− ANOTHER WINDOW −

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【通過駅】

つま先立ちで君の髪に
そっと右手を触れた
僕のゆがんだ視界で
暖かい空気が動いた
いま誰よりも いま誰よりも

どこかで聴いたことのある
調子の外れたラジオ
君の体は音に溶けて
時間の中に浮いている

照れながらうつむく横顔が
近づくほど虚ろになる
新しい陽に照らされて
音はますます軽くなる
ただこのままで ただこのままで

そして時間にはぐれて
間違った場所に飛んでゆく
僕の右手に微かに残る
やわらかい髪の手触り

つま先立ちで君の姿
耳を澄まして探してた
誰も居なくなったラジオは
まっすぐで何も溶かさない
ただこのままで ただこのままで


 

 

【magic stone】

昔の部屋の空気は優しくて
僕らをあたたかく守ってくれた
僕らは何も考えず何も語らず
あたたかい空気に包まれていた

風に奪われたmagic stone
そうして再び独りになった
仕切りの取れた箱の中で
世界は冷たく僕の肌を撫でた

夢から覚めて初めての夜
誰かに話したくて仕方なくなった
いつしか風を正面から受けとめて
風の心地良さを思い出した

君に奪われたmagic stone
独りだから君と語り合える
あたたかい昔の部屋では
いつも何かが腐りかけていた

僕のとなりのmagic stone
凍えそうな時も決して拾わない
色あせながらもなお優しい
僕のとなりのmagic stone


 

 

【窓】

繰り返し夢から覚めかけても
途切れのない話し声が再び夢に引き戻す

登りかけて止まっている太陽が
張りつめた空気を溶かすまで
背伸びして 背伸びして
七色の 空に沈む

遠い昔からの静けさを通り抜ける
どこかで懐かしい空気の動き

Who are you? 
Who are you?
Who are you?

朝日の眩しい窓に浮かんで
冷たくなった手を振りながら
追いかけた 背伸びして
背伸びして 背伸びして
その話し声に 手を触れた

どことなく苦しそうな無邪気さを
覆い隠すように溢れてゆく虹の光

Who are you? 
Who are you?
Who are you?


 

 

【瞬間】

走る僕の背中に投げられた
予言者の声に誘われて
錆びた扉にそっと近づいた
遠い時代の言葉を待つ

飛び出す気配とすれ違って
肩と肩が触れた瞬間。
目を閉じた瞼の下で
濁った河のように流れていた

そんな影の存在に気づいている
そんな影の存在を感じている
瞬間。

やがて気配は僕に告げた
溢れる河の本当の名前を
僕は身動きが出来なくなって
真新しい景色にただ息をのんだ

そんな影の存在を受け止めている
そんな影の存在を認めている
瞬間。

陽の光に突き刺された胸の奥から
古びた空気がこぼれ落ちる
そして僕は手を引かれるまま
河の流れに身を任せた

そんな影の存在を信じている
そんな影の存在のとなりにいる

瞬間。


 

 

【ティールーム】

眠りから覚めたと感じたとき
本当の眠りに落ち始めていた
突然変わった鮮やかな空気を
目隠しをしたまま吸い込んだ

何かを取り戻そうと背伸びをしたら
見えない壁に遮られた
それでも回り道の時間がない僕は
部屋の引力に身を任せていた

気が付けば毎朝立ち寄っていた
走り出すバスの音を背中にして
君が見つけた魔法のティールームで
少しずつ育つ僕のPOWER

足元にはいつか置き忘れた地図
見なかった振りをしてくぐり抜ける
今この場所にある繋がりだけを
信頼して寄りかかった

気が付けば数カ月が過ぎていた
認めたものから日常に変わっていく
君が見つけた魔法のティールームで
少しずつ僕を変えるPOWER

季節とともに時間が沈み込んで
君の日常まで巻き込んでいく
夕暮れ時の魔法のティールームで
少しずつ僕を変えるPOWER


   
   

【ラストオーダー】

鮮やかすぎる言葉を隠しながら
扉の前で待ちつづける
懐かしい空を捜している僕は
目をそらしてストーブにあたっていた

満月が静かに語る物語の一つ一つ
味気ない夜空に飾り付ける
ラストオーダーが済むまでは
僕の街でくつろいでいて欲しい

ぼんやりとした珈琲の香りの中で
もう少し暖かくしていたかった
足元に気を取られている君の目には
満月の見た夢は映らない

鮮やかな輪郭をたどるためには
残された時間はあと僅かだった
ラストオーダーが済むまでは
僕の空は沢山の光で賑わっている

ぼんやりとした珈琲の香りの中に
言葉の輪郭は閉じこめられている
ラストオーダーが済むまでは
僕の街は誰にも動かせない


 

 

【加速】

雲が切れた瞬間揺れる心に乗って
限りある未来を見渡していたら
がむしゃらに何かを探し続けてる
自分の背中が見えた気がした

 スピードをあげて階段を走った
 早すぎる夜の訪れに足を取られて
 目の前にある出口がまだ見つからない
 そんな君の気配。

おろしたばかりのデニムシャツに似た
水色の風が視界をさえぎるような
かりそめの寒さで満たされた夜も
目を閉じて想えばきっと怖くない

 にわか雨激しく地面を打ち付けて
 呟いたThank you届かなくても
 今まででいちばんきっとあたたかい
 そんな冬の気配。

いつか全ての想いの向こう側から
本当の寒さは訪れるのだろう
視線をそらしたまま何度も考えている
そして冬の気配。

 スピードをあげた自転車から見た
 当たり前になりつつあるsituation
 視線をそらしたまま何度も考えている
 そして冬の気配。


 

 
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