフィスを後目に、彼はその場を立ち去る。
若いっていいですね。なんてじじくさい事を考えながら、気が乗らなかった今日の自分に感謝する。
おかげで面白いものが見れました。
そして、足取りはどこか軽く錠前亭までの帰路を辿るのであった。