アンヘルの乙女

アンヘルの乙女 1



うららかな午後。
メイは買い物がてら広場に遊びに来ていた。
活発な彼女にとって外に出ることは唯一の息抜きである。普段勉強に追われているだけに…
今週の課題が早くも終わったので今日は気分爽快。めいいっぱい羽を伸ばしに来たのだ。
「何度も言わせるんじゃねぇ!」
突然の怒鳴り声
見ると女の子が一人、柄の悪いチンピラに絡まれていた。
周囲は関わりになるまいと視線を合わそうともしない。
「思わず助けてしまったわ。」
買い物袋は凶器である。
これの襲撃を受けた人間は地面と仲良くなっていた。
相手が一人だったから出来た芸当である。
「あなた、大丈夫?」
チンピラに絡まれていた女の子は脅えて震えている。これぞ女の子の正しき姿だと思わないか?メイ。
「取り敢えず、そこの噴水のところで休も。」
とうとう泣き出してしまった彼女にメイはそう提案した。

噴水の縁に座り女の子は一頻り泣いたがやがて声も小さくなり、気が済むまで泣いたことを教えた。
「はい。これで濡らしたら。」
水で濡らしたハンカチを渡す。
彼女は小さく礼を言いい、顔を上げて受け取とった。
メイはここで始めて女の子の顔を見ることになる。
輝くばかりの金の髪に深い翡翠の瞳。何より、その美貌。
どこかで見た特徴である。
「???」
「あのう、どうもありがとうございました。」
女の子は顔をしっかり上げてそう言うが、未だ目が潤んでいる。
「あなた、町の人?…じゃないわよね。」
少なくともメイは見たことが無い。それを肯定するように女の子が首を振る。
「今日の午前に王都に着きました。」
消え入りそうな声で女の子が答える。
「んじゃあ、観光客か何か?」
この質問にも首を振る。
「人を訪ねて来ました。」
「若しかして一人で?」
コクンとこれには肯く。
一人で、それは又なんて無謀な…
クラインは治安が良いと言っても先程の様なチンピラは何処にでもいる。
よくもまあ、無事に来れたものだ。
「それで、探し人とやらには宛てがあるの?」
近くだったら送っていこうと思い訪ねる。
こんな人を一人で行かせて何かあったら寝覚めが悪くなる。
「はい、騎士団の宿舎に行く途中だったんですけど…」
へ?騎士団
突然ですが問題です。
ここでメイの脳裏に浮かんだ騎士団の有名人といえば誰でしょう?
@無口で無愛想。皆の尊敬を集め、いざって時には頼りになるぜ。レオニス
A美人で優しい。騎士団どころか町中の注目を集めるアンヘルの少年剣士。 シルフィス
B元気で活発。本人は知らないが実はお姉さま方に大人気の少年。ガゼル
答えは勿論2番である。
「騎士見習いをしてると思うんです。」
そんな言葉もメイの耳には入ってこない。
「あなた、シルフィスの妹か何か?」
メイの疑問はもっともだ。
「あなた、シルフィスを知ってるの?」
いや、知ってるも何も、
ねぇ。

何気に続いたりします。