人工芝


理奈 「こーれは、と。んと、掲示板からの質問だね。R&Fさんから。人工芝の功罪
    ついてだね」
一平 「ん。R&Fさんの質問がなくても、いつかはやろうと思ってたテーマだな」
理奈 「忘れてたのよね」
一平 「はい、そうですね(^^;)」
理奈 「今は人工芝ばっかなんじゃないの?」
一平 「そうねぇ、ドームも増えたしねぇ」
理奈 「あれって、選手の評判はよくないって話だけど…」
一平 「まあね。体にムリが来るからなあ」
理奈 「よく、選手寿命が短くなるとか言うよね。あれ、なんで?」
一平 「うん、まあ人工芝でプレーを続けると腰に来るんだよ。あるいは膝とか踵とかの
    間接部」
理奈 「ふぅん。なんで?」
一平 「人工芝そのものは柔らかい素材なんだけどね、その下に敷いてあるのは石っころ
    だからなあ」
理奈 「あ、そうなの?」
一平 「ああ。いっちばん最初はコンクリだったって話も聞いたな。今はほとんどがアスコン
    や砕石、つまり砕いた岩石だろうな。その上にナイロン製の人工芝を布いてるような
    もんだ」
理奈 「あーー、わかった。いくらナイロンが布いてあるっていっても、そのすぐ下に固い下地
    があるのがよくないのか」
一平 「まあそうだね。コンクリの上で激しいスポーツをやればどうなるか。激しくなくてもいい
    や、舗装道路の上で毎日縄跳びを何時間もやってたら、これは脚や腰に疲労がたまっ
    て痛めることになるだろ? それと同じね。これが地面、つまり土のグラウンドや芝生
    なら、飛んだり跳ねたりの衝撃は地面が吸収してくれる。この差が大きいってことだ」
理奈 「それじゃ選手は困るね」
一平 「そう思うよ。だから選手会は人工芝球場には反対だし、メジャーではどんどん自然芝
    に回帰しているわけだ」
理奈 「他にはある? 良くないのって」
一平 「思い切ったプレーが出来ないんだな。人工芝ってのは、さっきも言ったがナイロン製
    だ。
     例えば、ショートが三遊間の深いところでゴロを抑えて思い切り踏ん張り、一塁へ
    送球する。ショートの見せ場だな。こういうプレーをやりづらくなるんだ」
理奈 「なして?」
一平 「思い切り踏ん張るなんてことは怖くて出来ないのさ。踏ん張って一塁へ向き直るため
    には、スパイクで思い切りグラウンドを踏みつけて捻る必要がある。でもな、考えても
    みろ、厚いナイロン製の絨毯を歯のついたスパイクを履いたまま足首を捻ったらどうな
    る?」
理奈 「あーー、人工芝、破けちゃうかな」
一平 「無論、その可能性もある。が、それで済めばまだマシさ。破けなかった場合はどうな
    るだろう。当然のようにスパイクを履いた足首に、その衝撃は返ってくることにある」
理奈 「…無事に済みそうにないね」
一平 「その通りさ。捻挫どころか複雑骨折しちまう可能性もある。だから怖くて出来ないん
    だよ。
     まだあるぞ。ナイロンの上を思い切り滑ったらお尻はどうなるかな?」
理奈 「…うやー、考えたくないねー。擦れて摩擦熱で火傷しちゃう?」
一平 「そ。外野手なんかが打球を追ってスライディングキャッチしようとして滑ったりすると、
    ユニフォームは摩擦や熱で破けるわ、ミミズ腫れになるような火傷はするわ、と、ロク
    なことはない」
理奈 「自然芝なら、それはない、と」
一平 「うん。汚れはするし、擦り剥け傷くらいは出来るだろうけどね」
理奈 「何もいいことないじゃない、人工芝なんて」
一平 「いや、だから理奈さん、問題発言はやめてくださいってば(^^;)。
    さっき言ったのは昔のことだよ。今ではそういう問題はだいぶ改善されてるんだよ。
    まあ完全になくなったわけではないがね。
     最初に言った衝撃の問題だが、当初は厚さ30ミリもなかった人工芝だが、今では
    ターフからアンツーカーまで含めて60ミリを越えているものもある。これでだいぶ衝撃
    は吸収してくれるはずだ。無論、天然芝グラウンドにはかなわないがね。
     捻りの問題も、パイルの密度や長さを調節することで、かなり防げることがわかって
    きたしね。それとスパイクだ。今はイボスパイクが主流だが、これは人工芝対応が始ま
    りだ。人工芝で金属歯のスパイクなんかでプレーしたらタダじゃ済まないからね。
     あと火傷の問題。ナイロンでなく、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維で形成し
    ているものもある。しかも表面摩擦を少なくするためにオイルベースでコーティングして
    るんだな。滑りがよくなって火傷の心配も減った」
理奈 「じゃ人工芝でいいじゃない」
一平 「コロコロ意見が変わりますね(^^;)。それでも天然芝よりは落ちるんだよ、当たり前
    だけどね。だいぶ改善はされているけど、それでもいちばんの問題は選手の体への
    負担だね。これはなかなかうまくいかない」
理奈 「選手の体に悪いってのがわかってるのに、なんで人工芝のグラウンドばかり出来る
    の?」
一平 「有り体に言えば管理の問題だよ。つまり人工芝ってのは天然芝とは比較にならな
    いくらい管理しやすい、維持費がかからないんだよ。しかも完全ドーム球場では天然
    芝は事実上ムリだ」
理奈 「具体的にはどういうの?」
一平 「まず水はけが抜群だ。天然芝だと、当たり前だが下は土の地面だな。水を吸って
    はくれるが遅いよな。限界もある。だけど人工芝だと、透水面を通して、下の砕石に
    至る。ここに排水パイプを入れておけば、どんどん雨水を吸ってくれるってわけだ。
     次にボールのバウンド。人工芝はイレギュラーがないってのは知ってるな?」
理奈 「うん」
一平 「まあ正確には、たまにはあるんだけどね。人工芝とアンツーカーの境目なんかに
    落ちるとイレギュラーするんだけど。まあいいや。地面と違ってなめらかだから、おか
    しなバウンドはかなり減る。逆に球足がかなり速くなってしまう、というのもあるんだけ
    ど、これも改善されつつあるようだね」
理奈 「あとは値段が安いのかな」
一平 「そうだな。まあ導入にはかなりかかるけどね。でも、その後の管理費が段違いなんだ
    よ。天然芝のように、毎年気を使って種を蒔いたり移植したりする必要がない。常に
    きれいなグリーンを保つことができる。ベテランのキーパーを必要としないんだ。人数
    も少なくていい。人件費がだいぶ浮くな」
理奈 「でもさあ、それってみんな経営者にとって良いってことで、選手たちにはあんまり関係
    ないじゃん」
一平 「そうなんだよ。だから非難されてるんだ。選手の立場から言えば天然芝に勝るものは
    ないんだ。けど、費用その他の面では人工芝が勝るから、必然的に経営側は人工芝
    を使いたいわけだ」
理奈 「じゃあさ、ファンはどうなんだろ?」
一平 「う〜〜ん…。見た目は人工芝が綺麗なんだけどね…。でも天然芝の香りも捨てがたい
    と思うんだけどね。それに選手たちが要望してるんだから、天然芝に戻すべきだと思う
    ね」