用具について  グラブ編

理奈 「今度はグローブだね」
一平 「グラブとミットだな」
理奈 「ねぇねぇ、前から思ってたんだけど、なんでグローブのことグラブっていうの?」
一平 「あんまり意味はないよ。原音がグラブって聞こえるからだろう。気にしないでいいよ」
理奈 「これも重さとかの制限はないよね。長さはありそうだな」
一平 「うん、その通り。重さはフリーだ。だけどポジション毎にルールがあるんだ」
理奈 「えーーっ、めんどいなあ、そうなの?」
一平 「まあ、正確にはピッチャー用とファーストミット、キャッチャーミットにその他のグラブ
    ってところだけどな」
理奈 「ファーストとキャッチャーは他と違うのはめてるから何となくわかるけど、なんでピッ
    チャーも別なのかな」
一平 「バッターに投げる役だからだな。こういう規則があるんだよ。投手のグラブは縫い
    目も網も含め、全体が一色でなければならない。そしてその色は白と灰色以外
   の色
にする」
理奈 「なんで?」
一平 「例えばさ、ピッチャーのグラブが白かったら、ボールをグラブに入れてるかどうかわ
    かりにくいだろ? バッターも困るが、それ以上に審判が困るよ。全体が一色って
    のもあまりカラフルだと、これも見えにくいってことだな」
理奈 「じゃ他の人はいいわけね?」
一平 「理屈はな。でも、内野手が白いグラブだったら、やっぱりわかりにくいから警告を受
    けるんじゃないかな、きっと。でも、逆に言えば他の色だったらいいわけだ。今は赤と
    か茶系が主流だけど、青いグラブもあるしな。黄色やピンクってのは見たことないけ
    ど」
理奈 「他の内野はみんな同じなの?」
一平 「同じでもいいだろうね。でも実際はポジション別に作られてるよ。例えば二塁手だけ
    ど、このポジションはダブルプレーに関わる確率が非常に高い。だから、送球を受け
    たらすぐにグラブからボールを取り出せないと困るんだ。そのため、ポケットと呼ばれ
    るくぼみは他の野手用より浅く作られてる。一塁が近いから、打球を弾いても慌てな
    ければ一塁で刺せるしな。対して三塁手は、右打者の強烈な打球が飛んでくることが
    多い。だからしっかり捕球するためにポケットは深めに出来てるんだな」
理奈 「ウルサイのはピッチャーだけなのかな」
一平 「まあ、投手がいちばん厳しいね。他のをまとめて説明すると、
    捕手ミット
      縁取りも含めて外周38インチ(96.5センチ)以下
      ミットの上から下まで15.5インチ(39.4センチ)以下
      股部の間隔は4インチ(10.2センチ)以下
      網は親指から人差し指までの長さ7インチ(17・8センチ)以下
         先端から親指の股までの長さ6インチ(15.2センチ)以下
    一塁ミット
      縦12インチ(30.5センチ)以下
      親指から小指までの長さ8インチ(20.3センチ)以下
      股部の間隔は先端が4インチ(10.2センチ)以下
      網は親指から小指までの長さ5インチ(12.7センチ)以下
    その他グラブ
      縦12インチ(30.5センチ以下)
      人差し指から小指まで7.5インチ(19.6センチ)以下
      網は親指から人差し指まで4.5インチ(11.4センチ)以下
    こんなところだね」
理奈 「あ〜〜長かった・・・。そんなのいちいち気にしなくちゃなんないのぉ?」
一平 「しなくていいよ。こんなもん、大抵はメーカーでチェックしてるんだから」
理奈 「でもさあ、グローブは大きい方がトクなんじゃないの?」
一平 「う〜〜ん、それはどうかな・・・。大リーグなんかだと、この辺の規則をしっかり守らせ
    ることになったから、たまにアンパイアが野手のグラブをメジャーで測ってることがあ
    るね」
理奈 「へー」
一平 「特に外野手なんかが、スプリングキャンプでスポーツ用品メーカーに「もっと大きい
    グラブはないか」なんて聞いてくるんだそうだよ。フェンスオーバーした打球を、網の
    先で引っ掛けることを考えてるんだろうね」
理奈 「なるほど、そうだね、長いグローブを差し出せば、ホームランを捕れちゃうこともある
    んじゃないかな」
一平 「まあ、そういうことは絶対ない、とまで言わないけどね。でも、本当にそうかな?
    あのな、昔、テニスでデカラケってのが出たことがあったんだよ。そうだなあ、私が高
    校生くらいの時かな」
理奈 「デカラケ? でかいラケットってこと?」
一平 「そ。ガット部分の面積がバカみたいにでかいラケットさ。別にルール違反じゃないら
    しいんだけど、プロで使った人はほとんどいなかったそうだよ。つまり、ボールを打つ
    面積が大きかろうと、そんなことは関係ないってことだろう」
理奈 「そうかなー」
一平 「大リーグの監督で、こんな名言を吐いた人がいる。「グラブは問題じゃない。誰が
    使っているかが問題なんだ」。まったくその通りだと思うね」
理奈 「しょせん、道具ってこと?」
一平 「その通りさ。無論、道具を大事にしたりこだわるのは大切なことさ。でも、そのため
    に本質を見失ったら意味がないってことだよ。今はもう当たり前になってるけど、グラ
    ブの人差し指を外に出す選手が多いだろう? これについて、かつての名二塁手が
    こう批判してるんだ。
    「人差し指を出すということは5本の指を4本しか使わないということですよ。
    5本どころか6本指で捕らせたいようなヘタクソが、4本で捕れるわけ
ない
    じゃないですか
」。
     これも至言だね。呆れるのは、今じゃメーカーまで指出しを当たり前として、外に出
    した人差し指をカバーする部分までグラブにつけてるってことだよ。まったく処置なし
    だね」