鑑賞日記#3 食べ物系映画の終焉

かもめ食堂 [DVD]」「めがね(3枚組) [DVD]」など、もはや邦画の1ジャンルになってしまった、非日常的空間でひたすら美味しそうな食事を食べる系(私は個人的に「かもめがね系」と呼んでいます)の映画ですが、2009年の夏、その「かもめがね系」に起こった異変に気づいたでしょうか。

まず、すぐに思い浮かぶのは「プール [DVD]」の上映です。
かもめがねと監督は違いますが、キャスト・スタッフはだいたい同じです。CMで流れている主題歌もいかにも時間の流れがゆっくりで、良い感じ。当然、いつものあの路線を期待して見に行ったわけです。
この「プール」の出来が、正直イマイチだったんです。「かもめ食堂」「めがね」のファンだった私としては、非常にがっかりしました。
何も余計なことは語らず、「間」と映像だけで人の生き方を表現するのがかもめがね系の良いところだったのに。「プール」は残念ながら余計なことをこれでもかと語ってしまい、禁句であった「おいしい」という言葉さえ使ってしまいました。

そのかわり、かもめがね系のスピリットを正しく継承した映画が、ほぼ同時期に上映されていた「南極料理人 [DVD]」だったと思います。むさ苦しい男たちが、黙って南極の空を見上げ、黙って吹雪の中で仕事をし、黙って出てきた料理を食べる。誰もわざわざ「おいしい」なんて言わないけれど、湯気に曇るメガネや、その奥の笑顔だけで十分伝わってくる。言葉で語らず、空白で語るというこの精神は、まさに私たちのかもめがね系です!

……という私の興奮は、最後の最後に裏切られました。
南極料理人は、最後の1分間で、明確にかもめがね系を否定してしまったのです。
最後に発せられた一言で、非日常より日常を、フードコーディネーターの監修した美しい盛りつけの食事よりもファストフードを、空気のコミュニケーションよりも言葉のコミュニケーションを、選択してしまっているのです。

私は、これがかもめがね系への最終的な答えだと感じました。
今思えば、「かもめ食堂」「めがね」が完璧すぎたのです。これらが未熟であったのなら、何年もかけてジャンルとして成熟していく様子をわくわくしなかが見守っていられただろうと思いますが、これらを超える作品が出てくる可能性がない以上、終わらせるしかなかったのではないでしょうか。

そして死者にむち打つように最近上映が始まった「食堂かたつむり スタンダード・エディション [DVD]」。
もうやめて! 食べ物系映画のライフは0よ!
 


 

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