アンヘルの乙女

アンヘルの乙女 6



暫くして戻った二人は手ぶらだった。
「情けないわね。二人して!」
ガゼルは兎も角シルフィスが捕まえられなかったのは意外だった。
「すいません。すぐに人込みに紛れてしまったもので、見失ってしまいました。」
日曜の大通りは大分混雑している。シルフィスはすまなそうに言った。
「ところで、自警団には届けたのか?」
横で悔しそうにしていたガゼルがふと聞いた。
「じけいだん?」
ティナリスはきょとんとしている。
未だらしい。
「そっちが先でしょう。何しているのよ!。」
メイに怒鳴られ、話もそこそこにティナリスは自警団へ引きづられて行った。

「おまえ、あの子に冷たくないか?」
らしくないぞ、と残されたガゼルはシルフィスを咎める。
「あの子は、お前の事…」
メイの努力空しくガゼルはさらりと言う。
「分かってます。」
へ?という感じでガゼルはシルフィスを見る。
「何度も告白されました。」
シルフィスの表情は暗い。
「その度に断っているんですが…あの調子で、」
続く言葉は聞かれたくなかったのか小さい。だがガゼルは聞き逃さない。
「だから、私はあの子に優しくする訳にはいかないんです。」

その夜。
再びメイの部屋。
「ところでさ。ティナリスって何時からシルフィスの事好きなの。」
今の発言は唐突だ。
故にティナリスの動揺も凄まじいものがあった。
「え、あの、なんで、知って……いるんで、すか?」
お約束通り真っ赤になったりする。
分からないでか。
よっぽど恥ずかしいのか彼女が落ち着くまでには短くない時間を要した。
「物心つく前から一緒にいて、気がついたら好きでした。」
それだけ言うのが精一杯の様だ。
それきり俯いてしまって、後はうんともすんとも言わない。
しゃーない。明日シルフィスにでも聞くかな。
メイはそれ以上聞くのを諦めた。



今年最初の作品です。
今年はどんな年になるでしょう。
二番煎じ、芸が無い…