「おことわり」

この記事は、本来G0SNOがRSGBの機関紙Radio Communications April,1993,p74に発表したもの ですが、それをG3SEKイアン氏が自分のホーム・ページに掲載しています。
  この内容をここに発表するに当たっては、あらかじめG3SEK経由でRSGB・電磁環境対策委員会の 承認を取り付けています。
なお原文の翻訳については JA7AVQ/田村潤司氏にお願いしました。

<<クリップ・オン型RF電流計>>
CLIP-ON RF CURRENT METER


 ここに紹介するクリップ・オン型RF電流計は、いわゆるRFアンメーターとしてばかりでなく、最近問題になっている電磁環境障害の対策用としても応用できます。
先に発表した雑音レベル検出器の機能を、もう少し定量的に計測できないかということで製作しました。


《 原 理 》

Fig.1

 Fig.1をご覧下さい。被測定ケーブルにコアを通すことは、先の検出器と同じ要領ですが、コアに生じた高周波電流を、電流トランスにより二次コイルに移し、その電流を整流してメーターで読むようにしたものです。
図にあるMaplin BZ34Mを円筒形コアの片側に、コイルのある部分をもう一方のコアに見立ててください。コイルは10回巻きます。つまりセンサー部分になります。
ここからR1,R2で構成される終端抵抗(50Ω)に接続します。この終端抵抗は100Ω/0.5W×2とします。このコアでケーブルをはさみ込むことは、ケーブルがトランスの一次巻き線(1回巻き)を形成したことになります。
理論上では、一次巻き線を流れるRF 電流の10%が二次側に流れることになります。(二次巻き線の巻き回数が増加するにつれて、そこを流れる電流は少なくなります。)一次側電流が1Aの場合、50Ω の二次側負荷のパワー・レーテイングは1Wになります。
通常このコアの場合は、電流比は10%以下で、30MHzくらいまでは約8%、50MHzでは7.5%くらいまでに低下します。例えば14MHzにおいて、ケーブルを流れる電流1A(RMS)が50Ωを流れる時には80mA(RMS)となり、50Ω両端の電圧は4V(RMS)に低下します。
ケーブルを電流トランスではさむと、直列インダクタンスを少し増加させることになります。
理論上は0.5Ω(巻き線比の二乗で二次側負荷を割る)になりますが、実際には14MHz で約2Ω、28MHzでは4Ω位になります。
R1/R2両端の電圧は、ショットキー・ダイオードを用いた倍電圧整流回路により整流します。ここに現れるDC出力はほぼ次の通りです。

   ( RMS AC入力電圧×0.28)−ダイオードの順方向電圧ドロップ分

 100μAレンジの電流計は、全抵抗(R3+R4+メーター内部抵抗)により、1Aレンジで104KΩとなります。つまり、100μAレンジの電流計を用いる場合、全抵抗が104KΩとなるように調整すれば、1Aレンジのメーターとなるわけです。
100mAレンジであれば、R3をショートし、(R4+メーター内部抵抗)=6.8KΩとなるようにします。100mAレンジでは、ダイオードの順方向電圧ドロップの割合が大きくなりますので実際の測定可能な最小電流は30mA以上です。(30mA以下の目盛は詰まっています。)
30mA以上については、Fig.2のように目盛って下さい。
検波回路のレスポンスは30MHzくらいまでは、ほぼ完全にフラットですが、50MHzになるとリードインダクタンスやレイアウトの影響を受けて、やや不正確になります。


Fig.2

《 製作要領 》

 ケーブルを流れる電流をチェックするためには、ケーブルをはさみ込んで行います。そこで、前回発表したトロイダル・コアを使用する方式に代わって分割型のコアにします。
いろいろ実験してみた結果、TDKのZCAT-3035-1330に落ち着きました。これは大型の分割型フェライト・ビーズで、蝶番(ちょうつがい)の付いたプラスチック・ケースに収まっています。
これでケーブルを挟むようにするわけです。本来はケースを何回も開閉することを想定して作られてはいませんので、もろいところがあります。
通常の使用目的はコンピューターによるノイズをシャットアウトするためのものですが、広帯域の電流トランスとして使用することもできます。
このタイプの分割ビーズは、リングコアよりも良好なカプリング特性となっており、500KHz〜50MHzまで使用できます。
  十分なカプリングを得るには、コアの長さは内径の2.5倍以上必要です。今回必要なコアの長さは、最低3cm以上となりますので、事前にコアの長さを確認しておくことが肝要です。
殆どのクリップオン型フェライトは、EMI抑制用に作られていますが、このグレードであれば、HF バンド用のRFトランスとして用いるには十分な性能を持っています。
  ビーズの特性にはいろいろありますが、HFにおいて直列インピーダンスができるだけ低くなるようなものを選択すべきです。これをチェックするには、Autek RF-1、MJF-259などがあります。
HF帯で十分な自己インダクタンスを持っているようなコアは、被測定電流を取り込むのに都合が良いのです。


Fig.3

 実際の構造について説明します。メーターはプラスチックの小さな箱に収容し、電流トランスはFig.3のように、その箱の上蓋に取り付けます。
フェライト・チョークは、2本の皿ネジを使って容器に取り付けます。コアの片側をケースから慎重に取り出し、そこへ2.5mmの皿ネジを内側から通します。
コアとプラスチックの間に0.5mm厚のカードを挟みこみます。(QSLカード2枚分の厚さです。)
PCV絶縁テープをフェライトに巻きつけて、線のエナメルが剥がれないようにしておき、その上にエナメル線を10回巻きます。(26〜28SWG又は24〜26AWG 0.4mm)
巻き上がったならばプラスチック容器に戻します。コアを合わせた時、隙間ができていないことを確認して下さい。その上で、プラスチック容器に付いているツメを入れるようにします。
なお巻き線はエポキシで固めるか、または絶縁テープでしっかりと押さえるようにして保護して置きます。


《 較正法 》

Fig.4

もしバンドごとにクリップオン型メーターの確度をチェックしておきたいという場合は、次のようにします。まずパワーメーターを準備します。
セットアップの要領はFig.4の通りです。同軸の芯線だけをクリップします。(テストのための要領であり、通常は勿論同軸の外皮を挟み込む。)
負荷には50Wを注入します。メーターの振れは1.0Aになる筈です。0.5Wを入れた場合は100mAを指します。
 ケーブルの外皮を挟み込むのであれば、芯線を流れる電流にはメーターは反応しないで外皮を流れる電流を示すだけです。
本来はその電流がゼロになる筈ですが、実際には外皮を流れる電流が定在波を形成し、アンメーターをケーブルに添って動かすと、その読みが変化します。                      
なお、洗濯バサミとプラスチック板を使って、ワニ口クリップのように簡単にケーブルを挟み込む構造のものも発表されていますが、メーターを含めて一体型とすることは却って使い難いこともあるのではないかと思われます。
従って、主としてRF電流計として用いる場合と、電磁障害探索用に用いる場合とで、その使用目的に応じて構造を変える方が良いのではないかと思います。                      

  以上

G3SEK局が製作した一体型のRF電流計

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