プロ野球に入ろう!


理奈 「ね、変わった質問が来てんだけど」
一平 「言ってみなさい」
理奈 「何えばってんのよ。いい、君原くん、あ、「さん」かな、年齢が書いてないんでよくわ
    かんないんだけど、「プロ野球に入るには必ずドラフトで指名されなくてはいけな
    ないのですか?」、とまあ、こうゆう質問」
一平 「ははー、制度に関する質問か。まあ、そういうのもアリだな」
理奈 「で、どうなの?」
一平 「これは君原さんのおっしゃる通りですな。日本のプロ野球に選手として入団するため
    には、現状制度ではドラフトで指名されるしか手段がない
理奈 「ウソばっか」
一平 「え、なんで?」
理奈 「だってシーズンオフになるとさ、テスト入団したとか、テストに落ちたとかって記事が
    スポーツ新聞に出るじゃん。だからテストでも入れるんじゃないの?」
一平 「あ、なるほど、そういうことね。半分は正しいけど半分は勘違いだね」
理奈 「なして?」
一平 「どこの方言だよ(^^;)。理奈の言う通り、確かにプロにはテストでも入団できる。
    ただ、これは他球団から自由契約された選手(要するにクビ)、つまり元々プロだっ
    た選手に限られるんだよ。けど、君原さんの質問は、恐らくアマチュア選手がプロ
    に入ることについての質問じゃないのかな」
理奈 「あ、そだね。そっか、テストって元プロしかダメなのか」
一平 「だからアマチュア、つまり新人がプロに入るにはドラフトしかないんだな、今では」
理奈 「何か法の抜け穴みたいなの、ないの? 外国人選手として入るとかさ」
一平 「巨人みたいなことを考えるなよ(^^;)。今言った、外国人選手として入るってのは
    確かにひとつの手段だよ。それならドラフトを経ないでも可だ。だけど問題あるぞ」
理奈 「なんで?」
一平 「だってそうだろ? 普通、外国人選手ってのは即戦力で実績もある、つまりアメリカ
    なり韓国なり台湾なりのプロ野球で活躍してた選手がほとんどだよ。その競争に勝た
    なきゃならないよ」
理奈 「ああ、外国人枠があるのか」
一平 「そういうことだ。まあ、一部規制が緩んだから、2軍においとくだけなら何人でも獲得
    していいんだけど、1軍枠は打者2名、投手2名の4名までだからね、苛烈な競争に
    なると思うよ」
理奈 「そうだね。それに外国人選手じゃ新人王も獲れないし、つまんないか」
一平 「待った待った、外国人選手でも新人王は獲れるんだぞ」
理奈 「え、そうなの? ウソだ、だって1年目から大活躍した選手だっているのに獲ってな
    いじゃん」
一平 「だから、外国でプロ経験のある選手には新人王を獲得する資格は確かにないよ。
    でも、でもプロ経験のない外国人選手なら、立派に新人王の有資格者なんだよ。も
    ちろん外国人選手選手枠には引っかかるけどね」
理奈 「でも、そんな選手いるの?」
一平 「いるともさ。有名どころだと元中日の郭源治。この投手は1981年に入団して、翌
    1982年には9勝を挙げて、広島の津田恒美投手と新人王を争ったんだ。津田が11
    勝したから獲得はできなかったけどね。この郭投手は輔仁大在学中のアマ時代から
    世界的に注目を集めていて、台湾陸軍に徴集されて兵役を務めたあと除隊してドラ
    ゴンズに入ってる。つまりプロ経験はない」
理奈 「そっか、少ないけどいるにはいるのか」
一平 「だから、この方法を採るのはちょっと難しいと思うよ」
理奈 「でもさ、アマ対象のテストがあってもいいと思うんだけど、なんでないの?」
一平 「いや、あるにはあるんだよ」
理奈 「なにそれ、だってテストに合格したって入れないんでしょ?」
一平 「うん、だから、テストで合格した選手をドラフトで指名するって方法が採られるわけ」
理奈 「そんならテストで合格したらそのまま入団させればいいじゃん」
一平 「普通そう思うよな。これはアマとプロとの取り決めでそうなっちゃったんだよ。昔はな
    ドラフトでもテストでもなく入団できたの」
理奈 「なんで?」
一平 「ドラフト外というのがあったんだな。わかりやすく言うと、ドラフトで指名するほどじゃ
    ないんだけど、いいところを持ってるから入団させてもいいかなって選手だね」
理奈 「なんかよくわかんない」
一平 「昔はさ、ドラフト指名枠が4人とか6人だったからさ。少なかったんだよ。で、欲しい
    選手がいっぱいいて指名しきれない、なんてことがよくあったんだ。だからこういうこと
    も出来た」
理奈 「他にテストもあったのね。でも、じゃあ何でテストも含めてそういう制度がなくなっちゃ
    ったのかな」
一平 「これはなあ、プロが悪いのかなあ。要するに、闇雲に選手を獲りまくっちゃったんだ。
    ちょっとでも気になったらガンガン入団させたりしてね。そうするとアマにはいい選手
    がなかなか来なくなっちゃう。おまけに、当時はアマとプロは冷戦時代だったから、プ
    ロを一度でも経験した選手をアマで使うことは出来なかったんだよ。なもんだから、プ
    ロがたくさん選手を獲って、使えない選手を大量にクビにしても、その選手はアマじゃ
    野球が出来ないの。ますますアマには選手がいなくなる。だから、こういう一種の紳
    士協定が出来たんだな」
理奈 「ふぅん。でも、テストくらいはあってもいいんじゃないのかなあ」
一平 「私もそう思うね。それに、現状のテスト制度は怖い面もあるんだよ。仮にA選手がB
    球団のテストに合格したとするだろ? でもA選手はいくら合格はしてもB球団がドラ
    フトで指名してくれなくちゃプロに入れない。実際にあった話なんだけど、テストには
    合格したものの、結局ドラフトで指名されなかった選手までいるんだ」
理奈 「それ、ひどーい」
一平 「まったくだな。あるいは逆にも考えられる。B球団のテストで合格して、ドラフト8位で
    指名するつもりだったとする。しかし、この選手の情報が他球団にもれて、かなりいい
    選手だということが判明した。そこでC球団が7位で指名しちゃった、なんてこともあり
    得るからね」
理奈 「うーーーん」
一平 「つまり、現行のテスト制度は選手にとっても球団にとっても、あまり良いものじゃな
    いんだ」
理奈 「やっぱこの制度は変えよう」
一平 「理奈が言っても変わらないよ(^^;)。それに、どうせ変えるなら選択基準も変えた
    方がいいね」
理奈 「どういう風に?」
一平 「大抵の球団は、50メートル走6.5秒以内、遠投75メートル以上とか、そういう基礎
    テストをクリアしなくちゃ実技は見てくれないんだよ。でもさあ、たとえば巨人のマルテ
    ィネスみたいなタイプの人が受けたら絶対不合格だよな。でも、バッティングはマル
    ちゃん並みにすごかったらどうだろう? 獲得したって損はないよ」
理奈 「そうだよね。まあマルちゃんみたいな日本人がいるとも思えないけど。でも、走るの
    は遅いけど、すごい速球を投げられるピッチャーだっているかも
    しんないし」
一平 「そういうことだ。だいいち、ドラフト指名される選手たちだって、そういう基準を達成し
    てないのがゴロゴロいるんだから、画一的な見方はしないで欲しいね。確かに三拍子
    揃った選手を獲得したいって気持ちもわかるけどさ」
理奈 「一芸に秀でた選手だっていいよね」
一平 「お、理奈が難しい言葉を使った(^^;)」
理奈 「うるさいわよ」