初めて踏んだ地面はまるで針の筵のようで人魚姫(ディアーナ)はその場に座り込んでしまった。
「初めての筈ですのに針の筵を知っているなんて変ですわね。」
うるさいよ人魚姫(ディアーナ)!
「言ってはいけない事でしたのね。…とにかく痛いですわ。」
頑張って立ち上がってヨロヨロと歩くがすぐに萎えてしまう。
「お、王子様(シオン)に会う為ですもの。このくらい平気ですわ。」
そうは言ってもその瞳には涙がにじんでしまっている。
「ふ、ふえ〜。」
遅いぞ王子(シオン)。人魚姫(ディアーナ)が泣いてしまうではないか。
「やあ、お嬢さん。遅くなってすまん。婚約者(セイル)の妨害にあっててな。」
岩陰からやっとこさ王子(シオン)の登場。
がこん
ならず。
「そうささせんぞ。王子(シオン)。」
目の色変えた婚約者(セイリオス)何故かオイル缶を武器に登場。
「兎に角、服を着なさい。人魚姫(ディアーナ)。 この男の前で全裸は危険だ。」
「何故私が人魚の姫だとしっているのかしら?」
「それは話の都合上というものだよ、姫(ディアーナ)。」
にこやかに答えて婚約者(セイリオス)は携えていた衣服を渡す。
「まあ、ありがとうございます。」
「早く着てしまいなさい。この男が起きる前に。」
そう言うと何処からともなく縄を取り出しお、王子(シオン)をぐるぐる巻きに仕上げていく。
「まあ、置物みたいで可愛いですわね。」
「…だろう。解いてはだめだよ。」
「はい。」
肯くと慣れない手つきで姫(ディアーナ)は衣服を着始めた。
完了。
「よくできました。」
婚約者(セイリオス)が頭を撫でてやると姫(ディアーナ)の極上の笑顔が返ってきた。その笑顔に婚約者(兄)は骨抜きだ(笑)
「はっ」
王子はようやく目覚めたらしく、あたりをキョロキョロと伺う。
「って、姫(セイル)見逃したじゃねーか。」
「あ・た・り・前・だ。」
ぎりぎりと縄を締め上げるその顔は真剣だ。
「ロープロープ。」
「それは兎も角、二人とも姫じゃ呼びにくいな。かといってそれ以外の呼び方だと長くなってしまうし。」
「まったく無視かい!」
王子(シオン)は呪文を唱え素早く脱出を図った。
「設定はどうした。王子が魔法を使ってどうする。」
「うるさい。構ってられるか。」
激しく咳き込んだ末、王子(シオン)は反論する。
「とっとと城に帰れ王子(シオン)。」
「いやだ。」
「まあ、どうしたのかしら?あなたには私というものがおありでしょう(注:婚約者(セイル)の台詞)」
「き、気持ち悪い。」
ばきぃ
「誰もこんなこと好きこのんでやってるわけじゃない。これも可愛い人魚姫(ディアーナ)のため…」
アッパーを食らった王子(シオン)は姫(セイリオス)の嘆きを聞くどころの騒ぎではないようだ。頬を押さえ必死に痛みと戦っている。
「だから王子(シオン)を近づけさせるわけにいかんのだ。」
姫(セイリオス)は熱弁を揮っている。
「…いててて。姫(セイル)何か忘れちゃいないか。」
「何がだ。」
生き返ってきた王子(シオン)の言葉に姫(セイリオス)は聞き返す。
「この場合。俺と人魚姫(ディアーナ)が結ばれなかったら姫(ディアーナ)は泡になってしまうんだぞ。」
「………。」
凍った時。それは姫(セイリオス)の現実認識の時間である。
「…作者は何処だ。」
「あっち(何処を指差したかは私も知らない)」
「…そうか。」
ちゃきん。
金物の光をきらめかせながら姫(セイリオス)はその場を静かに立ち去った。
その後取り残された王子(シオン)と人魚姫(ディアーナ)がどうなったかなんて私に書けるわけがない。
なにやら私は生命の危機を感じます。
ので、コメントしないで逃げます。