茶番劇〜世界は逆転の運命を辿る〜

世界は逆転の運命を辿る 5



せっせっせ、と荷物が運び込まれる。
召喚された時のキールの持ち物は大学の講義用の参考書一式と筆記用具。
一方アイシュは夕飯の材料と財布。
つまり、生活道具など一切持ってる筈もなく、研究院の方で支給という形になった。
「おー、やってるな」
などと言いつつシオンが部屋に入ってきた。
「ガゼル、シルフィス助かった」
騎士団の見習いだという二人は朝から手伝いに狩り出されて来た。どうやらメイの知り合いらしい。
シオンとも面識があるのか親しげだ。
今度奢るというシオンの言葉にガゼルの方は手放しで喜ぶ。シルフィスもにこにことして嬉しそうだ。
キールも荷運びをしていたが、アイシュの方は…
まず、荷を持ち上げようと動いたら壁に激突した。
次に、顔を押さえながらいつものように「大丈夫です〜」何て行っていたが、つまずいた。
そして、起き上がりざま荷の角に頭をぶつけた。
そこまでやれば十分だろう。
皆にそこで座っていてと言われたのにも聞かず「そんな私だけ休む訳にいきません〜。」と言ったので、皆にお茶を所望されてしまった。
当然アイシュがお茶を入れている間に運び終わろうと皆が必死になったのは言うまでもない。

皆でお茶を飲み、一段落した所でガゼルとシルフィスの二人は騎士団に帰った。
「ところで…、聞いていいか?」
メイとアイシュは買い出しに出かけた。
シオンとキール、重い空気が漂う。
「なんだ?」
その空気を破ったのはキールの方。シオンは少し意外な気がした。
まあ、異世界から来て右も左も分からない今聞きたい事は山ほどあるだろう。
「メイは何故王宮に出入り出来る。そんなに身分が高そうにも見えないが…。姫とも親しかったようだし」
そうそう、それそれ
「ああ、何だその事か」
質問はシオンの予想したどれとも違った。
「そうだな。身分はそんなに高くないな。
王宮に出入りできるのは…ま、単に姫さんと仲がいいからなんだが…
平たく言うとな、メイは俺の従兄弟なんだ。」
シオンは宮廷魔道士で、名門カイナス家を勘当されているが一員で…というのは先程ガゼル達から聞いた。
その従兄弟がどうして身分が高くない事がある。
「メイの母親って言うのがカイナスの…俺のじいさんの末娘だったんだが、これが何を思ったか町の商人に一目ぼれした。
まあ、祝福される筈もなく、家族と大喧嘩。挙げ句の果てに駆け落ちなんかしちゃったんだな。
んで、今は商家フジワラの女将に納まって、そっちの方が性に合ってるみたいだな。
事実上絶縁状態。カイナスの姓も捨ててるもんだから身分はないと…
だから似たように俺が勘当された時も面倒見てくれてな、それで俺もメイが研究院に入るために一人で王都に来た時に面倒見てたんだ。
そこで偶然会った姫さんと妙に意気投合してな、姫さんの友人として王宮にも出入りできるわけだ」
お忍び好きのディアーナとメイがどうゆう出会い方をしたのか…ここでは多くを語るまい。
「そうだ。さっきガゼルってのが居たろ。あれの家も商家でその関係で交友があったらしいな」
それは本人たちに先程聞いた。
家は離れてはいるが、家族ぐるみの付き合いなのだそうだ。
他にもメイが2年半かけてやっと研究院に入れたとか、
来た初日に魔法でホールを半壊させたとか、
荷物を運ぶ傍らガゼルが話していた。
「で?」
話は突然切り替わる。
「何しに来たんです?お茶飲んでおしゃべりをしに来た訳じゃないでしょう?」
キールの言葉にシオンは「ああ、それね。」と納得する。
「まあ、慌てんなって。話はアイシュ達が帰ってきてからだ。」

メイとアイシュは結構早く戻ってきた。
アイシュの方は…
何処をどう歩けばそうなるのか、上から下まで傷だらけになっていた。
いつもながらどんくさい。
そう思うが口には出さない。
「さて、これで揃ったな」
シオンがようやく本題に入る。
「二人が召喚されたのがこの本のせいだって事は分かっているが、どうして二人が召喚されたか」
「偶然じゃないの?」
メイが口を挟む。
「違うな。キールだけなら偶然。二人目が全くの他人ならこれまた偶然で済むかもしれないが、兄弟ときてるそれも双子の」
確かに…
「…メイ俺がやったテキスト持ってきてみ」
突然話は脱線。だがキールは嫌な予感がした。この手の予感は外れたことが無い。
「それでだ、俺は二人の魔法力が関係してるんじゃないかと思うわけよ」
…中略…(この間のやり取りは本編と同じです。ゲームを参照して下さい。)
「つう訳で、明日からこのテキストでも目を通して勉強してくれや」
なんだか知らないがキールは言いくるめられたらしいぞ(笑)

世界は逆転の運命を辿る。
だがやる事は同じだったりする。



がーん、発表からうん日目
後書きが前回のと変えるのを忘れていた。