茶番劇〜世界は逆転の運命を辿る〜

世界は逆転の運命を辿る 1



空は果てしなく澄み渡り、
それだけで東京の空の色ではない事が分かった。

他にも、やたら端正な作りの幻獣の像が置いてあったり。
壁の向こうに見える建物が日本家屋とは全く違った様式をしている事や、
遠くに宮殿らしきものが見えるとあっては、ここが日本だと思い込むのは少し無理があった。
彼が手を掛けたままの扉もまた重厚な作りで暫く放心させるのには十分な出来事だと言えよう。
しかし、現実逃避をしていても何の解決にもならない。
彼はおそらく事の発端である彼女を、ゆっくりと振り返えった。

「ここは、何処だ?」
事の起こりは数分前に溯る。
大学からの帰り、歩いていたら突然目の前が暗くなって……
そのまま意識を失い。気がついたらここに居た。
そうしたら、如何にも怪しげな格好をした女が目の前に居て、
新手の新興宗教か何かだと、相手の言う事も聞き流し外に出ようとしたところだった。
さあ、言ってみろ
多少のことなら驚かない覚悟をしてキールは返事を待った。
「部屋の中」
冷ややかな視線を送られ、冗談の通じる相手ではない事を彼女は悟る。
「……で?」
はい、ごめんなさい。今、説明しまーす。
「ここは、クライン国。あんた達から見ると異世界って事になるね。(多分)」
異世界…
何だか理解の範疇を越える言葉だが、少なくとも東京じゃない事だけはキールも分かっている。
「何だ?その多分っていうのは」
「私の推測だから」
「……」
まあ、そんな事はどうでもいい。
「今すぐ元の場所に帰せ」
「それは無理」
きーーっぱり。
「何故」
怒りを押え込み、ようやくそれだけ口に出来た。
「ちょっと、これ見て」
彼女は古めかしい一冊の本を取り出した。
「このページ、ちょっと呼んでみて」
ぺらぺらめくって、あるページを示した。
所々インクが滲んで読みにくい何とか判別できる。だが、読むには根本的な問題があった。
「読めない」
「え、ちょっと滲んでるけど判別…できるよね…」
「じゃなくて、文字が読めない」
「あ、そうかそういうことか」
うんうん、と納得したように彼女は本を自分の所に引き戻す。
「これには、召喚魔法のやり方(らしきもの)が書いてあったんだけど、失敗しちゃったみたい。」
てへっ、
と、彼女は笑って誤魔化すがキールには通用しない。
「それだけか」
冷ややかな笑い。
「だって、私だってよく分からないもん。確かに召喚魔法だけど私が召喚しようとしていたのはこの世界にあるもので、あんたじゃないもん」
怒んなくてもいいじゃん。と、彼女は言うがそれは無理な注文だろう。
「来週には試験があるんだ。帰せ」
「?何だかよく知らないけど、むりだよ〜。
!そだ。こんなのは詳しい人に聞くのが一番」
ちょっと付いて来て。という彼女に大人しく従う事にする。
帰れる手だてがあるのなら聞かない道理はないだろう。
帰れる手だてがあるのなら。




まだまだ考えたぞ!
女騎士シルフィス隊長に見習いレオニス少年。
ディアーナという姉がいるセイリオス殿下。
シオン隊長あーんど宮廷魔道士レオニスとか…
(しかし、陽の目を見る事はないだろう)

また、メイがどうやって研究院の難関を突破したか?とか
メイが相手で本当に帰れるのかキールは?とか
そもそも、キールも失敗するような実験を果たしてメイがやるか?などと言った突っ込みは一切受け付けておりません。
(そんなこと、私が知りたいくらいだ!)
まあ、平行世界ということで大目に見てやって下さい。