茶番劇〜世界は逆転の運命を辿る〜

世界は逆転の運命を辿る 2



大通を通り過ぎ、あの部屋から見えた宮殿と思わしき建物に着いた。
門番は居たが、彼女が何事かを話すとすんなりと中に入れてくれた。
身分は悪くないらしい。人は見かけによらないものである。
ま、どうでもいい話だが、
「で?なんだって俺ん所へくるんだ」
「いいじゃん。どうせ暇そうにしてたんだしさ」
「暇なもんか、これからサンダーソニアに肥料をやろうとおもっていたのに…ぶつぶつ」
「…やっぱり暇なんじゃん」
「違うってーの」
どうやらここは政務などを司る王宮だということは来る道すがら彼女に聞いた。
その中の一室。
植物で大分埋まってはいるが結構大きい部屋に連れてこられた。
そこには、また見るからに怪しげな蒼髪のローブともつかないものを羽織った男がシャベル片手に外出しようとしているところだった。
彼女は彼に大体の事情を話した。
「あ、彼はシオン=カイナスって言って見かけはこんなんだけど、中身もこんなんだから…」
「フォローになってない」
「つっこみ、返品」
王宮では日夜この二人の漫才が繰り広げられて…いるわけではない。
「で、こっちはキール=セリアンっていうんだって」
無論自己紹介くらいは済ませていた。
ちなみに彼女はメイ=フジワラというのだそうだ。
「ふーん。事情は分かった。メイの見た風景から考えてもキールは異世界から召喚されたと考えるのが妥当だな」
どうやらメイはキールが召喚された時に、キールの世界の景色を垣間見たようだ。
先程シオンに説明している時にそんな話もしていた。
「だが、何だってメイにそんな大層な魔法が使えたんだ?魔法なんてーのは未だ未知の分野で、召喚魔法なんて高等技術メイは使えないだろう」
うるさい。だから練習してたのよ。と、メイが悪態をつく。
「実際そうだろうが。研究院にも入りたての出来たて魔道士のくせに…」
…ということらしい。研究院には緋色の(肩掛けの)魔道士なんてあるのだが、彼女はとうてい無理だろう。と、人々は噂している(笑)。
「その本とやら、見せてみ」
彼女は、ほれこことページを示し渡す。
「どれどれ『海の幸・山の幸/山もいいけど、やっぱり海だな/一年通してバラエティーにとんだものが食べれる。あそこは味の宝物庫だ。』って何だ?こりゃ」
「ね、惹かれるでしょう」
きらりーん。って、をい(怒)
「私ね。かに、かにが食べたい。一度も食べた事がないんだもん」
怒りとは根気と体力のいる感情である。キールは今度は疲れを感じた。
「じゃあ、俺はエビな。…ふむふむ。下に書いてあるのは確かに召喚系の呪文だな」
「でしょう」
メイの合いの手にうなずき、シオンはぶつぶつと呪文と思わしき物を読み始めた。
ぼわん
「「「!」」」
亜麻色の少し長めの髪を後ろに束ね、分厚い眼鏡を掛けた青年が出現した。
「ちょっと、シオン。何やってるのよ」
「何って読んだだけなんだが…」
魔法はまだ未知の分野で…(以下略)
こんなに簡単に召喚出来ようとはシオンも思わなかったらしい。
だが、二人よりも驚いたのは…
「兄貴…(絶句)」
へ?
「おにいさん?あんたの?」
メイはおそるおそる といった感じだ。
「肉親を間違えるわけないだろう」
「そりゃま、確かに…」
キールの兄は気を失ったまま動かない。
「ぐーーーー」
訂正。それは気持ちよさそうに寝ている。
「どーなってんだ?」
頭を抱えたシオンの呟きは、おそらく皆の意見であることであろう。
未だ事態を把握してない若干一名を除いては…



長くなりそうなので、いったん切ります。
メイの身分については次回かその次くらいに説明できると思う。