季節は移り行くもので、
今日から四月。
本来ならばバットEDの日である。
一週間前までと打って変わった暖かな陽気。
絶好のお出かけ日和と言ったところだろうが、そんな事とは縁の無い人間がここに一人……
廊下を曲がった辺りで、キールはシルフィスとバッタリ会った。
ここは魔法研究院。騎士見習いの彼がいる事は珍しい。
「どうした。何か用か?」
人付き合いの激しく不得手なキールが先に声を掛けた。それだけ懇意にしている印だろう。
「いえ、メイが今日はお休みと聞きましたので湖にでもお誘いしようかと思いまして。」
やや間があったように思う。
「メイならさっき町へ出かけた。」
シルフィスはキールの言葉を素直に受け取り、
「そうですか…、仕方ないですね。」
そして残念っそうな様子でキールに一礼すると帰っていった。
シルフィスの背を見送り、キールは何故か元来た道を引き返す。
廊下を二つ曲がったところで、今度は当のメイに会った。
おやぁ?
しかし、キールに動じる気配はない。
「何処に行くんだ?メイ。」
彼の表情はいつもと変わらない。
無論、口調も
「うやぁ、ちょっと大通りまで…行こうかなーっと。」
と、言いつつあからさまに目線を逸らしたりする。
そうね、今から行けば研究院の門をくぐって外に出ようとしているシルフィスに追いつくかもしれないね。
「…課題は終わったのか?」
「いちおう。」
「見てやろう。」
さあ、一緒に答え合わせと洒落込もうじゃないか。
「う、けっこうです。」
何か言ったか?
と言わんばかりの視線に見つめられ、メイは観念する。
「えぐえぐ。私の休暇〜。」
かくして、キールの思惑通り二人は何も知らないままこの日を別々に過ごしたのだった。
コンセプトは一応「やきもち」
って、分からないね。これじゃあ、しくしく(しかも目茶短い)