茶番劇〜世界は逆転の運命を辿る〜

世界は逆転の運命を辿る 4



こんこん。
ノック音が響いた。
「シオン。居ますの?メイが来ているでしょう?」
げっ、とシオンが呟いた。
「まずいところに…」
「?誰ですか〜」
知り合いのようなのでアイシュがメイに尋ねる。無論彼らに声の主が誰だか分かりようもない。
「ええ、ディアーナ様といってね…」
こんこん、こんこん
「居るのは分かっています。隠すとためになりませんわよ」
観念するしかないな。とシオン。そうね、とメイが続けた。
「ああ、入っていいぜ」
待ちかねたように扉が開く。
「まあ、涼しそうなお部屋ですわね。これから暖かくなりますものね…」
穴の開いた壁からは、そよそよと風が入り込んでいた。

観念したシオンはディアーナに事情を話し、巻き込む方針に変えたようだ。
無論、彼女の兄セイリオスにまでは伝わるのを覚悟して…
「まあ、大変ですわね」
ちっとも大変そうに聞こえないぞ。
「ですね〜」
ほやほや〜 相づちを打つアイシュ。和んでどうする。
「まあ、それはそうと自己紹介をしましょう」
「どうして」
呆れるキール。それどころではない。
「え、重要ですわよ。これからクラインで生活する上では…」
「せいかつー?、冗談!」
「実際帰れませんものね…」
「………」
キールも観念したようだ。「キール=セリアン」と、名前だけ言って押し黙る。
「私は、アイシュ=セリアンと申します。以後お見知りおきを〜」
礼儀正しい挨拶をするアイシュ。とても兄弟とは思えない…
「キールの双子の兄にあたります」
ついでにキールとの関係を補足する。
「うそ!」
「おいおい…」
「みえませんわ。」
驚きは一緒だが反応は三者三様である。
キールはむっとした表情を見せたが言われなれているのかそれ以上はなかった。
アイシュの方は「そうですか〜?」と首を傾げている。
そのまま、さわさわと密談を始める三人にキールが一喝する。
「こっちにさせといて、そっちは無しか。礼儀がいいことで」
ぴたりと三人の動きが止まり、ディアーナがコホンと咳払いを一つ。
「私はディアーナ=エル=サークリット。一応この国の王女ですわ」
「…この国の将来を憂いでいいか?」
と、後ろの2人に聞くあたり、君もなかなかにお茶目さんだね。
「ま、取り敢えず、今日は解散しょうや。2人には研究院の方に部屋を手配するから…」
と、シオンが切り出した。
気がつけば太陽も遥か西。
キールを呼び出したのはメイだけど、アイシュを呼んだのは君だ。
メイは頼りにならないぞ、頑張って責任とってね。



次回はようやくこの話の詳細設定が…出来るといいな。