プリズムコート

                                   Playstation  富士通パソコンシステムズ  5,800円


   古いソフトです。発売は1998年になります。他のコーナーでもちらっと書きましたが、
  お薦めの育成SLGです。女子校のバレー部コーチとしてチームを優勝に導く、という内容
  です。では簡単に設定とストーリーを書きましょう。

   プレイヤーは元バレー選手。全日本代表にまで選ばれながら、試合中のケガが元で引退を余儀
  なくされました。その後、バレーへの思い尽きぬまま、朝霧高校という女子校教師として勤務して
  います。そんな中、同僚の新任教師である中西先生(これが可愛い!)に、今度の日曜日に付き合
  って欲しいところがあると誘われます。すわデートか、と期待する主人公であったが、行った先は
  市民体育館。そう、朝霧高校バレー部も出場しているバレー大会の会場だったのです。

   中西先生から、コーチになってくれるかも知れない先生が観戦に来ると知らされていた女の子たち
  は、張り切って試合に臨みますが、チームワークの無さも相まって試合中にケンカをやりだす子が
  いる始末。これでは勝てるはずもなく、3−15で惨敗してしまいます。
   プレイヤーは、各個人はいいものを持っているが活かされていない、チームワークもよくないと
  見抜いて、それを中西先生に話します。すかさず中西先生はプレイヤーにコーチ就任を要請しますが、
  プレイヤーは断ってしまいます。が、アパートに戻り、考えた末にコーチを引き受けることにしま
  した。プレイヤーは彼女たちに力をつけさせ、全国大会優勝へ導くことができるのか?
   無論、恋愛SLGの要素も入っていますので、そっち方面でも楽しめます。

   …とまあ、こんな感じです。ありきたりっちゃありきたりですけどね。
  システムの説明に入ります。ゲーム期間は2年間で、一週間単位で進行します。毎週月曜日にその
  週に特訓する(つまりプレイヤーが直接指導する)女の子を選び練習メニューを決定します。この時、
  他の5人は自発的に練習内容を決定します。基本的に月曜から土曜日までは練習、日曜日は街に出て
  彼女たちとコミュニケーションを図ったり、練習試合を行なったりします。大会は3月と8月に行な
  われます。

   このゲームで唯一、敷居が高いところが、多少なりともバレーボールの知識が必要である、
  ということです。というのも、ポジションや配置、練習内容を決めるにしても、その意味がわから
  ないと先に進みようがない、ということがあるのです。実際、バレー経験者にプレイさせてみま
  したが、「思ったより本格的だな」という感想をもらったくらいです。でもまあ、そんなに意識
  することもないでしょう。何せ、バレーなんかまったく知らなかった私でもプレイできたのです
  から。育成要素でも恋愛要素でも、さほど難しくありませんし複雑とも思えませんので、設定資料
  という意味以外では、校略本のお世話になる必要もないでしょう。
   でも、あまり本格的なものだと思わないでくださいね。だって必殺技とか出てくるんですから。

   このゲームのもっとも優れているところは、練習によって伸びた能力が素直に試合に出る
  という点です。具体的に言うと、最初のうちは相手からのボールをレシーブしても、まともに返せ
  ません。コートの後ろでレシーブすると、ネット付近にボールを返してしまって、誰も受けられない
  とか、まともに返しても追いつけないとか、そんなことばかりです。サーブは入らない、アタック
  してもアウト、ブロックしようにも届かない…。さらに、チームワークが悪いと、各員の能力が高く
  ても、連携プレーでは失敗してしまいます(芸が細かい!)。
   最初はボールが来ても、動けもしなかった子たちが、ダッシュを重ね、レシーブ練習を繰り返す
  ことにより、スタートを切れるようになり、徐々にボールを追いかけるようになります。そして
  ボールにさわれるようになり、最後には見事にレシーブ出来るようになるのです。サーブもアタック
  も同様です。この辺の演出が実に細やかなのです。今までの育成系SLGの中でも出色だと思います。
   手塩に掛けた女の子たちが、だんだんとうまくなる、成長する過程を見るのは感動ものですよ。

   ではもう一方のウリである、ストーリーの方も。まずは登場キャラを紹介。

 京極ナツキ(声:長沢美樹)
   ケタはずれのノーコンながら、抜群のパワーとジャンプ力を持つ天性のアタッカー。バレーボール
  に青春をかける熱血バレー少女。チームリーダーとしてみんなを引っ張る中心人物。
   彼女のシナリオは、ライバルであるバレー天才少女・鮎川こずえとの戦いを通じて成長していく、
  というスポ魂ものの王道パターンです。

 辻 真琴(声:冬馬由美)
   チーム一の長身で、見た目はバレー選手っぽいが実はまったくの素人。力もジャンプ力もあるので
  うまく育てればナツキと並ぶ主砲に成長してくれる。ただ、バレーが好きで入部しているわけでも
  ないので、今ひとつ真剣味にかける。
   真琴のシナリオは、プレイヤーに対する自分の恋心に気づいた彼女が、告白しようとすると邪魔が
  入る、というドタバタのラブコメ系ストーリー。ボーイッシュで不器用な子だけに、それがよく似合
  っております。

 高村 香純(声:水沢 潤)
   バレー初心者だが、明晰な頭脳を持ち、名レシーバーに育つ可能性が高い。お嬢様系キャラで、真
  面目で素直な優等生なのだが、反面かなりの頑固者。我が強く、チームメイトを衝突することも珍しく
  ない。プレイヤーに対しても同様で、職員室でプレイヤーにものを投げつけるという行動をとったり
  する。バイオリン奏者としても有能で、その自分の夢とバレーとの狭間で悩む一面もある。
   彼女のお話は、ズバリ友情がテーマの学園ドラマ風。

 岡嶋あかり(声:荒木香恵)
   中学校で高跳びをやっていたため、小さいながらも驚異的なジャンプ力を持つ、有力なアタッカー
  候補。そうは見えないが、実はチームで一番頭がいい。とはいえ、パワーはまったくなく、動きも鈍い。
  能力的に極端なものが多いので、育てるのはいちばん大変か。
   あかりの話も、ナツキと同じく熱血スポ魂ものであるが、彼女自身が大のアニメ、特撮ファンである
  せいか、そっち方面のパロディが目白押しです。

 笹沢早苗(声:丹下桜)
   数少ないバレー経験者。学校は別だったが、ナツキとは中学時代からの顔見知り。中学の時から
  セッター一筋で、テクニックとトスワークでチームのまとめ役。あまり丈夫ではないので、きつい練習
  には耐えられないため、その辺の気遣いが肝心。万事控えめで気だても良く、気配りの出来る子。
   早苗のストーリーは予想通りのもので、病弱な体をおして試合に臨むという、これまたスポ魂もの。
  死病をおして戦う彼女をプレイヤーは救えるのか?

 宗田理央(声:久川 綾)
   極度に無口で内に籠もり、おまけに練習もサボるというチームの問題児。しかしながら実力的には
  チームで一番、何をやらせてもそつなくこなすオールラウンドプレイヤー。
  冷静で感情の変化が少ない上に、なかなか心の内を明かしてくれないので、親しくなるのは至難の業。
  無論、彼女がそうなったには相応の理由がある。
   彼女のお話は、その過去を克服し、チームが一体となっていく過程を描く青春ものである。

   メイン(攻略可能)はこんなところ。さらにライバルたちもいます。あかり以外のキャラには、それ
  ぞれライバルが存在し、彼女たちも微妙にストーリーに絡んできます。

   育成SLG部と恋愛SLG部のバランスが絶妙で、双方が邪魔しあうどころか補い合っているのは
  見事の一言。ゲームですので、必殺技のスパイクやサーブもありますが、それらはきちんと(?)打ち
  破られますし、また、それを乗り越えて新たな技を開発していきます。本格的なスポーツSLGなの
  ですが、このように適度なアニメ的設定もあって、どちらのファンも楽しめる作りになっています。
   恋愛部での女の子の攻略に関しては、あまり八方美人にならず、狙った子をひとりに絞ってプレイ
  すれば、さほど難しくはありません。もちろん、フラグの立つイベントや条件もありますが、普通に
  プレイしていれば、まず問題ないレベルです。注意点としては、いくらひとりに絞り込むとはいえ、
  あまりその子ばかり贔屓して特訓すると、他の女の子のプレイヤーに対する友好度と、その子の友好度
  が下がってしまいますので、極端なことはしちゃダメ。

   恐らく、バレーボールを題材にしたSLGソフトは、これしかないと思います。どちらかと言えば
  地味な題材にも関わらず、ここまで面白いゲームにした開発者に脱帽です。ドキドキプリティリーグ
  のレビューを書いた時にも触れましたが、両者を比較すると、このソフトの優れた点がいくつも出て
  きます。
   まず、題材のスポーツSLGとしてよく出来ていること。ドキプリは、野球を消化していません。
  次に恋愛面。このソフト、補欠がいません。ゆえに6名全員がレギュラーです。数が少なくて寂しい
  かも知れませんが、7名以上いたら誰を補欠にするのかで苦しみます。一方、ドキプリでは9名の
  レギュラーの他に補欠が2名もいて、計11名。ちょっと多すぎて散漫としていました。数を絞った
  プリズムコートの方が成功しています。

   このソフト、あまりヒットはしなかったようですが、コアなファンが多いらしく、中古屋でもあま
  り見かけません。もしあったら即ゲットです。この手のゲームの好きな人なら絶対のお薦め。高校
  野球道なんかが好きな人なら、まずハマるでしょうね。
   開発元はヒューマン。このソフトハウス、このほかにも御神楽少女探偵団シリーズなど、良質の
  ゲームを作ってくれていたのですが…。