ストライクゾーン
さて、前回に引き続いてスタジアムです。やっぱ、ナマで見てるといろんなことが起こる
よね〜。
理奈 「わー、三振だ〜。あ、またバッターが文句言ってる〜」
一平 「う〜〜ん、確かに今のボールはきわどかったなあ」
理奈 「でもさあ、あんなに速いボールや変化球を見分けて、ストライク、ボールを判断する
んだから、アンパイアも大変だよね」
一平 「そうだな。それが仕事だろって言われりゃその通りなんだけどな」
理奈 「ストライクって、ホームベースの上を通ればいいんでしょ?」
一平 「えらく大雑把だな(^^;)。高さだってあるだろ?」
理奈 「あ、そうか。じゃあさ、具体的にストライクゾーンてどういうの?」
一平 「うむ、またしても基本的な質問だが、良い質問だね。案外、知っているようで知らな
い人も多いだろうな」
理奈 「能書きはいいから早く教えてよ」
一平 「少しはいいカッコさせてくれよ(^^;)。じゃあ具体的に行こうか。まずコースだけどね、
さっき理奈が言った通り、ホームベース上をかすめることだ」
理奈 「ホラ、いいんじゃないの」
一平 「早とちりすんな。ホームベースにきちんとボールを並べると、ちょうど6個入るんだ
よ。ストライクってのはこの6個のエリアだと思うか?」
理奈 「当たり前じゃないの」
一平 「それが違うんだな。実際は、ホームベースの一角、どこでもいいから一角をかす
めればいいんだよ。だから実際には内角と外角にボール1個分ずつ余計に、
つまりボール8個分がストライクゾーンだったんだな」
理奈 「え、じゃあほんのちょっとでもホームベースの上をかすればストライクなんだ」
一平 「そう。でも1963(昭和38)年に、この制度は改正されたよ」
理奈 「どして」
一平 「ゾーンの判定が難しかったんだな。実際に、ストライクゾーンぎりぎりのところに糸を
張ってそこにボールを投げさせてみたら、従来の判定はルールよりかなり甘いこと
がわかったんだ」
理奈 「どして、どして?」
一平 「甘かったということは、ホントならボールというタマをストライクにしていたってことだ
な。ホームベースにちょっとでもかすればストライクと言われても、その判断は非常に
難しかったということだろうね。だから、少々怪しくてもストライクに取っていた、という
ことだと思うよ」
理奈 「へー。じゃ改正後はどうなったの?」
一平 「ベースの一角を1/3くらい入ったらストライクってことになったんだな。前のルール
のように、ちょっとでもかすったらストライクということで甘めに判定すると、かなりボー
ルでもストライクになっちゃうだろ?」
理奈 「そうなるね」
一平 「だから、63年の改正のように、1/3くらいかすめればストライクだよ、と言ってもらえ
ば、少々甘めでもぎりぎりのゾーンがストライクくらいで済むんじゃないかって発想だ
ろうね」
理奈 「でもさ、さっきから甘め甘めって言ってるけど、ストライクゾーンて甘くとるもんな
の?」
一平 「はははは、そうだね。じゃあ、仮に厳しくしまくるとしたらどうなると思う?」
理奈 「・・・・・・ボールばっかになっちゃうってこと?」
一平 「ばかりというのは極端だけどね、ボール判定が多くなるのは確かだろうな。その結
果、どうなると思う?」
理奈 「フォアボールが増えちゃうのか」
一平 「その通り。興ざめだよね。時間もかかっちゃうしな」
理奈 「ふんふん。ゾーンの幅はわかった気がする。じゃあ高さはどうなの?」
一平 「ルールブックに書いてあることを言うぞ。まず高めだが、「肩の上部と、ユニフォー
ムのズボンの上部(筆者註:ベルトのあたりです)との中間点に引いた直線」
だ」
理奈 「ひっじょーにわかりにくい!」
一平 「ごもっとも(^^;)。わかりやすく言うとだな、肩の上からベルトまでの長さのちょうど中
間線が高さの限界ということだ。具体的な位置で言うと、わきの下のちょっと下あ
たりだ。ちょうど乳首のところくらいじゃないかな」
理奈 「今アタシの胸見たでしょー、この変態! なにが乳首よ!」
一平 「悪かった悪かった、だから大声で乳首なんて言うな(^^;)。気を取り直して、低めの
方を説明しよう。こっちは簡単でひざ頭の上部だ」
理奈 「んでも、わきの下だとかひざ頭の上だとかって、判断すんの難しいんじゃないの?
ユニフォーム着てる上から見なきゃなんないのに」
一平 「そうだな。だからその辺は審判員の個人差は当然出るよね。さっきの話でも、ボ
ール1/3でもストライクにする人もいれば、1/2くらいにならなきゃストライクにしない人
もいる。極端な話、同じ投球の判定でもA審判はボール1/2と見たけど、B審判は1/3
に見えたってということもある。しかも、それらはいずれもルール違反ではないんだか
らね」
理奈 「その辺を見極めないとストライクゾーンに不満が出るのはムリないね」
一平 「そうだな。その上、けっこう改正があってストライクゾーンそのものが変わったり
することも珍しくないんだ」
理奈 「ええ、そうなの? ストライクゾーンてそんなにちょいちょい変わるわけ?」
一平 「いやまあ、そうたびたびってわけじゃないんだけどね。さっきも言ったように63年に
幅の改正があっただろ? ああいう風に、わかりにくいところや状況の変化などで改
正はあるんだな」
理奈 「他にはあったの?」
一平 「1997年にあった。高低にボール1個分ずつストライクゾーンを広げたんだ」
理奈 「大変化じゃないの」
一平 「だからプロでは選手も審判も大騒ぎしたんだよ。ただまあ、さっき言った1963年の
改正で高めをボール1個分甘くしてたから、実際には低めに1個分広げればよかっ
たんだ。ゴタゴタはしたけど、思ったよりはまともに機能したようだね」
理奈 「ボール1個分じゃ大したことなかったのかな」
一平 「そんなわけないよ。低めにボール1個分もストライクゾーンが増えたんだから、圧倒
的に投手有利だよ」
理奈 「じゃあどうしてそんな改正があったの?」
一平 「今までが、打者有利過ぎたってことはあるな。それと、大リーグに合わせようとして
る面もあるだろう。でも、これで打者がそんなに不利になったとも思わないぞ。だって
改正前と比べても、打撃成績はそんなに下がってないからな」
理奈 「それだけストライクゾーンはしっかり決まってるのに、なぜああいう風に抗議が出る
んだろね」
一平 「さっきも言ったけど、審判員の個人差というのは当然あるよね。高めに甘い人もい
れば低めに甘い人もいる。外角に厳しい人もいるだろうし、インサイドに辛い人もいる
わけだ。残念ながら、審判員のレベルがあまり高くないということも否定できない
ね」
理奈 「前にちょっと聞いたことあんだけど、アメリカと日本じゃゾーンが違うってホント?」
一平 「ああ、そうだね。アメリカの方が高めに厳しくて低めに甘い」
理奈 「それは?」
一平 「高めは頭に近いだろ? メジャーじゃ死球で死人が出てるくらいで、頭部付近への
投球にはとても敏感なんだよ。だから高めを辛くしたんだね。それと、ストライクゾー
ンなんて、けっこう組織によって違うんだよ」
理奈 「だってルールブックには・・・」
一平 「ああ、もちろんそうなんだけども、やっぱり地域事情だとかいろいろあるんだよ。日
本だってプロとアマではゾーンが違ってたんだ。1989年に改正があってようやく同
じになったくらいさ。アメリカでも、ナショナル・リーグは低めに甘く、アメリカン・リーグ
は高めに甘い」
理奈 「へー」
一平 「他になにかあるか?」
理奈 「うーん、そだな・・・。あ、じゃあさ、極端に構えの低い選手は、高低がせまくなる
の?」
一平 「お、なかなか面白いところに気づいたな。基本的にはそうだね。だから、突っ立って
構える選手と、クラウチング・スタイル(屈み込んだようなスタイル)の選手では、身長
が同じでも高低のゾーンが違うことになる」
理奈 「あれ、それじゃ、打つ瞬間に思いっきりしゃがんじゃったりしたらどうなるの?」
一平 「あはは、そりゃダメさ。通常に構えた状態でのストライクゾーンが基本になるんだ
から。そんなことやったら、審判は判定しにくいから少々甘くてもストライクにとっちゃ
うだろうね」
理奈 「そうだよね。でもさあ、そう考えるとおっきい選手よりちっちゃい選手の方が有利か
も」
一平 「確かに小柄な打者の方がストライクゾーンは狭くなるよな。事実、小柄な打者には
投げにくい、と証言するピッチャーもかなりいるんだ。大投手だった国鉄スワローズ
の金田正一投手は190センチ近い長身だったんだけど、160センチそこそこの阪
神・吉田義男選手が大の苦手だったんだよ。こういうのも面白いね」
理奈 「また古いプロ野球の話はじめたよ、このオヤジ」