勇気のあかし
勇気のあかし


望んだこと。
その結末。
けれど、それには満足できなくなって。
だから僕は意を決した。



他愛のない尋ね事。

「あなたは僕のことどう思っていますか?」

否、本当はものすごく緊張しながら何とか最後まで搾り出した。
きっと顔は強張って酷い形相で、声も震えていたに違いない。
けれど、その時の僕はそんなことには構っていられなくて、ひたすら貴方の優しい瞳を見ていた。
この勇気は貴方に貰ったもの。
ただ逃げることしかしなかった過去に決別したという証。
全ての気持ちを振り絞った後は、ただ祈るように貴方の言葉を待っている。

貴方は少しキョトンとして、真に何でもないことのように答えた。
「好きよ」
その言葉の重みを計りかね僕が戸惑っていると、それに気がついたように彼女は自らの頬をぴしゃりと打った。
「ああ、そんなことをしては…」
「これでは駄目よね」
うっすらと赤く染まった彼女の顔に気を取られていたが、続く彼女の言葉に引き戻された。
「ねえ、千晴君。私はあなたを愛しています」
これなら取り違えようもなく伝わるよね。と、ふわりと笑う。

僕の意気込みも
緊張も
不安も
全て貴方が取り去って

言葉の意味をようやく理解すると、一気に顔に朱が上るのが自分でも感じられた。顔も身体も熱くてどうしようもない。心拍も耳の奥で音を立てて聞こえる。
「やだ、千晴君。そこまで熱烈に反応されると、私もすごく恥ずかしい」
「す、すいません」
見れば彼女の頬も先程よりも赤くなっていた。それをまるで隠すように両手で覆ってしまう。
咄嗟に謝ってしまったが、こればかりは自分の意思でしていることでなはない。何とか自分の熱をやり過ごそうと意識するのだが、そう器用に出来る筈がない。

千晴の顔は赤いまま。
彼女の顔も赤いまま。

その様子にくすぐったさを覚え、どちらともなくクスリと笑う。
ひとしきり笑うと彼女は千晴を改めて見えあげて笑みを消して言う。
「私はあなたが好きです」

あなたは?と問われて
肝心の言葉を言っていないことに今更気が付いた。

全ての願いも
全ての希望も
貴方があればこそ

結局貴方に言わせてしまったけれど。
今日のこの日を勇気に変えて
僕の気持ちを伝えましょう。

「貴方のことが好きです」




血迷ったようです。
旅に出ます。探さないで下さい

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