サリドン先生
サリドン先生
サリドン=マクエル
彼は今年103歳になられた。
王宮でディアーナ姫に地誌を教えている。
コンコン。
「失礼しますぞ。」
今日こそは姫にクライン西部の地形の特徴を覚えてもらわねばならない。
気合を入れて扉を開けた。
唐
ではない「空」だ。
自室で待っているはずのディアーナの姿は何処にも無かった。
「ひめーー。」
どたどたどた。
花に水をやっていたシオンは騒音に顔を上げた。
「おお、丁度いい。シオン殿、姫様を見かけなかったかな」
どうやら又授業をすっぽかされたたらしい。
「いや、見てないぜ。」
「ではあちらかな?ありがとうシオン殿。」
どたどたどた。
「おいおい、大丈夫かあのご老体。そのうちポックリ行っちゃったりしないだろうな。」
走り去るサリドンの後ろを見守りながらシオンは呟いた。
と、その背中が傾いだ。
「おいおい、冗談じゃないぜ。」
シオンはぎりぎりセーフで受け止めた。
サリドンが意識を取り戻すと傍らには王宮付きの医師とディアーナの姿があった。
「姫様?」
泣きそうなのか、泣いたのか…
ディアーナの表情はどちらか分からない。
医師が「もう大丈夫です。」と告げると、ようやくディアーナが顔を上げた。
「心配を、掛けたみたいですな。」
サリドンの言葉にディアーナは首を振る。
「私が悪いの。ごめんなさい。」
「いいえ、姫様。この老いぼれが王宮で働くなんて出過ぎたことをしなければ…」
姫はサリドンの手を取り、
「そんなこと言わないで、もうサボらないから…」
ちゃんと勉強するから…
今度こそディアーナの目からは涙が零れた。
サリドン先生。
彼の仕事は命を張った危険な仕事だ。
王家の未来を背負って立て!!
うう、又もやサリドンという音が浮かんだ。
もう、こうなったら開き直るしかない。
セイリオス、さすがに彼の人選は的確だ。
しかし、絶対妹の将来しか考えてないだろう。