ケガしちゃった!


理奈 「また、このメールにはずいぶん早く反応したね。女の子だから?」
一平 「なんでそういうこと言うんだ(^^;)。そうではない。純粋に、ちょっと感動してしまったか
    らだよ。ちょっと紹介してみてくれ」
理奈 「いいよ。ナナさんからね。「私は定時制の高校に通っていて来年卒業の予定です。
    
最後に青春がしたい・・・と思い、4月から野球部のマネージャーを始めました。
    それまでサッカー派だった私にとってすごくためになることばかりで、有り難く思
    っています」」
一平 「うんうん。野球に興味を持ち始めた子には、無条件で何でも協力するよ」
理奈 「で、「質問があるのですが・・・。ルールなどではなく、「選手が足をつった時」
    選手がケガをした時」についてです」、んで、「今までスポーツは「観る専門だっ
    私は、練習中、試合中、どの程度の治療をすればイイのか、いつもわからずに
    オドオドしてしまって、ケガをした選手に申し訳なく思っています・・・」だって」
一平 「はあ、なるほど」
理奈 「そんでね、「状況で変わるのかもしれませんが、正しい処置法というか、「最低限
    やらなければいけないこと」があったら、教えて頂ければと思います」という感じ」
一平 「たいへんよくわかったよ。このメール、一所懸命書いたんだろうなあっていうのがよく読
    み取れるんだよね…。こういう真剣な人には是非ともお応えしなくちゃならんのだ。それ
    に、礼儀正しいんだよね。自己紹介も挨拶もきちんとしてる。メールの最後にはこんなこ
    とまで書いてる。「お忙しいなかメールを読んで頂いてありがとうございました」。
    思わず、どういたしましてって言いたくなるね」
理奈 「こういう丁寧なメールは本当に減ったよね。意見・質問メールなんかでも、こっちかあれ
    これ調べて回答してもお礼も何もないって人ばっかだもんねぇ。貴重だよね、こういう人」
一平 「そうだね。で、このナナさんは新たに野球部のマネージャーになったんだね」
理奈 「そうみたいね。あたしの後輩だー」
一平 「あんまりこういう先輩を見習わないようにね(^^;)。…いで!」
理奈 「(思い切り足を踏んでいる)ケガの手当ってことよね」
一平 「まあ、私は医者ではないんでね、本当に応急処置しかわからない。それでいいかな」
理奈 「いいでしょ。あとはお医者さんに行かないとね」
一平 「そうだな。じゃあ理奈やりなさい」
理奈 「あたし? なんで?」
一平 「おまえ先輩だろうが。それに、いつも選手たちに手当してやってるだろ?」
理奈 「そうだけど…。まあ、いいや。なにから?」
一平 「まず、選手の足がつったとき、だね。腓返りってやつだ」
理奈 「コムラガエリって何?」
一平 「足とかをつることをこう言うんだよ。で?」
理奈 「わかんないよ。だって、ウチの選手ってあんまりこれしないじゃん」
一平 「そうだな。じゃあこれは私がやろう。まず、つるってのはどういう現象なのかってことを
    説明しよう。これは血液中に含まれる酸素が行き渡らずに、筋肉が酸欠状態になって
    しまい、痙攣を起こす現象だ。で、どういう時に発生するのかっていうと、筋肉疲労およ
    び緊張、体内の水分不足なんかが主な原因だね。
     つまり予防が出来るんだ。準備運動をしっかり行うこと、適度な休憩をとること、水分
    補給を怠らないこと。これらを守れば、つるという症状はかなり減るはずだよ」
理奈 「そっか。だからウチは休憩はちゃんと取るし、水分補給も十分にやってるんだね」
一平 「そうだ。短い練習時間しかない場合でも、水分補給はちゃんとやろう。スポーツドリンク
    のような電解質の飲料が理想的だね。それと準備運動、ウォームアップ。これ、大切だ
    からね」
理奈 「でも、いざつっちゃった場合は? ナナさんもそれを聞きたいみたいだし」
一平 「うん、概ねナナさんの治療法でOKだよ。痙攣した方も足を伸ばしてやればいい。地面
    に足を伸ばした状態で座らせて、手で足のつま先の部分を押してやろう。時間は1分
    くらいで十分。それでつった状態が治ったら、優しくふくらはぎをマッサージしてあげて欲
    しい。ついでに、足の裏、土踏まずの部分もマッサージしてあげよう。これでだいぶ落ち
    着くはずだ」
理奈 「で、治ったらすぐ練習に戻っていいの?」
一平 「まあ慌てるな。少し休ませよう。さっき言ったマッサージを終えたら、軽く屈伸運動させ
    てみる。まだ足がピリピリ痛むようならムリはさせないこと。おさまったら、軽い屈伸、
    ランニング。問題なかったら練習復帰だね」
理奈 「メールにはコールドスプレーで冷やす選手がいるっていうけど…」
一平 「つるってのは炎症ではない。だから冷やす意味はないし、かえってよくないよ。なのに
    何でスプレーなんか使うのかっていうと、冷やすと神経が麻痺して痛みが消えるからだ。
    でもこれは治ってるわけじゃないんだ。だから、さっきの説明通りの応急処置をした方が
    いい」
理奈 「ふうん。じゃあ次ね。擦りむいた時の処置らしいんだけど。これはあたしが説明すん
    のか。大したことないって放っておくとか、傷の上にいきなり絆創膏貼るってのはよくな
    いのよね」
一平 「その通り。じゃあ、どうするんだ?」
理奈 「ナナさんも言ってるように、消毒よね。水、それも流水でよーく洗うのが大事。痛いだろ
    うなと思って、軽く撫でるように洗うというのはあんまり意味がないんだって。遠慮なくっ
    ていうか、もう石鹸使ってしっかり洗ってあげるの。最初はあたしも抵抗あったよ。傷口
    をゴシゴシ洗えば選手は痛がるから。治療してるあたしもつらいけど、でも我慢。
    我慢、我慢」
一平 「これ、痛いんだけどね(^^;)。でも、後々のことを考えたらそうすべき。私なんかも、手
    をガラスで切って縫った時、まず医者がしたのは傷口の洗浄だった。ガラスの破片が
    傷口に残ったらたいへんだから。洗浄液をかけて、なんと使い古した歯ブラシで傷口を
    ゴシゴシやられたよ(^^;)。麻酔かけてたけど痛かったなあ」
理奈 「擦り傷もおんなじなのよね。擦りむいた傷に砂なんか残ったらたいへん。しっかり洗わ
    ないと。んで、その後は清潔なタオルやハンカチかなんかで傷口を押さえてお医者さん
    がベスト。そこまで行かない場合は、洗ったあとに絆創膏。マキロンとかがあれば、
    それを塗ったあとに絆創膏がいいかな」
一平 「ん、よろしい。たかが擦り傷に大げさなと思うかも知れないけどね、これは破傷風の
    問題もある」
理奈 「破傷風?」
一平 「私なんかの子どもの頃は破傷風の予防接種を受けたんだけど、聞いたところによると
    20代以下の人はやってないらしいな」
理奈 「してないと思う。知らないもん」
一平 「この破傷風って病気はかなり怖いので気をつけるに越したことはない。私らの頃は擦
    り傷くらいで、こんなに大げさにはならなかったんだけど、それはさっき言った通り予防
    接種を受けてたからね。免疫があってかからないからなんだ」
理奈 「具体的な質問があったのは以上なんだけど、他にも教えて欲しいってあるね」
一平 「そうだな。じゃあ他によくやるケガか。突き指なんてどうだ?」
理奈 「あ、これも多いね。これは絶対に引っ張っちゃダメなのよね」
一平 「そうなんだ。昔はよく引っ張ったもんだけどね。でも、これは厳禁。絶対に引っ張っちゃ
    ダメだ。ムリに引っ張らなければ軽傷だったのに、引っ張ったために大けがになったケ
    ースは枚挙に暇がないらしい」
理奈 「なんで引っ張るってのが流行ってたんだろう?」
一平 「まあ、突き指だからなあ。逆に引っ張ればいいだろうって発想なんだろうな。気持ちは
    わかるけど……」
理奈 「じゃどうするかって言えば、これはもう冷やすの。氷水がいいんだけど、なかったら流
    水。水道を流しっぱなしにして冷やす。時間は最低でも10分くらいは冷やそうね。そし
    たら、突き指した指を固定すんの。人差し指をやったら、中指と一緒に包帯を巻いて固
    定する。親指はやっかいなんだけど、これを添え木を当てて固定するの。とにかく患部
    を動かさないことね。それで医者にダッシュ!」
一平 「うん、そうだね。OKだ。突き指の怖いところは、骨折の恐れがあるってことなんだ。もし
    亀裂骨折(骨にヒビが入ってる状態)で、その指を引っ張ったりしたら、これはもう手術が
    必要な大けがになりかねないからね。よし、じゃあ次は捻挫だ」
理奈 「あー、これもよくあるね。これも冷やすこと。氷水がいいんだよね。でもその前に、捻挫
    したとこの固定。大体は足首だよね。これを包帯、それも弾力のあるやつあるよね、
    それでテーピングするの。そしたらガンガン冷やそうね。熱持ってるから」
一平 「そうだな。で、氷で冷やす場合の注意。アイシングって言うんだけど、これの正しいやり
    方を説明しよう。氷水に箇所を突っ込むと、冷たすぎて痛いんだよね。だから、その状態
    でやめちゃう。だけど、これはダメ。我慢して冷やす。すると今度はだんだんと暖かくなっ
    てくるんだな。寒い中、素手でいると最初は手が冷たいけど徐々に暖かくなるだろう?
    あれと同じだ。今度は徐々に神経が麻痺してきてピリピリしてきて、感覚がなくなってく
    る。ここまで来たら一端、水から患部を上げよう。で、感覚が戻ってきたらまた氷水。
    これを繰り返すんだよ」
理奈 「氷水で冷やすのは捻挫だけでなく、打ち身や突き指も一緒。アイシングの正しい方法
    は覚えておいた方がいいよね」
一平 「うん。それと、ここまで読んでくれて疑問に思ったかも知れないが、湿布薬について何
    も言ってないんだよね」
理奈 「あ、そうだね。でも湿布ってのはあくまで緊急用だってことなんでしょ?」
一平 「そう。捻挫とか突き指、打ち身で炎症起こしてるんだけど、近くに水道がない、氷水も
    用意してないって時は、仕方がないから湿布を使うって感じでいて欲しいんだ。安易に、
    すぐ湿布を使う人がいるが、あれはあまりよくない。湿布というのは、何もしないよりは
    マシ程度に考えて欲しい。冷湿布では温度調整も出来ないし、適当な温度でもない。
    だから水道などの流水や氷水の方がいいんだよ。何もない時はしようがないけどね」
理奈 「あとは移動の時に使うくらいだね」
一平 「あ、そうだね。いずれのケガにせよ、素人にできるのは応急処置止まりだ。あとは本職
    の医者に任せないとダメだよ」
理奈 「スプレーは?」
一平 「あれはもっと応急。試合中に死球食らったとか、ちょっとした打ち身だとか、そういう時
    だけ。試合中だから簡単に済ませなくちゃならない場合のみ有効。だけど、捻挫や突き
    指やったら欠場してくださいよ。それをスプレーで誤魔化してプレーしたら大けがになり
    かねない。試合中にスプレーで応急処置した箇所は、当然のことながらあとでちゃんと
    治療するんだよ」
理奈 「あ、あと救急セットに必要なものは?」
一平 「ああ。まず包帯。弾力性のあるやつがあるだろ? あれがいいね。これは必須。それと
    絆創膏。バンドエイドとかの類だね。マキロンとかの洗浄剤。ハサミ。ピンセット。包帯止
    めクリップ。湿布。ガーゼ。あと爪切り、これ案外使うんだよ。これくらいでいいよ。
    あとは、水分補給用のスポーツドリンク。これは熱中症とかの手当にも必須だからね。
    あと、出来たら大きめのクーラーボックスがあったらいいね。中にはたっぷりの氷と水。
    アイシング用の氷水だね。これ、氷だけより氷水の方がいいからね。直接、氷の塊で
    直接患部を冷やすのはやめた方がいい。ヘタをすると凍傷になっちゃうから。氷水の方
    が若干温度が高いんだよ」
理奈 「ナナさん、こんなところだけどどうでしょう? あ、あとね、包帯によるテーピングだけど
    これは素人は難しいです。だけど、マネージャーさんなら出来ないと困るのね。校医さん
    に言って教えてもらってください。スポーツ医学の講座なんかもあるけど、高校なら校医
    さんに聞くのがいいと思うんだ。保健体育の先生がいればそれもいいな。しっかり練習
    してマスターしてね」