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山の体験レポート

 

越後の雪山とスノーシユー

長岡市 皆川

 最近スノーシユーが流行ってきている。4年ほど前に買った時より種類が増え、本やテレビなどにも取り上げられるようになってきて使い方の説明などもでているが、ほとんど太平洋側の雪の少ない所や北海道のように気温の低い乾いた雪に対してである。

 読んでみても越後の雪には合わないので、越後の雪山に合う選び万、使い方を紹介する。

 ただし、平らなところだけを遊ぶ場合や、スノーボーダーのように登りに使用するだけの場合は除く。

1 スノーシユーとは

 一言で言うと単なる西洋カンジキだが、なぜか新雪をラッセルしたくなる不思議な道具である。雪の中をミズスマシのように自由自在に、とまではいかないが、慣れればワカンのラッセルと比べ同じ体力で2倍〜3倍の標高差を登る事もでき、下りも薮山であればスキーより速く駆け下りることもできる。

 ワカンとの構造上の大さな違いは、山スキー・クロカン・テレマークのようにかかとと本体が離れると言う事である。

2 使用可能な山

 後述の4で選んだものなら、越後の山は殆ど使えると思う。とは言っても使用実績は1月の守門、3月の駒までであるが。使ってみて言える事は、従来のような輪カンジキとアイゼンの組み合わせと同じに考えられると思う。スノーシューの裏についているアルミの爪は結構利く、氷は無理だがクラストした斜面には確実に食い込む。スノーシユーでだめな所は12本爪アイゼンが必要な氷の世界である。つまりスノーシユーと12本爪程度のアイゼンとピッケルで殆どのところは行ける。

 雪の八海山に行ったことのある人ならわかると思うが、3月の女人堂下や薬師の先の急登もピッケルを支えにスノーシユーを履いたままで(ある人はストックとスノーシユー)で難なくクリアしている。

3 不向きな山

 トレースの硬く出来上がった、大勢が登るような山には向かない。特にルートが狭く人の歩いた後しか歩けない所は最悪である。下りの時でもトレースの無い万が安定して降りられる。

 多くのスノーシユーはクラストした斜面をトラバースするのには不向きであるが、サイドアイゼンのしっかりしたタイプや、ちょっとした加工でサイドアイゼンを取り付ける事により、この欠点は解消できる。

4 スノーシユーの選び方

 極端な体重の人を除き、長さ65cm程度までのなるべく軽い物がいい。ただし、スノーシユーの裏についているアルミの爪はしっかりした物がよい(あとは価格との兼ね合いになる)。

「理由」

 カタログや取説などには長さにより使用対象体重が明記されているが、あくまで目安と考えるべきである。なぜなら従来の輪かんじきやスキーには使用対象体重など明記されていない。

 特に下りの時はかかとからテールまでが長すぎると怖い。

 メーカーや種類によっては、樹脂で出来ていて長さ調節が可能なもの、分解でさるもの、ビンデンクが頑丈になりワンタッチで履けるものなど、いろいろなタイプがあるか、シンプルで軽いものがよい。

 また軽ければ持ち運びも楽であるし、使わない時にザックヘの取り付けが簡単、ショックコードを2〜3回ザックごと巻くだけでいい。

 雪の薮山などをハードに使用する人は、ビンデングと本体のヒンジの部分がシャフトになっているものは避けたほうがいい。全部そうなるとは言えないが、ヒンジのシャフトが曲がった実積がある(もともと曲げ加工して製作した物、曲がっても不思議でない)

図2

 ビンデングがしっかりしたタイプも場合によっては足を傷める事になる。一言で言うとスキーと同じだからである。始めのうちは慣れなくてつまずき、慣れてくると飛ばしすぎて転んだり、スノーシユーが雪にもぐったまま抜けなくなったり、雪の中でスノーシユーが薮で引っかかったりとさまざまである。いずれにしてもあまりしっかりしたビンデングは考え物である。ある程度自由の利いた、シンプルなビンデングの方がケガをしにくい。昔のスキーのバツタやカンダハと同じである。

標高の高い所や氷点下の中で使用する人は紐で締め付けるタイプは避けたほうがいい。凍って緩めたり締め付けたりする事がやりにくくなる。

5 ストックは?

 少しでも楽にすばやく歩きたいのであれば2本使ったほうがよい。

 深雪の急登などで胸の雪をかいても足を上げ体重をかけるとすぐ崩れ足場が確保できない時など、ワカンより面積が広い上ストックにも体重を分散する事により体を持ち上げることが出来る。

 また慣れてくると、下山の時に駆け下りる事ができるが、その体勢はテレマークポジションがもっとも安定している。その時ストックがあったほうがより安定し、次の足を踏み出しやすい。

6 スノーシユーの履き方

 ビンデングの締め付けは足の内側でやるように履いたほうがいい。全部のメーカーの取説を読んだわけではないが、知っている範囲では、足の外側で締め付けをやるように書いてある。また販売店でもそのように説明している。

 内側で締め付けるとぶつかり合うという事なのかもしれないが本体の幅からしてぶつかり合う心配は殆ど無いといえる。それより安定しない雪の中での脱ぎ履きは、やりやすい方がいい。体をねじることの少ない内側で締め付けをやったほうが、増締めもやりやすい。

 先ほどの選び方の追加になるが、左右が決まっていて、外側で締め付けるタイプは避けたほうがいい。

7 スノーシユーの効果的な使い方

 @スノーシユーを履く

  •  当然ではあるが、山に入る前に靴に合わせて履いてみることである。また、履く時は、履くほうの足を少し高くできる所あるいは雪を踏み込んで履く足を高くすると楽である。

     前述のように締め付けは内側で行うようにする。

     タイプによってはヒールの位置を合わせる物もあるようだか、登る時はなるべくスノーシユー本体に対して足が前になるように履いたほうが、登りの時の蹴り込みが楽である.勿論、一部の取説にもあるように前過ぎてつま先が穴から出ないようでは困るが、精一杯前のビンデングを緩め足を入れて後ろのビンデングを締め付ける。

     下山の際は逆に前のビンデングをいっぱいに締め付けてなるべく後ろに足がくるようにする。調節しても3〜5cm程度なのだが結構効果がある。

     長さ65cmのスノーシユーの場合で考えると、たかが3〜5cmであっても、かかとの後ろからテールまでの長さは15〜25cm位になるので、割合は20%〜30%も長さが変わることになる。つまり足の位置を変える事により踏み込む力が20%〜30%少なくてすむのである。

     図4

 A歩く

  •  歩く時は、山スキー・クロカン・テレマークと同じ要領であまり足を持ち上げずテールを引きずるくらいにするとスノーシユーに浮力か働き自然に持ち上がってくる。

     慣れてきたら、踏み出した足が着地したらそのままかかとをほんの少し蹴り込むようにするとスノーシユーが戻らず、10cm位は多く歩幅が稼げる。

     ただし、スノーシユーを履いてもひざや腿までもぐるような深雪の場合はワカンの花魁歩きのように、気持ち足を持ち上げ外側に弧をえがくように足を運ぶ。

     あたりまえだがバックはできない。テールが引っかかって転ぶ人もいる。方向転換はスキーと同じである。三脚を据えて写真を撮る人はつい忘れて下がるので注意。

 Bストック

  •  ※ストックの使い方も殆ど山スキー・クロカン・テレマークに準じて行えばいい。

 C登る

  • 斜面を登る時は、軽く蹴り込むと歩きやすくなるが、ひざ以上のラッセルの場合はスノーシユーのトップが雪面から少しでる位まで足を持ち上げ、前の方に押し付けるように踏み込み、足場を固める。

     図5

     まっすぐ登れない時はジクザクに登るのもいい。また急斜面のスキー登行のように逆ハの字に踏み込みながら登るのも効果がある。ただし斜面に対して斜めに登る時、雪がクラストしているとアルミの爪が利きにくいので注意する。サイドアイゼンのしっかりしたタイプや、自分でサイドアイゼンを取り付けると登りやすい。

     一部の取説などに、スノーシユーをなるべく水平にして蹴り込むような説明があるが、疑問に思う。スノーシユーを水平に蹴り込んでしまえば次に足を持ち上げる時つま先が引っかかってどうしようもない。突さ刺しては次の行動が取れないのである。雪は押し囲めることにより硬くなって体重を支えられるのである。越後の雪だけがそうだとは思えない。

     ごく急な斜面で硬くクラストしている場合の蹴り込みは、重登山靴・プラブーツなどつま先の囲い靴の場合に限り可能である。ピッケルなどの支えを必要とするが、スノーシユーをダラっと下げ、つま先をスノーシユーより出して構え、思いきり蹴り込むのである。足を引きすぎるとスノーシユーが水平になってつま先が出ないので、短い距離で確実にけり込んでやる必要がある。勿論つぼ足でも蹴り込めないような硬い雪の場合はスノーシユーもワカンも必要としない。アイゼンが必要となる。このようにすればたいていの斜面はスノーシユーを履いたままで登れる。

    図5−2

     深雪のごく急な斜面で胸以上のラッセルの場合はワカンといっしょで、スコップや手で一歩ずつ雪を掻きながら登らざるを得ない。ただ、ワカンより面積の広い分だけ浮力があるので同じ条件ならワカンより登りやすい。

 D下る

  •  緩やかな斜面であれば歩く要領で降りてくればいい。

     急斜面の場合の要領は殆どワカンと同じと言っていい。つまりかかとを蹴り下ろし雪を押しつぶして足場を作っていくのである。ただ、ワカンとの大きな違いはかかとからテールまでの長さである。多くの人から滑ってこれないのかと聞かれるが、形はスキーのように先が曲がっていても滑り降りる道具ではない。滑って降りられないのだから雪を押しつぶてしてスノーシユーを平らに安定させないとつんのめってしまう。スノーシユーを始めて履いた人から下りか怖いとの声を聞くが、かかとの蹴り下ろしが足りないのである。

     図6

     かかとを蹴り下ろし雪を押しつぶてして足場を作るということは、浮力がありすぎると下山の時かかとが雪を押しつぶせなくなり、前のめりの不安定な体勢になってしまう。参考までに私の体重が70kg、装備・荷を含めて90〜100kg、これで長さ63〜64cmが限度である。雪質にもよるが73cmを履いてみた時、下りの時に蹴り込みが利かず怖い思いをした。

     ワカンと違い、接地面が広いので雪へのもぐりかたが少ない分、次の足の蹴り出しが簡単で一歩一歩の歩幅が大きくでき、且つスピードが出せる。それにストックを使う事によりさらに安定度が増す。

     下りの体勢だが、ストックの所でも少し触れたように、テレマークポジション(足をそろえないで前後にしてひざを曲げたスタイル、ジャンプ競技の着地の体勢にストックを持たせた格好)が一番安定しているようだ。スノーシユーのテールか雪面から離れない程度につま先を持ち上げ、下りながら雪を押しつぶすように足を前に運び、体が完全に雪にもぐってしまう前に次の足を出す。

     とは言っても、慣れるまではなかなかうまくいかないかもしれない、そこで始めのうちは、ひざが軽く曲がるくらいに腰を落としストックで体を安定させ、かかとから蹴り出すように足を前に出す。この時、前のめりになると足が出にくくなるので、上体を起こし気味にする。歩幅はスノーシユーの長さ、60〜70cm程度に抑えてあまり広くしない方が次の足を出しやすい。

     慣れてくると歩幅も広くでき、薮山をスキーより速く駆け下りることができる。時にはスピードに乗って軽くジャンプもできる。これが楽しくてスノーシユーで山に入りたくなるのである。

 E考察

  •  もともとスノーシユーに正しい使い方など無いと思う。単に西洋のカンジキでしかない訳だから。基本がどうのこうのという問題ではない。ただ使って見て感じたことを紹介したまでである。あとは新雪・ザラメ雪・クラストした雪など雪質に合わせ工夫して使えばいい。

     ただ相手は冬山である。流行っているからといって安易に飛びつくのは、やめたほうがいい。たいていの本にでているのは天気の日ばかりで歩きたくなって当然だが、そんな日は少ない。荒れた日でも使えるのでなければ買わないほうが利口だ。目的・技量を考えて使ってほしい。

スノーシューのホームページ

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