部屋代え

部屋代え



「何、部屋を変えて欲しい?」
レオニス=クレベールは部下の嘆願に眉をひそめる。
またか。
今月に入ってこれで3度目である。いい加減にしろと言ってやりたい。
しかも毎回同じ部屋である。
原因は分かっているのだ。
最近王都に騎士団の一員としてやって来たシルフィスである。
彼自身には何の問題もない。
だが、彼の見目の良い外見を意識してか、或いはアンヘル族の得意な体質を意識してか彼の隣室には人が居着かない。
気持ちは分からなくもないが、そのような気遣いは彼の望むところではないだろう。
「いい加減にしろお前たち、余計な気遣いはシルフィスも迷惑だ。」
レオニスの迫力にたじろぐが、隣室の彼ににとってこの問題は切実だ、ここで引き下がる分けにいかない。
こんな時の為にきちんと対策を練ってある。
「隊長はお忘れかもしれませんが、シルフィスは男になるかもしれませんが、女になる可能性もあるんです。」
無論、知っている。
「女になったときに変な噂が立ってはシルフィスだって困ると思うんです。」
普通隣室だったからといって噂なんか立ちはしないと思うが、立つのはそれに準ずる行為をしたときである。
見え透いている。
「だからいって、一部屋を一年間も空けておくわけにはいかないだろう。」
問題はそこである。騎士団の宿舎と言っても所詮は公共物である、無駄に使うわけにはいかない。
隣室の彼は男にしては少々情けない顔を作る。
彼もそんな訳にいかないことぐらい承知しているようだ。
「それだったら隊長が入ればいいじゃないですか。」
これは、彼の独り言。
「私が?」
ふむ


一週間後騎士団宿舎にて、隊員達の会話。
「おい、やっぱりあの部屋空き部屋になるらしいぞ。」
「助かった。こっちに矛先が向いたら堪らないからな。」
「それにしてもアイツ、どうやってレオニス隊長を説得したんだ?」




何か当初の予定とはそれて隊長が大分崩れてしまった。全然別人と化してますね…
のせようかどうしようか迷ったんですけど…