人を呪わば穴二つ

人を呪わば穴二つ


えー、シルフィス=カストリーズ様
昨日はとても面白…いえいえ、大変失礼しました。
お詫びといっては何ですが、面白いものを見せてあげます。
今日、是非とも王宮にいらしてね。
お待ちしておりますわ。

ディアーナ=エル=サークリット


そんな手紙を受け取りシルフィス=カストリーズは王宮にやってきた。
しかし、昨日の今日で届くなんてこの国の郵便システムはどうなっているんだろう?
それとも、王族の権威というやつであろうか。
コンコン。
「失礼します。」

さて、時間はシルフィスがディアーナの部屋を訪れるより少し前。
とんとん。
「お兄様、私ですわ。宜しいですかしら?」
「ディアーナかい?良いよ。入っておいで。」
セイリオスの声はいつもの通りに優しい。
扉はそーっと開けられ、ディアーナが顔を出す。
「お兄様。少し時間あります?」
上目遣いに聞いてくるところが可愛らしい。
うむー。と、セイリオスは今日の予定を思い出す。
うん。大丈夫、少しだったら時間が取れる。
「ああ、少しだったらね。」
「良かったですわ。ところで、お兄様、」
ディアーナは一つ区切る。
「昨日のシルフィスのドレスは如何でした?」
昨日の…
セイリオスは薄青のドレスに身を包んだシルフィスの姿を思い出した。
憂い顔であったがそこが何とも言えず、ごにょごにょ…
彼はにやける顔を理性で押し止めた。
「ああ、とてもきれいだったね。」
平常心、平常心。
「それは、良かったですわ。」
「?何をしているのだ。入ってきなさい。」
いつまでも扉の所で話をしているディアーナを不振に思いセイリオスは入ってくるよう言う。
「はい。」
入ってきたディアーナは青白のドレスを抱えていた。
「?」
「それでですね、昨日シルフィスが帰った後、メイとトレスを片づけてましたらこのドレスを見つけましてね。
最初はシルフィスに似合いそうという事でしたのですけど、その内この色はお兄様に似合いそうという事になりまして…」
嫌な予感がした。
「それで、このドレスはお兄様に着て頂こうと、今日はお持ちしましたのよ。」
的中。
「な、何の冗談かね?ディアーナ。」
「ふふふ、冗談なんかではありませんわ。」
迫ってくるディアーナから逃れ、セイリオスは扉から出ていこうとする。
「おっと、行かせないぜ。」
突然のシオンの声。 何処からか現れたシオンにセイリオスは羽交い締めにされた。
「シオン!」
「ありがとうございます、シオン。そのままお兄様を捕まえておいて下さいね。」
ディアーナはシオンの存在に驚かない。という事は初めから共謀していたのだ。
「裏切り者!」
「人聞き悪いな、セイル。『裏切り者』ってのは、最初は味方だった人間に使うもんだぜ。」
青白のドレスが迫ってくる。
「や、やめなさいディアーナ。」
セイリオスは最後の抵抗を試みるが、
「何を言ってますの?こんな楽しい事を、」
あっさり却下された。

場所はかわって、再びディアーナの部屋。
とんとん。
「おかしいな。居ないのかな。」
先程からノックをしているのにもかかわらず、中からは返事が無い。
「あ、居た居たシルフィスこっち。」
もう帰ろうかなと思っていた矢先、メイとあった。
「メイ。今日姫に呼ばれて来たのですけど、見掛けませんでしたか?」
「うん、だからね。こっち」
シルフィスの腕を取り、引っ張っていこうとする。
「何処へ行くんです?あ、昨日みたいのは嫌ですよ。」
流石に恨みに思っているらしい。
「大丈夫、大丈夫。ディアーナの手紙にも書いてあったでしょ良い物みせてあげるって。」
確かに書いてあった。
それを知っているという事はメイも一枚かんでいるらしい。
「何を見せるって、いうんですか?」
いぶかしむシルフィスを、「いいから、いいからと」メイは引きずって行った。

そして、シルフィスの見た物は…
「「あ」」
メイが開けた扉の中を見て、シルフィスは呆気にとられる。
ドレス姿のセイリオスも然り。
お、おきれいですね。
としか言えなかった。


「あ、これもいいですわね。」
場所は再びディアーナのドレッサーの前。
「これなんか、アイシュに似合いそうですわね。」
「流石に、レオニスに似合いそうな物ってないね。」
ちょーっと、それは無理だろう。
「これなんかシオンに似合いそうですのに残念ですわ。」
「そうだね。手伝う代わりに絶対シオンにそんなことしないって約束 してしまったからね。」
そ、そんな約束をしてたのか?君たち
「以外とキールにこんなのも合うかもよ。」
「イーリスさんは…これとか」
「ガゼルにこーゆーのは?」
おいおい。
「それにしても、」
「楽しみですわね」
ねーと、今宵も二人は仲が良い。

お嬢様方、未だやるのかい?




忍び寄る魔の手は今度は何処へ?