アンヘルの乙女

アンヘルの乙女 3



どうやら、ティナはメイに会うよりも先に引ったくりにあっていたらしい。その引ったくりに荷物ごとやられたのだそうだ。
起こってしまった事はどうしようもない。問題はその後である。
「何処に泊るか。」
普通の人であれば本日分の宿代を渡して明日は帰れで済むが、どうもそうはいかない。
こんな(か弱い)子を放り出すわけにもいくまい。
皆のお金を集めれば3・4日分はあるが、帰らすにしてもアンヘル村に連絡して迎えを待たなければならないだろう。
それまではもたない。
「宿舎に泊めるわけにもいかないし。」
「そーよね。」
「どうする。」
「しょーがない。私のところに泊る?」
え?と、ばかりにガゼルとシルフィスが振り返る。
メイは異世界から来た客員魔導師。言わば彼女も居候みたいなものである。本来ならばそんな事を決められる立場ではない筈である。
「何?」
彼女には関係ないようだ。
「だって、こんな女の子ほっとくわけにいかないでしょ。」
「違いますよ。」
メイの言葉をシルフィスが否定する。
「何よシルフィス。この子一人で放り出そうと言うの?」
メイはシルフィスに掴み掛からん勢いだ。
「違います。そうではなくて、この子は女の子じゃないんです。私と同じ未分化なんです。」
「「へ?」」
二人は間抜けにハモる。
まさかと笑うガゼルの横でメイは改めてティナリスを観察する。
胸は出ていない。服はボディラインが出るような類の物ではない為、詳しくは分からない。
スカートもはいていない。尤もそれを旅の軽装だと勘違いしていたのだが…
言われてみると男の子には見えないが、女の子だという決定的な証拠はない。が、
「やっぱり、女の子にしか見えん。」
シルフィスは少なくとも男の子と言われればそう見えるし、女の子と言われれば納得してしまうが、ティナリスは完璧どっからどう見ても女の子である。
「こちらとしては、その申し出はありがたいんですが、それでも良いですか?」
ティナリスは正式な客ではないので泊るとしたらメイの部屋となる。そこに同性ではないものを泊めて良いのかとシルフィスは聞いているのだ。
メイはティナリスをちろりと盗み見る。上から下まで完全に女の子(に見える)。
OK。女に二言は無いのだ。
「全然大丈夫。まかせて、OKよ。」
無意味な言葉の羅列。心の迷いが目に見えるかの様だ。
その時神殿の鐘が鳴り響いた。
「やば、もう帰らなくちゃ。門限に遅れちゃう。」
って言うか、あれが門限を知らせた鐘だよ。メイ。
研究院までは広場を挟んで反対側、もう絶望的かもしれない。
「話は明日聞きます。ティナ今日は一先ずメイに止めてもらってください。」
「急げ!メイ」
ガゼル、分かってるって。
未だ名残惜しそうなティナリスの手を引き、全力疾走で研究院へと向かう。



ふう、終わった。さ、明日の分を始めましょう。
しかし、だらだら書いているな。