アッパー・スイング
理奈 「(嫌みタラタラに)さて2週間ぶりの更新ね。さっそく行こうかな。
「ぼくはアッパースイングの方がボールが飛ぶと思うのですけど、コーチは
ダウンスイングしろといいます。どうしてアッパーはいけないのですか」
だって。武内茂利さんから」
一平 「悪かったよ(^^;)。なるべく週一で更新するからカンベンしてよ」
理奈 「ホントだな?」
一平 「努力します(^^;)。
で、茂利君の質問だけど。武内君が少年野球の選手なのか高校生なのかわから
ないのでちょっと困るけど」
理奈 「なんで?」
一平 「軟式か硬式かわかんないから」
理奈 「何か差があんの?」
一平 「うん。まあいいや。でまあ、何が何でもアッパーは悪いかというと、そんなこともな
いんだよ。茂利君の言う通り、アッパーの方が大飛球は出やすいな」
理奈 「じゃ、なんで茂利君のコーチはアッパーはダメだなんて言うのかな」
一平 「それならまず、アッパーとダウンの違いをあげようか。
アッパーってのは力がいるんだよ。対してダウンはアッパーよりはパワーの必要
はない」
理奈 「へー。なんで?」
一平 「よく考えてみろ。バットを振り上げるのと打ち下ろすのはどっちがラクで、どっちが
力が入ると思う?」
理奈 「あ、そっかー。振り下ろす方が力が入るよね」
一平 「な、そうだろ? これは何も野球に限らない。足にしても、ボールを蹴り上げるの
よりは踏みつける方が力が入るよね。手だってさ、ボールを上へ投げ上げるのよ
りはさ、下へ投げつける方が力が入るじゃん。人間の身体ってのは、下から上へ
よりも、上から下への方が力が入るように出来てるんだ」
理奈 「そりゃそうか」
一平 「バット・スイングも同じだよ。振り上げる形になるアッパーよりはダウンの方が力
が入りやすいんだね」
理奈 「それでコーチもダウンを勧めるんだね」
一平 「そうだね。まだ身体的に成長しきっていない子供の場合なんかは、やっぱりダウン
の方がいいだろうね。それと、コーチがダウンを勧める理由はもうひとつあるんじゃ
ないかな」
理奈 「それは?」
一平 「アッパーで打てばフライが上がりやすいよな。じゃあダウン・スイングで打ったら
どういう打球が多くなるかな?」
理奈 「ゴロが多くなるの?」
一平 「そうだ。で、ここで考えて欲しいのは、攻撃側にとってゴロとフライはどっちかトクか
ということだ」
理奈 「ゴロなの?」
一平 「もちろんそうだ。フライは野手が捕球すればいきなりアウトがとれる。だけどゴロは
どうだ? 転がってくる打球を捕球し、それを一塁(もしくは他の塁)へ正確に送球
し、それをベースカバーの野手がしっかり捕球し、なおかつそれら一連のプレーが
打者走者が塁の到達する前に完了しなければアウトにならない。どっちが簡単か
考えるまでもないだろう」
理奈 「う〜〜ん」
一平 「つまり、ゴロというのはフライに比べ、アウトをとるのがかなり難しいってことだ。
だから、フライを打つよりはゴロで転がした方が、相手守備陣のエラーを誘いやす
いってことなんだな。だから指導者はゴロを打つように勧める。当然、アッパー・ス
イングよりダウン・スイングを勧めるというわけだ」
理奈 「なるほどねー。でも、それってチームの勝利のためにはなるけどさ、選手個人の
ためになるのかな? ゴロじゃなくて大きな打球を打ちたい子だっていると思うん
だけどな」
一平 「おー、核心を突いてきたね。でもね、結果的には選手のためにもなるんだよ。
軟式をやってる場合はまだいい。けどな、硬球を扱うようになってきたら、これは
もう、よほどパワーがなければ、アッパーじゃ対応できないんだ」
理奈 「あ、こないだ話したことだね。硬球は重いからでしょ?」
一平 「そうそう。重い硬球をまともに打ち返すにはかなり力がいる。大リーグの選手で
も、アッパーで打ってる選手はほとんどいないと思うよ。みんなダウン・スイング
だ。なぜか? 硬球をアッパーで打って、まともな打球を飛ばすには尋常でない
パワーが必要だからだ」
理奈 「だからダウンなのね」
一平 「そうだね。ダウン・スイングなら、少々パワー不足でも硬球に負けないスイング
が出来る。結果、いい当たりを打つことも可能だというわけなんだ。だから、軟式
時代から指導者がダウン・スイングを強要するのも、その選手の将来を
考えてのことなんだよ。
例えば、この子はなかなかパワーがあるから、軟式ならアッパーでもいけるだろ
う、とコーチが判断してアッパーの練習をさせたとする。その選手は期待通り、
軟式では大飛球を打ちまくり、ホームランや長打を連発したとしよう。でもな、その
子が高校へ行って硬式を経験したらどうなる? 途端に打球は飛ばなくなる。
外野を越える打球どころか、内野の頭を越すことだって難しいだろう。といって、
少年野球時代からアッパーで振るクセをつけてしまったから、いきなりダウンに
しようったって、これは難しいよ。出来なくはないけど、かなりの時間がかかって
しまう」
理奈 「そっか、そこまで考えてるんだね」
一平 「そうだろうな。その選手が将来も野球を続けることを考えれば、しっかりした
ダウン・スイングを身につけさせなければならないってことだ」
理奈 「うん、よくわかった。そういうわけだよ茂利君。コーチの言うことは謙虚に聞こう
ね。
ところでさカントク、さっきの話だと、パワーがあればアッパーの方が打球が飛
ぶのは確かなんでしょ。あ、軟球のお話だけど」
一平 「うん、それは間違いない。まあ、L球みたいな重いタマはちょっとつらいだろう
けど、C球なんかは気持ちいいくらい飛ぶんじゃないかな」
理奈 「それがわかっててアッパーできないっていうのも残念だなあ」
一平 「そうだなあ。じゃ話を限定しよう。草野球レベルの話ね。選手も前途有望な子供
じゃなくて、もういい加減オジサンの場合。将来、プロ野球選手になるなどという
戯けた夢を持ってない人のこと」
理奈 「なんかひどい言い方」
一平 「だから例えだよ(^^;)。でまあ、そういうケース(草野球)で、そういう選手(将
来、プロ野球選手を目指してないオジサン)で、自分には人並み以上のパワー
があると自他ともに認めているような人。そういう人は、軟式野球であればアッ
パーを勧めちゃうね、私」
理奈 「基本に反したこと言ってんじゃないの、あんた」
一平 「だから草だし、将来性のないオジサン選手(^^;)だから、少々の基本なんか
無視しか可なんだよ。さっきも言ったが、アッパーの方が飛球が飛ぶのは事実
なんだ。しかも将来、硬式をやる可能性はゼロで、パワーのある人なら、どんど
んアッパー・スイングをしよう」
理奈 「ホントなんかな」
一平 「ホントだってば(^^;)。草のグラウンドは狭いし、フェンスなんかないことも多い
だろ? だから外野の頭を越せばホームランになる可能性が高い。フェンス付き
のグラウンドだとしても、硬式じゃないんだから両翼90メートルなんてところで
やることは滅多にないだろう。ならスタンドインだって打てるぞ」
理奈 「でもゴロよりフライが多くなるんでしょ。アウトになりやすいじゃないの」
一平 「そうなんだけど、そこは草野球だ。対戦相手が、元本格派揃いというのであれ
ば通用しないけど、純草野球育ちなんて場合ならイケるよ。
ゴロよりフライは簡単にアウトになると言ったけど、そこは基本のなってない
草野球だ、内野にポカーンと高いフライが上がったら、これはヒットの確率が大
だ。誰でも捕球できる位置の高いフライというのは、案外と捕りにくいんだよ」
理奈 「ふーん」
一平 「でもまあ、草野球でも必勝法はゴロ打ちだけどね。それでも、太っていて力は
あるんだけど、ゴロを打っても一塁に間に合いそうもない鈍足打者なんてタイプ
は、アッパー・スイングを試みるのも有効だと思うよ」