はじめての野球部
理奈 「♪やっきゅうぶにはいろ〜♪ってCMはよかったよね」
一平 「うんそうだな。続編の「さ、野球だ野球だ」も好きだな」
理奈 「んで、今回はそういう人からの質問。いい? あ、掲示板で見る人だな、えーと、
篤志くんからで、「現在中3で吹奏楽やってるんですが、高校に、軟式野球部
ができるという噂(現在学校からは認められていないがサークルみたいなのが
出来ているらしいです)があるので、肉体的にそこまできつくないようなクラブ
だったら高校になったら1度もやったことが無い野球をやってみたいんですが
やはり高校からでは遅いでしょうか?」っていうの。どうなんだろね」
一平 「はあはあ、なるほど。そうだよね、なにも野球に限ったことじゃないが、今までやった
ことのないスポーツを本格的にやろうとしてクラブに入るのって、なかなか敷居が高い
よね。うんうん、気持ちはわかるぞ」
理奈 「篤志くんのレベルとしては、「実際ルールなどもよくわかりませんし・・・
最近頑張って野球見てます。それと、かなり昔の話ですが小4の時地域の
子供会のソフトボールをやってたけいけんがあります。」みたいな感じ。
これだとちょっと苦しいんじゃない?」
一平 「いや、そんなことはないさ。ふつう、そんなもんじゃないか? まあ私らくらいの年齢
だと、ガキの頃はたいてい野球をやったもんだが、今はそんなこともないだろう。
とすれば、特に野球に興味を持っていない限り、篤志君くらいが普通じゃないか?」
理奈 「でも高校で野球やるにはつらいわよ、それじゃ」
一平 「山際淳司さんの野球エッセイで「野球雲の見える日」というのがある。この中にな、
<ゲンさんの甲子園>という作品があるんだ。これはな、滋賀県にある甲西高校の
野球部の話だ」
理奈 「……」
一平 「ゲンさんこと奥村源太郎先生は、新設の甲西高校に赴任し、そこで硬式野球部を
作った。そしてわずか3年後にはなんと甲子園に出場するチームを作り上げてしまっ
たんだな」
理奈 「……」
一平 「つまり一期生をいきなり甲子園へ連れてちゃったんだ。もちろん甲西は野球の名門
でも何でもないから、中学で鳴らした選手が入部してくる、なんてこともなかった」
理奈 「……」
一平 「…なんだその顔は(^^;)。何で黙っている?」
理奈 「また都合よく資料が出てくんのね。ヤラセ質問?」
一平 「違うと言っとろうが(^^;)。篤志君にも失礼だぞ、偶然だ偶然」
理奈 「まあ、いいけど。で、その甲西高校がどうしたの」
一平 「さっきも言ったが、新設校だ。経験者ばかりが入部してくるわけじゃない。中には
高校で初めて野球をやる者も何人もいたそうだ」
理奈 「あ、つまり篤志くんと同じか」
一平 「そうだ。しかも硬式だからな。にも関わらず、3年で甲子園だ。ナインの中にも素人
出身はいた。つまり、別に高校から始めたからと言って、特に問題があるわけでは
ないんだ。だいたい、学校のクラブ活動なんて、そもそもそういうもんだろ?」
理奈 「でもやってた人と比べたら差はあるでしょ?」
一平 「無論だ。だが、逆に言えば経験の差だけだ。そんなものは入部してから、いくら
でも挽回できる。問題はない」
理奈 「でも監督とかさ、指導者の人にとっては面倒くさがったりして。「それくらいわから
んのか」なんて」
一平 「それは怠慢だ。指導者の風上にも置けないね。技術を教えるだけが能じゃないだ
ろう。もしそんな指導者にあたってしまったら、そんな部は辞めた方が良い」
理奈 「そうだね…」
一平 「だから、結論としては高校から始めても遅くはない。もちろん、もともとやってた人と
比べれなハンデはある。それを取り返すくらいの練習は必要になるけどね。野球が
好きなら頑張って欲しいな」
理奈 「でも、いろいろ心配なんじゃない、篤志くんとしては。「一般的に、高校の
軟式野球部といいますと、どんな練習を行ってるのか知りたいです」とか言って
るし」
一平 「う〜〜ん、一般的にと言われても困るなあ。これはもうピンキリだからね。それこそ、
朝の5時から朝練やって、昼休みも練習、放課後から夜8時くらいまで練習、の、
それこそ練習漬けの野球部もあるだろう。あるいは、「今日は暑いから練習中止」
なんていう、気の抜けた野球部だってある。軟式も硬式も同じだよ、それは」
理奈 「メニューは?」
一平 「それはどの部でも同じだよ。軟式用の練習、硬式独特の練習というものはないだ
ろう。まあ、その部独自の練習法というのはあるかも知れないけど。
おおまかに書けば、
1.ウォームアップで軽くランニング。
2.体が冷えないうちに柔軟体操
3.キャッチボール
4.シートノックや連携、シート打撃
5.投手はピッチング、野手はノック、あるいは打撃練習
6.クールダウンでキャッチボールにランニング
こんなとこかな。もちろん、他にもいろんなパターンがあるだろう」
理奈 「篤志くんは、あんまりきつい練習だったらついていけないかもって心配してるんじゃ
ない?」
一平 「その心配はもっともだ。まして、今まで運動部に属したことがないのなら当然だな。
だがまあ、それはあまり心配しないでいい。なぜなら、そのくらいのことは指導者が
ちゃんと気を遣ってくれるからだ。個人差くらいは見てくれるよ、普通。もちろん篤志
君自身も、限界に挑戦する気持ちで練習する覚悟は必要だけどね。
メールによると、愛好会から正式な部に移行されるかもしれないとのことだから、
顧問の先生も部員(先輩)たちも張り切っているだろうな。だとすると、けっこう練習
はきついかも知れない。でも、それは誰でも通る道だからなあ」
理奈 「練習時間はどうだろ? さっきカントクが言ったような気違○じみたスケジュールだ
ったら、とてもついていけないんじゃないの?」
一平 「理奈さん、理奈さん、その「気○い」というのは差別用語になっておりますんで、使わ
ないよう心がけてください(^^;)。でまあ、練習時間だけど、確かにさっき言ったよう
なのはめちゃくちゃだね。だけど、残念ながらそういう部もあるのは事実だ。おまけに
年中無休。コンビニじゃないんだから、たまには休まないと保たないよ。
例として、その昔、東京の名門校として鳴らした早稲田実業という高校がある。
ここには名指導者として名高い和田監督が率いていたんだ。かの元ヤクルトの荒木も
和田さんのもとで育った。この和田さん、方針として1日2時間しか練習させなかった」
理奈 「2時間は少ないね」
一平 「うん。3時ころ授業が終わって2時間部活。夕方5時には帰宅ってことだね。でもな
あ、私は思うんだが、これくらいでいいんじゃないか? 人間、そうは集中力は続かな
いし、学生時代は野球以外にだってしなくちゃならないことはいくらでもあるだろう。
野球中心なのはかまわないが、野球「しか」やらないのは問題だよ」
理奈 「でも、そんなんじゃ強くなれないじゃん」
一平 「そう思うか? でも和田監督の早実は甲子園の常連だった。なぜか? 選手の自主
性に任せたんだな。練習2時間と言っても、それは合同練習が2時間という意味だか
らな。あと個人的にできる練習をするなと言ってるわけじゃない。スタミナの足りない
選手はランニングをするだろうし、投手はシャドウ、打者は素振りだって出来る。
あと、たぶん和田さんは「野球ばかりが学生生活じゃない」ということも言いたかった
んじゃないかな。野球しかしなかった高校時代というのを過ごさせたくはなかったと
思うんだ」
理奈 「ふぅん。じゃあ最後に、篤志くんに何かアドバイスある?」
一平 「そうだな、今は野球に興味を持ち始めた時期みたいだから、もっともっと野球を見よう。
好きになろう。プレイしよう。TV観戦でもいい。極端なことを言えば野球ゲームだって
いいんだ。とにかく野球に触れよう。野球関係の本を読むのも良い。
未経験だし新入部員だから、最初は球拾いになるだろう。でも、これも大事なんだ。
とにかくボールに触れるからね。ゴロを捕球する基本も身についてくる。
あとは自分に足りないものを補う努力をしよう。スタミナが足りないと思ったら、自主的
にランニングしてみる。打てなかったら素振りもする。壁にボールを当てて捕球の練習
をする。友達をみつけてトス・バッティングをやるのも効果的だ。これなら打力と守備力
の双方が身に付く。
あとは根気だ。継続は力なり。続けることにこそ意味がある、と考えよう。
篤志くんは中学で吹奏楽をやってるそうだから心配はないt思うが、野球は団体競技だ
ということも忘れずにいよう。苦しいことも多いけど、そればかりじゃない。野球をやって
よかったと思うことだってきっとある」
理奈 「頑張ってね、篤志くん」