茶番劇〜世界は逆転の運命を辿る〜

世界は逆転の運命を辿る 6



平日はお勉強。
たまにはお休みもあるが、誰が何と言おうとお勉強。
無論、例の二人もお勉強。

「次」
「こちらも終わりました〜」
学習は滞りなく進んでいるらしい。
まあ、この二人だから当然であろう。
「ちょっと、私が一年かけたテキストを二週間でマスターしないでよ。」
メイの面目なんぞあったものではない。
「喚くな。うるさい」
そのうち、メイに刺されるぞ、キール。
「メイ。ここはどういう意味だ?」
聞いちゃいないし。
キールが示したのは魔法書。
無論、基礎であったころはメイが教えていたのだが、
「………」
今は読み書きといった語学ぐらいしか教えられない。
「仕方ない。チャムキンにでも聞いてくるか」
そうした方が早いし正確だ。
ちなみに、チャムキンさんとはメイが王都に来た時に知り合って勉強を見てもらっていた人である。
今回、メイだけでは不安だというシオン・キールの意見を取り入れ、彼に事情を話し全面的に巻き込む事にしたのだった。
今では語学はメイ。魔法学はチャムキンという役割分担になっているのだ。
出ていくキールにメイは密かにあんかんべーと舌を出す。
アイシュは笑って見ているしかない。
顔は大分引きつっているが…

「ねえ、キールって向こうでもああだったの?」
向こうとは無論異世界の事だ。
キールが去った部屋で改めてメイがアイシュに聞いた。
「『ああ』と言いますと〜」
態度の事だよアイシュ。
しかし、にこにこと分かっていなさそうなアイシュにメイはため息を吐く。
「もういいよ。それよりキールとアイシュって異世界でどんな生活してたの?」
「大学生をしてます〜。大学というのはですね…まあ、この研究院みたいな物ですね。
ただ、ここのように一つの分野ではなく色んな分野に分かれていましてね、その中の一つの分野を選んで勉強するんですよ〜。
キールは『比較文化』を専攻してましてね、まあ諸外国の文化を比較するんです〜。あはははは、そのまんまですね〜。
僕は、僕はですねぇ…今は『教育学』を勉強しています」
今は?
と、メイは聞こうとしたがアイシュの表情はそれを躊躇わせた。
…だったら話すな。アイシュ
言葉を掛けあぐねているメイにアイシュは薄く笑う。
「母と父は殆ど別居状態でした。
父は考古学者をしてましてね。そのせいで外国に居ることが多かったです。
母は国で政治家をしてます。…だから父とも離れざるおえなかったんです〜。
僕たちは7歳の頃から母の元で育てられました。と〜言っても忙しい方でしたからあまりかまっては貰えませんでしたが」
「…じゃあ、キールの性格が歪んだのは、小さい頃に構ってもらえなかったから?」
メイが合いの手を入れる。
「?さあ。それは分かりませんが小さい時は素直な良い子でしたよ」
じゃあ、今は?(笑)
「子供の頃の話!聞きたい。…そしてそれをネタに奴をからかうのよ」
……頑張ってね。メイ
「子供の頃ですか〜?そうですね、彼は牛乳が嫌いなんですが…」
キールの意外な一面。
これは使えるとメイはほくそえんだ。
それで〜、と話を続けようとした矢先。バタンと音を立ててキールが入ってきた。
「?なんだ」
顔を見るなり押し黙ってしまった二人をキールは不振に思ったようだ。
その話はそこで立ち消えとなってしまった。
そうね、アイシュならば構わず話してくれそうだけれども、本人の前ではちょっとね…
弱みを握りたいのならば次の機会に、メイ。



前回で一部完といったところかな?
ようやく生活部分に入る訳ですね。