知らぬは、ほっとけ!

知らぬは、ほっとけ!



王宮では今、次女達をも巻き込んで流行しているものがある(笑)
結構みんなの知る所となっているのだが…
居るだろう?
一人そんな噂話に疎そうなのが、

王宮の文官である、アイシュ=セリアンは本日は書類の整理に追われていた。
彼は仕事は出来るのだが、廊下を歩く時にいちいち人にぶつかってしまうのだけは何とかして欲しい。
出来上がった書類を某所に届けに行った帰り、彼は早速廊下の角を曲がってくる人物に気付かずそのままぶつかってしまった。
「ああ、姫様申し訳ないです〜。」
ぶつかったのはたいした事ないと見ればわかるのだが、弾みでディアーナが持っていた箱が散乱してしまった。
箱の中身は見えない。
まあ、ご想像にお任せしよう。
ディアーナは少し考える素振りを見せてから、思い付いたように手を打った。
アイシュは背筋に寒気を覚えた。
珍しく感がいいな、
「アイシュ、この荷物を私の部屋まで運ぶの手伝って下さいな。そしたら勘弁してあげます。」
荷物を運ぶ…まあ、それくらいでしたら〜…
書類を届けに行って仕事も一段落しているし、問題は無い様に思える。
「部屋まででいいんですか?」
よっこらせと、箱の積み上げ持ち上げる。非力な方ではないらしい。
「ええ、部屋までです。」
ディアーナはにっこり笑う。
…また、メイが部屋でスタンバっていたりするんだろう?
「兄貴!」
目を疑うが、血相を変えてという形容詞が似合いそうな感じでキールが二人の前に現れる。
「あら、珍しいですわね。キールが王宮に来るなんて。」
アイシュは呑気に「そうですね〜」なんて相づちを打つ。
「この前は、どうも。わざわざ俺の研究室にまであんな物持ってきていただいて。」
とげとげ、
眉間のしわ、釣り上がった目。
何処をどう取っても彼は怒っている。
「だって、キールってば、王宮にはあまり来ないのですもの…」
「ほーう。あれは、一国の王女がどうしてもやらなければならないことなんですか?」
どうやら、彼は着せられてしまったらしい…
メイもディアーナも勇気があるな。
「う、意地悪ですのね。そんな事ばかり言ってますと今度は侍女達も連れて行きますわよ。言っておきますけど逃げれませんわよ。」
今のディアーナは無敵だ。
これには、キールも怯む。
そーか、そんなに嫌か…気の毒に…
(そろそろ、組織が確立される頃かな?名前は何にしよう。)
「兎も角、行くぞ兄貴。付き合ってられるか!」
アイシュの首根っこを掴みずるずると引き摺って行く。
???
アイシュの方は未だ事情がつかめてないらしい。
大丈夫さ、そのうち分かる…嫌でもな。
ディアーナは至極残念そうな面持ちでセリアン兄弟を見送ったが、すぐに気を取り直し箱を積み重ねる。
「ま、又機会はありますわ。今は取り敢えずこれを部屋まで運ばなくては…」
と、採寸し直されたドレスの入った箱をよっこらせと持ち上げた。




キールの反撃が甘いな…
もっと、修行しなければ(私が)