御伽ファンタ 〜白雪編1〜



本日の配役
白雪シオン
継母セイリオス
王子ディアーナ
小人アイシュ
黒子シルフィス

小人(アイシュ)の家ですっかりくつろいでいた白雪(シオン)に魔の手が忍び寄る(笑)

とんとん。
ノック音が響き、来客を知らせた。
「なんだ?こんな僻地に、新聞なら取らないぞ。」
やけに所帯くさい文句を並べて戸を開ける。留守番の基本だね。
「何やってんだ。継母(セイル)」
「違う。私は断じて白雪(シオン)の継母などではない。」
シオンの開口一番の台詞に戸口でスタンバっていたりんご売りがうろたえる。
ばればれだって
いつもの格好に黒いフードを被っただけの出で立ちでバレないつもりだった継母(セイル)に白雪(シオン)はあきれ返る。
「で?何の用だ」
「ああ、そうそう。りんごはいらないか。」
「……」
「採れたて新鮮な産地直送だ。安くしておく。」
「いーつまでその芝居続けるつもりなんだ。」
「5個でいちきゅっぱだ。」
安い。
一瞬だけ心が動いた(笑)
だがしかし
「安すぎる。物は大丈夫なのか?」
素直に疑問を口にするだけのつもりだろうが、既にりんごに関心が向いてる。
その質問には答えず継母(セイリオス)は彼なりの本題に入る。
「ところで隣国の王子(ディアーナ)とはどうなっている。」
「そんなん決まってるだろう。」
桜色の王子(ディアーナ)の姿を思い浮かべ白雪(シオン)はだらしなく顔を歪める。
……そうか。という継母(セイリオス)の呟きは勿論聞こえる筈もない。
「んで、このりんごは何。」
ようやく我に返った白雪(シオン)。
「毒でも入ってんじゃないだろうな。」
むろん白雪(シオン)自身は軽い冗談のつもりでいったのだ。
きらりーん
帰ってきたのは如何にも何か企んでいます。といった継母(セイリオス)の笑みだった。
「……はっはっは。」
青くなり。りんごを持っていた手を引っ込める。
「何なら無料でもいいが。」
「食えるか!」
叫ぶ白雪(シオン)。そりゃそうだ。
「食べろ。継母(皇太子)命令だ。」
権力に任せて継母(セイリオス)は白雪(シオン)ににじり寄る。
「いらん。」
「た・べ・ろ。」
抵抗する白雪(シオン)に業を煮やしりんごを口へねじ込みに掛かる。
「お前を放って置くと王子(ディアーナ)の身が危なくなるのだ。大人しく犠牲になれ。」
「なるかぁ!!」
激しく抵抗する白雪(シオン)。
無理もない。
ぱたぱたぱた
「往生際が悪いぞ白雪(シオン)」
「いいんだよ!悪くて」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱた
「一瞬で行けるから大人しくしろ」
「いくって何処にだぁ」
「きまってるだろ(にやり)」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱた
「先程から何をやっているのだ黒子(シルフィス)
継母(セイリオス)と白雪(シオン)の格闘を後目に先程からぱたぱたとやっていたのは何故か棺桶を抱えた黒子(シルフィス)であった。
花の良い匂いもする。
「はい。次の白雪(シオン様)と王子(姫様)のキスシーンの舞台準備です。」
きっぱりさっぱり爽やかに答えた黒子(シルフィス)。継母(セイリオス)が凍り付く。
「な、何?」
「だから。毒林檎を食べた白雪(シオン様)に王子(姫様)が目覚めのキスをするんです。」
知りませんでした?と黒子(シルフィス)は聞くが耳には入ってはいない様子だ。
そんな、そんな、そんな
「え、そうだったのか。じゃあこの林檎は頂かなきゃな。」
白雪(シオン)は態度を一変。
のそのそと継母(セイリオス)に押さえつけられた体制から逃れ林檎に手を掛ける。
「そんな事させるわけがないだろう。」
正気に返る継母(セイリオス)。
先程までとは違い。今度は二人で林檎の奪い合いを始めたのだ。
心配そうに見ていた黒子(シルフィス)もやがて自分の仕事に戻っていった。

その戦いは三日三晩に及んだという。
白雪(シオン)を助けるべく待機していた王子(ディアーナ)も待ち飽きて帰ってしまったとさ。



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