アンヘルの乙女

アンヘルの乙女 4



門限なんて何とかなるものである。
実はこの前遅れた時にこれではいかんと秘密の抜け道を作っておいたのだ(笑)。
実はただ単に自室の窓を開けておいただけなのだが、
「よし、大丈夫ね。」
誰も見ていない事を確かめて、メイはティナリスを招き入れる。
たかが腰上までの高さの窓に大分手間取ったが、彼女も部屋の中に入る事が出来た。
「ここまでは順調、順調。」
「何が順調なんだ?」
胸をなで下ろしたメイの耳に、部屋のドアの辺りから聞き覚えのある声が聞こえた。
恐る恐るドアのほうを振り返る。
「ばれてる…」
がっくりとうな垂れ、覚悟を決めてドアを開ける。
「そりゃ、門限の過ぎてもこれだけ静かなら誰だって気がつくさ。上手くやりたかったら普段から静かにしとくんだな。」
悪かったわね。普段うるさくてさ。
「ところで、あんたそこに何時から居たの。」
既に、門限から大分時間が経っている。
キールは答えない。
陰険やろう。
という悪態はけして口に出さない。
「ん?」
メイの問いを完全に無視したキールは早速後ろにいた人物に気がついた。
ティナリスの方は知らない男の到来に又もや脅え、メイの後ろにしがみつく。
キールには隠せないと判断したメイは事情を話す事にした。
「あー、この子はアンヘル族の…」
「見ればわかる。」
「シルフィスを尋ねてきて…」
「だろうな。」
「……」
きれる五秒前。
「だー。じゃあ、何を説明すればいいのよ。」
「何でここに居るんだ?」
慣れているのかキールは冷静に対処する。
仕方なく、メイは事の顛末を初めから終わりまで細部に渡るまで話す事になった。
「ふーん。」
予想外にキールの反応は淡白であった。
「ふーん。て、それだけ?」
「何だ?何か言って欲しいのか珍しいやつだな。」
「だーーーーーーーー。」
口を滑らせた事に気付き急いでキールを制す。
「ま、その子を追い出すわけにもいくまい。」
キールはそう言って部屋から出る。
尤もだ。
「あ、そうそう今日の課題は終わったようだから、次のを持ってきたんだ。」
どっから取り出したのか、本の束をどさっと渡す。
「やっておけよ。じゃあな。」
あ、待って…
メイは本の前で途方に暮れる明日の自分の姿が容易に想像できた。



コメントも書く事が無くなってきたな…