出だしは快調

出だしは快調



異世界から召喚された少女、メイには一室があてがわれ研究院の客員魔道士として扱われる事となった。

部屋に案内されたメイは入るなり、事の原因たる魔道士に尋ねた。
「ねぇ、この部屋のセッティングってあんたがしたの?」
ピンクのカーテン、ドレッサー、キルトの小物どれもこの態度の偉そうな魔道士からは想像できない。
「俺がすると思うか?」
「思わない。」
よかった。私の価値観ガラガラと崩れちゃう所だった。
って、この世界に来た事自体価値観の崩れを起こしているような気もするが、
不機嫌そうな顔のキールの横でメイはそう思った。
「あー、それ私です。」
扉の所で話していた二人のすぐ後ろで声がした。
声は小さな本棚だった。
もとい、小さな本棚を抱えていた。
「重いんで、ちょっとすいません。」
と言って部屋の中に入り、どっこいしょと降ろす。
使って下さいね。と言った人物のようやく顔が見えた。
彼は緑の肩掛けをしており、キールなんかより一回りは年上のようである。
容姿は、
「何であの人目を瞑ったまま話てるの?」
「ちゃんと、開けてます!」
である。
「彼はチャムキン=コークスと言って、ここの魔道士だ。」
如何にも面倒くさげにキールは紹介する。
「召喚されたときに居ただろ、あの場に、」
そう言われてメイは記憶を探る。
確かに何人かキ−ルの他にあの場に魔道士は居たが印象になかった。
キールの印象が強すぎた。
「確かにあの時の責任者はキールでしたが、私も参加していましたからねぇ。女の子に研究院の味気無い部屋じゃ可哀相だと思いまして…」
気に入りませんか?などと聞いてくるあたり悪気がある訳ではなさそうだ。
しかも、自分の行動に疑問を持たない所は天然らしい。
あ、ありがとう 呆気に取られながら、取り敢えず礼は述べた。

用が済んだらいつまでもその場に残っている訳にいかない。
緋の魔道士19歳と、緑の魔道士27歳は揃って扉の外に出た。
「いやー、元気で可愛らしい方ですね。」
「…お前やっぱりその目、瞑っているだろう。」



最初に浮かんだのは、メイが告白されている所を見て
「物好きめ」と独白するキールだった。
彼を書いているとき、チャムキンという音が浮かんだ。
もう、名前のあるオリキャラは書きたくないと思っていたのに、
舌の根も乾かないうちに…