せいなるひ 1

せいなるひ 〜それはとても切迫したもの〜


ある冬の晴れた日。
シルフィスはレオニスの部屋を訪れる途中でメイと会った。
「あ、シルフィス。何か用?」
「どうしたんですか?何か顔が赤いですよ。風邪ですか?」
「え、あ、あ、そう。べ、別に、何でもないんだけど。」
メイは慌てたようにそのまま行ってしまった。
「?」
首を捻りながら、部屋をノックする。
「…入れ。」
どういう訳か、レオニスの声にいつもの覇気がない。不審に思いながらもそのまま入室する。
「隊長。騎士団の備品確認の書類お持ちしました。」
「ああ、悪い。そこに置いておいてくれ」
その顔は青ざめていて、明らかにぐったりしている。
「!お加減でも悪いんですか?」
どうしました、と駆け寄ったがレオニスに手で制された。
「いや、何でもない。」
レオニスの様子は何でもない様には見えない。
「ただ、先程メイ殿が菓子を作ったので分けに来たと見えられてたのだが、『生憎甘い物は苦手で』と申し上げたら口の中に押し込まれて…」
そこまでいうと本当に具合悪そうに口を閉ざしてしまった。
それを聞いたシルフィスは思わずクスリと笑う。
思い当たる事があったのだ。
先程のメイの様子。そして…
「隊長。そのお菓子ってチョコレートではありませんか?」
「ああ、その通りだが、」
2、3日前メイが話していた。
メイの世界ではバレンタインという風習があって、その日には女の子が好きな男の子にチョコレートを渡すのだという。
丁度今日がその日にあたると言っていた。
「隊長もたいへんな人に見込まれたものですね。」
くすくす。
今度は笑いが止まらない。
「?」
いーえ、後は自分で考えて下さいね。
附に落ちない表情のレオニスに、シルフィスはだんまりを決め込む事にした。