せいなるひ 3

せいなるひ 〜そして最後はやっぱり幸せに〜


3つ目のケーキに手を伸ばした頃。
「渡すチョコレートって、別に手作りでなくてもいいんですよね。」
シルフィスがポツリと聞いた。
「え、そうですわね。メイも『渡す』とだけ言ってましたし、こだわらなくても良かったかもしれません。」
ディアーナは山ほどのケーキを遠回しに責められたと思い、表情を落とす。
「あ、違うんです。二人とも手作りだったんでそんな事いっていたかなーとちょっと疑問に思っただけなんです。」
慌ててシルフィスがフォローを入れる。
「そうでしたの、それでしたら良いんですけれど、」
その後シルフィスは何か考え込んでいる様子で、心ここに在らずであった。

結局ケーキは半分以上は消化出来たけれど少し余ってしまった。
ディアーナは王宮に持ち帰りなんとか一人で始末しようと思ったが、もう少しのところでギブアップしてしまった。
「仕方ありませんわね。お兄様に手伝って頂きましょう。」
という訳で兄の部屋を訪れた。
とんとん。
「ディアーナです。お兄様。」
「ああ、入りなさい。」
残った2切れのケーキを持ってディアーナが部屋に入る。兄と一つづつ後一つだったらなんとかいけそうである。
「お兄様。ケーキがあるんですけれど私一人では食べきれなくて、手伝って頂けるかしら?」
「なんだい。お前もかい?」
「?」
部屋のテーブルの上には二人分のティーセットとお皿が空で置いてあった。
「誰かいらしていたの?」
「ああ、さっきシルフィスが美味しいケーキを買ったから一緒にどうかって来ていたんだ。」
皿にはチョコレートケーキが乗っていたらしい。
「まあ」
シルフィスったら、
兄がシルフィスを気に入っているらしい事はディアーナも知っていた。
だが、シルフィスもだったとは驚きである。
よかったわね。お兄様。
見るからにほくほく顔の兄に向かってそう思う。
「チョコレートケーキというのは最近流行しているのかい?」
兄の言葉に思わずディアーナが吹き出す。
「ええ、今日だけね。」
「?」
セイリオスはよく分からなかったが、妹が幸せそうに笑うのでそんな疑問は何処へやら、
妹には弱いのである。
その後ディアーナが作ったケーキを二人で仲良く食べた事は言うまでもない。