アンヘルの乙女

アンヘルの乙女 7



日曜の次は月曜日。
何時までも遊んでいるわけにもいかない。
メイは朝からキールに与えられた課題を抱え、シルフィスとガゼルは例のごとくレオニス隊長の元訓練を受けていた。
そして昼。
「シルフィス!」
良かった居た居た。とばかりに昼食をとり終えて出てきたシルフィスをメイが呼び止める。
「あれ?ガゼルは」
「午前中の訓練が終わるなり、出ていってしまったんでちょっとわかりません。」
ガゼルがお昼を取らないなんて珍しいこともあったものだ。
メイは首を傾げたが、すぐさま本題に入ろうとしてシルフィスに先を越された。
「そちらこそ、ティナリスはどうしたんです?」
「ああ、キールに捕まってる。」
実は課題をやっているときティナリスに大分教えてもらったのだ。
シルフィスという例外が側に居たため失念していたが、元来アンヘル族は魔法に長けている。
それを見たキールが自分の本来の研究を思い出し、矢継ぎ早に質問し始めたのである。
しかし、相手が誰であろうとキールの態度は変わらない。
ティナリスの方もあの性格である。脅えるティナリスに質問は遅々として進まなかった。
そのお陰でこうやってメイが外に出てくることが出来たのだ。
要するに、ティナリスを見捨ててきたのである。
シルフィスの方はメイの短い説明で事態が理解できたのかそれ以上聞かなかった。
「それより、少し時間取れる?」
メイの要求にシルフィスもそのつもりだったのか、迷わず肯いた。

例の如くの喫茶店。
メイは昨日のことをシルフィスに聞いた。
もちろん、そのまま聞いたりしない。
彼女の聞きたいのは、何故そこまで頑な態度を取るのかであった。
メイはガゼルとは違いシルフィスがティナリスの気持ちを知っているのは分かっていた。
ただ、だからと言って本人の前で言うのとは話が違うのでそのことに触れさせなかっただけだ。
ティナリス(本人)の居ない今、是非とも聞いておきたい。
シルフィスは慌てた様子も無く話し始めた。
「私と彼女は前にも話した通り幼なじみなんです。
彼女がああやって、ええと、自分じゃ言いにくいですね。私の事を追うようになったのは、確か4つの年です。
ティナは昔から内向的だったのでもっぱら家で遊んでいました。逆に私は昔から体を動かす事が好きだったので、外で遊ぶ事のほうが
多かったです。
ある日何を思ったのか、外で遊んでいた私たちを追いかけて外に出てそのまま迷子になってしまった時がありまして、その時私が彼女
を見つけて家まで連れ帰ったんです。
それ以来だったと記憶しています。」
4つの頃から、なんと健気な…
いいじゃん、付き合えば、などとメイは思う。
まあ、そうなると困る輩が若干名 王宮と騎士団にいるのだが…
からん。
突如、店内に来客を知らせる鈴の音が響いた。
「あ、居た居た。やっぱりここかぁ」
ガゼルが他を蹴散らさん勢いで入ってきた。
どうでもいいが、他の客の迷惑になるからもう少し落ち着いて欲しい。
水を煽るガゼルをメイはそんな思いで見つめている。
「見つけた。」
「何が。」
「だから、昨日の男だよ。チンピラ風のティナリスの荷物を引っ手繰ったって言う男。」
どうやら彼はお昼もそこそこに、知り合いに聞いて回っていたらしい。
王都出身の彼にしか出来ないことだが、ご苦労なことだ。
次に彼らのとった行動といえば…
勿論自警団に通報したのである。

前回とは少し間が開いてしまいました、
これからも正月前のペースでは書けませんが、少なくとも週一では更新したいと思います。