「と、言う訳でお祖母さん〔お兄様〕の所に届け物をして欲しいのですけど。」
唐突な話だね。
「何?」
「この袋を届けて欲しいんです。」
袋の中はバンテリン・サルノコシカケ……
「ねぇ、若しかしてお祖母さん〔殿下〕って腰痛?」
……
「お祖母さん〔お兄様〕も長いデスクワークで大変なんですわ。」
ふ、って…そんな遠い目をしなくても…
更に、高麗人参・ユンケル・まむしドリンク…
「おーい。」
赤ずきん〔メイ〕。袋に向かって呼びかけても誰も答えてはくれないぞ。
所変って森の中。
狼〔レオニス〕は熱心に台本を読んでいた。
もとい、赤ずきんが来るのを待ち受けていた。
折り良く赤ずきん〔メイ〕が通りかかる。
先ずは一呼吸。
慣れぬ事ゆえ慎重に取り掛からなくては…
二呼吸。
どんな事でも務めは勤め、
三呼吸。
前を見た時、既に赤ずきん〔メイ〕は100メートル先にいた。
頑張れ狼〔レオニス〕!
更にさき。
どうやったのか狼〔レオニス〕は先回りしいている。
今度こそ声を掛けようね。
「…赤ずきん〔メイ〕。」
狼〔レオニス〕の呼びかけに赤ずきん〔メイ〕は振り返る。
…で?その先は?
「何か用?」
呼び止めたまま用件を言わない狼〔レオニス〕に赤ずきん〔メイ〕が逆に尋ねる。
「……」
更に沈黙。
「隊長。隊長。花畑に誘うんです。」
台本片手にくろこ〔ガゼル〕が助太刀する。
うん、それは分かってると思うよ。台本熟読してたもの。
「何こいつ?」
と、赤ずきん〔メイ〕はくろこ〔ガゼル〕を指差す。
…無視してくれ。赤ずきん〔メイ〕
余計なお世話のくろこ〔ガゼル〕。更には痺れを切らして登場した狩人〔シルフィス〕に見守られて、
さあ、誘えるか?狼〔レオニス〕!
「…いや、何でもない。」
甲斐性なし…は、いやいや何でもない。
脱力するくろこ〔ガゼル〕と狩人〔シルフィス〕。
赤ずきん〔メイ〕は首を捻りながら去ってしまったぞ。
機会があったら再度誘うのに挑戦してみるといい。
きっと無駄だと思うけど。
甲斐性が無いのはきっと空葉月でしょう。
次の狼さんはシオンだからそれなりに甘いかもしれない。